するがだてシャルトリュー  ◆zg9MHZIP2Q



猿と竜。
神原駿河(かんばる・するが)と伊達政宗(だて・まさむね)。
猿の悪魔『レイニー・デヴィル』の片腕を持つ女と、竜の二つ名を持つ片目の男。
出会った場所は大量の本の山。神原駿河が好む属性が余すことなく詰まった欲望の塊。
政宗が無一文と見なしたゴミを、彼女は一冊残らず己のディバッグに挿入している。

「しまった。ここに隠れていたのか。
 “奥州フットー!新ジャンル『勃て政宗』第三巻”。自宅に取り残されたと思っていたが。
 こんな事なら、まとめておいた他の巻をしまわずに置いておけば良かった――ああ、すまなかったな。
 この“奥州フットー!新ジャンル『勃て政宗』”は政宗受けモノとしては異例の作品なのだが……」

誰も聞いていないのに、勝手に語り始めたぞ。
神原一押しの同人誌。苦しいネーミングセンス。もしかして新ジャンルと独眼竜が掛け言葉になっているのか?
彼女には悪いが、こういう説明描写は大抵、大きく時間を浪費する割りに内容は無いようなので。

「ペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラ」

丁重にカットさせていただこう。

「……今や商業路線はおろかネットでもGET不可能の幻の品だ。全国の武将相手に日夜雄弁を振るう姿がそそるぞ」

草むらに隠れていた最後の一冊をしまいながら、神原は口元からダダ漏れていたよだれを拭く。
まるで赤子を孕んだ妊婦のようにディバッグをさする彼女は充実感でいっぱいだ。

「神原駿河、アンタただの雑魚じゃないな」

一方の政宗の表情は真剣だった。
さっきまで神原と一緒に本の整理をしていたというのに。
いつの間にか手に入れていた木製のスティックを、容赦なく神原に突きつけている。
仕方の無いことだろう。
神原の素行は、生まれたての赤ん坊にポルノビデオを見せるくらい、突き抜けているからだ。
政宗にとっては、怪しげな暗号を羅列されているようにしか思えない。

「そうか。わかった。そこまで聞けば、もう十分だ。つまり、私は脱げばいいんだな?」
「独眼竜は伊達じゃねぇ。アンタがどう取り繕ろうが、この眼は誤魔化されねぇぜ」
「うん、そうだ……ああ、ちょっと待ってくれるかな、筆頭伊達政宗殿。すぐに裸になるから。
 初対面とはいえ、史実に残る名将軍と言葉を交わす。ならば裸になるのが礼儀というものだ」

ところで、この『独眼竜は伊達じゃない』という言葉。
僕にはどこか矛盾しているような気がする。
純粋に伊達政宗は伊達ではない、という意味なのだろうが、傍目にはギャグにしか聞こえない。

「神原駿河、俺の命令を無視して勝手に進めんな。人の話を聞け」
「おお。やはり筆頭はやはりタチだった。私の目に狂いはなかったな。
 “苗字が『いたち』と読めるから伊達政宗はタチ”という説が本人の口から証明されたのは、非常にうれしく思うぞ。
 ちなみに私は雑魚ではないよ。 むしろネコだ。シャルトリュー種顔負けの人懐こさ、辛抱強さを提供しよう。
 ああ。何という事だ。奇しくもこれでお互いの需要が満たされてしまったな――だが、安心してほしい。
 そうして欲しいのは山々だが、本音を言えば、操を捧げる相手はもう決めているんだ」

政宗はスティックを強く握り締め、みしみしと音を立てた。

「……差し支えなければ、教えてほしいな。これは尋問なのか」

どうやらそれが功を奏したらしい。
神原は命の危険を感じたらしく、自分で話題を変えた。
政宗がもっと穏やかな人間だったら、あと1時間は性交渉時における攻め手(タチ)と受け手(ネコ)の議論を聞かされていただろう。

