煉獄の炎 (3) ◆.ZMq6lbsjI





     ◆



キャスターを追って一路東へ向かうバーサーカー
だが、遮るもののない空を往く者と、障害物を飛び越え、時には打ち崩して地を駆ける者ではやはり速度に絶対的な差がある。
ほどなく降下したらしいキャスターを見失ったバーサーカー。だが落胆を感じる前に、絶え間なく続く銃声と破壊音を耳にする。
近くで大きな戦いがある――そう考えが至ったときには既に走り出していた。
島の南部、工業地帯の一角。
ある大型の倉庫の近くに来た時、気配は全て一か所に集まっていた。
是非もない。
大英雄は肩に担いだ戦斧を軽々と振り回し、自らもその狂演の渦中へと身を投げ出していった。




戦の匂いに高揚するバーサーカー。
狂戦士は戦意燃え盛る瞳で戦場を睥睨する。
驚愕に打たれ立ち尽くす刹那、レイ、アーニャ、リリーナと大して興味もなさそうにその視線が行き過ぎて。
その眼が、一点で止まる。

数刻前に死闘を演じた、武者姿の愛しき宿敵。
その好敵手と互角に渡り合っていたらしい、サーヴァントに比肩するほどの王気を纏う男。

二者は怯えも迷いもなく、純然たる戦意を以てバーサーカーの視線を受け止める。
望み待ち望んでいた強者が、二人。

「■■■■■■■■■■――!」

歓喜の咆哮を上げ、狂戦士は弾丸のように飛び出した。
向かう先は戦国最強――まずは先刻の続きからだと、戦神覇王・武田信玄の軍配斧を真っ向から振り下ろす。
刃渡りの短くなった槍では受け止めきれないと見た忠勝は、スラスターを展開し急旋回。
己にかかる制限を正しく認識した戦国最強は、以前よりもさらに鋭い動きでその一撃を回避する。
そのままバーサーカーの左後方に抜けて、回転の勢いのままに背後から心臓めがけて突き入れる。
バーサーカーは、動かない――

「…………!?」

そして、先の手合わせの再現のように、必殺の槍はバーサーカーを討ち果たすことは叶わない。
今度こそは完全に入った一撃だった。前のように手による防御も間に合わなかった。

だというのに、この刃は届かない。

鋭く尖った先端は、バーサーカーの皮膚一枚を突き破ることもできずにギリギリとその身を震わせている。
やがて忠勝の豪力、そして強靭なるバーサーカーの筋肉の鎧との挟撃に耐えかねた槍が内側から弾け砕ける。
つんのめった忠勝の頬めがけ、振り返ったバーサーカーの強烈無比なる豪腕が激突した。

成す術もなく戦国最強が宙を舞う。コンテナをいくつも貫通し、忠勝の姿が消える。
追撃を送り込まんと踏み出すバーサーカー。
が、その足は立ち塞がった征天魔王により止められる。

「今宵は無粋な邪魔ばかり入りよる……戦国最強の首を取るはこの信長ぞ! うぬごとき下郎が余の道を阻むでないわッ!」

漆黒の翼がバーサーカーの首を絡め取る。
軍馬が蹄を打ち鳴らし、ぐいとバーサーカーの巨体を牽引するべく走り出す。
圧迫される頚部。だがこの程度ではバーサーカーは止まらない。
斧を振り上げ、地に叩き付ける。
砕かれ舞い上がった石片を、空の左腕がぐんと押し出す。
軍馬の腹に命中し、悲鳴が上がる。
姿勢の崩れた信長の隙を逃さず、逆に黒布を引き寄せる。

「むぅッ!?」

軍馬から引っこ抜かれた信長が舞い、バーサーカーの直上へ。
たわめられた右腕の筋肉が膨張し、大戦斧へと余すところなくその力が伝達される。
落下する信長、迎え撃つバーサーカー。
交錯する一瞬。
信長はマントを盾の形に集約させる一方、両腕にしっかりと保持したトイ・ソルジャーにてバーサーカーの顔面へと砲火を集中させる。
瞬時に反応したバーサーカーが左腕をかざし、銃弾を食い込ませつつも目や脳を保護することに成功。
が、一瞬視界は閉ざされる。
気配のままに超音速で薙ぎ払われた大戦斧を、そうと誘導した信長は何重にも重ね合わせたマントで防がんとした。

一層二層三層四層と、積み上げられた布陣が食い破られていく。
だが一つの層を破るごとに、確実にそのスピードもまた減殺される。
見開かれる信長の炯眼。
可能な限り速度を殺したと見極めた信長は、大戦斧の最上部――刃のない位置、刀身の芯へと”着地する”。
同時にマントの防御を解体。遮るものない大戦斧は勢いを取り戻し、振り抜かれた。
当然、信長の身体はそこにはない――斬撃の勢いを利用し、天高く舞っているからだ。
甲斐甲斐しくその着地点へと伊達政宗の愛馬が先回りする。遅滞なく信長が落下、再び馬上の人となった。

確殺の一撃を回避されたバーサーカー、回避したとはいえ紛れもなく死線を渡らされた信長。
両者の瞳にもう油断はない。
消えた戦国最強と同じく、この敵手も等しく己に類する敵――同時にその確信を抱いたからだ。
十秒にも満たない攻防ではあったが、観戦していた刹那達から熱を奪うには充分だった。

