どうしようもないわしに光の天使が降りてきたからもう賭博なんてしない  ◆1aw4LHSuEI




「ククク……やはり……わしは王っ……!
 そう……これは……王たるものの強運っ……!」


――A-5エリア・敵のアジト内の一室……!


薄暗い部屋の中……和服の老人……兵藤和尊は不気味に嗤っていた……!
ここは殺し合いの場……喜悦を浮かべた笑みを浮かべるには……不釣合いっ……!
それはまさに……狂気っ……狂気の沙汰っ……!
あまりの現実に気が狂ったと思われてもおかしくはないっ……!


(無論……気など狂うておるはずもないっ……! 正常っ……わしは今ビックリするぐらい心が落ち着いているっ……!)


それならば……何が……いったい何がこの老人を歓喜させているのか……?
答えは……目の前にある……奇妙な形をした機械にあった……!
一見して……黒く……ごてごてとしたそれを……なんと表現すればいいのか……?
巨大なモニター……その前に置かれた黒のキーボードとマウス……そして拘束具の付いた椅子……!
それだけならば……無駄に悪趣味な装飾を散りばめたパソコンデスクと言えなくも無いっ……!
しかし……椅子のすぐ横に据え付けられた装置っ……! これがその奇妙な空気の中心点っ……!
病院にある……採血器によく似た形っ……!
だが……しかしっ……その禍々しさは……決して人命を救うために作られたものではないっ……!
そう……まるで……処刑器具のような容赦の無い残酷さが……そこにはある……!
兵藤には……どこか憶えのある……自分の作らせたことのある……幾つかの道具と同じ雰囲気……
帝愛の総帥だったころ……金の代わりを取り立てるために用意した……死の取立て道具……!
その機械には……簡潔に血のように赤い色でこう書かれていた……!


「―――“ギャンブルゲーム”……!
 ククククク……やはり……わしの見立ては間違っておらんかった……!
 ペリカを得る手段は……ゲーム内でも存在する……! 無論それを使う手段も……!」


(これは優位っ……圧倒的優位っ……!
 なぜなら……このわしが……王たるこのわしが……賭博で負けるなどありえない……!
 だとすると……他の参加者に比べて得られるペリカは……大っ……!
 当然……装備や情報、そして……『魔法』っ……! それらのペリカにより得られる特典も充実っ……!
 となれば……開始早々にこのギャンブルゲームを見つけられたことは……僥倖っ……!
 誰よりも早く優位に立つこと……それが……勝利への道っ……!)


「さて、ゲームを始めるとするかの……!」


ゲーム開始……! そう書かれた赤いボタンがキーボードの横には置いてある……!
怪しいっ……いかにもな怪しさっ……! 何らかの罠かと躊躇しても決しておかしくはないっ……!
しかし兵藤、椅子に座り……そこに置かれた正体不明の赤いボタンを迷わず押す……!


(命はもっと粗末に扱うもの……! こんなところで躊躇していては……優勝など……夢のまた夢っ……!)


そう……兵藤は知っている……! 必要なときに命を投げ出せなかったものの末路をよく知っている……!
だからこその……この怪しいボタンの……プッシュ……!

ぱちり……!
その行動によって輝くモニター……! その明かりによって……照らされる部屋……!
同時に……両手両足に纏わりつく拘束具っ……! 肘より先しか動かなくなる……もう、後には引けないっ……!
それを……嫌でも思い浮かばせる……過剰な装飾っ……! 死のイメージ……!


ざわ……ざわ……
  ざわ……ざわ…… 


「―――ようこそ、ギャンブルゲームへ。行われるゲームは『麻雀』となります」


年若い……未だ、少女のような言葉とともに……画面には麻雀の卓を模した映像が……映し出される……!


「それでは―――ルールの説明を行わせていただきます」



 ◇ ◇ ◇


―――ルール説明……!

一口に麻雀といっても様々なルールがある……! しかし……今回用いるルールは単純明快っ……!
変わらないっ……なんら通常の麻雀と変わることのないルール……!
初期持ち点25000点の半荘戦……! そのほかにもアリアリ……裏ドラなど説明されたが……特別なルールは一切なしっ……!
精々がネット麻雀等にありがちな……一手辺りの制限時間10秒という程度……
だがっ……違うのは清算の方法っ……そして……プレイヤーの選ばれ方っ……!

