インターミッション――《第一回定時放送》 ◆tu4bghlMIw



『――おはようございます』

空中を疾ったノイズに続くように、音が流れる。
朝焼けに散らした光の粒子と電波を介して届けられる無機質な声。

おはようございます。

主催者から投げ掛けられる、二回目の『おはよう』。
既に夜は明け、月の代わりに太陽が、夜虫の鳴き声よりも照りつける日差しへと意識が逸れる。
『おはよう』とは朝、一日の始まりを象徴する言葉だ。
当然、この時間帯でこれ以上に適切な挨拶はないだろうし、単語の用途にも間違いがあるわけではない。
だが、これほどまでに『殺し合い』という空間にそぐわない言葉も中々存在しないだろう。

朝とは始まり。そして、この催しは終わりへと近づくためのモノ。
相反する二つの要素がぶつかり合う。
一日目午前六時。吐き出されたのは皮肉なほど、集められた人間に『日常』を想起させる言葉だった。

六十四を一へと削り落とす舞台へと、最初の幕間が訪れる。

 ◇ ◇ ◇


『おはようございます。インデックスです。
 六時間が経過しました。一回目の定時放送を開始したいと思います。
 尚、以後の放送においても同様ではありますが、放送内容の問い合わせには応じられません。ご了承下さい。
 戦闘行為の最中にある方は、一度その状況から離脱されることを推奨します。

 ………………。
 …………。
 ……。

 よろしいでしょうか。それでは連絡事項を伝えます。 
 名簿に記されていない参加者、禁止エリア、そして死者の発表。
 事前に伝えておいた事柄以外に一つ、こちら側からの連絡があります。

 島内に設置された自動運行の列車についてですが、現在、諸事情で運行休止状態にあります。 
 詳しくは各駅構内の電光掲示板を参照下さい。
 現時点では六時間後の本日正午付近に復旧予定ですが、作業の進行に遅れがあった場合は先送りになる可能性もあります。ご了承下さい。
 島内での移動の際にはご一考頂けると賢明かと。


 それでは続きまして、名簿未掲載の人物の名前を読み上げます。

 【アーニャ・アールストレイム】
 【安藤守】
 【海原光貴】
 【片倉小十郎】
 【玄霧皐月】
 【千石撫子】
 【月詠小萌】
 【中野梓】
 【兵藤和尊】
 【船井譲治】
 【プリシラ】
 【ユーフェミア・リ・ブリタニア】

 以上、十二名です。
 正確な文字の表記に関しては本人、もしくは関係者との接触時にお尋ね頂ければ。
 聞き逃した方のため、もう一度だけ、繰り返させて頂きます。

 【アーニャ・アールストレイム】
 【安藤守】
 【海原光貴】
 【片倉小十郎】
 【玄霧皐月】
 【千石撫子】
 【月詠小萌】
 【中野梓】
 【兵藤和尊】
 【船井譲治】
 【プリシラ】
 【ユーフェミア・リ・ブリタニア】

 以上、十二名。名簿に掲載されている五十二名と合わせた六十四名。
 これが今回の帝愛グループ主催による《バトルロワイアル》の正式な参加者になります。
 先の説明で『六十五名』と我々は発言しましたが、これは正確な数ではありません。
 ゲーム開始前に死亡した【龍門渕透華】は正式な参加者には含まれません。

 続いて、禁止エリアについて。
 三時間後の午前九時以降、立ち入り禁止エリアが三つ増加します。
 お手元の島内地図をご覧下さい。

 今回の閉鎖エリアは【A-7】【B-7】【F-4】の三カ所です。

 そして、最後になりましたが、《バトルロワイアル》開始から現在まで、今回の放送帯での死亡者を発表させて頂きます。
 読み上げる順番は、こちらの確認した大まかな時系列、死亡順での報告になります。
 厳密な死亡時間とは齟齬がある可能性があります。ご了承下さい。

 【池田華菜】 
 【カギ爪の男】
 【竹井久】
 【玄霧皐月】
 【加治木ゆみ】
 【中野梓】
 【月詠小萌】
 【兵藤和尊】
 【安藤守】
 【片倉小十郎】
 【プリシラ】
 【千石撫子】
 【リリーナ・ドーリアン】
 【御坂美琴】

 今回の死亡者は十四名。そして、現時点での残り参加者の人数は五十名になります。
 私からの連絡事項は以上を持ちまして終了させて頂きます。六時間後の第二回定時放送でまたお会いしましょう。
 最後に、遠藤の方から皆様へのメッセージがございます。それでは』


 ◇ ◇ ◇



『おはよう、諸君! 《バトルロワイアル》は満喫しているかな!
 流石に六時間も経って、まだ現状が理解出来ていない愚か者はいない……そう俺は思いたいっ……!
さて。定時連絡自体は終わったわけだが、こうしてわざわざ俺が話している理由……それはなんだと思う?
 余裕のある参加者ならば、俺が現れたことにブーイングをしたい者もいるかもしれない。
 俺だって分かってはいる……!
 むさ苦しい中年の男の声より、可愛らしい少女の方が数段『ホッ』とする……これは全くもって自然な反応っ……!
 凄惨な殺し合いの中だからこそ、人は求める……癒しをっ……清涼剤をっ……!
 それだけじゃない! この放送の最中は、間違いなくゲームにおいて『一番安全な時間』でもあるっ……!
 睡眠……食事……その時間さえ惜しむ猟犬がこの時だけは牙を休めるっ……!
 六時間に一度の安らぎを壊された諸君らは非常に憤慨しているだろう。
 が、少しだけ考えてみてくれ。こっちだって鬼じゃない……諸君らの幸せの時間を壊してまで、話すだけの理由があるっ……!

 さぁ、少しだけ考えてみてくれ。
 今、インデックスの口から十二名の名前が呼ばれ、名簿が完成した……。
 断っておくが、挙がった名前に嘘はない。
 先の十二人は確かにこの島に存在するし、死亡者として名前を呼ばれた者は既に事切れているっ……!

 だがこの定時放送で、大抵の人間はこう思ったはずだ。
 『随分と、同じ名前が読み上げられるものだな』……と。
 どういう、意味だと思う? これはヒントっ……いや、俺からの『ご祝儀』だと思って貰いたい!
 物事を深く考える癖を付けておくのは決して悪いことじゃないっ……!

 次は……正午だな。昼飯を食べながら、余裕を持ってこの放送を聞けるような人間が一人でも多く出ることを祈っている。
 暴飲暴食は身体に毒だが……朝も昼も抜いて、まともでいられるほど人間の身体は頑丈に出来ていない。
 それでは、これで本当の意味で放送を終えるとしよう。諸君らの奮戦に期待するっ……!』


 ◇ ◇ ◇


朝が終わり、状況は次のステージへと移行する。
ノイズの消滅と共に、人間の様々な感情が交差する狂乱の舞台の幕が――上がる。


【第一回定時放送終了(ゲーム開始六時間経過)@残り五十人】


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