理想の果て(前編) ◆W.hp1QcmWc
衛宮士郎と両儀式。
互いに相手の存在の抹消を宣言して始まった二人の戦い。
ここに来るまでの生き方、ここに来てからの戦闘経験。
それら全てにおいて式が勝っている。
その差は、両者が遭遇した信長との戦いが顕著に示している。
式はガンダムチームの2人と組んで立ち向かい、劣勢ではあったものの無傷でその場を切り抜けた。
一方の士郎は信長を相手にして生きながらえているものの、ほぼ限界まで力を使い尽くし、少なからずの犠牲を払った。
ここに至ってアンリ・マユによる強化を受けた士郎だが、それでも式には及ばない。
直死の魔眼による士郎の死。
それがこの場で最も可能性が高い展開。
―――しかし。
「うおおおおおおおーーーーー!!」
「チッ……!!」
この剣戟が重なり始めてから十数分。
両者は未だ傷一つないままに戦いを続けていた。
「―――トレース・オン(投影開始)」
士郎は式に剣を叩きつけつつ、すかさず投影を開始する。
これに対し、式は叩きつけられた騎士剣を殺しつつ、体勢を整える。
「またそれか……さて、”次は”どっちだ?」
◇ ◇ ◇
時は戦闘開始時まで遡る。
出会い頭の邂逅において、士郎が持つ漆黒の騎士剣はただの一撃で”殺された”。
これによって、凄まじいまでの違和感が士郎を襲う。
いくら贋物とはいえ、士郎が持ちたるは騎士王の幻想。
いかな名刀が相手であろうとも一手に壊されることは考えがたかった。
故に、士郎は相手に何らかの能力が備わっていることを確信した。
他ならぬ剣特化の魔術師である士郎だからこそ、その判断が真っ先についていた。
剣閃が邂逅し、騎士王の剣が殺され続けること、数度。
ここで両者共に動き出す。
「そろそろその能力にも飽きてきた。次で殺すぜ」
珍しい能力だと様子見しながら戦っていた式だが、既に士郎の太刀筋を見切り始めていた。
このまま続けるのであれば、次で殺す。
そのような気概を込めて、九字兼定を振る。
「―――トレース・オン(投影開始)」
「―――トレース・オン(投影開始)!」
だが、士郎はここで一気に2つの投影を行う。
そして両手に携えたそれをこれまでと同じように式に叩きつける。
「こいつ……!!」
いきなりの二刀流を前に、さすがの式も僅かばかり対応を遅らせた。
加えて速さだけなら達人レベルまで達している士郎が相手。
両の手の騎士剣を殺すことは出来たものの、宣言通りに担い手を殺すことは出来なかった。
ここで、両者共に間合いを遠くする。
「……ようやくお前の能力が分かってきた」
「―――へえ。今までのでそれを確かめてたって訳か」
面白いじゃないかと呟きつつ、式は突進する。
士郎はその場に留まり、次の手に出る。
「―――トレース・オン(投影開始)」
士郎の手に現れたのは漆黒の騎士剣ではなかった。
式の持つ九字兼定と同じく日本刀、それも竜の爪と呼ばれる刀であった。
独眼竜の生き様を表すかのようなその絢爛な佇まいも、今は瘴気をまとい邪悪竜の爪といった様相になってしまっていた。
「やっぱり日本刀も作れるんだな。敵にしとくにはもったいない能力だ」
ここで殺すんだけどなと嘯きつつ、式は攻撃を仕掛ける。
得物を変えたとはいえ、相手の太刀筋は見切っている。
二刀流も次は通用しない。
普通に考えれば、もう負ける要素は無い。
―――それならば何故、死の気配を感じるのか。
「……ッ!!」
急に立ち止まる式。
その眼前を”予想外の角度”から通りすぎる剣閃。
さすがの式もこれには驚きを隠せなかった。
「……太刀筋がまるで違う」
士郎が格上と渡り合える理由はここにあった。
今の士郎自身には、確固たる太刀筋があるわけではない。
