施設Xを追え ◆BXnAdYmV9c



「あれが死者の眠る場所か」
窓の外を流れる光景を横目にルルーシュはそう呟く。
月に照らされたそこに見えるのは、数件の民家と寂しげな墓地だ。
(あの墓や民家の形状といい、さっきの駅の様子といい、やはりここは日本なのか?
 いや、それよりも。なぜあんな場所をわざわざ地図に記している?)
もちろん、詳しく調査しなければなんとも言えない。
だが、目に映る限りではただの墓場にしか見えなかった。


(参加者に配られた地図――少なくとも俺に配布された地図には大別して38の施設が記されていた)
そのうち範囲の大きいものや地形、エリア自体を示しているのが9ヶ所。
火口、トンネル、廃村、砂浜、吊り橋、団地、宇宙開発局、工業地帯、倉庫群、堤防。
名前は表記されていないが駅が5ヶ所、それが今現在乗車中の電車が通っている線路で結ばれている。
そして残りがそれらに含まれない24ヶ所の施設だ。
(さらに、それが大きく2種類に分けられる)
すなわち名称からは何の施設か想像できない場所。
心霊スポット、敵のアジト、憩いの館、神様に祈る場所、死者の眠る場所、象の像。
そして残り18ヶ所。
学校や太陽光発電所に代表される、それがどういう場所か大体予想がつく施設である。

(さて、ここまで考えて出てくる疑問が3つ)
一つ目は、何故これらの施設名を地図上に記したかだ。
やはり、一番の理由は参加者が現在地を知るためのランドマークとしての役割だろう。
どう好意的に見ても、この地図は正確性が欠けているとしか言い様がない。
これを見てわかるのは、簡単な地形と島全体が49のエリアに分けられている事くらいだ。
施設名の表記が無ければ、道に迷い、禁止エリアとやらに突っ込む者が続出する可能性がある。
そして、おそらくそれは帝愛の本意ではないだろう。
彼らの言動やルールとして示された内容を見る限り、禁止エリアは焦燥感を煽る為の脅しでしかないのだ。
無論、それ以外にも何らかの理由があるかもしれないが。
(それは次の放送時――禁止エリアが配される場所が明らかになってから考察するとして……)
ここで重要なのは帝愛が求めるのは参加者同士の殺し合いであり、迷走の挙句の自爆ではないという事。
(事故死では娯楽にならない求めるのはあくまでも参加者同士の諍いという事か……虫唾が走るな。
 だがそう考えれば、例えば火口や間欠泉、線路が地図に記されているもう一つの理由も想像がつく)
例えば有毒ガスの噴出している可能性のある火口や間欠泉。
さらに、今まさに電車が往来している線路。
まったく皮肉な事ではあるが、それらが記されている理由は参加者の安全のため……
あるいは逆に、武器が無くとも他者を殺害できる場所としての表記なのだろう。

(だが、それだけという事は無いだろう)
ただ、地図上の目印としてのランドマークというだけでは無く、
参加者が集まる――あるいは参加者を集める目標という意味でのランドマークというのもあるだろう。
けれども、それだけの為に39もの施設を表示するだろうか?
それに城や学校は理解できるが、なぜ廃ビルなのだろう?
周囲と相当の違いが無い限り、現在位置の目印にするには明らかに不向きだ。

まだ疑問はある。
(なぜ、わざわざ遠回しな表現をする?)
心霊スポットや象の像など比喩的、あるいは暗示的な表記をされた6ヶ所の地名。
死者の眠る場所など、ただ墓場と明記するわけにはいかなかったのだろうか?
また、象の像以外の5ヶ所が全て北部に集中しているのも何か意味ありげではある。
もしかすると、この場所――仮に施設群Xと名づける――だけ地名をつけた人間が違うのかもしれない。
(あるいは、この6ヶ所に何らかの秘密があるのか?)
ありえるとすれば、殺し合いを促進させるための強力な武器や他の参加者の情報等だが……
もちろん、そういう考えに至った者に対する帝愛の罠の可能性もあるし、
相手にそんな意図は無く、ただ適当に名前を付けただけの可能性も高い。
さらに逆転の発想として、その6つのXを除いた全てに何か隠してあるという事だって考えられる。
(さすがに、そこまで考えると際限がなくなるがな)
などと、ルルーシュが考えているうちにも電車は走り続け、窓の外には民家の数が増え始めていた。

