生存本能(サバイバル) ◆X/RX3k8bNY



「○○ちゃん、バカだから補習ですぅ~」


月詠小萌はその時不意に、学園都市の夏休み中、ある自分の教え子に電話から掛けた言葉を思い出していた。

超能力開発が主な目的で創設された学園都市において、

 レベル0 
「無能力」

と、周りの教師や学園都市の科学者達に烙印を押された教え子の中の一人。
月詠小萌の生徒達の中の一人であったある少年の事だ。

彼は周りの大人達から見れば、面倒事ばかり起こす厄介な生徒という印象を与えていた。
実際、彼が問題を起こす度に月詠小萌は教師として彼を叱ってきた。

だが、少年が起こす問題というのは、決して、

無能力―――持たざる者が持てる者への嫉妬でも、      リビドー
誰にでも経験があるであろう、思春期特有とも言える【有り余る衝動を誰かれ構わず相手にぶつけたいから】。
というような刹那的な理由でも、なかった。

少年はいつでも自分のやった事に対して言い訳はしない。
ただ、彼が大きな問題を起こすときは、大抵誰か自分以外の人の為にしていた事だったのだと、



月詠小萌が気付くまで、そう時間は掛からなかった―――――。



――――――――――――――――――――――――――――


舞台は戻る。


ここはとある真夜中の学校。
だが、月詠小萌が教鞭を振るっていた学園都市内での学び舎ではない。
月詠小萌自身もまったく見知らぬ場所の学校である。

その教室内に見知らぬ女生徒と二人きり。
勿論、これが夜通し行われる教育熱心な月詠小萌らしい補習授業でも、
かなり大きな問題があるのだが、そうではない。

今、目の前の少女は、確実に月詠小萌に対して殺意を向けている。


消火器の煙が室内に立ち込めてはいるが、まるで世界から全ての音が消えてしまったのかのような
静謐に満たされた職員室に、窓から差し込む月夜の光で妖しく照らされた桔梗色の髪。
まるで日本人形のような端整な顔立ちの少女の全身は紅い鮮血に染まり、
翠と紅に彩られた瞳はまるで宝石のような輝きを放つ。
だが、その瞳の輝きは暗く澱んでいるかのように見えるのは月詠小萌の錯覚だろうか。


何故、あんなにも簡単に人間を殺せるのか?


それは今までの教員生活で数多くの生徒を育て、
その生徒達を卒業式において、万感の思いで送り出してきた月詠小萌にも理解はできない。



只、今の状況からはっきり分かる事がある。
それは、


このままでは、確実に、殺されるという事だけだ。


「凶れ」





まるで表情を変えなかった少女が冷たく言い放つ言葉。
その直後、彼女の瞳から、翠と紅の半透明蛍光色の螺旋が、あらゆるものを捻じ切る絶対的な死が、
月詠小萌に襲い掛かる!!!!!!!!!!!

これは月詠小萌にとっての死刑宣告――――――。

月詠小萌の肉体はこの一言によって、本人すらも気付かぬ一瞬のうちに物言わぬ肉塊へと変貌を遂げる!!


――――――。



はずだった。
この無慈悲とも言える超常の力の前では、
単なる一教師であるはずの月詠小萌が、生き残れる要素など何一つ存在しようはずがない。






だが――――――。






浅上藤乃から放たれた魔眼――――――。
翠と紅の螺旋は、結果として職員室の床を渦上に抉り取っただけだったのである。




浅上藤乃から螺旋が放たれたその瞬間、
月詠小萌は反射的に職員室の出口に向かって跳んだのだ。


もちろん、高速で接近する浅上藤乃の魔眼に対して、
戦闘の際には超人的な身体能力を発揮する両儀式のような人間でも無い限り、
彼女の魔眼を跳んだ程度で避けきれるという事態はまず起こり得ない。

だが、浅上藤乃は魔眼が小萌の体を捻じ切らなかったと認識した刹那、
かすかに顔を歪めて思索した。


(・・・・・・。つま先から順番に捻じ切ってやろうと思ったのに――――――)



さきほど放たれた浅上藤乃の魔眼の標的は、月詠小萌の命を瞬時に奪う為のものではなかったのだ。

彼女が敬愛する先輩。黒桐幹也に人殺しの自分を知られる危険を生み出し、
浅上藤乃が殺人を愉しんで愉しんで愉しみぬいて殺すつもりだった二人の獲物を逃がした月詠小萌に対し、
生きているのが苦痛になるくらいの罰を与える。

まず―――つま先を捻じ切り、その後両手首を捻じ切る。
失血死されても興が削がれる。
捻じ切った後の傷口は丹念に絞り切って、
無駄な出血などさせてやらない。
後は内臓から頭に向かって、少しずつ少しずつ少しずつ肢体を捻じ切って
心の臓が止まるその瞬間まで凶げ続ける。




せっかくの愉しみを奪われた代償は、絶対に償わせる。




そんな浅上藤乃の、月詠小萌に対しての激しい憤りが、今この瞬間の結果として、
月詠小萌の命を永らえさせたのだ。




ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!


