きっかけは、偶然に過ぎなかった。


第七回定時放送が開始される、その少し前のこと。
何の変哲もないどこにでもありそうな路地を、平沢憂は一歩一歩踏みしめるようにゆっくりと歩いていた。

そんな憂の十メートルほど前にある角を曲がって現れた枢木スザクは、
どこかで着替えてきたらしく、それまでの服とは違う白いパイロットスーツに身を包んでいた。
スザクの後ろには、彼に付き従うかのように歩く黒猫と、その黒猫のそばでちょこまかと動く子猫の列。

「……ぁ」

突然現れたスザクに、憂の足が止まる。
憂の足を止めさせたのは、『怖れ』という名の感情だった。

その怖れが、スザクに起因するものではなく
彼に対し何もしていない、何もできてない、自分自身に原因があるのだということを、憂は自覚していた。
それでも――だからこそ。
憂は、スザクが怖かった。

スザクがちらりと憂のほうを見る。
だが、二人の目が合うことはなく、次の瞬間にはスザクは何事もなかったかのように歩き出していた。
猫たちがそれに続き、スザクの姿を見つめていた憂も少し遅れて歩き出す。
二人の目的地は同じ方角。
自然と、憂がスザクについて行くような形になってしまう。

分岐点にさしかかる度、憂の頭に『遠回りをしてでも彼と違う道を行こうか』という考えが過ぎる。
そしてその度に、憂はスザクと同じ道を行くことを選んだ。

猫二匹を連れたスザクと、その十メートルほど後ろを一人で歩く憂。
小さな公園の入り口に設置された時計は、放送が始まる二十分前を示していた。

(……あれ?)

信号機の無い横断歩道を渡り切ったところで、憂はふと、今の状況に疑問を持った。
前を歩くスザクとの距離が、先ほどからほとんど変わっていないのだ。
普通に歩けば、身長が高く男性であるスザクのほうが自分よりも速いだろうということくらい簡単に想像できる。
まして、今の憂は普段よりもゆっくり歩いている。
だが、二人の距離は変わらない。
憂がアスファルトがめくれ上がった箇所を避けた時に少し距離が開いたが、すぐに元に戻る。
距離が開かないよう、スザクがわざと調整して歩いているのでない限り、こうはならない。
ならばそれは、何のために――

憂がそこまで考えた時だった。
それまで憂のことなど見向きもしなかった子猫が急に振り向いたのは。

「えっ……」

スザクに、というよりはスザクの後ろを歩いていた猫・アーサーにくっついていた子猫は、くるりと向きを変え、
駆け寄ってきたかと思うと、憂の足元にちょこんと座り、憂を見上げてくる。
警戒心はない、「遊んで」と言わんばかりの視線に、憂は躊躇いがちに子猫を抱き上げた。
両手で抱いて支えきれない程ではないけれど、今の憂にとっては楽に運べる軽さでもない。
小さな猫は、憂の腕の中で、確かな重さを伝えてくる。
その重さは苦しいくらい優しくて、痛いくらいに温かい。

腕の中の子猫の頭を撫でた後、子猫に向けていた視線を少し上げて
そこで憂は初めて、振り返ったスザクが自分を見ていることに気がついた。




    ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





        COLORS / TURN 1 :『Continued Story』





                ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇       








「……っ」


完全に猫に意識を取られていた憂は、スザクに見られているという、たったそれだけのことで
固まって、立ち尽くしてしまっていた。
『負い目』。どうしようもないことを、どうすればいいのか分からない。
そんな感情が渦を巻いている。
スザクはそんな憂のほうへと歩を進め、それまで縮まることのなかった距離が三分の一程度になったところで立ち止まった。

「平沢さん」

短くはない沈黙の後、スザクが口を開く。

「気になってたんだけど」
「あ、あのっ、すみません。別に後をつけてたわけじゃないんです。私もあっちに用があって」
「もしかして、その子のこと知ってるのかな」
「……え?」

それは憂にとってはあまりにも唐突で、予想外の問いだった。
質問の内容、スザクの言う「その子」が憂の抱いている子猫のことだということを理解するのにさえ、数秒を要した。