それを持つには一対の短剣が必要になるが、士郎はそれを持ち得ない。
であれば、今現在の太刀筋はどこから生み出しているのか。
それは剣の記憶。
騎士剣に刻まれた騎士王の剣舞。
竜の爪に刻まれた独眼竜の爪撃。
士郎は得物を変えた瞬間から、すぐさま太刀筋を別物に出来た。
それは見切りに長けていればいるほどに惑わされるという一種の達人殺しのような能力。
これも剣に特化した士郎にしか為し得ない唯一無二の技。
「DEATH FANG Blade Works―――」
「面白い芸当だが、それでもオレは殺せない」
下段から斬り上げる士郎に対し、式は九字兼定を振り抜く。
その瞬間、式は士郎の太刀筋を「クリア」していた。
見切りが通用しないのならば、端から全て初見と思えば良い。
起源が『虚無』である式ならではの芸当。
「くっ―――トレース・オン(投影開始)!」
騎士剣を楯にして後方に跳ぶ士郎。
式も騎士剣を殺しつつ、士郎を追う。
だが、士郎もまた次の武器を投影し、むしろ突っ込んできていた。
「ライナー/エア・ブレードワークス!!」
突進しながら漆黒の騎士剣を突き出す士郎。
剣が纏う瘴気を警戒して、式は横に大きくステップを踏む。
そこに合わせて士郎は横に薙ぐが、その剣閃は騎士剣を殺される事で消滅する。
今度は六爪を投影して袈裟斬りするもこれまた避けられ、その次の邂逅で竜の爪が折られる。
投影しては殺され、殺してはまた投影される。
ただひたすらに騎士王と独眼竜の幻想が殺され続ける戦いが繰り広げられる。
九字兼定を持ち、万全である式ですら、今の士郎を相手にしては攻めあぐねていた。
今やどちらが勝っているとか劣っているとか、明確な判断がつかない。
ここに生死を紙一重とした互角の攻防が実現していた。
式以上の使い手でない限り、士郎にしか為しえぬ快挙。
しかし、その互角は長時間保たれるものではなかった。
もう何度目になるか分からない邂逅を終え―――両者の何らかの思惑が一致したのか―――大きく距離を置いて対峙した。
「いい加減面倒だ。そろそろ決めるぞ」
時間は有限であり、周りの情勢は刻々と移りゆく。
ここでいつまでも敵と剣戟を交わしているような余裕はない。
式は己が集中力を最大限まで高めていく。
強力すぎるためかあまり発揮されない自らの能力。
今、この一瞬だけでもソレを行使し、この難敵を斬り伏せる。
「―――トレース・オン(投影開始)」
一方、士郎もまたこの敵を相手に一切の余裕がなかった。
これまでの邂逅で判明した敵の能力は「何らかの条件であっさりと物質を斬る」力。
試す気はないが、人体ですら例外なく斬れると見た方が良いだろう。
全てに死が連想される一撃を受け続け、士郎の精神は次第にすり減らされていた。
今は無尽蔵の魔力があるとはいえ、投影する身はただの人間に過ぎない。
投影するたびに魔術回路を駆け巡る刺激にも、慣れた訳ではない。
故に、敵が乾坤一擲の勝負に出たのを幸いと、自らも勝負に出る。
「―――憑依経験、共感終了」
脳裏に描くは無数の剣。
それらの設計図を準備していく。
そのほとんどはこの地に来てから見たもの。
これまでの士郎と剣の結びつきをこの一手に篭める。
「―――ロールアウト(工程完了)。バレット(全投影)、クリア(待機)」
極限まで高められる殺気と戦気。
両者の準備は整い、あとはきっかけがあれば爆発するだろう。
二人はそのきっかけを、待つ。
―――そして。
『う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
1つの悲鳴が響き渡る。
それは驚愕と恐怖が入り交じった叫び。
(秋山……!?)
