衣 龍門渕のロリ雀士 ◆56WIlY28/s
『バトル・ロワイアル』というデスゲームが開始され早数時間、未だ薄暗い森の中を歩く大小2つの影があった。
グラハム・エーカーと
天江衣、殺し合いには乗らないという共通の志により行動を共にすることになった2人は、現在とあるトンネルの入り口に立っていた。
「グラハム、これは……」
「あぁ、地図に載っているトンネルと見て間違いないだろう」
手に持ったデバイスと地図、コンパスを見ながら衣の問いに答えるグラハム。
彼らが今行っていること、それは『支給された地図が本当に正しいものなのかの確認』である。
「つまり、支給された地図は信用してもいいってことなのか?」
「いや、我々が地図に掲載されている名所に来たのはここがはじめてである以上、完全に信用することはできん。
だが、少なくとも主催者がゲーム中に参加者の行動に介入してくる可能性は低いと見てよさそうだ」
グラハムは主催者は首輪と支給品以外にも参加者に殺し合いを強制させる『何か』があるのではないかと、脳裏で遠藤と
インデックスの口から説明されたバトル・ロワイアルのルールをゲームが開始されてから何度も思い返していた。
その結果、彼が思い至った最初の諸説が『参加者1人1人にさりげなく異なった情報を教え混乱させる』というものであった。
たとえば、ルール説明時に参加者全員に共通して支給すると言われていた共通支給品。
これは、あくまでも『支給されているものが共通』なだけであって、その内容までは共通とは限らない。
もしかしたら参加者1人1人に支給された地図や名簿にはそれぞれに些細な違いがあり、そこから参加者の意見の食い違いなどを発生させ、参加者同士で強い協調性を持たせないようにしているのではないか……
そのため、衣と出会い行動を共にすることになったグラハムが最初に行ったことは互いの名簿と地図の確認であった。
が、これによりグラハムが打ち立てた最初の説は残念ながら間違いであったことが判明した。
衣の地図と
参加者名簿の内容もグラハムのものとまったく同じであったからだ。
ならば、と次にグラハムが打ち立てた諸説が『このバトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないか』というものであった。
これは、支給された地図の内容が実際の舞台とは差異があり、参加者が特定のエリアに集まりやすく仕向けられていたり、地図には載っていない隠されたフィールドがあるのではないかというものだ。
そしてグラハムたちは現在この説の正誤を実際に確かめるべく行動しているというわけである。
「さて、天江衣、君は次はどこに向かうべきだと考える?
先も言ったとおり、さすがに名所を1箇所回っただけでこの地図を完全に信用すべきかどうかを結論づけるのは私としてはできない。
となると、必然的に他の名所の場所も可能ならばあと数箇所は確認しておきたいところではある。
地図によるとこの近くに駅があるようだが、現在我々参加者は殺し合いの真っ最中だ。電車が運行しているとは考えにくい。
仮に運行していたとしても、それに乗車し移動するのは目立ちすぎるのではないかという危険性もある。
ならば、また少し歩くことになるが、この4箇所のうちのいずれかに我々は向かうべきだと思うのだが……どうだろうか?」
そう言ってグラハムは地図に掲載されている4箇所の名所を順次指差した。
B-3・城。
A-5・敵のアジト。
B-6・ギャンブル船。
そして、C-5・神様に祈る場所……
「う~む……」
その小さな身体に似合わないような大人っぽい声を漏らしながら衣は考える。
そして、数秒ほど悩むような模写を顔に浮かべた後、衣は結論した。
「ギャンブル船に行こう!」
「何故?」
普通の子供の口からはまず出されないであろうギャンブルという言葉。
その言葉が目の前にいる少女の口から何の躊躇もなく出てきたため、グラハムは思わず訳を問いただしてしまう。
「グラハムは衣に友達を作ればいいと言ってくれた。
それなら、衣はここでも今まで衣が友達を作ってきた方法で友達を作っていく!」
「……まさか、その方法がギャンブルだというのか?」
「麻雀だ! きっとここにいけば麻雀もできるような気がする!」
『麻雀』という言葉を聴いた刹那、グラハムはほんの一瞬の間だが「この少女の親は一体今までどのような教育をこの娘に施してきたのだ?」などと内心呆れてしまった。
実際は衣が麻雀が大衆娯楽として普通に親しまれている世界の出身者であったり、彼女の両親は既に亡くなっていたりするのだが、現在のグラハムにはそのようなことは知る由もない。
そして、その逆もしかり。
衣はグラハムが自分のいる世界からは数百年もあとの未来の世界の軍人であること、彼の世界では麻雀は大衆娯楽として親しまれていないことなどは現時点では知っているわけがない。
「……天江衣、私の記憶が正しければ、確か麻雀は4人で卓を囲んで行うものではなかったか?
人数が足りないし、何よりも私は麻雀のルールは知らないんだ」
「大丈夫だ、衣が一から教えてやるぞ!
それに、名簿を見る限り衣と同じ日本人もここには大勢いる。
きっと参加者の中には麻雀を打ちたがっている者もいるかもしれないし、そうではない者たちも衣が頼めばきっと対局してくれるはずだ!」
衣は高校生――アマチュアであるが、プロを下し大会で優勝した経験もある全国有数の実力者の1人である。
本人がマスコミ嫌いなこともあったが、それでも雀士たちの間では名前くらいはそれなりに知られていた。
そんな衣が「自分と対局してくれ!」と頼めば、きっと応じてくれる者は必ず現れるはず――というのが衣の考えである。
「グラハム、言われたとおり衣は衣の世界を作り出してみせるぞ!
衣の友達がいっぱいいる世界だー!」
そう言うと衣は善は急げとばかりに早速東の方角へ向かい歩き始める。
(とーか、衣はもう大丈夫だぞ!
これからはとーかの力を借りずとも、衣は自分の力で友達を作ってみせるから!)
今は亡き友人兼肉親であった少女に向けて心の中で誓い立てる衣。
一方、グラハムは、そんな彼女の後ろ姿を見ながら、「……子供を持つ親になった気分だ」と内心呟くのであった。
【B-4/東側トンネル付近/一日目/黎明】
【天江衣@咲-saki-】
[状態]:健康
[服装]:いつもの私服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(未確認)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:B-6・ギャンブル船へ向かう
2:そして麻雀をして友達をつくる
3:まずはグラハムに麻雀を教える
【備考】
※参戦時期は19話「友達」終了後です
※グラハムとは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※参加者は全員自分と同じ世界の人間だと思っています
【グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(未確認)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退
1:主催者の思惑を潰す
2:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける
3:地図が本当に正確なものかどうかを確かめるために名所を調べて回る
4:衣の友達づくりを手伝う
5:3と4を兼ねて衣と共にB-6・ギャンブル船へ向かう
【備考】
※参戦時期は1stシーズン25話「刹那」内でエクシアとの最終決戦直後です
※衣とは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※刹那・サーシェス以外の参加者が自分とは違う世界の人間であることに気づいていません
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
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最終更新:2009年11月13日 19:50