「あれが……ホンダムを退けたという強敵か……!」
「チッ、また厄介なものが来たな」

刹那とレイはどうにかして介入を狙っていたが、一連の動きには全く付け入る隙間などなかった。
万が一手出しをしてこちらに矛先が向けば――忠勝が戦線離脱した今、結果は火を見るより明らかだ。
二人の元へ、アーニャとリリーナもやってきた。

「信長だけでも手一杯なのに、さらに大物のご登場ね。どうするの?」
「どうする、と言ってもな……今は奴らが潰し合ってくれるからいいが、俺達が手を出せば一溜まりもないだろう」
「信長という奴はともかく、お前達も見たはずだ。心臓を狙ったヨロイの一撃がまるで通用しなかったのを。あれで防がれるなら、俺達の攻撃では傷も付けられんぞ」

アーニャもレイが誘いに乗ったことは既に承知している。敵愾心もなく、アーニャ、刹那、レイが各々意見を述べた。
忠勝の一撃は確実に決まったはずだ。いかに装甲が厚いとはいえ、一筋の傷も付かないというのは考えられないこと。
だというのにあの巨人はさしたる痛痒もなく反撃に出た。
忠勝から聞いてはいたものの、改めて脅威の存在であると刹那は思い知らされる。

「だが、今なら撤退できるのではないか?」

と、レイが言う。確かに今なら、バーサーカーと信長はお互いの姿しか目に入っていない。

「かも知れないが……万が一追ってこられたらそこで終わりだ。俺達が離脱することで、奴らの均衡も崩れるかもしれない。
 それに、ホンダムを置いて退く訳にもいかない」
「退くにせよ、どちらかにそれなりの痛手を与えてからの方が望ましい……ということね」
「ああ。首尾よく撤退できたなら、俺が首輪探知機を持っている。追われさえしなければ身を隠すことは難しくない」
「問題はその痛手を与える方法がないということだがな」

そう、作戦はそこに帰結する。
最大の打撃力たる忠勝が通用しなかった時点で刹那らに打つ手はないと言っていいのだ。

「でも……信長の銃撃、頭部を狙ったあれは防御したわね? あそこを吹き飛ばせば何とかなるってことじゃないかしら」
「どうだろうな……。ホンダムの話では、腹に空いた大穴が一瞬で治癒したらしい。だが、試す価値はあるかもしれないな」
「試せるかという問題はあるがな。至近距離での銃撃を防ぐあの反応、不意を打った程度で易々と討ち取れるとは思えんが」
「あ……あの、みなさん」

そこで、戦術には疎いリリーナから声がかかる。
三人とも失念していた訳ではないが、こういう状況では彼女の出番はないと思っていたのだ。
見ればその懐には信長が振るっていた黄金の剣を抱いている。
移動するときアーニャが回収したものを、銃撃の邪魔になると持たせていたのだ。

「私が、」
「駄目だ」

と、先回りして刹那が封殺する。
彼女の言いたいことには予想がついた。

「信長は言うまでもないが、後から来た方に言葉が通じるように見えるのか?」
「それは……そう、ですが……」
「通じるとすれば俺の狙撃……そして、信長の銃だけだろうな」

冷めた声でレイが話を戻す。リリーナの言うことに興味などないと言わんばかりに。

「拳銃やそのライフル程度では奴の身体の内部まで到達できんだろう。狙撃なら俺がやるが……」
「それだけでは足りない、わね」
「そうだ。万が一防がれることを考えると、もう一面、同じタイミングの攻撃が欲しい」
「奴に期待するしかないか……」

三人は未だバーサーカーとぶつかり合う信長を見る。
信長がもう一度バーサーカーの頭部へと銃弾を叩き込むこと。
それに合わせてレイのドラグノフを放つ、二段構えの作戦。
当然、信長は乗りはしないだろう。彼にとってはこの場の全てが敵なのだから。

「どうにかして奴に隙を作るしかないな。信長なら見逃さないだろう」
「そのどうにか、が問題ね。私達の手持ちの武器では……」

押し黙るレイとアーニャを尻目に、刹那が一人立ち上がる。

「それは俺とホンダムがやろう。レイ、お前は奴を撃つ最適のポイントを探せ」
「ホンダム……あのヨロイか? 奴はもう」
「生きているさ。今、”声”が届いた」

言って、刹那は身を低くして駆け出した。その先は先ほど忠勝が消えた瓦礫の山。
声とはどういうことかとレイとアーニャは怪訝に思ったものの、今は疑っても仕方がない。
大分軽くなってきた身体を持ちあげ、レイもまた狙撃ポイントへと駆けていく。
残されたのはアーニャとリリーナ。二人には特に割り振られるべき役割もないので、事が終わるまで隠れているしかなかった。

「さて……どうなるかしらね」
「…………」

銃を弄びつつ言うアーニャ。その顔には死が目前まで迫っている恐怖は見られない。
どうも記憶にあるアーニャの感じと違う……とリリーナは思ったが、さすがに今言うことではないと口には出さなかった。