「えっと……知ってる猫かも、しれません。
 違うかもしれないけど……一回しか会ったことないから、自信はないです」

そう答えてもスザクからの反応はない。
こうして一度話してしまうと、僅かな沈黙さえもが怖くて、憂は耐えきれず言葉を繋ぐしかなかった。

以前、友達が友達から預かった猫でなんです。
その友達……えっと、猫を預かったほうの友達が、預かった子猫の具合が悪いって、電話してきて……。
それで様子を見に行ったんです。
で、えと……あ、猫は大丈夫でした。毛玉を吐いてただけだったんです。その友達は……猫を飼ったことなかったから知らなくて……」

「猫の名前は?」
「……は『あずにゃん2号』って。……あ、『あずにゃん』っていうのは猫を預かった友達のことで、
 その子は預かってただけだから『あずにゃん2号』っておかしいんですけど……でも、私もそう呼んでました」
「そう」

それだけ言ってスザクは子猫へと視線を向ける。
つられて憂も子猫のほうを見る。
たった二文字の短い言葉で、スザクは会話を切り上げてしまった。……と、憂が思った瞬間

「……あずにゃん2号」

スザクが、子猫へと呼びかけた。
子猫はスザクの方をみたものの、答えるでもなくスザクの方へ行こうとするでもなく、憂の腕の中でじっとしている。
それ以上は何をすることもなく、スザクは歩き出したが
スザクの顔に、ほんの一瞬、僅かに寂しそうな表情が浮かんだのを、憂は見逃してはなかった。



スザクの背中を見ながら、憂は迷う。
憂はスザクに対して、いろんな想いを抱えている。
言わなければならないことも、聞かなければならないことも、きっとたくさんあるはずで
だが、それが何なのか、自分の中で未だ整理はついていない。
でも時間は容赦なく流れ、戦いの時は迫っている。
死ぬかもしれない。生きていてもまた会えるという保証はない。次の機会なんてものは、ないかもしれない。
だから憂は、意を決してスザクの後ろ姿へと声をかけた。

「あのっ……枢木さん!」

スザクが足を止め、憂の方を振り返る。

「……ありがとう……ございました」
「何が?」
「ルルーシュさんの……カセットテープの、こと……お礼、言ってなかったなって……」
「あれは元々、ルルーシュが君に宛てた、君の物だ。僕はお礼を言われるようなことなんて何もしていない」
「でも枢木さんが渡してくれたから、私は受け取ることができたんです。
 だから、枢木さんにとってはそうじゃなくても、私にとってはお礼を言うようなことなんです。
 ……どうもありがとうございました」

そう言って、憂は勢いよく頭を下げる。
そのままの姿勢で十秒ほど待ってみたものの、何も反応がないのでゆっくりと顔を上げてみれば
スザクは憂にもわかるくらいに、「答えに困っています」という表情を浮かべていた。

「……平沢さんに渡したラジカセの中にもう一本、カセットテープが入ってたと思うんだけど、聞いた?」

そしてようやくスザクから出てきた言葉は、憂に対する返答ではなかった。
思いがけない言葉に、憂は息を呑む。

「……聞いてません、けど…… あ、もしかしてあれは、枢木さんの」
「違う。あのラジカセはファサリナという人の持ち物だった。

彼女が死んだ後、荷物の整理をした時に僕が持つことになったけど、その時点ですでに入っていた物だ」

「そう……そう、ですか…… ずっと、『あのラジカセ』に入って……」
「僕の知る限りはそうだ。僕にとっては必要のない物だから、いらないなら捨ててくれて構わない」
「捨て……ません」
「そう」
「え……あ……あの、ほら、別に、邪魔になるような物でもないですから。だから……あの……」
「どうするかは、平沢さんに任せるよ。あれはもう、君の物だから」