思いもよらぬきっかけが到来し、式の心に僅かなゆらぎが起こる。
その隙を今の士郎が見逃すはずもなく。
「―――フリーズアウト(停止解凍)、ソードバレルフルオープン(全投影連続層写)!!」
空間より出現した無数の剣が式に向けて射出される。
「チッ……!!」
式は思考を切り捨て、目の前に迫る死へと向かう。
一瞬の後、凄まじい音が辺りに響き渡る。
◇ ◇ ◇
舞台はまた遡って戦闘開始直後。
自分を殺そうとする士郎、自分を守ろうとする式。
その二人を省みず、澪は自らの行いを回想する。
桃子に頼まれて、ギャンブル船を攻撃。
士郎・美穂子との戦闘。
美穂子の殺害と、自分に憎しみを向ける士郎。
「そうだ……私が殺したんだ」
自分の意志で。あの女を。
澪にとって美穂子は決して相容れてはならない相手だった。
唯を通じて出会った二人。
その出会いは決して穏やかなものではなかった。
澪は唯の信頼を勝ち得ていた美穂子に嫉妬し、死地へと誘った。
当然、死んだと思った。
これからは自分が唯を守るのだと意気込んだ。
だが、結果は逆だった。
死地に向かわせたはずの美穂子は生き残り、自分が守るはずだった唯は死んだ。
第三回の放送を聞いた時、澪は内心動揺を隠せなかった。
そして、思ってしまった。
『もしあの女が唯と一緒にいたままなら、唯は死なずに済んだのではないか?』
ルルーシュらと共に歩む事に必死だった澪はその疑問をあまり考えずに済んだ。
だが、ここに来て美穂子を一目見た時、その疑問が大きく膨れ上がっていた。
それからいいようにやられ続け、澪の精神は極限までに達し、あれほど嫌った起源を受け入れた。
そして―――
「そうだ、殺してやった!! あのいけすかない女を!!」
澪は見た。士郎をかばって死んだ女の最期を。
生きながらに咀嚼された女の最期を。
自らが劣等感を感じた女の最期を。
「私があいつを殺した以上、私はあいつより強い。
なら―――あいつがいたとしても唯は守れなかった!」
単純にして酷く歪んだ真理を澪は導きだす。
仮に美穂子より澪は強いとしよう。
だからといって何が変わるのだろうか?
澪は自己の正当化のために美穂子の死を利用した。
それは一種の『逃避』。
澪は全てから『逃避』し続ける。
罪からも、敵からも、そして現実からも。
そこまで考えた澪はようやく心を落ち着かせる。
そして、未だ危険な場所にいる事を思い出し、辺りを見回す。
一番に飛び込んでくるのは、眼前で戦っている式と士郎の姿。
「そうだ……式を助けないと」
思惑はどうあれ、窮地だった澪を救ってくれた式。
不安を抱くほどに変質した桃子に比べ、式は出会った時から何一つ変わっていない。
そんな式だからこそ、澪は今や一番の信頼を置くに至っていた。
澪は再度周りを見回し、自らの乗機・サザーランドへ近づく。
先程の戦いで損傷したとはいえ、動けないほどではないはず。
このサザーランドで、殺す。
「私を助けてくれない正義の味方なんているもんか……!!
衛宮士郎、お前は私が殺してやる!!」
「それは困るな、秋山澪」
後方からの声。
え、とこぼしつつ、澪が振り返ったときにはもう何もかも遅かった。
「、王顕」
呟かれた言葉と共に射出される右腕。
それが唖然とする澪の腹部に叩き込まれ、そのまま振り切られる。
「ぐあっ……!?」
強烈な衝撃と共に澪の身体が吹き飛ぶ。
数メートルほど飛び、接地したあともゴロゴロと転がり、ようやく止まる。
その最中にドラムスティック以外の手荷物は手放してしまっていた。
「あ、あ……?」
何が起こったのか分からない。
あまりの痛みと唐突な展開に頭の中が真っ白になる。
一時的に焦点が合わなくなった目を辺りに向けると、近づいてくる人間が見えた。
「う、うあっ、うあああぁあ!!」
咄嗟にオレンジ色のトランクケースに手を伸ばす。
この魔物でアレを殺す。
「不具、」
「……なんで!?」
「金剛、」
「な、動かな……!?」
「蛇蝎、」
「ぐっ、ぐぅぅ……」
だが、荒耶による六道結界により、まず伸ばした腕を静止され、足を静止され、身体も静止された。
身動きの取れない澪は呻きをあげつつ抵抗を試みるが、全く何も出来ない。
「ここまでの舞台を作ってくれたお前には感謝するが、ここから先に介入することは許可できんな」
「ぐぅぅ……お、お前、誰だ……?」
「私か? 私は魔術師、蒼崎橙子。まぁ、お前に覚えてもらっても意味の無い名だが」
そんな事を語りつつ、荒耶はトランクケースを取り上げる。
あっ、と澪がその様子を見て声を挙げる。
「そ、それはっ、私のっ……!!」
「ほう、これを使いたいというのか。お前にその覚悟があるか?」
「何を言って……」
私はこれまでそれを上手く使ってきた、とでも言いたげな表情を澪は作る。
荒耶はその様子を睥睨しつつ、言葉を重ねる。
「なるほど、今まではお前の思う通りに動いたのだろう。
だが、今となっては状況が違う」
「デタラメを言うな! それは私のモノだ!!」
「そうか。そう思うのなら使ってみるがいい」
「……え?」
荒耶はあっさりと六道結界を解き、あまつさえトランクケースを澪に手渡す。
あまりの出来事にまたも澪の脳内は真っ白に染まっていく。
「な、何で……?」
「使いたいのだろう? 是非使ってみるといい」
好きに使いたまえ、と余裕の塊のような態度を取る荒耶。
だが、その態度こそ、澪をさらなる疑問へと落とし込んでいた。
(これを使うとどうなるっていうんだ……!!)