やがて、状況に変化が訪れた。
やはり剣を失った信長では分が悪く、マントのほとんどを引き裂かれた信長が頬を歪め後退した。
止めを刺さんと前進するバーサーカー。
その背後から、轟音とともに飛来する大型のコンクリート片。
とっさにバーサーカーが戦斧で迎撃、粉々に砕く。
だがそのとき既に礫は役割を果たしていたと言えた。
バーサーカーの周辺が影に包まれる。
見上げた先には、背から光をたなびかせる戦国最強の姿。
その頭上に、小さめの家ほどもある巨大なコンテナブロックを掲げていた。

「………………………………ッ!!!!」

裂帛の気合とともに、忠勝がそのコンテナごと隕石のように駆け下りる。
先刻の槍とは違い、当たれば穴が開く程度では済まない質量。身体ごと粉々にせんと忠勝の速度は更に増していく。

「■■■■■■■■■■■――!!!!」

バーサーカーが斧を放り捨てた。コンテナは斬り砕ける大きさではないからだ。
落下するコンテナを、バーサーカーは”受け止めた”。
全身に魔力を循環させ、いっときの増幅剤として。
足を踏ん張り、両腕を突き上げる。
鈍い音と共にバーサーカーの腕がコンテナの外郭を突き破る。中身が詰まり相当の重量となった匣を、決死の形相で押し返そうとする。
杭となって地に突き刺さる両脚が、ゆっくりと沈み込んでいく。
バーサーカーの豪腕を以てしても、本多忠勝の全力を賭した質量攻撃に抗することは容易なことではない。
食い縛られた歯にぴしぴしと亀裂が走る。震える筋肉から立ち昇る蒸気。
高濃度の魔力が体表面を覆い、噴き出す汗が一瞬にして蒸発する。

鬼の形相で食い下がるバーサーカー。
その視界に映るのは――愉快でたまらないといった笑みを浮かべる、第六天魔王の銃口だ。
両腕を頭上に回している現状、バーサーカーにその銃撃を防ぐ手段は――ない。

「滅せよ、下郎」

穿たれる。
バーサーカーの頭部へと食らいついたトイ・ソルジャーの弾丸。
そのほとんどは頑強な頭蓋骨によって弾かれる。だが、柔らかな眼球や脆くなった歯を砕いて口内に侵入した弾丸はその限りではない。
内部で炸裂する5.6ミリ弾。受肉したことにより人体を模したことがある意味では不幸か。
最奥へと到達した鉄の破片は存分に脳を蹂躙する。
魔力の流れが寸断されたのを、バーサーカーが感じる時間があったかどうか。

そして同時に響いていたもう一つの銃声。
レイ・ラングレンによる狙撃は、バーサーカーの後頭部から侵入し、頭蓋骨を粉砕。
同じく脳内で暴れ回る5.6ミリ弾の残骸と短いダンスを踊り、バーサーカーの眉間から脱出を果たす。

一瞬にして、バーサーカーの頭部は消失した。
命令を送る脳が消失したことで四肢が弛緩する。
爆音――忠勝が押し続けたコンテナがバーサーカーの残る首から下を、粉微塵に砕け散らせた音。



狂戦士、バーサーカーのサーヴァントはここに潰えた。



「……やったか」

物陰から刹那がゆっくりと現れる。
埋もれていた忠勝に作戦を説明した後はできることもなく戦況を窺っていたのだが、完全にバーサーカーを討ち果たしたと確認するために。
忠勝がその刹那のそばに後退。各部に相当のダメージを蓄積させながらも、その眼に未だ膝を屈する気配はない。
まだ勝利を手にした訳ではない。この場にはまだ、排除せねばならない悪がいる。
見据えるのはただ一人、織田信長
信長もまた、満身創痍と言っていいほどに傷を負っていた。
だが退く気配は塵ほどもない。
ここに至ってはもはや言葉はいらぬとばかり、爛々と光る瞳で忠勝を睨む。
忠勝は足元に転がる大戦斧を拾い上げた。
かつて忠勝自身が槍を合わせた覚えがある、武田信玄の大斧。
槍とは勝手が違うものの、充分に忠勝が振るうに足る超重武器だ。
最前までそれを振るっていた強敵に一瞬の黙祷を捧げ、忠勝は斧を振り上げる。
忠勝の邪魔にならぬよう刹那が身を隠し、信長も迎撃すべく銃を構えた。
高まる激突の機運。
だが、

「待ってください! もういいでしょう!? これ以上戦って何になるというのです!」

三度割って入ったのは、身を潜め戦の終結を願っていた平和の国の王女だった。
バーサーカーの墓標の横で、争いの愚かさに耐えかねたリリーナは全身で停戦を訴えた。
陰から信長を狙っていた刹那が、ひっそりと場に現れていたアーニャに非難の視線を向けた。
呆れたような顔の口元が動く。私は止めた、と。
レイの姿はない。おそらくバーサーカーを倒した瞬間に撤退したのだろう。
元より戦場で結ばれた同盟関係、咎める気はない。忠勝が新たな武器を得た今、信長は三人で倒せない相手ではない。
それよりも、一度決裂した交渉を再度試みようとするリリーナが問題だ。
しかも始末の悪いことに今も剣を抱きかかえている。あれを信長に奪われるのは避けたいところだ。
刹那と同じことを思ったか、信長もまた黄金の剣に視線を合わせ嗤う。