「なるほどの……! これが元手となるペリカを渡さないわけっ……文字通り……命を……切り売りしろと言うことか……!
 悪くない……ククククク……悪くないのう……!」

点棒のレートは100点=10万ペリカとされる……が、もしもそれが支払えない場合……血液で支払うことが許される……!
その場合のレートは血液10cc=100点とされる……!
なお清算は東風戦終了時にもあり……その際に血液で支払った場合……その負け分を取り戻すまでは血液が返還される……!

またもしもゲームの途中で退席……ゲームから離れようとした場合っ……!
誰かからの指示を聞いて打った場合……! 途中でハコ……0点未満になった場合……!
その瞬間……首輪を爆破っ……! すなわち……死……!

そして、もう一つの重要なルール……! 自分以外の参加者について……!
これと同じような機械は他の施設にも設置してある……つまりっ……他の施設にいる別の参加者とのマルチプレイにも対応っ……!
面子が足りない場合は主催側から自動的に補充される……!

つまり……どういうことかというと……


「ギャンブルで……『他の参加者を殺すことが出来る』っ……!
 無論……デメリット……ゲーム中は完全に無防備っ……襲われればひとたまりもない……というのもあるっ……!
 自分とは同時には参加しない場合とてあるだろうっ……!
 だがっ……もしも殺すことが出来れば……勝利した際に得られるペリカに加えて……恐らくあるだろうボーナス……!
 それも同時に得ることが可能……! 直接的な暴力に弱く賭博に強い……まさにわしの為にあるかのようなルール……!」


まさに自分の思い通り……! 口元を歪めて不気味な笑みを浮かべる兵藤……!


「それでは時間になりましたのでゲームスタートです。
 今回は『敵のアジト』さん以外のプレイヤーがいませんのでこちらから人数を補填させていただきます」


少女の声が淡々とゲームの開始を告げる……!

「今回はわしのみか……しかし……ククク……かまわん……! 今は少しでも優位を得たい場面……!
 このゲームの情報をわしだけが握っていると言うのは……充分なリードっ……!」

そして……運命のゲームが始まる……!


 ◇ ◇ ◇


―――東風戦、終了っ……!




だがっ……しかし……圧倒的自信を持って挑んだこの局面……!



「なん……だと……」



兵藤……まさかの焼き鳥っ……一度もあがれずっ……!


のどっち :30500
ハギヨシ :29200
UNKNOWN  :25500
敵のアジト:14800


(この……わしが……敗北……? どうして……どうして……!)

ぐにゃあ……! 視界が……歪む……歪むっ……!
兵藤の敗北っ……その理由は……確かに……あるっ……!
まずっ……そもそもからの間違いがあるっ……! 兵藤は帝愛グループの元総帥で……当然……ギャンブルを多く行ってきたっ……!
そして……勝利し続けてきた……! それこそが兵藤の自信の源っ……!
しかしっ……兵藤は特に確率論を学んだり……それを意識して戦っているわけでない……!
では……兵藤が優れているものは何か……?


それは……「観察眼」っ……人を見る眼であるっ……!


他人の弱い心……見え透いた欲望……! そういったものを読み取り……狡猾に利用する……!
それこそが……兵藤の常勝の理っ……!
だがっ……しかし……! これは言わばネット麻雀……! 直接対面して打ち合う訳では……当然無い……!
表情も……仕草も……息遣いも……感じられ無い……! 兵藤……そんなギャンブルは初体験……!
つまり……ここは……純粋な理論の世界……! 勝てない……勝てるわけが無い……!
王者、兵藤……しかし……ここでは……弱者っ……圧倒的弱者っ……!
兵藤……それを認めない……現実を認められない……! 当然といえば当然……!


(認められん……そんなもの……! わしは王……王なのだ……その辺りの……塵芥とは違うんですっ……!)


プライド……王だったプライドが邪魔をする……! その認識の低さも……負ける要因の一つ……!
けれども……兵藤……気付けないっ……理由が分からない……ゆえに……また負ける……! 完全な負の連鎖……!

そして……東風戦終了ということは……当然……取立て……!


「―――東風戦終了しましたので、負け分である1020万ペリカの支払いを求めます」


無情にも……少女の声が響く……! 兵藤……しかし一切のペリカを持っていない……!
ならば……血液……命を……払うしかしないのだ……!


「―――支払いがないので、血液による採取を実行します」

ずぶり……!