二人の会話は、それで途切れた。
スザクは再び歩き出し、その後にアーサーが続く。
少し悩んで、憂はスザクの後ろではなく、隣りに並んだ。

数分も歩けば、周囲は徐々に、住宅街から戦いの跡地へと様相を変えてゆく。
崩れた塀。割れた窓ガラス。壁の一部を失くした家。

足元も徐々に悪くなっていく。
アスファルトに亀裂が入り、瓦礫が散乱する道を行くのは、憂にとっては大変なことだった。
だが、憂はスザクに助けを求めることはせず、スザクも憂に手を差し延べることはしない。
ただ、憂とスザクの距離が変わることはなかった。

そうして、二人は並んで、三叉路へと辿り着く。
憂の足が、そこで止まる。
それに気づいたスザクも数歩先で足を止め、憂の方へと振りむいた。

分かれ道。右へ行けばランスロットが、左に行けば――

「私は、左へ行きます。私には、リボンズって人が最後の戦いを始めてしまう前に、まだ、やらなきゃいけないことが、あるから…………枢木さん。
 別れちゃう前にひとつだけ、聞いてもいいですか?」

風が吹いた。
砂埃が舞い上がる。
スザクからの答えは無く、それでも憂は、問いを投げた。

「ルルーシュさんは枢木さんにも、ギアスをかけたんですか?」

風が止む。
沈黙が落ちる。
静寂に重さなんてないはずなのに、憂ははっきり、重いと感じていた。
潰されそうになる。
それでも、訊いたのは自分だから、スザクが答えてくれるまで、
あるいはスザクに答える意思が無いのだとわかるまで、この重さに耐える覚悟はあった。

「うにゃっ」

音を発したのは、憂でもスザクでもなく、憂の腕の中の子猫。
自分の腕から抜け出そうともがく猫を見て、憂は初めて、自分が腕に力を入れてしまっていたことを知る。
憂はごめんねと子猫の頭を撫でて、地面に下ろした。
地面に降りた子猫が、スザクの傍らにいるアーサーの近くまで行ったのを見届けて立ち上がった憂の耳に

「―――――ろと」

危うく聞き逃してしまうくらいの声が、届いた。

「え……?」

思わず聞き返す。
半ば諦めかけていたスザクからの答えが、そこにある。



「ルルーシュは僕に、『生きろ』と命じた」


――生きろ。
スザクにかけられたギアス。
そのギアスの意味が、重さが、ゆっくりと憂の心に滲む。

「命じたって…… それ、命令じゃなくて、お願いじゃないですか」

そうして憂が呟いたのは、彼女が抱いた素直すぎる感想だった。

「お願い?」
「はい。……ルルーシュさんのギアスは、願い、なんですね」
「違う」

憂の言葉をスザクは即座に否定する。
憂にとってそれは、スザクが初めて自分に対して向けた、明確な意思表示だった。

「ルルーシュのギアスは、相手の意思を捻じ曲げる卑劣な力だ。
 今まで、ルルーシュはギアスの力で多くの人を傷つけ、命を奪った。罪のない人たちに犠牲を強いた。
 君だって、彼のギアスの」
「知ってます。それは……知ってます……私には『裏切るな』ってギアスをかけてたって。
 私は……あんなこと、したくなかったのに……させられて……」
「そこまでわかっていて、君はあの力を『願い』と呼ぶのか?」

スザクの問いへの答えに、憂の中に迷いは無かった。

「はい」

だから、はっきりと答えられる。

「ルルーシュさんは、優しいから」

自分は何も知らないのかもしれないと、憂は思う。
少なくともスザクよりはルルーシュのことを知らないだろうと、憂は思う。
でも、それでも、憂は信じていた。

「私にかけたギアスも、自分が生き残るためじゃなくて、誰かのためだったってわかったから」

ルルーシュを
ルルーシュの優しさを
自分の中にあるルルーシュへの想いを、信じていた。

「彼は、優しくなんかない」
「優しかったですよ、ルルーシュさんは」

自分のことには、なにひとつ自信は持てない。
それでも憂は、自分の想いを、必死に紡ぐ。

「きっと、これは間違った方法で…… 枢木さんの言うとおり、ギアスは卑劣な力なのかもしれないけど……
 でも、それでも……誰かのためだったなら、それは願いなんじゃないかなって。
 『生きろ』なんてギアスかけちゃうくらい大切な人のためだったんだってわかったら
 私はもう、恨んだりとか、怒ったりとか、できないです……」

