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すれ違い ◆w9XRhrM3HU


「さて、少し遊びすぎたか」

珍しくエスデスは焦っていた。
アヴドゥルとの約束。協力者を集め、コンサートホールへと再合流という話だったが、まるで協力者が集まらない。
期限は既に三時間を切った。これでアヴドゥルが協力者を引き連れる中、エスデスだけ手ぶらとは示しがつかないだろう。
ほむらや光弾を撃ってきた男を見るに、勧誘の仕方に問題があるのだろうか。
とにかく、人と会わねば勧誘も何もない。早足ながら、西側のエリアを散策していく。

「二人か」

数分後、念願の参加者を見つけた。大男と小柄な少女の二人組みだ。

「そこの二人」

可能な限り、殺意を消して近づく。声も抑え気味にして威圧感をなくす。
ほむらのようにまた逃げられては、面白くはあるが面倒でもある。
刺激しないように気を使う。
それでも二人組みはエスデスを見た瞬間、明らかに警戒している様子を見せてくる。

(やはり慣れんな。こういうのは)

エスデス自身気に入った兵士をスカウトすることもあるが、基本的に国がエスデスの申請を受け人材を集めていた。
その為あまり気にしていなかったが、今までの勧誘方法では余程の物好きか、調教でもされなければ着いてくる者などそうはいないだろう。

(国の支援がないというのも中々に面倒だ。
 その手の交渉が上手い協力者も手元に置くべきか? ランが居れば話は早かったが、居ないものは仕方ない。
 調教は……少なくとも今は時間がないしな)

調教は手っ取り早く、エスデス本人も楽しめる一石二鳥の方法だが、如何せん時間が掛かる。
弱ければ数秒で心を折る自身はあるが、そもそもそんな雑魚はこっちから願い下げだ。
今は選択肢に入れることは出来ない

「何のようだ?」
「そう、殺気立つな。私は協力者を探している」
「協力者?」

ほむらよりも若干警戒の意識は薄い。言葉を選んで話せばそう逃げられることもないだろう。
エスデスは柄にもなく、刺激の少ない言葉を使い会話を進めていく。

「……なるほどな。DIOを倒す為に人を集めていると」
「そうだ。それに承太郎、お前の仲間のアヴドゥルもコンサートホールに来る。
 私に着く価値はあるんじゃないか?」

二人組の名。
エスデスは、承太郎とまどかの名前を引き出すところまで話を穏便に済ませられた。
あとはエスデスに着いてくるよう話を纏めるのみだが、承太郎は怪訝そうにエスデスを見つめ指を二本立てた。

「……二つだ。二つ、気になることがあるぜ。エスデス?」
「何だ?」
「お前の口ぶりじゃ、アヴドゥルとは友好だと話してやがったが、その服の端の焼き焦げた跡は、とても仲が良いとは思えねえ。
 まるで戦闘の後じゃあねえか?」
「? ……ほう」

エスデスはアヴドゥルとほむらとの交戦に関しては省いて説明していた。
理由は、面倒ないざこざを避ける為だ。約束の期限がなければ、わざと挑発して遊ぶのも悪くはなかったが。


「二つ目だ。炎の焼き跡だけじゃあねえ、その掠ったような服の破れた跡。そいつも戦闘跡だな?
 しかも、アヴドゥルのスタンドじゃあそうはならねえ。誰か別の奴とやり合った事になる。
 説明してもらおうか? 子供の頃『刑事コロンボ』好きだったせいか、細かい事があると夜も眠れねえ」
「フッ、面白い。良い洞察力だ」

指摘されたとおり、見れば僅かに服が破けていた。
花京院のエメラルドスプラッシュを防いだエスデスだが、僅かに服に掠ってしまったのだろう。
笑いながらエスデスはアヴドゥル、ほむら、光弾を撃った奴こと花京院との戦闘を事細かく話した。
まどかはほむらの心配をし、承太郎は困惑した様子を見せる。

「じゃあ、ほむらちゃんはその方向に」
「ああ、今から行けば間に合うかも知れんな」

まどかの顔つきが変わる。
ほむらが近くに居る安堵感と、同時に危ない花京院が居ると言う不安感。
両者がせめぎ合い。まどかに焦りを感じさせる。

(どういうことだ……? エスデスから聞いた花京院は、まるでほむらって奴を守ったようにしか見えん)