「小娘……うぬと語る舌など余は持たぬ。大人しくその剣を差し出すがよい」
「……これを渡せば、戦いを止めてくれますか?」

アーニャが額を押さえるのが見えた。刹那もそうしたいところだったが。
実際、これで剣を渡すようなら実力による阻止も辞さないと銃に込める力を強める。

「ハ、この上何を抜かすかと思えば……よかろう、愚昧。うぬを切り刻むのは最後にしてやろうではないか」
「私の話を聞いてください、と言っているのです!」
「語る舌はないと言うたぞ、小娘!」

苛ただしげにライフルを突き付けられ、リリーナが息を呑む。
これまでだ、と忠勝が介入しようとし、刹那もまた信長を撃ち抜くべく拳銃を――



「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!」



ゴバッ、と何かが弾けたように爆風が駆け抜ける。
寸前に聞こえたのは紛れもない、狂戦士の咆哮。
反射的に目をやれば、地に刺さっていたコンテナがゆっくりと持ち上がっていく、否、持ち上げられていく。
予想通り――できれば外れていてほしかった予想通り、その下から狂戦士のサーヴァントが姿を見せる。
完全に粉砕されていた身体はあるがままの姿を取り戻し、どころか消失した頭部さえも再生させて。
誰もが――信長でさえもが、言葉がない。
至近にいたリリーナはそれが現実の光景であると信じられないような眼で、バーサーカーを凝視していた。
可視化するほどに高められた高純度の魔力をまとうバーサーカーが、コンテナを忠勝へ向けて放り投げる。
先ほどは自らが仕掛けた攻撃を返され、だが狼狽することなく忠勝はスラスターを吹かし回避する。

その一瞬。

一瞬で充分だった。

戦国最強の出鼻を挫き、バーサーカーの腕がリリーナへと伸ばされるには。
同時に信長がバーサーカーの狙いを察し、阻むべく銃爪を引く。
バーサーカーの腕が、一息にリリーナの細い腕を掴み――



「え――」


放り捨てた。
その胸に抱いていた、黄金の剣だけを抜き取って。
直後、凶弾が少女の全身をズタズタに引き裂いた。

悲鳴を上げることも、痛みを感じる暇もない、そんな短い時間に。

リリーナ・ドーリアンの短い生涯は、ここで幕を閉じた。





【リリーナ・ドーリアン@新機動戦記ガンダムW  死亡】
【残り51人】



     ◆



「……退くぞ、ホンダム、アーニャ!」

状況は一変した。
どういう理屈か死亡したはずのバーサーカーが蘇生。
そして――リリーナが死んだ。
あまりに現実感のない一連の出来事に、刹那もまた混乱をきたしていた。
復活したバーサーカーの五体に不備はない。
消耗した忠勝と自分達では、抗うことなどできるはずがない――

否、奴をここで討つ――そうかたくなに主張する忠勝に、刹那は叫ぶ。

「駄目だ! お前もわかっただろう――奴が何度殺そうと生き返る秘密を解かない限り、たとえ千回戦ったところで俺達は勝てない!
 今は退いて、対策を見つけ出すんだ! 不死の秘密を解き明かし、奴を確実に仕留めることができる方法を!」

必死の形相で叫ぶ刹那。忠勝の心情は痛いほどわかる。
一度倒したと油断したから――気を緩めたから、あの少女は命を散らしたのだ。言ってみれば、この結果は刹那達の責任。
だからこそ、刹那も忠勝もここで果てる訳にはいかない。
生き延び、奴を倒す方法を見つけ出し、仇を討ち――少女を知る者に、その最期を告げなくてはならないのだから。
悔しげに忠勝が意を曲げ、するすると後退する。
バーサーカーは追ってはこない。さすがに消耗しているのかもしれない。
アーニャもまた後ろについてきている。
見れば信長も不利を悟ったか、刹那達とは違う方向から離脱しようとしていた。

(今は、奴を追う余裕はない……しかしいずれ――!?)

視線を前に戻したとき、一瞬前にはいなかった人影があった。
金髪長身、ライフルを背負う殺し屋のような男。

(レイ・ラングレン――ッ)

動揺した一瞬を突かれ、懐に潜り込まれた。
跳ね上がってくる膝が刹那のみぞおちを強打し、動きを止める。
何のつもりだ、という声すらも出ない。
忠勝が動く一瞬前に、レイが刹那を抱きかかえ動きを封じる。遅滞なく腕が刹那の懐に伸び、持ち歩いていた首輪探知機を掠め取った。
そのまま腰の拳銃へと手を伸ばすレイ。

(させ――る、かッ!)