疑問が胸を渦巻き、どうしても開けることが出来なかった。
「ふむ、私の言葉と態度が気になって仕方が無いようだな。
理由を聞きたいかね?」
「……」
澪は沈黙を以て返事とした。
すなわち、肯定。理由を聞きたいと。
「よかろう。それの中に入っているモノは福路美穂子を捕食した。そうだな?」
「あ、ああ……」
コレが美穂子を喰らったこと。
それは他ならぬ澪こそが最もよく知る事実。
「だからだ」
「……なんだって?」
「『福路美穂子を喰らった』。それこそがその魔物の使役を困難にする要素だ」
「そ、そんな!! あの女のせいで!? そんな事が……!!」
信じられない。
澪に浮かんだのはそのような面持ち。
本当にそれが事実だと言うのならば、どこまで私の邪魔をするのだろうか。
もしや、私を死へと誘う気なのか。
澪に浮かんだのはそういった類の思考だった。
「正確にはアレ自身が作用しているわけではない。アレの中にいたモノがその要因だ」
「福路美穂子の中にいたモノ……?」
「アンリ・マユ。この世全ての悪と称される異物だ」
「この世全ての悪……?」
「お前では説明してもわかるまい。
そうだな、今の衛宮士郎と同じ状態にあると言えばわかるか」
「衛宮士郎と同じ……?」
ここでようやく澪の顔に怯えの色が浮かぶ。
この世全ての悪だとか、そういった言葉では全く分からなかった。
だが、今の士郎の状態と同じというのであれば、澪にも理解が及ぶ。
美穂子が殺された途端に澪を殺しにかかった士郎。
それと同じような状態にあるものを使役できるはずもない。
「だが、もしかしたら、正常のまま使役できるかもしれんぞ?」
「……」
やってみなければ分からない。
荒耶は暗にそう言ってのけた。
影絵の魔物が狂気に染まっているのかいないのか。
それはトランクケースを開けてみなければ、分かることはない。
まさしく、シュレディンガーの猫を彷彿させる状況だと言う事。
澪はハッタリだと思う気持ちと、本当かもしれないという気持ちで揺れ動いていた。
そもそも、美穂子を喰らってから士郎への攻撃も上手くやっていた。
汚染されているというのならば、美穂子を喰らった時点で言う事を聞かないのではないか?