「そろそろ停車駅か」
そう呟きながら、ルルーシュはちらりと上を見やる。
電車の天井、あるいはその上からは何の物音も聞こえてこなかった。


時間は十分ほど前に遡る。
B-4の駅を発車してすぐに、激しい物音が上から聞こえてきたのだった。
まるで大きな物が落ちてきたような音にルルーシュは一瞬驚いたものの、
その後はたいした反応も無かったので様子を見る事にしたのだった。


(あの時は、何かが電車の上に飛び乗ったのかと思ったが……違ったのか?)
それとも、飛び乗ったはいいが速さに耐えられず転げ落ちたか、はたまた自ら飛び降りたか。
そんな事を考えながら傍らのミニミへと目を移す。
それがすぐに手に取れる場所にある事を確認しながら、ルルーシュはすぐに思考を再会した。

(今までの推測を踏まえて……これからどう動く?)
いろいろと考えられるが、大別して出てくる案は5つ。
D-6の駅で降り線路沿いを北上、死者の眠る場所と神に祈る場所を調査するか。
または当初の予定通りにF-5で降り、宇宙開発局の探索及び拠点の確保を行うか。
もしくはF-3で降車し、一番近い調査対象――象の像を調査しに向かってみるか。
はたまた、このまま終点のD-2まで行って憩いの館まで足を伸ばしてみるか。
あるいは、B-4まで戻り施設群Xを徹底的に洗うか。
どの案にしても、まず重要視すべきは時間である。
これらを本当の意味で自由に調査できるのは、残り数時間の間と見積もったほうがいいだろう。
それ以降、すなわち主催からの最初の放送より後は禁止エリアという制限が生まれるからだ。
だから、時間は無駄には出来ない。
調査対象を取捨選択しなければならない。

(そのためにも、まず考えるべきはこの電車の移動時間についてだが……
 さっきの駅でダイヤを確認しなかったのは、痛いミスだな)
他者との接触に対する警戒と停車時間に対する不安で、駅の調査を見送ったことが悔やまれる。
次の停車時間も同じ程度ならば、ダイヤを確認する余裕くらいはあるだろうが。

(まあいい、進行速度から予測だけでもしておこう)
まず、先ほど考えた通りこの列車が停まる駅は全部で5つである。
この後すぐにD-6に到着、続けてF-5からF-3。
D-2で終点となって、そこからまた逆に引き返し最終的にはB-4に到着。
その往復を自動運転で繰り返すのが、この列車のだいたいの走行予定だろう。
さて、B-4からここまでは結構な時間がたっているように感じた。
地図から推測すると、D-6以降の区画はこれより時間は短そうだが、
停車時間等を踏まえて考えてみる片道はそれなりの時間がかかるだろう事が推測できる。
その推測を元に先ほどの案を精査してみると……


(とりあえず、このままB-4に戻るのは論外だな)
確かに例の施設群が北部に集中しているのは気にはなる。
が、山林地帯よりは都市部の方に人は集まるだろうし何より時間がもったいない。
(同様の理由でD-6の案も薄い……)
B-4よりはましだろうが、それでも死者の眠る場所などまで引き返すには時間がかかる。
さらに似たような理由でD-2も優先度は低い。
そこから憩いの館へはいけない事もないが、少し距離が離れているからだ。
ただ、この付近には施設群Xには含まれてはいないものの、気になる場所である廃ビルが存在している。
もしD-2で降りるなら、調査対象を廃ビルのみに絞るべきだろう。

(やはり、F-5かF-3……宇宙開発局か、それとも工業地帯か)
先にも考えた通り、宇宙開発局に向かえば首輪解除に有用な機材などが発見できるかもしれない。
機材に関しては工業地帯でも発見はできるだろうが、開発局の方が充実しているだろう事は予想できる。
さらに言えばルルーシュと同様に首輪の解除を考える技術者等も、この地区に集まる可能性が高い。