「…………! おおおおお……!」


思わず抵抗しそうになる体を……なんとか自制する……!
ゲームの放棄で首輪爆破……ならば……支払い拒否ならば……? 言うまでも無い……!
それに加え……


(今回の負けは……10200点……! ならば……奪われる血液は1020cc……!
 2000cc前後の血液を失えば……人間は死……死に至る……! 老人る自分であれば……もっと少ないかもしれない……!
 だがっ……まだこれぐらいでは死なない……死なないはずっ……! まだ逆転の機会は残っておる……!)


そういう……打算的な考えがあったため……!
だから……今は耐える……! 耐えるとき……!


やがて……血を抜き終わり……針が抜かる……!
致死量の半分以上の血を抜かれたゆえに……目眩……朦朧とする意識……!
しかし……



「耐えたっ……死なない……死ぬことはないっ……!」



(ならば……ここからが反撃っ……反撃の始まりっ……!)


「……ククク……さあ、次にいこうかの……?」

ギラギラと瞳を輝かせて……兵藤……不適に笑う……!
南風戦が……始まる……!

 ◇ ◇ ◇


―――南二局……兵藤、聴牌……大きい手の気配……!


結局……兵藤、南一局でも振り込んでしまい残り11200点となってしまっていた……ここはなんとしても和了りたいところ……!



(きたっ……ついに……きたっ……逆転の……機っ……!
 和了ることが出来れば……三倍満……24000点……誰に当たっても……逆転……トップっ……!
 先の負け分を取り戻し……どころか……儲けを得ることすら可能っ……やはり……王者としての貫禄……凡人とは違う『幸運』……!
 しかし……それでは足りん……! 足らんわっ……まるでっ……! わしは……もっともっと……欲しいんじゃっ……! ペリカをっ……! ならばっ……!)




「リーチせずにはおられまいっ……!」




兵藤……ここでリーチっ……和了れば……数え役満32000点……!
43200点で終了となり……差額……1820万ペリカを得ることが出来る……!
それは人一人殺したときのボーナスと予想していた金額の18.2倍……!
輝かしい未来……進むべきはわしっ……わしこそが王っ……!
そして……期待をこめたツモ引きっ……!


がっ……兵藤……和了れず……!


「わしのような王が一発で引けぬ……理不尽が……起こってしまうのだ……ここ一発の勝負では……!」


落胆はするが……受け入れ……次に備える……!
まだまだ……手順はある……! ロンでも……もちろん構わない……!

ところがっ……他家……ベタオリ……しかもほぼ……ノータイムっ……!
これには……流石の兵藤も苦笑いっ……!

「王の手に怯える……当然と言えば当然っ……! ククク……が……愚かっ……!
 逃げても……無駄っ……! わしのような王に……二度ツモらせてはいかんっ……!
 ククク……二度もチャンスを与えられては……引きたくなくとも引いてしまう……!」


がっ……兵藤……和了れず……!



「なん……だと……」



驚愕っ……けれど……確率を考えれば……むしろ普通っ……! 兵藤の待ち牌は……すでになんと場に2枚……!
地獄単騎待ち……! 無理っ……そう簡単に和了れるはずもないっ……! そもそも他の誰かが握っていれば……ベタオリされた時点で終了……!
欲を……かくべきではなかった……! ここは……リーチせずにロンを待つ……または手を変える……それが正解っ……!


兵藤……痛恨のミスっ……逆転のチャンスを自ら逃す……!


そもそも……兵藤慣れていない……自分が不利な……命の危険を晒すギャンブルに……!
むしろ……それを……他人に強要する立場……! 圧倒的に上の立場だった……!
しかし……今は平等っ……! いや、どころか命をかけているのは自分だけ……?
追い詰められた弱者は少し希望を見せてやるとすぐに飛びついてくる……!
まさに……今の兵藤……! あさはかな……塵芥……凡人となんら変わりないっ……!
殺人ゲームに落とされた中で……十分すぎるほどの不幸……! そのようななかで運に頼るなど……愚かっ……!
所詮……兵藤……大詰めで弱い人間だった……ということ……! やり方を……変えられないっ……マニュアル人間……!


―――結局、流局……!


兵藤……逆転ならずっ……!


(逆転……できなかった……? どうして……どうして……? わしは……王なのに……?
 このまま逆転できなければ……いや……さらに負けてしまえば……待っているのは……)


『死』


呆然と……次局へ移る……!



 ◇ ◇ ◇


―――終局っ……!