その一方で、あれが魔物の独断でやったことなのかもしれないとか、時間が経った今だからこそ狂気に染まっているのかもしれないという思考も浮かぶ。
結局の所、どちらとも分からない。フィフティフィフティ。
そんな可能性の中、澪が取った行動は―――。
「……ッ!!」
何も出来なかった。
むしろ、そのケースを手放した。
澪は恐ろしかったのだ。
自分も美穂子のように生きたまま咀嚼されるのかと思うと、手の震えが止まらなかった。
「なるほどな。秋山澪、お前の起源は『畏怖』と『逃避』か」
「!! どうしてそれを……」
「私は人の起源を見ることに長けている。それにしても、起源を認識していたか」
「そ、そうだ! でも、『畏怖』だとか『逃避』だとか、そんなものが起源だと言われたって今更私は変わらない。
その起源を利用してでも、私は生き続けなきゃならないんだ!!」
澪は宣言した。起源を受け入れてでも生き延びてやると。
それを聞き、荒耶は少なからず感心した。
『畏怖』と『逃避』。およそいいイメージを抱きはしないだろう言葉。
澪自身も嫌悪しただろう。
だが、それを受け入れてでも自分は目的を果たすと言ったのだ。
同じ世界出身の中野梓とは大違いで、及第点と言ってもいい。
「では、この私から『逃避』してみせよ、秋山澪」
「ひっ……!?」
唐突に会話を終了させ、構える荒耶。
その構えと威圧感に先程の痛みを思い出し、震え始める澪。
その姿は紛れもなく『畏怖』。
「……行くぞ」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
叫び声を上げながら後ずさる澪。
荒耶はそれを油断なく見つめながら距離を詰めていく。
そして、距離は荒耶の拳の射程圏内に入る。
「、戴天」
言葉と共に再び撃ち出される右腕。
その軌道は澪の顔面を正確に捉えるものであり、下手をすれば頭蓋を砕かれかねない。
「こ、こんな所で死ねるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
だが、澪はここであえて足を突っ掛け、後ろに身体を倒す。
一瞬後に自分の顔があった場所、そして自分の顔の鼻先を通り抜ける拳を見て息を飲む。
仰向けに倒れた衝撃で一瞬息が止まるが、それを無視して素早く荒耶から距離を取る。
いや、荒耶にとっては狙う隙などいくらでもあったのだが。
「ハァ……ハァ……!!」
少し大立ち回りをしただけで息を上げてしまう澪。
それを冷ややかに見つめる荒耶はそのまま構えを解く。
「この場から去れ、秋山澪」
「……え?」
「二度は言わんぞ。死にたくなければ今すぐここから去れ。
さもなくば……」
「……ひっ!!」
再び構えを取った荒耶を見て再び畏怖を覚える澪。
逃げるのならば、危害は加えない。
ならば、一にも二にも逃げを打つのが上策じゃないか。
……でも。
でも、自分を助けに来た式はまだここにいる。
その式を放って自分だけ逃げるのか。
葛藤を始めようかという澪。
だが、それに対し、圧力を掛ける荒耶。
(っ……大丈夫。式は強い。足手まといの私は早くここから逃げたほうがいいんだ!!)
結局、澪はこの場から逃げることを選択した。
何故、蒼崎橙子が自分を見逃すかは分からないが、この機を逃す手はない。
向かう先はルルーシュや桃子のいるホバーベース。
今は誰でもいい、この場所をなんとか出来る人間を探し求めるのみ。
「式、待っていてくれ。必ず助けに戻るから!」
優勝を目指すとはいえ、未だ仲間を見捨てるという境地までには至らない。
少女はただひたすら北西へ向かう。
今や偽りとなった仲間たちに助けを求めに。
【E-3/南西/二日目/黎明】
【秋山澪@けいおん!】
[状態]:両頬に刀傷、全身に擦り傷、腹部に痛み
[服装]:龍門渕家のメイド服@咲-Saki-
[装備]:田井中律のドラムスティック
[道具]:基本支給品一式×3、千石撫子の支給品0~1個(確認済み)、FENDER JAPAN JB62/LH/3TS Jazz Bass@けいおん!
下着とシャツと濡れた制服、法の書@とある魔術の禁書目録、モンキーレンチ@現実、
桜が丘高校軽音楽部のアルバム@けいおん!、軽音楽部のティーセット、発信機@現地制作、通信機@コードギアス
ジャンケンカード×5(グーチョキパー混合)、ナイフ、一億ペリカの引換券@オリジナル×2、中務正宗@現実、ランタン@現実
[思考]
基本:もう一度、軽音部の皆と会うために全力で戦う。
0:ルルーシュか桃子に助けを求める。
1:ひとまず桃子と内密に組む。
2:この集団を利用し、目的を果たす。
3:軽音部全員を救う方法を探し、見つけ次第実行する。 手段を選ぶつもりはない。
4:サザーランドを乗りこなせるようにする。
5:式とのコネクションは秘密にしておく。
6:憂の精神状態に相当の疑念。
7:一方通行を警戒。ユーフェミアに対して『日本人』とは名乗らないようにする。
8:蒼崎橙子……一体何がしたいんだ?