承太郎は最初、まどかを襲ったのは花京院だとばかり思っていた。
あの対決前の花京院だと。
しかしエスデスが言ったほむらを助けた光弾を撃った奴というのは、明らかに花京院。花京院のエメラルドスプラッシュだ。
それでは、話が合わない。花京院は殺し合いに乗っているのではないのか? 何故、ほむらを助ける。まどかが嘘をついた?
だが、考えればDIOが近くに居ないのは確実で、肉の眼を埋められるはずがない。これは星型の痣が反応しないことから事実だ
あるいはDIO以外に洗脳されたとも考えられるが、それにしても殺し合いが始まってから即花京院を洗脳し、まどかを襲わせたというのも急すぎる。
花京院は決して弱くない。負けることがあっても、手間と時間は掛かるはず。

「…………偽者か?」

かつて、ラバーソールというスタンド使いの敵が居た。
奴はそのスタンド『黄の節制(イエローテンパランス)』 を使い花京院に化けていた。
花京院のスタンド、ハイエロファントグリーンまで模倣するほどだ。
この場においても、似たような能力の使い手が居てもおかしくない。むしろ偽者であったほうが全ての辻褄が合う。

「偽者なら私にも心当たりがあるな。帝具……まあ特別な力を持ったアイテムだが、その中にあらゆる容姿に化けられる物が存在する」

この一言が承太郎の思考を完全に固めてしまった。
まどかを殺害を目論んだのは偽花京院であり、ほむらを助けたのは本物の花京院だと。

「私、ほむらちゃんに会いたい。承太郎さん……」
「ならまどか、私と一緒にほむらを迎えに行かないか?」

承太郎が答えるより早く、エスデスが口を開く。

「私も、ほむらを怯えさせた事は悪いと思っている。だから謝罪したいんだ。
 まどかが来てくれると私も助かる」
「エスデスさん……」
「勝手なお願いかもしれないが……」
「おい待ちな。そんな言葉、信用できると思ってるのか?」

承太郎はエスデスを完全には信用しきってはいない。
殺し合いに乗っている訳ではないが、それに近いスタンス。そう考えている。
だからこそ、唐突に謝罪がどうこうなど言われても信じられるはずがない。
だが、まどかは違う。謝りたいというのなら、その意思を尊重すべきとそう考える。
既にエスデスへの警戒はなく、最初に警戒していた反動か信じきってしまっていた。

「何なら承太郎、お前も来れば良いだろう?」


エスデスの提案を受け、承太郎はすぐに言葉を返せない。
確かにエスデスが信用できず、まどかと行動させたくないのなら承太郎が同行すれば良い。
本物の可能性が高い花京院とも合流できる。
そうは分かっているが、承太郎は偽花京院が気になっていた。
もし偽花京院が誰かを殺害し、その因縁が本物に降りかかってしまえばどうなる?
無意味な殺し合いへと発展し傷つけ合うだけだ。
その前に承太郎は、偽花京院を倒しておきたいという思いが強い。

「承太郎さん、偽者の花京院さんを止めたいんですよね? なら、承太郎さんは自分の向かいたい方へ行って下さい!」
「まどか……」

承太郎の心を読んでいるかのように、的確にまどかは図星を突いてくる。

「その、承太郎さんはエスデスさんを疑っているのかもしれませんけど。私はエスデスさんは悪い人じゃないと思います。
 だから、無理にとは言いませんけど、私を信じてくれませんか?」

まどかが笑顔を浮かべる。その笑みには人を安心させる不思議な魅力があるように承太郎には感じられた。

「……分かった。そっちはお前に任せるぜ。だが、万が一のこともある。一応そっちの花京院も警戒しろ」
「はい! 分かりました」

まどかも守られるだけの存在じゃない。自分の意思で行動し動く立派な一人だ。
ならば、自分が付きっきりで守るのは過保護というもの。
互いの目的があり、その方向が反れてしまうのであれば別かれるのが道理だ。
不安もない訳でもないが、向こうの花京院は本物の可能性は高い。もし合流できれば、承太郎の不安も消えるだろう。
エスデスも再度合流すると約束したのだ。まどかにそう妙な真似はしないはず
そこまで考え、まどかを一人の対等な人間として接し、そして承太郎は答えを出した。

「そうか、お前は来ないのか承太郎」
「武器庫の方を回り、偽花京院を探す。その後で一応コンサートホールには顔を出す」

本物の花京院が北の方角に行ったのなら偽者は鉢合わせを避け、逆の方角へ行くはず。
承太郎はそう検討を付ける。

「承太郎さん、必ず花京院さんを連れてコンサートホールに行きます」
「ああ」

こうして彼らは袂を別ち、別の道を行く。

(まどか、か。中々面白い拾い物をしたな)