とっさに、袖口に仕込んでおいたボールペン銃をレイの身体に押し付けた。
圧縮空気で打ち出された9ミリの弾丸が肉を抉る。

「――ぐっ」

呻き声が聞こえた。
レイの背にあったデイパックが地に落ちる。
飛び離れたレイが自身の銃を構えようとしたとき、忠勝の振るう大戦斧が刹那とレイの間に突き刺さった。

これ以上は無益と判断したか、レイが後退していく。
追おうとする忠勝。だがその前に、

「私が追う! あなたは刹那を!」

桃色の髪の少女が取り落とされたデイパックを拾い、レイを追って駆けていく。
それを確認したところで、刹那の意識が暗転した。
気を失った刹那を抱え、忠勝はアーニャ達とは別方向へ向かう。
意識のない刹那を抱えていては、戦闘に対応できないからだ。



こうして、七人の戦場は終焉を迎えた。
倉庫のどこかに発火物があったのだろう。瞬く間に炎は燃え広がり、全てを焼き砕いていく。
残っているのは、騎士王の剣を手にした狂戦士だけ。
追おうと思えば追えた。だが、追えばこの少女の亡骸は骨も残らず灰となるだろう。
生かすつもりはなかったとはいえ、死者を無碍に扱うなど大英霊にはできはしない。
すべてが朱に染まる、その只中で――

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!」

少女の亡骸を抱き上げ、バーサーカーは吠える。
それは勝ち鬨か、それとも死者を悼む鎮魂の歌か。
知っているのは、彼自身だけ。

やがて、影は炎に消えた。


【E-3/工業地帯/1日目/早朝】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:健康、狂化
[服装]:上半身裸(デフォルト)
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night、食料(缶詰セット)
[道具]:なし
[思考]
基本:イリヤ(少なくとも参加者にはいない)を守る。
0:休息し魔力を回復させる
1:立ち塞がる全ての障害を打ち倒し、イリヤの元へと戻る。
2:キャスターを捜索し、陣地を整えられる前に撃滅する。
3:次こそ本多忠勝と決着を着けたい。
[備考]
※“十二の試練(ゴッド・ハンド)”Verアニ3
 ・合計12回まで死亡してもその場で蘇生。状態を健康にまで回復。耐久力を大きく上回るダメージを受けた場合は複数の命のストックを消費。
  現在残り蘇生回数4回。
 ・無効化できるのは一度バーサーカーを殺した攻撃の2回目以降のみ。
  現在無効リスト:対ナイトメア戦闘用大型ランス、干将・莫耶オーバーエッジ、偽・螺旋剣(カラドボルグ)、Unlimited Brade Works
            おもちゃの兵隊、ドラグノフ   大質量の物体
 ・首輪の爆発での死亡時には蘇生できない。
※参戦時期は14話 理想の果て直後です。
※エクスカリバーが黒く染まっています。

※E-2南西部から中央部にかけてバーサーカーが通った破壊跡ができました(多数の家屋・電柱・街路樹・線路の残骸あり)。
※銃撃により一度、コンテナにより一度、都合二度死亡しました。




【E-4/市街地/1日目/早朝】

刹那・F・セイエイ@機動戦士ガンダム00】
[状態]:疲労(大)、精神的ダメージ、イノベイターとして半覚醒 気絶
[服装]:私服
[装備]:ワルサーP5(装弾数4、予備弾丸27発)@機動戦士ガンダム00、ボールペン型の銃(0/1)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~1(確認済)、9㎜ピストル弾×5
[思考]
基本:世界の歪みを断ち切る。ダブルオーガンダムを奪還し島から脱出。
0:…………
1:宇宙開発局→都市部 の順に移動し、ガンダムを捜索。
2:専守防衛。知り合い、無力な民間人がいれば保護する。
3:サーシェス、グラハム、トレーズ、信長、光秀、バーサーカーを警戒。政宗は保留。
4:バーサーカーの情報を広め、また不死の秘密を解くため情報を収集する。
5:リリーナの知り合いを探し、その最期を伝える。
6:アーニャが気掛かり。
[備考]
※参戦時期はセカンドシーズン第23話「命の華」から。
※帝愛グループをイノベイターと関わりのある組織、あるいはイオリア計画の遂行者ではないかと疑っています。
※脳量子波により本多忠勝の意思を理解できます。ただし刹那から送信はできません。
 脳量子波の受信範囲は広くても声の届く範囲ほどです。
 脳量子波は忠勝が「考えたこと」だけが受信されます。本人が望まないことは伝わりません(忠勝の意識レベルが低下している時を除く)。


【本多忠勝@戦国BASARA】
[状態]:疲労(大)、胸部装甲破損(鋼板などにより応急修理済み) 兜、肩の装甲が一部破損 全身に細かな傷
[服装]:全身武者鎧
[装備]:武田信玄の軍配斧(石動配)@戦国BASARA
[道具]:デイパック
[思考]
基本:徳川家康(参加者にはいない)の遺志を継ぎ戦国最強の名に恥じぬ戦いをする。
0:まずは刹那を安全な場所まで移送する。
1:戦いに乗った者、主催者グループを打倒する。
2:刹那に伴い行動する。真田幸村と合流したい。
3:バーサーカーとはいずれ決着をつけたいが、まずは不死の秘密を解く。
4:信長は必ず倒す。
[備考]
※参戦時期は第12話で安土城へと向かっている途中。
 尚、後述の飛行機能以外は主催者の力で修復された模様。
※バックパック内の装備は没収されているため、原作ゲームにおける攻撃形態、防御形態、援護形態使用不可。
 他、ゲーム版での固有技、バサラ技が使えるかはお任せ。
※主催者側から飛行機能に制限が課せられています。短時間低空飛行には問題ありません。