対して、F-3駅に向かう利点は施設群Xの1つが容易に調査できるという事だ。
例の施設群の中で、ただ1つだけ南部に存在する象の像。
どういう施設かは不明だが、それゆえに調べてみても損は無いだろう。
(まさか、本当に象の像が建っているだけ……では無いと思うが)
それに、この付近には気になる場所がもう1つある。
それはF-2の孤島にある、ただ一言遺跡と表記された場所。
島内に無数に存在している施設の中で、唯一そこへと至る道が存在しない施設である。
遺跡に渡るための船があるのか、それともそれ以外にルートが存在するのか。
(そもそも、このような場所をどうして地図に明記する?)
例えば、同じ遺物として括るならば、B-3に存在する城やD-4の円形闘技場などがある。
だが、それらは先に推測したように二重の意味でのランドマークとして機能を期待できるだろう。
しかし、この遺跡のように他から切り離された、目指すだけでも労力が必要となる場所となると話が別だ。
はっきりとした目的意識でも持たないかぎり、このように隔離された場所に進んで向かう者は居ないだろう。
(いや、違うな……単なる隔離された孤島なら、むしろ篭城を考える参加者がでてくる可能性も……
 だがその場合奴らが禁止エリアを指定すれば……ああ、そうすると逆に発電所一帯を隔離してしまうのか)
禁止エリアを配する目的が殺し合いの促進なのだとすれば、
参加者の逃げ場を失くす配置はあちらとしても避けたいはずである。
だからこそ、少しでも多くの動きがあるように、地図上にランドマークを配置した。
(つまり、もともとそこには遺跡なんてなかった……? いや待て、そう決め付けるのは早計……)



と、不意に身体に軽いGを感じルルーシュは顔を上げる。
窓の向こうにはすでに民家の姿は無く、無数のビル群へとその姿を変えていた。
(……何にせよ、まずは他の参加者との接触だな)
結局の所、何をどう考えようと全てはルルーシュの憶測である。
どんなに推論を重ねようとあくまで机上の空論、脳内で展開された脆弱な論理でしかない。
(だが、まったく何も無いと言い切れもしない……調査してみる価値はある)
そう、これ以上の推測を進めるにあたって基礎となる物――つまりは情報が必要だ。
それが圧倒的に不足している以上、ルルーシュの考察は正しいと胸を張って言い切れるような代物ではないのだ。

「どう動くにしろ、やはり他者との接触が必要か」
電車がゆっくりと速度を落としていく。
その感覚に身を任せながら、ルルーシュは側に置いていたミニミを抱えあげた。
(さて、この先に居るのは鬼か悪魔か、それとも……)
電車が完全に停車した事を感じながら、危なっかしく立ち上がる。
「まあ、何が出てこようと、簡単に命を投げ出すつもりはないな」
ルルーシュの小さな呟きは、より大きな音にかき消される。
機械的な音をたて、自動ドアはゆっくりと開かれた。


【D-6/電車内/一日目/深夜】
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス反逆のルルーシュR2】
[状態]:健康
[服装]:皇帝ルルーシュの衣装
[道具]:基本支給品一式、ゼロの剣@コードギアス反逆のルルーシュR2、
    ウェディングドレス@機動戦士ガンダム00
[装備]:ミニミ軽機関銃(200/200)@現実
[思考]:スザクは何としても生還させる
0:駅にいるだろう参加者に対処
1:宇宙開発局へ向かい、そこを拠点に技術者を探す
  もしくは工場地帯へ向かい象の像や遺跡を調査
2:スザク、C.C.と合流したい
3:首輪の解除方法の調査
4:施設群Xを調査する?
5:撃っていいのは、撃たれる覚悟のあるやつだけだ!
6:他の参加者に会ったら『枢木スザクを守れ』とギアスを掛ける?
7:自分の生存には固執しない
[備考]
※R2の25話、スザクに刺されて台から落ちてきてナナリーと言葉を交わした直後からの参戦です。
 死の直前に主催者に助けられ、治療を受けたうえでゲームに参加しています。
※頭の中では様々な思考が展開されています。しかし、現時点ではどれも憶測の域を出ていません
※電車はD-6駅ホームに停車中です
※電車のダイヤについてはあくまでもルルーシュの想像です。これより時間が前後するかもしれません
※駿河と政宗がまだ上に居るかどうかは後の書き手氏にお任せします


【施設群Xと施設名に関する考察について】
※施設群X
 地図に表示されてる中で表記のおかしい(とルルーシュ主観で思われる)6ヶ所の事です
 (心霊スポット、敵のアジト、憩いの館、神様に祈る場所、死者の眠る場所、象の像)
 この場所には何らかの秘密があるかもしれないとルルーシュは考えています
※施設群Xより優先順位は低いですが廃ビルと遺跡も気になっています
※象の像が何らかの比喩表現だと考えています。実際に象の像があるとは思っていません
※遺跡はもともと孤島にあった物では無く、主催者によって作られた物かもしれないと考察しています


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042:電車男 ルルーシュ・ランペルージ 084:ポーカーフェイス(Poker face)


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最終更新:2009年11月23日 11:42