「さっきから聞いてりゃ、“攻め”だの“受け”だのfuggyなことをしゃべくりやがって。
 新米KUNOICHIか? 俺のよく知った野郎共の話ばかりしやがる。
 ……兵法を熱弁するのは勝手だが、うちの軍の情報も把握してやがんのか」
「なるほど。尋問なんだな。あなたのような人間にされるなら“駿河問い”が文字通りうってつけだぞ。
 もちろん心得はあるのだろう? 下手人を縄で縛って吊るしてしまう拷問だ。
 後で開放するのを約束してくれるなら、喜んで受けよう。
 放置プレイを捨てるのは惜しいが、あいにく状況が状況だし、私もまだ死にたくない」
「O.K.Garl,洗いざらい全部しゃべっちまうのが利口だぜ? 」
「筆頭の亀頭をしゃぶる事で許されるのなら、私は一向に構わないが、まずは話を聞いて欲しい。
 誤解を解くのはそれからでも遅くはないだろう。さあ、私に支給されたこの縄で好きにしてくれ」

数分後、神原駿河の手は後ろに回され、両手首を縛られた。

「あ、うう、あ、太くて、硬い……んっ! 筆頭、もっと深く、もっとキツキツにして……」

もちろんこれは縄の話である。
神原はもっと情熱的な束縛を期待してたのだが、喘ぎ声がうるさかったらしく、政宗は簡易で済ませた。
史実では伊達政宗は沢山の妻と子供を持つハッスルマンだったらしいが、ここにいる彼は常識人のようだ。

「単刀直入に言うと、私は武将の類ではないぞ」

神原は政宗に二度目自己紹介をした。それもより正確に克明に。
自分はレズで、BL好きな腐女子で、ネコ(性行為で受動的な側)で、受けで、ロリコンで、マゾで、露出狂で、欲求不満だと。
言い換えれば、自分の性癖を暴露したといったほうが正しいのだろう。
腕の包帯にあるレイニーデビルについては話さなかった。
本当に話さなければならない事実が逆になっている気がする。

「okey-dokey(はいはい、わかったよ)……BEET YELLってのはつまり男色のことか。不勉強だった」
「なるほど。私はこれまでBLは『ボーイズ・ラブ』の略と信じていたのだが、『ビート・エール』の略という可能性もあるのだな」

恐れていたことが起こってしまった。
もともと外国の慣習に興味のあった政宗は、持ち前の学習能力を生かしてBLを知った。
男色にさほど抵抗のない戦国時代の人間に、神原はこの上ない余計な知識を植えつけてしまった。
今から図書館に行けば、属性について論争を巻き起こす武将たちが絵巻で見られるだろう。
異文化交流というよりタイムパラドックス、明治政府もビックリだ。

「そしてアンタは、お国の動乱と噂話と妄想が大好きな庶民で、欲求不満の変態。OK? 」
「話が早くて助かる。何せ近日中に妻妾同衾する計画を目論んでいるからな。欲求不満にもなるさ」
「Good……ほめとくよ」

武家の慣習に疎そうな発言をふまえたのか、政宗には神原が異国あがりの町娘に見えるらしい。
変態という属性をしっかり抑えているあたり、抜かりが無い。
確かに神原の格好を大名が見れば、バテレンの正装……ってそんなわけあるか。
政宗も人のことを言えた義理ではないと思う。鏡を見ろ鏡を。

「筆頭はこれからどうするんだ? 」
「目指すは天下無双だ。こんなところで足止めくらってる暇はねぇ。敵の根城を叩き潰し、大将を討ち取るまでよ」
「流石は奥州の独眼竜。攻めて攻めて相手をヒィヒィ言わせるところは、相変わらずだな」

ちなみに神原も政宗の素性を詳しく問おうとはしなかった。
政宗が話すことは、ところどころ間違ってはいるものの、歴史上で伊達政宗が活躍したことと一致していた。
神原は政宗を“怪異”、すなわち戦国武将の幽霊のようなものと認識していた。
政宗が嘘を言っているようには見えなかったし、帝愛グループが話していた“魔法”のせいと考えれば合点がいくからだ。

「奴さんは城にコモってりゃ勝てるとでも思ってるんだろうが、あいにく俺はknockもせずに入る性分でね」
「ほう。奇遇だな。私もだ。ホモるだけが全てではない。行為前の絶妙な距離感はワビサビに通じる芸術品だ」

それから彼らはこの島の詳しい地理を把握するために、徒歩以外の移動手段を確保することになった。
政宗は野生の馬を探そうとしたが、神原の提案で、西にある施設に向かうという結論に落ち着いた。