※対ナイトメア戦闘用大型ランス(コーネリア専用グロースター用)@コードギアス 反逆のルルーシュR2 は破壊されました。



     ◆



後方から熱気が押し寄せてくる。
振り返れば先ほどの倉庫一帯が炎上していた。もう少し離脱が遅ければ、レイも危なかっただろう。
充分距離を稼いだと見て、レイは足を止める。
失態だ――先の戦闘を回想する。
目当ての物を奪ったは良いが、新たに手に入れたデイパックを落としてしまった。
あの眼鏡の男から奪ったものはさすがにライフルと同時に持ち歩くのは困難だったのだ。
レイの趣味にも合わないものだったので、失ったことは別に問題はない。だが誰かに拾われることを考えると安穏としてもいられない。
麻雀牌、というものは身体の各部に仕込んでいたので失うことはなかったが。

まあ、結果的にあの戦闘のリターンは大きいと言っていいだろう。
首輪探知機。ある意味ではどんな武器よりも役に立つ。
刹那がふと零したその一言、レイは聞き逃してはいなかった。これがあればレイの目的を達することも格段に楽になる。
未だどこにいるとも知れぬ、妻の仇――
奴に比べれば、先ほど相対した者達など何の価値もないのだ。

(待っていろ、カギ爪――すぐに、殺しに行ってやるぞ……!)

未だ絶えぬ復讐の炎。
だが、既にその願いは叶うことはない。レイがそれを知るのは放送が終わってからだろう。
届かない願いを胸に、男はただ、歩み続けていく。



【F-3/工業地帯/1日目/早朝】

【レイ・ラングレン@ガン×ソード】
[状態]:疲労(大) 肋骨を数本骨折 左肩に銃創(処置済み) 脇腹に浅い銃創
[服装]:武士のような民族衣装(所々破損)
[装備]:ベレッタM1934(0/8)、平バール@現実
[道具]:基本支給品一式×1、デイパック、ドラグノフ@現実(3/10)、ドラグノフの弾丸(20発)、9mmショート弾(76発)
     ブラッドチップ・3ヶ@空の境界 、GN首輪探知機@オリジナル、麻雀牌×31個
[思考]
基本:カギ爪の男を八つ裂きにする。
1:首輪探知機を利用し、カギ爪を捜索する。
2:他者と遭遇した時、勝算があれば戦うがリスクを感じた時は撤退も考慮する。
3:利用できるものは利用する。
4:ヴァンは出会えば殺す。だが利用できるなら利用も……。
5:時間があれば日が沈む前に円形闘技場に寄る。
[備考]
※参戦時期は第8話~第12話のどこかです。

【麻雀牌】
とある世界で一般的な娯楽となった麻雀に使用する牌。
ただしガンダニュウム合金製で、非常に硬い。



     ◆



「お待ちください、信長公」

倉庫より撤退した信長を、ある声が呼び止める。
既に相当の距離を稼いだので馬を休めていた信長は、軽い驚きとともに来訪者を迎え入れた。

「何用ぞ。まさか一人でこの征天魔王の首を取りに来たか?」
「滅相もない……私はあなたにお仕えするために、こうして馳せ参じたのです」

言って、跪いた桃色の髪の少女――アーニャ・アールストレイム
レイを追うと見せかけ、反転し織田信長の後を追って来たのだ。

「仕える……だと?」
「はっ。恭順の証に、これをお納めくださればと」

デイパックから抜き出されたのは五尺七寸の長大な刀。
名を物干し竿――冬木市の聖杯戦争において、アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎が愛刀として活躍した刀。

「信長公は剣を必要とされている――と、愚考しましたゆえ」
「ほう……」

少女の差し出す刀を受け取り、抜刀する。
長大な刀は、信長の剣気を受けても砕けることなく冷たい光を放つ。相当の業物、と評せる逸品だ。
満足げに刀身を眺めた信長は、しかし鞘に納めず少女の首筋へと白刃を突き付ける。

「余があの小娘に何と言ったか、忘れた訳ではあるまい。臣下など必要としていると思うてか?」
「信長公のお力は重々承知の上でございます。が、この島は広く、人も多い。些事にて公の御手を煩わせることもありましょう。
 ですから私が公の意を代行する手となり、公の覇道の露払いをしたいと考えます」

刀は白磁のような肌を浅く切り裂き始めている。
だが寸毫の恐れも見せず語る少女に、信長は微量の興味を抱いた。
剣を必要としている――つまりは、自らを剣として扱えということでもあったのだ。

「差し出がましいと承知の上で申し上げます。信長公は、ただあの主催者の言うなりになるつもりなど毛頭ないのではありませんか?」
「無論よ。有象無象どもを間引いた後は彼奴らとて生かしては置かぬ。この征天魔王に弓引いたこと、死を以て償わせてやるわ」
「恐れながら、信長公。たとえ公のお力を以てしても、お一人でそれを成すは困難であるかと」
「……何ィ?」

ぎろり、と信長のプレッシャーが増す。
無礼なことを言うようならその首刎ねんと、刀がさらに前進する。鮮やかな赤が溢れ出し、白の領域を蹂躙する。
が、少女はやはり冷や汗一つ浮かべずに。

「たとえばこの首輪。これがある限り、公の刃がどのように振るわれても奴らに届きは致しませぬ。ですが私が――いえ、私の知人なら、この首輪も外すことができるかもしれません」