憂は、泣きそうな顔で笑った。
涙は耐えた。
スザクの前で――ルルーシュが生きてほしいと願った人の前で、泣きたくはなかったから。

「……ここで死んだルルーシュに、本当に『生きろ』と願われたのは君だ。
 ギアスなんかじゃなく、彼は最後の最後で、自らの命でそれを示した」
「命で示したって言うのなら、それは、枢木さんに対して、ですよ」
「いや、平沢さ――」

スザクが言いかけた言葉を、憂は首を横に振ることで遮る。

「やめましょう、譲り合うようなことじゃないですよ。
 ……枢木さんは、ルルーシュさんは私を残したんだって言ってくれましたよね。
 だから今度は私が言います。
 ルルーシュさんは、枢木さんを残したんです。枢木さんに生きててほしいって、願ったんです。
 私と枢木さんが生きてるのは、ルルーシュさんが、そう願ったからです」

憂は、スザクを真っ直ぐに見ていた。

「私は、そう思います」

ルルーシュを殺した事実が変わらない以上、スザクに憎まれて当然だと思う。
だけど、それも受け止められる気がした。
ルルーシュが生きてほしいと願い、
自分が迎えに行った時、ルルーシュのために迷わず来て戦ってくれた人の想いなら、
それがどんなものでも受け止めたいと思った。
憂はもう、スザクのことを怖いとは思わない。

「私がルルーシュさんの願いに気づけたのは、枢木さんが届けてくれたからですよ」

そう言って、憂は微笑んだ。







◇  ◇  ◇







『――――それじゃあ、時間になったから、第七回定時放送を始めるわ』


放送が始まった時、スザクは独りだった。
スザクは結局、憂に何も言わなかった。
憂は少し寂しそうに、スザクにお辞儀をして、一人、自分の選んだ道を去り――
そして、それを見送ったスザクだけが、その場に立ち尽くしていた。

「リボンズと戦う前に、やらなきゃならないこと、か……」

ぽつりと呟き、そしてスザクも歩き出す。
一分と経たず、周囲はもはやどこが道路なのかもわからないほどになったが、構わずに進み続けた。
放送は、聞く気にもならない連絡事項の後、これまでの死者の名を一人ずつ読み上げてゆく。

この島で出会って、だけどもうどこにもいなくなってしまった人たちの顔が、スザクの脳裏に浮かんでは消えてゆく。

彼らの言葉が向かう先は『誰』だったのか――
彼らの想いを受け取るべきは『誰』だったのか――


『――私はここで、誰かの『願い』を、ただ待っている』


スザクは、ランスロットと、いつの間にかその足元にいた二匹の猫の前を通り過ぎる。


『――――これで、第七回定時放送を終了するわ』


そして、放送の終わりを――つまりは戦いの始まりを、告げる言葉と共に。
大破したサザーランドの傍らで、足を止めた。





◇  ◇  ◇




「………………ルルーシュ」


声をかけても答えなんてあるわけがないことを、僕はちゃんと知っていた。
僕の目の前で彼は死んで、今ここにあるのはただの金属の塊。
仮に無理矢理ハッチを抉じ開けたところで、ルルーシュの死体だとわかる物が残っているのかさえ怪しい。
でも、他に何も無いんだからしょうがない。


「……随分と、慕われたものだよね。平沢さん、君のこと優しいって言ってたよ?」


それが、ただの彼女の勘違いなのか、
ここにいた君は本当に優しかったのか、
僕がルルーシュの優しさを知らなかっただけなのかはわからない。
二つ目はもはや確かめる術もない。
三つ目ならば、もしかしたらまだ、確かめられるかもしれないけど。


「ギアスのことも、『願い』だってさ……」


平沢さんがそう言った時、僕は自分の中にある感情を抑えつけるのに必死だった。
僕の知るルルーシュがギアスで何をしたのか、
僕が自分にかけられたギアスで何をしたのか、洗い浚いぶちまけてやりたかった。