と廊下を駆ける音が聴こえる。
跳んだ勢いで廊下に飛び出した月詠小萌は、
廊下を転がりながら、そのまま体勢を立て直し駆け出していた!!


浅上藤乃はそんな月詠小萌をその場からすぐに追う訳でもなく、
その場から動かず、ただ【千里眼】を廊下を走る月詠小萌に向ける――――。


「そう――。狐狩りは、殺すのが目的じゃないもの。」


中世ヨーロッパに於いて、貴族の嗜みともいわれていた狐狩り。

生きるために獲物を狩る狩猟ではない。
これはただ狐を狩ればいいというだけではない。
生に対し狡猾な狐をあらゆる手段で追い詰めて追い詰めて、その果てに狩るというのが、
当時廃頽的な娯楽に飢えていた貴族達の心を掴んで止まなかった遊戯である。

当時、【魔眼】に目覚める前だった浅上藤乃は、
読んでいた書物で狐狩りについて知った時、
(なんて残忍な事ができるのだろう)と眉をひそめたものだったが、
今の浅上藤乃なら、狐狩りに興じた中世当時の貴族達の心境が手に取るように分かった気がする。



「いいわ―――。遊びましょう。狐さん――――――――。」




浅上藤乃が微笑む。
だが、その笑顔は彼女が彼女であった時期―――。その少女に微笑まれた
いかなる男性をも浅上藤乃に夢中になってしまうような愛らしいものではない。


唇を僅かに上部に引いただけ、まるで引き釣ったような醜悪な笑みであった。



―――――――――――――――――――――――――――――

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!


月詠小萌は走っていた。


おそらく彼女の生涯において、こんなに真剣になって走ったのはそこそこ永い生涯の中でも、
生まれて始めての経験だろう。


ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!


その生まれて始めてを経験する場所が、
月詠小萌が普段、生徒達に走らないよう呼び掛けていた、
学校の廊下だとは、なんとも皮肉な結果であるが。


ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!ダ


だが、今はそんな悠長な事を考えてる場合ではない!

月詠小萌は【逃げろ】と本能に基づく脳から来る指令だけで動く体で必死でねじ伏せ、
浅上藤乃の【能力】について思考していた。

(あれはPK(Psychokinesis、サイコキネシスの略)の一種でしょうが、
学園都市でもまだあんな能力者は見た事ありませんっっっ!)

月詠小萌は体と脳を同時にフル回転させつつ、更に思考を続ける。


(でもっっっ!しっかりとは確認できてませんが、いくつか仮設を立てるならっっっ!)



メキャ


その瞬間、廊下を全力疾走する月詠小萌の傍にあった消火栓が、
何の前触れも無く空間ごと捻られた!


ブシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!


消火栓が設置されていた場所から勢いよく水が噴出される!
その水の勢いで、月詠小萌は教室側の壁に叩きつけられた!!


「カハッっっっっ!!!!!」


叩きつけられた瞬間、思わず息を吐く月詠小萌。
前方に向かう物理エネルギーをそのまま真横に変換されたのだ。

無防備な状態で壁に激突した月詠小萌の足が思わず止まる。
壁から吹き出す激しい水音で、月詠小萌は気付いていない


その遥か後方の角からは、
コツコツコツと硬い廊下を靴で鳴らしながら、
ゆっくりだが、確実に浅上藤乃が迫っていた。



壁に打ち付けられたその小さな体をヨロヨロと起こしながら、
月詠小萌は立ち上がる。

だが、その表情には絶望や恐怖の色はまったく感じられない。


(やはり・・・あの娘、直接対象が見えてないと、人間に【能力】が使えないんでしょうか・・・)


月詠小萌が周囲を見渡すと浅上藤乃の姿はまだ視界に見えない。
しかし、消火栓を凶げたのは、浅上藤乃の能力で間違いないだろう。


(だったら、なんで―――。私をそのまま攻撃しなかったんでしょう?)


仮に、浅上藤乃がいかなる場所でも自由に能力が発動できる場合、
わざわざ月詠小萌の傍の消火栓を破壊する必要などない。
月詠小萌の足でも手でも、見えない所から好きに凶げさせれば、
こんな追いかけっこをする必要すらない。

そうしないのは、月詠小萌をじわじわなぶり殺すための可能性もあるが、
ただ恐怖を与えたいだけなのなら、能力で実際に体を痛めつけた方が遥かに効果的なのだ。

全身に走る鈍い痛みに耐えながら立ち上がった月詠小萌は、
自分が打ちつけられた教室のドアを開ける。

そこは、【家庭科室】と書かれていた。



―――――――――――――――――――――――――――――


月詠小萌の体から痛みが全て引く気配はまったくないが、
小走り程度で駆け出す程度なら、まだ痛みを我慢できる程度には回復した。

だが、教室に入った瞬間、月詠小萌の周りの棚や机が一斉に凶がりだした!!!!!!!


メキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャ


月詠小萌は、教室内の次々に捻れ曲って凶がっていく棚や机には一切構わず、また小走りで走り出す。
そして、棚から零れ落ちた【小麦粉】の袋を抱えて教室から飛び出していく!


だが、月詠小萌のその移動速度は、以前の全力疾走と比べると明らかにペースが落ちてきている。
体の痛みの事もあるが、何より月詠小萌の体力がもう限界に近いのだ。


その間にも、浅上藤乃は月詠小萌の目前、
すぐ横の廊下の曲り角まで迫ってきていた―――。



「そろそろ・・・追いかけっこも終わりにしましょうか。」



学園都市製の軍用ゴーグルを装着していた浅上藤乃はそう呟いた。

狐なら、ともかく人間狩りである。
獲物は無様に悲鳴を上げて、恐怖に怯えながら逃げ惑う。
それを狩るからこそ、達成感も得られるというのに――――。

【千里眼】で直接見なくても月詠小萌の様子を観察できた浅上藤乃は、
期待を裏切られたという軽い失望に苛まれていた。

(こんな事なら・・・、あの時、一息に殺しておくべきだった。)


追い詰めても追い詰めても、月詠小萌の表情に恐怖の色が宿ることは無い。
こんなことなら、この教師はもうさっさと終わらせて、2階の階段を凶げて閉じ込めた、
あの二人でうさを晴らそうか。

そんな事を思い、二人の様子を見ようと【千里眼】の視線を月詠小萌から、
2階にいるであろう琴吹紬千石撫子に移したその瞬間、



浅上藤乃の耳に、激しく花火が打ち上がるような音が飛び込んできた。



浅上藤乃は知る由もない。
月詠小萌を追うのに夢中になるあまり、二人にまったく注意を払っていなかった最中、
まさか琴吹紬と千石撫子が、武田軍に所属するとある忍びが作成した『緊急脱出装置』を使って、
半密室であるはずの学校から脱出を図ろうとしていたなんて。



―――――――――――――――――――――――――――――


同じくその時、その二人が脱出する瞬間をしっかり見届けた人間がいる。
浅上藤乃のいる廊下側からすると、教室の外窓側から脱出した形になるのでちょうど反対側。


浅上藤乃が月詠小萌から【千里眼】をそらした際に、
満身創痍の月詠小萌が飛び込んだ教室、【科学準備室】の窓から、
同じく花火のような音が外から聴こえてきた事に気付いた月詠小萌は、高速で飛んでいく二人の姿を眺めていた。


(よかった・・・。二人とも無事脱出できたんですね・・・。)


あの二人のどちらかの支給品に、まさか脱出装置が入っていたなんて、
月詠小萌としても予想外の出来事であった。
しかし、仮に脱出装置があったとしても、月詠小萌が命懸けで時間を稼いでいなければ・・・。
先ほどの職員室で、月詠小萌が浅上藤乃にあっさり殺されていたとしたら・・・。


抗いようが無い超常の現象に、成すすべもなく蹂躙され、単なる肉塊と化した遺体が4体に増えただけだっただろう。


月詠小萌は今後の二人の無事を祈りながら、準備室の薬品棚を探る。
目的の薬品は厳重に鍵が掛かった棚に保管されていたが、
部屋の中で鍵を探しているうち、準備室を管理しているであろう教員机の中から既にその鍵を見つけていた。

だが、ここで月詠小萌の頭にある一つの疑問が浮かび上がる。


(なんで、急にあの娘の【能力】での攻撃が止んだんでしょうか・・・?)




―――――――――――――――――――――――――――――


浅上藤乃の苛つきは頂点に差し掛かっていた。

先ほどの花火のような音を聞いて、2階に【千里眼】を飛ばし、
学校の教室からトイレ・物置やロッカーの中まで、隅から隅までくまなく探しても、
琴吹紬と千石撫子、二人の姿が一向に見当たらない。


(まさか―――。さっきの花火の音は・・・)


考えたくもない。まさかそんな事は有り得ないが―――。
なんらかの支給品で半密室と化した学校から脱出を図り、それにまんまと成功せしめた。

現時点の情報では、そう結論つけざるを得ないだろう。

浅上藤乃はハッ、と気付いたように月詠小萌に【千里眼】を戻す。


(貴方だけは―――。絶対に殺す。)