初めて少女が顔を上げる。
まっすぐ信長を射抜く、その瞳――まるで底知れない湖のように深い。

「また、軍略知略に長けた者、将兵として優れたる者を存じております。そのような者を駒に用い信長公の軍団を築くことこそ、あの主催者へ一撃を与える最善手かと……」
「余の……軍団、とな……?」
「はっ。もちろん公の意に沿わぬ者は斬り捨てればよろしいが、そうでなき者……才のあるものを登用するは決して愚策ではありませぬ」
「フン……口が回るな、娘。だが一理ある……」

戦国最強に、死しても黄泉返る亡者。
この島には信長をして一筋縄ではいかない者が集っているようだ。
そのような者達をいちいち相手にしていては、いつまでたっても天下統一などできるはずがない。

「……よかろう、娘。うぬの進言を聞き入れようではないか。名は何と申す」
「この少女の身体の名は、アーニャ・アールストレイムと申します。ですが……私めのことはこうお呼びください」

立ち上がる少女。
少女らしからぬ妖艶な雰囲気を漂わせ、薄く微笑む。





「マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア――と」



     ◆


しかし、似ている……。
暴力的なまでの無二の王たる自負、自らへの絶対的な自信。ついでに声。
まるであの人のようだと、ここにはいない主君のことを想う。

試し切りとばかりに握る刀で電柱街灯をばっさばっさと斬り捨てていく征天魔王の姿を眺めつつ、マリアンヌは思考する。
圧倒的な暴威を示し、あの戦場を支配していた男――織田信長。
彼女が刹那らと別れ信長に恭順を申し入れたのは、もちろんのこと本心からではない。
レイ、信長と戦い、またホンダムやあの狂戦士の争覇を間近で見てわかった。
かつて騎士として名を馳せた“閃光のマリアンヌ”と言えど、この戦場では決して強者ではない。
リリーナのような戦う術を持たない者を弱者と言うなら、なるほどマリアンヌや刹那、レイはたしかにその範疇には収まらない。
だがそれはあくまで『人が鍛えて到達できる領域』にある強さだ。

『戦国最強』『征天魔王』『狂戦士』、その誰もがナイトメアを以てしなければ相対すること敵わぬような人外の武を誇っていた。
彼らに比べればマリアンヌとて狩られる側――リリーナと同じ弱者でしかない。
しかるに、この戦場を死力を尽くし戦って生き延びようとするは愚の骨頂。
より大きな戦力の庇護の元、自らを安全な立ち位置に置き続けるのが最適だとマリアンヌは判断した。
だが、刹那やホンダムと別れたのは、彼らを裏切ったことを意味しない。

あくまで彼女が目指すモノは生還、そして帰還した世界での『アーカーシャの剣』の発動だ。
そのためには自身、そしてC.C.がここで潰えることがあってはならない。
最悪の場合、自身が優勝しC.C.を蘇生させる――眉唾な話ではあるが、不死者C.C.を殺すことができるのなら、その逆もまた可能なのだろうと推定する。
可能性の高いプランであればその善悪は問わないスタンス。
兄と共に生きられる優しい世界を願った娘、そして妹の生きる世界を作ろうとした息子。彼らに血を分けた実の母は、しかし人間的な倫理道徳など持ち合わせてはいなかった。
この島にその当の息子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは存在している。それを知ってなお、母が優先するのは自身と魔女の安全であった。
もちろん、率先して見捨てるという訳ではない。
いまだ未熟といえど、ルルーシュは何の後ろ盾もない一学生の身でブリタニア帝国に挑み、今や反乱の代名詞たるゼロとして世界中に知られたほどの逸材。
彼の親友である枢木スザク――今はルルーシュに敵対するナイトオブセブン――もまた、腕利きの騎士。
彼らの関係を俯瞰しているのはこの場では己一人とマリアンヌは自負している。対立し足並みの揃わない彼らを御することは充分に可能だろう。

とにかく、まかり間違ってもC.C.を信長に殺させる訳にはいかない。
あの魔女は自身大した能力がある訳でもないくせに、誰に対しても不遜に接する。この暴君と遭遇していれば十中八九出会って数分で首を刎ねられるだろう。
スザクの身体能力・KMF操縦能力は特筆すべきものだが、ユフィを守れなかったという負い目があるからこそ操りやすい。
ルルーシュの知略はマリアンヌとて及ばぬところ。知る限りでも比肩しうるのは第二皇子シュナイゼルに夫である皇帝くらいのものだろう。
そして、その真価ともいえるのが絶対遵守のギアス。あの力さえあればいくらでも手駒を増やすことができる。
信長には当然ながらギアスのことを教えるつもりはなかった。
マリアンヌが信長に求める役割はあくまで自身の庇護。
信長を旗印にし、マリアンヌにとって危険あるいは不利益な者は始末させ、そうでない者は配下にする。
首尾よくC.C.、ルルーシュ、スザクと合流できたのならば斬り捨てるだけ。
ギアスが通用するなら手駒にし、通用しないのなら実力を以て排除する。
いかに信長とて、これから先もあのような無謀な戦いを繰り返せば必ず疲弊する。そこを従順な臣下であったはずの己が寝首を掻けば、魔王とて討ち取れるだろう。
信長と共にいるとき刹那らと再び会うことがあれば……そのときは、勝ちそうな方向に乗るだけだ。