「悪かったな。これでアンタは自由の身だ」
「あっ、そんな殺生な……もっとお戯れを」
「Ha,ha!やなこった」
「さあ、早く、私のことを『この卑しいペットが!』と呼んでくれぇっ」

2人はいたって真面目だが、縄をほどく人間とほどかれる人間の会話とは到底思えない。
というか会話が成立していない。
政宗は神原のイカレっぷりに根負けしたのか、必要以上に彼女を疑うことをやめたようだ。
神原は神原で、とりあえずホイホイとついて行くことにしたらしい。

「本音を言えば、縛ったまま私をおんぶして欲しかったな。焦らしプレイも嫌いではないが別腹だ。
 縛られたまま連れ去られる……なんて頭がフットーしそうなシチュエーションなんだ」
「そのsituationをここでやれってか? no joke(冗談じゃねぇぜ)。
 将来天下無双になる男を使い走りにするたぁ上等じゃねぇか」
「言われなくともわかっているさ。冗談だ。というより、私が本当にフットーするのは戦場ヶ原先輩と繋がったときだけだ」

神原はハッと顔を強張らせた。
自分の思い人の名前を、思わず出てしまったからだ。

「戦場の焼け野原と繋がる? 命粗末にしちゃってCoolじゃないねぇ」
「そ、そうだった。筆頭はディルドーを知らないのだったな」
「DEAL道? 異国の信仰宗教か? 」

彼女はまだ自分の友人たちのことを政宗に話していない。
戦場ヶ原のことも、千石のことも、阿良々木暦のことも。

「すまない」

神原は恐れているのだろう。
仲間のことを話せば、政宗が彼らを助けるかもしれない。
それは政宗に余計なカリを作ってしまう。

「……今の話は忘れてくれ」

神原の左手には、包帯で隠されているが、猿の手になっている。
人を惑わす妖怪のようなもの――怪異『雨降りの悪魔』(レイニー・デヴィル)の手だ。
『雨降りの悪魔』は、人の魂と引き換えに三つの願いを叶える。
願いを全て叶え終えた人間は、生命と肉体を奪われてしまうのだ。

「Take it easy. (気楽になれよ) どうした? 」

神原はかつて二回、願い事をしている。
色々あって現在は、『雨降りの悪魔』の効果も沈静化しているが、神原には相当の負い目になった。
誰かにカリを作ることが、少なからずプレッシャーとなっているのだろうか?



「見てくれ、あれが鉄道だ」

トンネルの先まで伸びた線路を指差して、神原は政宗の現代文明の力を紹介した。
事前に地図を調べていた彼女は、交通手段の仲介が、政宗の信頼を得る上で一番てっとり早いと考えたようだ。

「 どんな馬屋かと思えば、人っ子ひとりいやしねぇ」
「言われなくともわかっている。馬にまたがって早くどこかにイきたい気持ちは察するが、そうガッカリするな。
 というより、筆頭はそれ程までに跨るのが好きなんだな。安心してくれ。しばらく待っていれば、ビッグな馬がやってくるぞ」

駅を目標に、神原たちはBダッシュに匹敵するスピードで山道を駆け抜ける。

「ピィィィィィーーーーーッ!! 」

けたたましく響く高周波。
政宗の指笛だった。

「Why? 例の馬はちゃんと調教されてんのか? 主人の呼び鈴に応えられねぇたぁ……」
「はっはっは。彼はじゃじゃ馬なんだ。笛を鳴らした所で――」

――ボッ

政宗が呼んでからその間わずか1秒足らず。
気圧差による対流の開放に、空気が叫ぶ。
信じられないことだが、じゃじゃ馬は絶妙のタイミングでトンネルを飛び出してきたのだ。

「Hey! こいつぁまたglobalなじゃじゃ馬じゃねぇか! 」
「驚いたな! なんというミラクル☆トレインなんだ。人工知能でも入ってるんじゃないか?
 名前を着けるなら、そうだな……『中野陸』! おそらく彼が私たちを呼んだのだ」