もう遊びの時間は終わりだというかのように、月詠小萌への殺意を増す浅上藤乃。
本人の苛々も相まってか、翠と紅色の魔眼は、今までで一番妖しい輝きを放っていた。


【千里眼】で月詠小萌に視点を戻した浅上藤乃は懸念していた。
2階の二人を探してる間、
月詠小萌にまったく注意を払っていなかったいう事実。

これで、もしもあの教師まで逃がしたら、もう・・・私は―――。私でいられなくなる―――。

浅上藤乃は一種の悲壮感すら漂う決意を胸に、【魔眼】を発動させる―――。


―――――――――――――――――――――――――――――


月詠小萌は今、何やら棚にあるビンを色々といじっているようだ。
【千里眼】で並んでいるビンのラベルをよく見てみると、硝酸アンモニムや硫酸といった記述が見える。
どうやら、学校の化学準備室のような場所で何らかの薬品を探しているらしい。


月詠小萌はこの千載一隅とも言える、浅上藤乃最大の隙にすら、
この学校から逃げ出していなかった―――――。

この事実は、どうしようもない憤りを感じていた浅上藤乃の溜飲を下げる結果となったのだが。



「良い子ね・・・。でも、許さない―――――。」



浅上藤乃は【千里眼】に力を込める。
それに呼応するのかのように、浅上藤野の両目の魔眼が煌いた。




パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!パリィン!



薬品のビンのあった棚が、浅上藤乃の【千里眼】によって容赦なく凶げられていく。


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


月詠小萌は思わず悲鳴を上げてしまった。
薬品棚で探し物をしていた際、急に浅上藤乃の攻撃が再開した事により、
彼女の細腕に【硫酸】と書かれたビンから割れた液体が降りかかったのだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」


思わず声を上げてしまった事に気付いて、
脳から伝達させる堪えきれない程の危険信号に、必死にあがない痛みを堪える月詠小萌。


痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。




月詠小萌の陶磁器のような白い肌は、あっと言う間に赤く醜く爛れ、腫れあがっていく!

このように通常、硫酸が腕などに付着した場合の処置としては、
流水で長時間、付着部分を洗い続けるといった行為がもっとも効果的、かつ適切だと言われているのだが、
浅上藤乃という、脅威が迫ってる今、そんな流暢な真似をしている時間などない。


今にも思わず泣いてしまいそうな程の激痛を堪えながら、
火傷した腕を抱え、月詠小萌はヨロヨロと、【化学準備室】と部屋の中で繋がっている【化学室】へと移動を開始した―――――。

―――――――――――――――――――――――――――――


「なんだ・・・。そんな所にいたのね。狐さん。」


月詠小萌の悲鳴は、浅上藤乃が立っている廊下のすぐ傍。
もう隣ともいってもいいくらいの、教室の中から聴こえてきた。

どちらにしても、【千里眼】で薬品の入った棚を確認したという時点で、
学校内で薬品を管理している場所などそう多くはないだろう。

しかし、月詠小萌の悲鳴は、隠れていた狐の居場所を確認できたというだけではない。


静寂な校舎内に響き渡る、絹布を強引に引き裂いたかのような、か細い女性から吐き出される悲鳴。
琴吹紬と千石撫子、この二人をおめおめと逃がしたという浅上藤乃の苛立ちを
多少なりとも沈める効果を発揮したのである。


(今度は・・・。もう、しくじらないようにしなきゃ―――――。)


冷静になった浅上藤乃は、【化学室】と書かれた教室内に突入する前に、
昂ぶって昂ぶってはち切れそうなくらいに膨れ上がった、自身の殺人衝動を落ち着け、
月詠小萌を、この部屋で確実に葬り去る為の準備を始めることにした。

支給された軍用ゴーグルを被り直し、モードを赤外線(サーモグラフィー)に切り替える。
赤外線モードは、自身の視覚情報を、対象から発する熱源に変換する装置である。

これで、月詠小萌が【化学室】内のどこに隠れていようが、月詠小萌から出る熱を探知する事により
確実に隠れている場所を見つけ出して、凶げる事ができるであろう。

さらに、加治木ゆみから奪った拳銃、デリンジャーのマガジンを開き、
再度拳銃の弾を確認、デイパックの中から予備の弾を取り出し再装填した。

拳銃の取り扱い方法について、浅上藤乃のこれまでの人生において、まったく心得がなかったのだが、
月詠小萌を確実に殺す手段の一つとして、準備を怠る理由にはならないだろう。

そして、この部屋で確実に仕留める為に、浅上藤乃にはもう一つしなければならない事があった。
この教室、【化学室】を外界から完全に隔離しなければならない。


もう、万に一つの可能性も月詠小萌に与えてはいけないのだ。


大きく息を吸い込み、呼吸を整える浅上藤乃。
階段を凶げた時は上手くいったが、今度のものはそれより少しばかり大きいのだ
何らかの制限が掛かっている自身の能力に、幾何かの不安を覚えながら、



「凶がれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――!!!!!!!!」


浅上藤乃は対象に向けて、翠と紅の螺旋状となった【魔弾】を放つ。
その目標は学校の廊下、

【化学室】という空間だけを物理的に、事実上の密室に仕上げる為だ。




メキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャメキャ




浅上藤乃の思惑通りになった。


【化学室】と書かれた教室の両側の廊下は、およそ7m間隔で完全に抉り取られていた。
その抉り取られた廊下の下は、一階まで吹き抜けとなっている。
この階は3階、たとえ、そのまま月詠小萌が廊下から飛び降りたとしても、
着地の際には無傷ではすまないだろう。