9:正義の味方なんていない……。
10:私は間違ってない……よな?
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※エスポワール会議に参加しました。
※ブラッドチップ(低スペック)の影響によって己の起源を自覚しました。起源は『畏怖』と『逃避』の二つ。
※黒の騎士団全員の情報を得ました。また、ルルーシュたちの作戦を把握しました。
※サザーランドは手と足の部分が多少腐食して稼働率が下がりましたが、まだ動くかもしれません。
損傷の程度はのちの書き手にお任せします。
※コクピットからの脱出時に忍びの緊急脱出装置@戦国BASARAを使用しました。
◇ ◇ ◇
眼前を埋め尽くす圧倒的な死の気配。
男の掛け声と共にそれらは飛来する。
男の狙う先には一人の少女。
すなわち、両儀式。
その式はこの状況にあってまだ戦意を高く保っていた。
「ふっ……!!」
式が動く。
それも、射出された剣が届く”前に”。
やがて到達した剣閃は先を読むかのような式の行動により、ことごとく避けられていく。
終盤に至ると的確な回避ではなくなっていくが、式に致命傷を与えることはなく、結局は肌を数回浅く斬ったのみに終わる。
命の危機が去ったのと同時に式は眼前の敵を打ち捨て、悲鳴が聞こえた方向へ走る。
そこに待ち受けていたのは蒼崎橙子”らしきモノ”。
「式か。戦いを捨ててくるとはお前らしくないな」
「秋山はどこへ行った」
「ああ、アレなら逃げたよ。目的地は決まっているのか、一目散に北西へな」
澪が逃げていったとする方向を指差す荒耶。
その方角はホバーベースがある方向であり、式も澪が逃げるのならその方向だろうと納得した。
そして、式は目の前の”誰か”に対してさらなる問いを出す。
「……それで、お前は誰だ」
「おいおい酷いじゃないか、式。私の顔を忘れ―――」
その直後、荒耶は振り切られた刀を避けていた。
「……何のつもりだ?」
「生憎、お前じゃあいつの嫌な感じを再現する事なんか出来ない」
「フッ、奴も嫌われたものだな」
魔術師という人種はどこかが破綻している場合が多い。
蒼崎橙子もその例に漏れず、気に入らない相手を一人除いて全てぶち殺した事績のある人物である。
そんな人物をトレースするのは荒耶を以てしても、無理が生じるというものだった。
「やっぱり生きてたんだな、荒耶」
「さすがにお前には気付かれるか、両儀式」
「色々小細工してるみたいだが、ここでまた殺してやるよ」
「フン、その心意気は買うが、私一人に固執していていいのか?」
「……ッ!!」
思わせぶりな言動をする荒耶をよそに、式は殺気漲る後方へ振り返る。
そこには高く跳躍する士郎の姿。
「PHANTOM DIVE Blade Works―――!!」
「チッ……!!」
さすがに受け切れないと判断した式は小さく跳んで後退。
士郎は重力に導かれるままに両手に携えた六爪を地に叩きつける。
「なんていう刀の使い方だよ、お前」
式の眼に映るは奇怪な刀の用い方をする男。
今は亡き独眼竜が用いた六爪流。
それを体現する最後の人間がここにいる士郎だった。
式から見るとそんな握り方で威力が出るものかと思うのだが、現にその刀を叩きつけられた地面は抉れていた。
何の冗談かとも感じられる。
「衛宮士郎、まずは刀を狙え。そこの女は刀がなければ弱体化する」
「……分かった」
式が脳内で六爪流に突っ込みを入れていると、荒耶が士郎に助言する。
式との再戦の機を期した荒耶は式について入念な調査を加えている。
これも式を制する上での策の一つである。
士郎は味方と考えている荒耶からの助言に素直に頷き、得物狙いへ目的を変える。
(さすがにこの状況は面倒だな……秋山も退いたみたいだし、オレもこの場を離れるかな)
荒耶と士郎が組んでいる事を理解した式はここからの脱出を図ることにした。
士郎一人ですら全力を出さないと討ち果たせそうにないのに、荒耶まで介入してくるとあっては式といえども勝利は難しかった。
「後退は許さんぞ、両儀式」