電車に中の人などいない! 神原の妄想がまた始まった。
戦場ヶ原ひたぎの声を出す列車が生まれたら、きっと神原は毎日乗車するだろう。
そして車内の鉄棒に体をこすり付けて、桃色の吐息と声を出しながら、色々なものを漏らしていたに違いない。

――プアァァン

「Ok,OK……もうすぐご主人様が鐙を踏んでやっからな」
「む。まずいぞ筆頭! 賢者タイムを考慮しても、我々が乗り込むには時間が足りない」

そのスピードは馬といい勝負かもしれないが、スタミナは馬の何十頭分あるのだろう。
勇猛果敢に線路を走っていた列車は駅に到着した。
しかし駅のホームから神原たちがいる場所までの距離は、乗車するにはやや遠い。
おそらく、神原がホームに着くころに列車はホームを去ってしまうだろう。

「乗り込む? Holy shit!(まさか) 」

だが、それは――

「馬は跨るもんだろ。 戦国乱世を生きる武将に、従えられない馬はねぇ!
 俺の知ってる奴らなら、これぐらい朝飯前だぜ。You,See? 」

走っていたのが神原だけの時の話だ。




「奥州筆頭・伊達政宗、武装騎馬、got it!(獲ったり!) Ya-ha-!」

列車の上に胡坐をかいて座る政宗は、高らかに笑う。
そして、ふと己の腰に巻かれていた縄に気がついた。

「いや。お見事。お見事。私にはやはり先見の明があるな。
 いずれ来るであろうフットーに備えて、筆頭と私を繋げておいたのだ」

列車に乗る際にぶつけたらしく、神原は頭をさすっていた。
いつの間にか筆頭をロープで繋げていたらしい。
相変わらず無茶なことをする。
でも。その図々しさと持ち上げっぷりとエロさが神原駿河の魅力なのだ。

「Shit!……ま、いいや。 神原駿河、もうアンタの好きにしな」
「いや。最高にスリルを味わえたぞ。肉体から魂が引き剥がされるようなスピード。
 ほとんど宙に浮きっぱなしで、時折着地するのがやっとだったよ」

今はまだ政宗に隠し事をしているが、それは彼を信頼したいという裏返しでもある。
しばらくは血迷った真似に走る事はないだろう。
たまった感情をいつか爆発させなければいいのだが。

「ところで筆頭、盗撮プレイはお好みか? 実のところ、私はさっきから濡れっぱなしなんだ」
「Ha!今度はどんなjokeだい? 」


……人が心配してやってるのに。
やはりさっさと本編に戻るべきだった。
ごらんのありさまだよ!



【B-4/列車の上/一日目/深夜】
【伊達政宗@戦国BASARA】
[状態]:健康
[服装]:眼帯、鎧
[装備]:田井中律のドラムスティク×2@けいおん!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1(未確認)
[思考]
基本:自らの信念の元に行動する。
1:主催を潰す。邪魔する者を殺すことに抵抗はない。
2:信長、光秀の打倒。
3:神原は変態。馬の件は嘘じゃなかったし、とりあえず泳がせとこう。
[備考]
※参戦時期は信長の危険性を認知し、幸村、忠勝とも面識のある時点からです。
※神原を完全に信用しているのかは不明。城下町に住む庶民の変態と考えています。
※列車を馬と勘違いしています。


【神原駿河@化物語】
[状態]:健康  腕に縄縛紋あり テンション↑ 
[服装]:制服
[装備]:縄@現実
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(未確認)、神原駿河のBL本セット
[思考]
基本:殺し合いをしたくはない。
1:出来れば戦場ヶ原ひたぎ、阿良々木暦と合流したい。
2:政宗と行動を共にする。
[備考]
※アニメ最終回(12話)より後からの参戦です
※政宗には戦場ヶ原たちの情報、怪異の情報を話していません。
※政宗を戦国武将の怪異のようなもの、と考えています。


※彼らが乗った列車にはルルーシュ@コードギアスが乗っています。
 列車が出発した後に天井に飛び乗ったので、ルルーシュが気づいているのかわかりません。



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018:モンキー&ドラゴン 伊達政宗 076:結ンデ開イテ羅刹ト骸
018:モンキー&ドラゴン 神原駿河 076:結ンデ開イテ羅刹ト骸




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最終更新:2010年01月23日 10:03