これでは、浅上藤乃自身もこの空間に閉じ込められた。という事になるのだが、
先ほどのように、獲物をわざわざ逃がすという愚考よりはよほどマシだろうと浅上藤乃は考えた。
この校舎からどうやって外に出るかは、さっさと月詠小萌を始末した後にでもゆっくり考えればいい。


さて、全ての準備は整った。


【千里眼】で教室内にいるであろう月詠小萌の様子を確認する。

彼女は【化学準備室】内での机の物陰に潜んでいるようだ。
まだ何か小ざかしい事を企んでいるのか、それとも先ほど浴びた薬品の影響で
逃げ回る事すらできなくなったのか。

どちらにしても、もう月詠小萌はこの教室から逃げ出す気はないようだった。
仮に逃げ出そうとしても、ついさっき浅上藤乃が廊下ごと凶げた事により、
それは叶わぬ行為ではあるのだが。


(諦めの良い狐というのも、それはそれで興が削がれるわね・・・。)


もちろん、こんな事を思ったのは、浅上藤乃が月詠小萌の退路を完全に絶ったと確信したからである。

これはいうなれば、象が蟻を踏み潰すかの如き、東から昇る太陽が西へ沈むかの如くの規定事項。
越えられない壁、超越者による絶対的勝利の確信。


後は部屋に入り、月詠小萌の肉体を、【魔眼】で思う存分陵辱した後、
先輩・・・。黒桐幹也を探しに行くだけだ。

あぁ、逃げた二人も追わなきゃならないけど、
今の私には【千里眼】もある。
先輩に会う前に二人を始末するなんて、そんなに大した問題でもないだろう。



「もう・・・。これでオシマイ。凶れ」


メキャメキャ


【化学室】と書かれたドアを開ける前に、ドアごと凶げて入り口を作る。


月詠小萌の息の根を完全に止めるため、
浅上藤乃は凶げた【化学室】の入り口から教室内に入った―――――――――。





―――――――――――――――――――――――――――――


教室に入ったその瞬間、浅上藤乃は思わず顔を歪めた。
その【化学室】の教室内は窓が暗幕で閉め切られていて一面真っ暗。
浅上藤乃が破壊したドアから微かに光が漏れてくる程度だ。
ここで浅上藤乃の表情を曇らせたのは、その室内の暗闇ではない。


「この匂いは・・・。ガス―――――?」


そして、その間に、月詠小萌が先ほど家庭科室から拝借してきた小麦粉をぶちまけた!
白い小麦粉が部屋中に充満する!
そして続けて、月詠小萌は【化学室】にあった消火器の栓を抜き、こちらも自分の傍に向けて発射していた。

小麦粉と消火器の白煙に包まれた月詠小萌。
彼女の姿は、普通の人間になら、その姿を遠目からでは認識出来ないほどの煙に包まれる。


だが、浅上藤乃の装着していた軍用ゴーグルは
体温が上昇して真っ赤な月詠小萌の姿を、はっきりと映し出していた―――――。




「凶れ」



クチャ



浅上藤乃がその台詞を発した直後、月詠小萌の絶叫が響いた。




「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」


翠と紅の螺旋が月詠小萌に襲い掛かる。
その螺旋が、消火器の栓を握っていた月詠小萌の左腕に溶け合い、有り得ない方向へと複雑に入り組んで凶がっている。
浅上藤乃の【魔眼】はここで、月詠小萌を始めて捉えたのだ。


先ほどの火傷どころの話ではない。
即座に意識を失ってもおかしくない程の激痛が、月詠小萌の全身に駆け巡る!!!!!!
月詠小萌は豚のような悲鳴を上げながら、地面に転がりかえっていた。


その悲鳴を聞いて満足げにする浅上藤乃。
彼女の加虐心は、直接自身の能力で月詠小萌の肉体に痛みを与えた事により、
硫酸を彼女に浴びせた時とは比べ物にならない程の満足感を得られたのである。


床を無様に転げまわる月詠小萌に向けて。
デリンジャーを構えながら、ゆっくりと近づく浅上藤乃。


「でも、やっぱり凶げる時は――――。自分の目で、見ながらでないとね。」




ゆっくりと、だが確実に月詠小萌に近づいていく浅上藤乃。

その思考は、もはや

(次は、どこを凶げれば、悲鳴がかわるのかしら――――。)


月詠小萌の肉体を存分に思うがまま蹂躙する事で一杯になっていた。


―――――――――――――――――――――――――――――


全身に走る激痛に思わず気を失いそうになる月詠小萌は、
全身から脂汗を流しながら、自身の意識を必死に保っていた。

ほんの少しでも気を抜けば、間違いなく彼女の意識は途絶える。
だが、今この瞬間に意識を失うという事実は、
間違いなく永遠の眠りを意味する行為であろう。


床を転げ回りながら、月詠小萌は叫んだ!