エスデスはほくそ笑む。ほむらの友人らしいまどか。
ほむらを炙り出すのにこれ以上適した存在は居ないだろう。
謝罪がしたいだのと嘘を言っただけの甲斐はある。
百の氷より一人の声のほうがあの少女には効くかも知れない。

(約束の期限までにも、まだ少し時間はある。また、あの森に寄る時間くらいあるだろう)

上手くやればほむらを引きずり出し、協力者としてコンサートホールに連れて行けるかもしれない。
いや、そうでなくてもそれはそれで面白い。
アヴドゥルとの約束もあるが、まどかが居れば逃げる真似もせず手間もなく済むはずだ。それでも時間が掛かるようなら仕方ない。
大人しく、まどかを連れてコンサートホールに戻ればいい。


(待ってて、ほむらちゃん)

まどかは決意を新たにほむらの元へ向かう。
自分の大事な親友と会うために。



承太郎は気付かない。花京院の偽者など存在しない事に。
時間を遡り、参加者が呼ばれていることなど考えもしていない。
もしも、時を止め時間を操るという概念に触れていれば、あるいはそれも考え付いたのかもしれない。
しかしこの承太郎は正史から外れ、本来目覚めるはずの力はまだ覚める様子はない。
その事実に気付くのは何時になるのか、あるいは気付かないまま彼の物語が終わってしまうのか。

月は消え、日が昇り始める。
彼らの行く末を照らすのは光かそれとも。

【B-2/1日目/早朝】


空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(中) 、精神的疲労(小)、
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、手榴弾×2
[思考・行動]
基本方針:主催者とDIOを倒す。
1:武器庫の方を回り、偽者の花京院が居れば探し倒す。DIOの館に関しては今は保留。
2:情報収集をする。
3:魔法少女やそれに近い存在を警戒。
4:二時間後にコンサートホールに行く。
5:後藤を警戒。  
【備考】
※参戦時期はDIOの館突入前。
※後藤を怪物だと認識しています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※魔法少女の魔女化以外の性質と、魔女について知りました。
※まどかの仲間である魔法少女4人の名前と特徴を把握しました。
※まどかを襲撃した花京院は対決前の『彼』だとほぼ確信していましたが、今は偽者の存在を考えています。



鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(穢れ:中~大) 、花京院に対する恐怖(小~中)
[装備]:見滝原中学の制服 中指に嵌められたソウルジェム(指輪形態)
[道具]:手榴弾×2
[思考・行動]
基本方針:ゲームに乗らない。みんなで脱出する。
0:エスデスと共にほむらの元へ向かう。念のため本物の花京院(と思ってる)も軽く警戒。
1:魔法少女達に協力を求める。悪事を働いているなら説得するなどして止めさせる。
2:ほむらと会えたら色々と話を聞いてみたい。
3:状況が許すなら魔力を節約したい。グリーフシード入手は期待していない。
4:ほむらの謝りたいと思ってるエスデスの手助けをしてあげたい。
【備考】
※参戦時期は過去編における平行世界からです。3周目でさやかが魔女化する前。
※魔力の素質は因果により会場にいる魔法少女の中では一番です。素質が一番≠最強です。
※魔女化の危険は在りますが、適宜穢れを浄化すれば問題ありません。
※『このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえは 死ぬ』と書かれたハンカチは何処かに落ちています。
※花京院の法王の緑の特徴を把握しました。スタンド能力の基本的な知識を取得しました。
※承太郎の仲間(ジョースター一行)とDIOの名前とおおまかな特徴を把握しました。
※偽者の花京院が居ると認識しました。


【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:高揚感 疲労(小)
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。
0:協力者を集め六時間後にコンサートホールへ向かう。
1:その後DIOの館へ攻め込む。
2:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。
3:タツミに逢いたい。
4:時間もまだ少しあるのでまどかを連れもう一度ほむらの元へ行ってみる。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。
※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。
※アブドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。
※DIOに興味を抱いています。
暁美ほむらに興味を抱いています。
※暁美ほむらが時を止めれる事を知りました。
※自分にかけられている制限に気付きました。


時系列順で読む
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047:笑う女王と嗤う法皇 エスデス 081:曇天
043:わたしが、心を決める時 空条承太郎
鹿目まどか
最終更新:2015年08月28日 05:23