それをしなかったのは、彼女に対する思いやりなんかじゃない。
僕の知るルルーシュとここにいたルルーシュは別の存在かもしれないからと思い直したわけでもない。
ルルーシュを信じる平沢さんを傷つける自分を、見たくなかっただけだ。


「ギアスは『呪い』だ。あんな力で一方的に押しつけられたものを『願い』なんて呼んでたまるか!!」


ああ、そうだ。
俺はギアスを許せない。
ギアスを使って人を駒のように扱ったルルーシュを絶対に赦さない。絶対に赦せない。


「……ルルーシュ、俺は君が憎い」


――それなのに、どうしてだろう。

俺の中はぐちゃぐちゃだ。

でももう、どうしようもない。
これ以上、目を背けることはできない。
逃げられない。
当たり前だ。逃げ場なんて、最初からどこにもなかったんだ。


「僕が君を赦す日は、永遠に来ない」


泣いたのも。
笑ったのも。
迷ったのも。
選んだのも。
祈ったのも。
悔やんだのも。
逃げたのも。
進んだのも。
死にたかったのも。
夢を見たのも。
愛したのも。
憎んだのも。

全部、僕だった。
全部、『枢木スザク』の想いだった。




「でも……俺、は…………」


僕は『枢木スザク』が嫌いだった。
だけど僕は結局、どんなに足掻いても『枢木スザク』以外の何にもなれなかった。
『枢木スザク』なんて存在は、消えていいと、殺したいと、本気で思った。

だけど、僕が出会った人たちが
僕のことを心配したり、必要としてくれた人たちが見ていたのは、いつだって『枢木スザク』だった。
彼等の想いは、『枢木スザク』が受け取るためのものだった。


「僕は…………」


想ったのも、想われたのも、いつだって『枢木スザク』だったんだ。

だから言える。
僕は生きているから、僕は枢木スザクだから、――――だから、思える。


「……僕は、ルルーシュが死んで、悲しかったんだ」


殺したいほど憎い相手が、死んだら悲しい相手だなんて。
こんなに酷い矛盾はない。
だけど消せない。抱えて進むしか、僕にはできない。

デイパックから、カセットテープと自販機で買った騎士服を出して、サザーランドの傍の瓦礫の上へと置いた。
ルルーシュのメッセージと、ユフィの血の付いていない白い騎士服。
どちらも、僕の帰る場所には存在しない物だ。持って帰るわけにはいかない。

「行こうか」

近くにいたアーサーを抱き上げるつもりで伸ばした手を、僕は途中で止めた。
僕の考えていることがわかったのか、それともアーサー自身の判断なのか
僕の手に頬を摺り寄せるなんてらしくないことをして、僕を見上げた後、
くるりと背を向け瓦礫の上へと飛び乗って騎士服の隣で丸くなった。
その隣で、アーサーを真似るようにあずにゃん2号も丸くなる。

ここにいるアーサーが僕とは違う世界のアーサーなのだとすれば、一緒に帰ることはできない。
だからここでお別れということなんだろう。

「アーサー、……一緒にいてくれて、ありがとう」

僕もアーサーに背を向ける。
そしてもう一度だけ、サザーランドを仰ぎ見た。


「僕がこの島で捜していたのは君だった。この島で、僕が守ろうとしたのは君だった。
 君の推測どおり、君と僕の知るルルーシュが別人だったとしても、この事実は変わらない」


君は、何を為す者だ?―― あの時、僕の問いに答えたのは、ここで死んだ彼だった。
生きろ――この島で、僕にそう命じたのは、ここで死んだ彼だった。


「だから、この島にいる間は、僕は君のナイトオブゼロだ」


見上げた空には、翼を広げたガンダムが見える。
そしてその向こうには巨大な塔――空中要塞・ダモクレス。
この島での最後の敵の姿を前に、僕は誓う。



「――――君の命を、枢木スザクは必ず果たす」










【 TURN 1:『Continued Story』-END- 】





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最終更新:2015年03月07日 22:41