「黒シスターちゃあああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!」


黒シスター・・・?もしかして、一見すると修道女に間違われるような礼園女学院の制服を着ている自分の事だろうか?
だが、月詠小萌のこの叫びに対して浅上藤乃はまったく応えなかった。
もはやこの場所において、月詠小萌のあらゆる言葉に対して返答を返す意義がもはやない。

構わず月詠小萌に向けて歩を進める浅上藤乃に、
月詠小萌が息も絶え絶えになりながらも声かけを続ける。




「【粉塵爆発】って知ってますか?」



その時、月詠小萌の手元に注目する浅上藤乃。
無残にも折れ曲がった月詠小萌の小さな手とは逆の方にライターが握られている。

このライターは【化学室】で調達したものではない。
普段の喫煙量の凄まじさは職場の同僚から【ホワイトスモーカー】と呼ばれるほど。
口に咥えただけで煙草の品質の違いが分かるらしい月詠小萌は
いついかなるどんな時でも、必ずライターだけは持ち歩いているのだ。



(不味い・・・!!もしかして・・・!!)


部屋内に充満する小麦粉と消火器の粉末、
そして屋内に充満するガス。
このガスについてはおそらく、浅上藤乃が屋内に突入する前から、
月詠小萌が【化学室】のガス栓を捻っていたのだろう。

よく見ると月詠小萌周辺の机から、ガス栓が開かれているようだ。


もはや一刻の猶予もない。と判断した浅上藤乃は
月詠小萌の息の根を即座に止める事にした。
その【魔眼】の座標を月詠小萌の体全体に設定する。
これで【魔眼】が放たれれば、また一体、人であった無残な肉団子が完成するのだ。




「凶がっ」




浅上藤乃がそう言い終わる前に、月詠小萌は床に充満するガスに向けて、ライターに火を点けた。



―――――――――――――――――――――――――――――


部屋に充満したガスが青白い炎を上げて、部屋全体を包み込み、
浅上藤乃の視界は一瞬、一面の炎に包まれた。



だが、結果だけ言うのであれば浅上藤乃が危惧していた、部屋ごと大爆発という自体は起こらなかった。
そもそも、浅上藤乃は【化学室】のドアを壊した時点でこの部屋は密室ではない。
なおかつ、小麦粉を少々室内にぶちまけた程度では部屋ごと爆発など起こりえる訳がない。

部屋のガスは一瞬で燃え上がったものの、屋内で散布していた消火器の溶剤のおかげなのか
教室一面が火の海に包まれるという自体にはならなかった。
月詠小萌が火を点けたガス台周辺は、ガスによって木材に引火したのか
メラメラと燃え上がっているが、その他の教室はあちらこちらに火の手が上がっている程度だ。
だがそのまま消火せず放っておけばこの教室は遅かれ早かれ炎に包まれる事だろう。

しかし、ここが仮に屋外だっとしても、風が少ないコンテナに囲まれた倉庫地帯だったのなら、
粉塵爆発が起こりえたかは分からないのだが。


そして、月詠小萌の狙いは、部屋ごと爆発させる粉塵爆発ではなかった――――。




「うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」





浅上藤乃に向けて絶叫しながら月詠小萌が走り出す!!!


浅上藤乃はこの一連の自体に戸惑いながらも
月詠小萌の絶叫を聞き、視界を月詠小萌に移すのだが・・・。

(何よ・・・。これ・・・。)


浅上藤乃の付けていた軍用ゴーグルの視界は真っ赤になっていた。
大きな火の手ではないとはいえ、部屋中のあちらこちらに火の手が上がっていれば、
熱源探査の赤外線モードは正常に働かなくなる。


月詠小萌がここまで意図していたかは分からない。
だが、結果的に月詠小萌がガス栓を捻り、ガスに火を点けたことにより、
軍用ゴーグルを装備した浅上藤乃の視界を奪う事に成功したのだ。


軍用ゴーグルをつけたままでは、直接視界で確認しないと効果を発揮できない【魔眼】は使えない。
【千里眼】では今、自分に向かってきている月詠小萌の息の根を直接止める事はできないのだ。

その間にも月詠小萌は絶叫しながら浅上藤乃に向かって来ていた。


「死ねぇええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!」


浅上藤乃は即座にゴーグルを脱ぎ捨て、突進してくる月詠小萌に向かい、
構えていたデリンジャーを発射する!!!!!




パンッ!パンッ!


空気を咲く様な銃声が二発響く。
その弾丸が突進してくる月詠小萌の肩と足に命中した!