だが、いざ退こうとした式の後ろを鉛玉が数十発ほど飛来していく。
飛んでくる方向を見れば、そこには澪の手から離れたミニミ軽機関銃を設置してトリガーを引く荒耶の姿。
「ここでお前を逃がすわけにはいかんな、両儀式。大人しく衛宮士郎と戦え」
「何を考えてるんだ? 今、ソレでオレを狙えば殺せたじゃないか」
「お前をただ殺すだけでは根源には到達できん」
「またそれか。魔術師って連中はよくもまあ飽きないな」
「お前に魔術師の悲願はわかるまい。そら、無駄話していていいのか?」
またも示唆する荒耶。
言われるまでもなく、式は眼前の敵に少したりとも油断はしていない。
六爪流となった士郎は今まででも最強の状態―――
「うおぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!」
「ふっ……!!」
再度繰り返される剣閃の応酬。
状況は先程までと変わらず、投影しては式が避け、さらに斬りかかっては得物を殺され、その隙を突こうとする式を新たな投影で牽制する。この繰り返しだった。
しかし、この繰り返しは回数を増すごとに速さを増して行き、すでに常人には全く反応できない領域まで加速していた。
その様子を鋭い目付きで見つめる荒耶は両者の速さ・立ち位置を勘案した、自身に有利な状況を待ち続ける。
そして、その状況は訪れた。
「衛宮士郎、私に策がある。大技を使え」
そう言い放つや否や、荒耶は再度弾を撃ち始める。
それは式が士郎の投影に対して体勢を立て直そうとした時の事だった。
「くっ……!!」
式は自分が進もうとしている方向に死があることを直感して、無理に大地を踏みしめる。
そのおかげで体勢を立て直すどころか、むしろ崩れていってしまう。
「WAR DANCE Blade Works―――!!」
そこに士郎による竜の乱舞が襲いかかる。
後ろには圧倒的な制圧力を誇る無数の銃弾。
前には剣に特化した魔術師による六爪流の爪撃。
この絶体絶命な状況においても、式はひるまず前に出る。
「「……ッ!!」」
交錯する刀。
そこから決定的な破壊音が奏でられる。
交錯を終えて離れた式の手元には折れた九字兼定が握られていた。
あの一瞬、体勢を崩しながらも式は迫る士郎の剣閃に対応して、竜の爪を殺していった。
刀を持ち、生死の境目に立った式ならば、これほどの事でも不可能というわけではない。
しかし、英霊に近い速度まで達するようになった士郎の攻撃を前に、全てを殺しきることが出来なかった。
それ故に生まれた鍔迫り合い。
それだけならば九字兼定が折れることはなかっただろう。
だが、九字兼定にとって不幸だったのは、敵がアンリ・マユをその身に宿した士郎だということ。
絶えず刀から放出される瘴気に九字兼定はその刀身を腐らせられ、ついには折れてしまう。
九字兼定が折れた勢いを利用し、式は上手く士郎の攻撃をいなす。
後方を顧みれば、機関銃の弾は尽きたのか、すでに鉛玉の雨は止んでいる。
式はそのまま大きく間合いをとってデイパックから次の得物を取り出―――
「はあぁぁぁぁぁ!!!!」
「チッ……!!」
せない。
さすがに取り出そうとする隙を見過ごす訳も無く、士郎が前に出る。
刀を失った式では、士郎の反応速度には到底ついていけない。
左手に持っていたデイパックを薙ぎ払われ、デイパックが遠くに飛ばされていく。
しかし、この一瞬の間にもデイパックの中から柄らしきものを掴んでいた式は迷うことなくそれをデイパックから引き抜いていた。
「よりによってこれか……」
式がデイパックから引き抜いたもの。
それは期待していた刀ではなく、ルールブレイカーという短刀だった。
もっとも、長さのある日本刀を引きぬく余裕はなかったとも言え、得物になるものを取り出せただけでも僥倖と言えた。
刀でない以上、式の戦闘力はガタ落ち。
九字兼定がない以上、結界も使える。
最早、迷う余地なし。
荒耶はこれを機として、最後の勝負に出る。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2010年10月06日 17:14