信長が感触を得たか刀を収める。
さてどうするか、とマリアンヌはふと考えた。
いつもより表に出ていられる時間が長い。
この肉体の本来の主であるアーニャ・アールストレイムは今、眠りについている。
レイと信長が乱入したとき、アーニャの意識は途絶した。気がついたとき、表層にいたのはアーニャではなくマリアンヌだった。
主催者はギアスに干渉する方法でも持っているのだろうか。C.C.と接触した訳でもないのにこうも自由にマリアンヌの意識が発現するのは通常ではありえないはずなのだ。
おそらく、今マリアンヌが意識を失えばアーニャが出てくるのだろう。

自らの意思で交替することもできるが、今はまだ早い。
あの少女はリリーナに僅かながら思慕の念を抱き始めていた。
清廉な少女が悪辣極まる戦国魔王に代わっているのだ、動揺するどころではすまい。
信長もまた、臣下になりたいと言った少女が豹変しそんなことは知らないなどと言えば即座に斬り捨てるだろう。
少なくとも信長と共にいる間は変わる訳にはいかない。

だがこの頭痛――マリアンヌが意識を取り戻してからずっと感じているこの痛みがある限り、いつかは交替せざるを得ないときが来る。
そのとき、自身に安全な環境を整えておけるかが勝負だ。
始末の悪いことに先の戦いの記憶はアーニャにはない。マリアンヌはその限りでないのは、ひとえに精神の上位体であるがゆえ。
当然、刹那らと再開すればマリアンヌが出ざるを得ないだろう。あの戦いを生き延びたのに『お前達は誰だ』などと言えば確実に怪しまれる。
それ以外、見知らぬ参加者と友好的な関係をアーニャが築いてくれれば、マリアンヌもそれに乗じることができる。

信長が歩み寄ってくる。
まずはこのいつどこで爆発するとも知れぬ砲弾を、少なくとも我が身の方へ向かないように仕向けなければいけない。
何、難しいことではない――なにせ自分はあの不死者の片割れV.V.をすらも長きに渡り欺いていたのだ。
服従心などかけらもない。だが表情はあくまで泰然と、そして決して心中を明かさずに。



魔王と騎士の語らいが始まる。





【E-2/橋/1日目/早朝】

【織田信長@戦国BASARA】
[状態]:疲労(大) 全身に裂傷 マントがぼろぼろの状態
[服装]:鎧
[装備]:物干し竿@Fate/stay night、おもちゃの兵隊(0/30)@とある禁書の魔術目録、伊達軍の馬(負傷)@戦国BASARA
[道具]:基本支給品一式、予備マガジン92本(合計100本×各30発)
[思考]
基本:皆殺し。ただし使えそうな者は臣下にする。拒めば殺す。
1:ひとまずはマリアンヌの進言を聞く。
2:目につく人間を殺す。
3:信長に弓を引いた光秀も殺す。
4:もっと強い武器を集める。
[備考]
※光秀が本能寺で謀反を起こしたor起こそうとしていることを知っている時期からの参戦。

【物干し竿@Fate/stay night】
五尺余りの備中青江。
アサシンのサーヴァント・佐々木小次郎が愛刀。
セイバーの振るうエクスカリバーと対等に打ち合えることからして、かなりの業物であるようだ。


【アーニャ・アールストレイム@コードギアス 反逆のルルーシュR2】
[状態]:疲労(中)、マリアンヌ状態、頭痛
[服装]:ラウンズの正装 (排水の汚れ)
[装備]:ベレッタM92(14/15)、AK-47(0/30)、アーニャの携帯@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ベレッタの予備マガジン(4/4)、AK-47の予備マガジン×4(7.62mm弾)、麻雀牌×3
[思考]
基本:主催者に反抗する。
1:状況を把握する。
2:スザクと合流する。
3:リリーナの言葉に少しの興味と少しの警戒。
[備考]
※リリーナの死には気づいていません(アーニャ)。

  • マリアンヌの思考
基本:C.C.と合流したい
1:信長に仕えるフリをして身の安全を確保する。
2:使えそうな者は信長の臣下に推薦する(C.C.、ルルーシュ、スザク優先)。
[備考]
※少なくとも21話より以前からの参戦です。
※マリアンヌはCの世界を通じての交信はできません。
 またマリアンヌの意識が表層に出ている間中、軽い頭痛が発生しているようです。
※意識の上位はマリアンヌであり、マリアンヌはいつでもアーニャと交代することができます(その度に頭痛の頻度・強さは増す)。



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099:煉獄の炎 (2) 刹那・F・セイエイ 110:決意の火
099:煉獄の炎 (2) 本多忠勝 110:決意の火
099:煉獄の炎 (2) レイ・ラングレン 114:夢を過ぎても(前編)
099:煉獄の炎 (2) 織田信長 113:過去 から の 刺客
099:煉獄の炎 (2) リリーナ・ドーリアン GAME OVER
099:煉獄の炎 (2) アーニャ・アールストレイム 113:過去 から の 刺客
099:煉獄の炎 (2) バーサーカー 125:右手に剣を左手に死者を 心に激しい殺意を抱き締め
099:煉獄の炎 (2) 伊達軍の馬 113:過去 から の 刺客


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最終更新:2009年12月16日 11:16