だが、月詠小萌は若干体勢を崩した程度で止まる気配がない。

拳銃の扱いに慣れていない浅上藤乃は、とっさに初弾を発射した時点で、
自分の合わせた照準が、月詠小萌という小さな的の運動能力を適確に奪うためにどこを打ち抜けばいいかという、
考えは思い浮かばなかった。

拳銃は一発撃つごとに照準を合わせないと、
同じ箇所に飛ぶ事はないのだ。

やはり、扱いなれない拳銃じゃダメだ。



(・・・・・・!直接凶げれば、関係ない!)


拳銃で撃たれても止まらない月詠小萌に対して、
浅上藤乃が翠と紅の両目の【魔眼】を月詠小萌に照準を合わせたその刹那、



突進してくる月詠小萌が先ほど、ライターを着火した手にはライターではく、
小さな茶色い小瓶が握られているのに気がついた。

そしてその小瓶の中の液体が、自身にむかって振り掛けられると気付くまでの間、
瞬きをする間もないくらいほど、あっと言う間の出来事であった――――。



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「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」



この悲鳴を上げたのは、突進してくる月詠小萌に対し、【魔眼】を行使した浅上藤乃のものではない。
悲鳴を上げているのは浅上藤乃自身。

彼女は今、酢のような刺激臭に包まれながら地面を転げ回っている。


その、月詠小萌にぶっかけられたその液体は、彼女から完全に視界を奪い、
目や鼻から来る激痛にその身をもだえさせている。

全身ボロボロの月詠小萌が、浅上藤乃に浴びせた液体の正体は、酢酸。
別名:氷酢酸、エタン酸とも呼ばれる科学物質である。

この液体が皮膚に触れると重症の薬傷を起こし、
眼に入ると特に角膜障害、結膜炎を起こす。失明に至ることもある。

ちなみにこの濃度を薄めた催涙スプレーも存在し、
低濃度の場合でも、数十分間視界を奪うには充分な効果を発揮する代物である。


先ほど、職員室から逃げ回る際に月詠小萌が立てた浅上藤乃の能力への仮説は、



「視界を奪えば能力が発揮できないのではないか?」


という物だった。


確証があった訳ではない。
だが、月詠小萌がいた学園都市において、超能力というもの自体も、滑稽無等な力ではない。
ある程度の法則性があり、それを行使する為に何らかの制約、つまり
人間的な限界値が設けられている場合が非常に多いというのは、

     パイロキネシス
学園都市で発火能力について専攻し、さまざまな超能力に対して、
資料の上でも触れていた月詠小萌だからこそ出せた結論なのかもしれない。


家庭科室で小麦粉を持ってきたのは、少しでも浅上藤乃の視界を奪い、
その隙に化学室なら常備しているであろう、【酢酸】に目を付けたのだ。

もちろん、浅上藤乃にかけた【酢酸】は、濃度そのままの原液ではない。

月詠小萌が浅上藤乃が入室してくる前、化学室の水で薄めた代物であるが、
市販の催涙スプレーのものよりは、遥かに高濃度のものだ。

月詠小萌も教員生活でこの薬品についての知識自体はあったのだが、
実際に調合するのはこれが初めてだ。


最悪失明するという可能性は少ないだろうが、
少なくとも1時間近くは、まともに物体を見る事は叶わないだろう。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 目がああああああああああああああああああああ目があああああああああああああああああああああああ!!!!!!

激痛に耐えかね、さらに床を転げ回る浅上藤乃。
月詠小萌は腕が折られた激痛と撃たれた肩と足への痛みで、

(先生が、昔見たアニメでもこんなシーンがあったような・・・。)

意識が朦朧としながらも、支給品のバックを担ぎ上げ、教室の窓へと近づき暗幕で閉め切られた教室の窓を開ける。


部屋一面がガスと酢酸の刺激臭に包まれた3階の教室に、外の新鮮で清浄な空気が入ってくる。

そして、今にも途切れそうな自分の意識を、手に残った酢酸のビンの刺激臭を嗅いで覚醒させ、
窓の外をしっかりと眺めた。
窓の下には、植え込みされたのであろう二階までの高さくらいの木と花壇がある。

月詠小萌は未だ、痛みを叫び続ける藤乃に対して、何か声を掛けるべきかと迷ったが・・・。


結局、何も声を掛ける事もなく・・・。その窓から、飛び降りた――――――。




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バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ!!!!! ドサッ!