「―――ゲーム終了です。お疲れ様でした」



「ククク……ヒヒヒ……!」



あれから何があったのか……? 少しばかりハイライトでお届けしよう……!
南三局にて……親番『UNKNOWN』……かなり珍しい手でツモ……3200オール……!
兵藤……さらに点棒が減り……絶望的状況っ……!
終わった……だれもが……そう、考える……兵藤自身も希望を失いかけた……!

……が……次局にて奇跡が起こる……!
流局し……最終局……! もう終わったかと思われたこの状況……

『UNKNOWN』……なぜか兵藤に差し込むように危険牌をふる……!
その結果……兵藤9600点を得て……計18000点……!



のどっち :30500
ハギヨシ :26000
UNKNOWN  :25500
敵のアジト:18000



結果……血液はマイナス700cc……! 300ccを返還され……死には至らない……!
兵藤……生還っ……! おめでとうっ……生還おめでとうっ……!


皮一枚つながる形になり……血液も大量に失った兵藤……が……流石に疲れと落胆の色は隠せない……!
自分がやられた場面を……思い出してしまう……どうしても……!


 『ハギヨシ』……基本的にミスのない堅実打ち方だったがそれに安心していると時々混ぜられる強引な手で大きく稼いできた……
 『のどっち』……まさか、プログラムだったのではないか……? ほぼ全てノータイムで打牌……まさに……残酷な天使のよう……
 『UNKNOWN』……時折ありえない手で和了る以外は普通……点数もぱっとしなかった……が……ある意味最も奥底知れぬものを感じた……


「もう……賭博なんてしない……――」


そんな言葉が出るのも仕方がないことで……





「―――なんて、言うわけなかろうがっ…………!」






ざわ……ざわ……
  ざわ……ざわ……



「ククク……最後の和了……! あれこそ天命に愛されし帝王の証っ……! やはりわしこそが……王っ……!
 かまわん……狂気の沙汰ほど面白い……! ククククク……! もっとだ……もっとギャンブルを……!」



最早……いや……最初から……この男にまともな道理などは通じないっ……!
狂ったように……強がるように……狂気に舞い堕ちた奴隷はただ一人笑い続る……!




【A-5/敵のアジト内の一室/一日目/黎明】



【兵藤和尊@カイジ】
[状態]:血液700ccマイナス、精神的疲労(中)、肉体的疲労(中)
[服装]:和服
[装備]:サブマシンガン
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:優勝し帝愛グループの黒幕をギャンブルで倒し制裁、再び帝愛の総帥に戻る。
0:ククク……わしは……王っ……!
1:ペリカで魔法が買えるのではないか?殺し合いよりペリカ集めを重視。
2:ペリカ集めのためにギャンブルを積極的に行う
3:ギャンブルをおこなうためにギャンブル船へ行く……?
4:ペリカ集めの為弱い人間から殺す。
[備考]
『のどっち』を運営側の用意したプログラムでないかと予想しています。

【ギャンブルゲーム(麻雀)について】
基本的なるルールは一般の麻雀と変わらりません。

  • 初期持ち点25000点
  • 半荘戦
その他のローカルルールについては、よほど特殊なものがない以外は特に制限はないので後の書き手に任せます。

またバトルロワイヤルならではのルールとして
  • 幾つかかの施設にこのようなギャンブルゲームの機械がおいてあります。マルチプレイ対応。
  • だれかがハコになった時点で終了。ハコになればどれだけペリカがあっても首輪は爆破されます
  • 運営の用意した人物にはハンドルネームが設定されていますが、参加者は場所名しか出ません
  • ゲームの途中で退席は出来ません。もし行おうとした場合は首輪が爆破されます。
  • また周囲からの指示を聞いて打つという行為も禁止されます。その場合も首輪が爆破されます。
  • 点数の清算は100点=10万ペリカとなります。またペリカを払わず血液での支払いも可能でその場合は100点につき10ccとなります。

なお、午前一時から三時間ごとに一回ゲームが開始されます。二時間半たっても決着がついていない場合はその時行っている回の終了をもって清算に入ります。
ゲーム開始時刻までにエントリーがそろわなければ主催者の用意した代理が入ります。


  • のどっち、ハギヨシ、UNKNOWNは『人質』『協力者』『運営の用意したプログラム』のどれかかもしれませんし、どれでもないかもしれません。後の書き手にお任せします。

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001:闇に舞い降りた奴隷 兵藤和尊 061:いやあ……兵藤は強敵でしたね



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最終更新:2009年11月06日 22:00