月詠小萌の体が地面に打ちつけられる。
だが、しばらくすると、月詠小萌はヨロヨロと立ち上がり歩き出した。


落下した際に植え込みの木を目掛けて跳んだ事により
直接地面に叩きつけられるのは免れたのだが、枝をへし折って落ちてきた際に全身に擦り傷を負い、
地面に激突の際に、背中に軽い打撲を伴ったものの、
背中にしょっていた支給品のバックが、衝撃をいくらか分散してくれたのもあり、
その落下により、月詠小萌の命を奪うには至らなかった。


そして、月詠小萌はそのまま学校を後にした。


先ほど浅上藤乃によって、凶げられた左腕の失血自体はそれほどではない。
念入りに凶げられた事により、左腕には完全に血流が止まってしまっているので、
このまま放って置いても壊死してしまうだろう。

                                        ヘブンキャンセラー 
学園都市にいる、自分の教え子も散々お世話になった変人ドクター。冥土返し なら
この左腕も何とか出来るかもしれないが、月詠小萌の素人目から見ても、
完全に元通りというのは不可能に近い。

それより問題は先ほど撃たれた肩と足。
動脈は外れていたので激しい失血ではないが
月詠小萌の意識と体力を確実に奪っていく。

このまま何の処置もしなかったら、結果は明白だ。


(これは・・・。かなり大ピンチですねぇ・・・。)


もうすぐにでも途切れそうな意識を、学校で調達した【酢酸】の空き瓶の気付けで戻しながら、
学校周辺の住宅街のうちの一軒に入っていった。

玄関から入って鍵を閉め、支給品のバックを空け、救急セットを取り出し、
肩と足の銃創を止血するだけの簡易な応急処置を施す。


(見知らぬ人様の家の玄関に黙って入るなんて、上条ちゃんの事を叱れませんね・・・)


そのまま治療しなければ、確実に死が待っているという最中でも、
月詠小萌はそんな悠長な事を考えていた。



簡易的な処置ながらも、とりあえず失血だけは何とか止まった事を確認すると、

月詠小萌の意識は・・・・・・・・・・・・・・・・・そこで途絶えた――――――。



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【E-2/学校近くの民家/一日目/黎明】


【月詠小萌@とある魔術の禁書目録】

[状態]:疲労(極大)、左腕完全粉砕、肩と足に銃創(止血済み)、全身に擦り傷、背中部分に打撲、腕に薬品による火傷、意識不明
[服装]:パジャマ(ボロボロ)
[装備]:酢酸の空き瓶@現実
[道具]:基本支給品一式 
[思考]
0:上条ちゃん及び他の学園都市の生徒を探し出して保護。
1:困っている人がいたら保護
2:シスターちゃんを絶対に助ける
[備考]
※命に関わるような失血は止まったものの、
まともに動ける状態までの回復はかなりの時間が掛かりそうです。
少なくとも第一回放送開始くらいまでは起きません。

アイテム
酢酸の入ってたビン@現実
学校の化学準備室から手に入れた酢酸が入っていたビン
もう中身はほとんどないが、中に入っていた溶液の刺激臭により
気付けとして使用することが可能。ものすごく酸っぱい香りがする


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ガス爆発による火事で、煤けた屋内の教室。
水浸しになった教室内で、浅上藤乃は憤っていた。

この水は浅上藤乃が撒いたものではない。
月詠小萌が窓から飛び降りて、しばらくした後、
学校に備え付けられている消火用スプリンクラーが作動したのだ。

この放水により、部屋の火事は消し止められ、浅上藤乃は何とか火事から一命を取り留めた。
まさか、あの教師はそこまで計算していたのだろうか。


浅上藤乃の視界は結局、月詠小萌から薬品をぶっかけられた後、一晩中戻らなかった。

おぼろげながらも視界を確保できた時点で、流水による洗眼を行ったのだが、
また【魔眼】が問題なく使えるようになったと、確認できた時には、
とっくに夜が明けていたのである。


今の浅上藤乃は怒りに震えてどうにかなりそうだった。


憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。憎い。


あの教師が、あの女だけは絶対に許さない。


100回凶げても凶げ足りない!!!!!


殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!




月詠小萌への殺意の塊となった、浅上藤乃の情念は凄まじい。

そして、そんな浅上藤乃のいる教室の時計は、
そろそろ朝の6時を迎えようとしていた。


【E-2/学校・3F化学室/一日目/早朝】


【浅上藤乃@空の境界】
[状態]:千里眼覚醒・健康
[服装]:礼園女学園制服(血塗れ)
[装備]:軍用ゴーグル@とある魔術の禁書目録 、参加者詳細名簿@アニロワ3rdオリジナル、デリンジャー(0/2)@現実
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1 、かすがのくない@戦国BASARA×8本、拡声器@現実、予備弾薬@現実
[思考]
基本:幹也の為、また自分の為(半無自覚)に、別に人殺しがしたい訳ではないが人を殺す。
1:絶対に月詠小萌を殺す。その後琴吹紬。千石撫子を探し出して殺す。
2:3人を殺害した後、移動して人に会い、本当に申し訳ないが凶げて殺す。
3:幹也に会いたい。

[備考]
※式との戦いの途中から参戦。盲腸炎や怪我は完治しており、痛覚麻痺も今は治っている。
※デリンジャーの弾数に言及がなかったので一般的に普及しているモデルと同じく二発にしました


時系列順で読む


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059:凶壊ロゴス(2) 月詠小萌 103:不幸
059:凶壊ロゴス(2) 浅上藤乃 109:少女ふじの~3rd eye


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最終更新:2009年11月28日 01:27