試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(前編) ◆0hZtgB0vFY




 水飛沫を浴びた裸体は昇ったばかりの陽光を照り返し、夜を徹して動き続けた目に眩しく映る。
 一糸纏わぬ姿で腰まで水に浸かり、ゆっくりと水面に沿うよう手を伸ばす。
 火照り赤みを帯びた肌に、染み渡るような冷たさが心地良い。
「……うぁっ……」
 時折全身を貫く痺れるような感覚は、苦痛ではなく悦楽を誘う。
 全身を水下に埋める。
 興奮と歓喜に上気していた頬が、今度は刺すような冷たさに怯え震える。
 左手の甲に右手の平を置く。
 ゆっくりと滑り上げ、肘裏、二の腕、肩、そして胸元を這わせた後、今度は下へとずれ動く。
 体の正中を嘗め下り、鳩尾、腹部、そして……
「んふぅっ……」
 水中より顔を上げると、右手の平に、愛おしげに舌を這わせる。
 動くのに飽いたのか体中を弛緩させ、全てを流れるに任せた。
 ぽかっと顔のみが浮いていたのが、徐々に胸元から下へ、下へと浮かび上がる。
 完全に水平になる頃には長髪は大輪の花のように広がり、くすんだ青に彩を添える。
 世の女性が揃って羨む程の白き肌を惜しげもなく陽光に曝け出すが、惜しいかな白磁には月こそが相応しい。
「……んっくっ……」
 僅かな刺激すら拾ってしまう敏感な体は都度僅かに水面下へと沈み込むが、それもまた雅なりと逆らう事もせず為されるがまま漂う。

 どれ程そうしていただろうか。
 頃合は良しと身を起こし、ざぶざぶと水から上がる。
 均整の取れた肉体は装飾など不要とその美しさをひけらかす。
 不健康とすら思える程の白い肌の下には、しなやかでいて強い筋肉が脈打っている。
 ただ歩いているだけで猛きバネを予感させる両の足や、何気なく振られる腕の位置が武術の理にのっとっていたりと、わかる者が見ればただものならずと見てとれよう。
 局部を隠す事すらせぬのは余程の自信があるせいか。
 確かに、それは繊細な容姿に似合わぬ剛直、聳え立つ五重塔、天をも貫く神の槍であろう。
 全身に痛々しい打撲傷を負っていながらも、その男、明智光秀は確かに美しかったのだ。

 明智は近くの民家にあった衣服を身につけると、どうにも収まりが悪いのか首を何度も傾げる。
 上下濃い黒のスーツ、中には律儀に白いワイシャツを着込んでいるが、流石にネクタイまではしていない。そもそもやり方がわからぬのかもしれない。
 部屋に張ってあったポスターを参考に身につけてみたが、着物より随分と着易いし、何より生地が良い。
 どう織ってあるのかもわからぬ細かな織り目といい、まるでざらつく事のないすべすべの触れ心地といい、明智の知る衣服より数段上等な造りとなっていた。
 襟元は少し苦しいせいかボタンを二つ外している。
 当人に良し悪しの判別はつかないが、細身の体のせいか、すらっと伸びた長い足のせいか、はたまた背なにかかる程の長髪故か、ラフに着こなしたスーツはこれ以外無いというぐらい明智に似合っていた。
「さ、て、どうしたものでしょうか」
 荷物を手に取った明智は、そう一人ごちた。



  ◇



 利根川は意を決して扉を開いた。
 案の定、まさか人が居るなどと想像もしていなかった衛宮士郎は、驚き大きく後ずさる。
「うわっ! 人!?」
「ああそうだ。わしの名は利根川幸雄。このゲームの参加者の一人だ。お前は?」
 うろたえながらも士郎はしかしきちっと名乗り返す。
「え、衛宮士郎です。えっと……そ、そうだ。利根川さんは、その、殺しあって生き残ろうと思っていますか?」
「わしのような老人に殺し合いなど出来てたまるか。お前もそうであってくれるとありがたいのだが」
「も、もちろんですよ! 殺し合いなんてしてたまるか!」
 相貌を崩した利根川は、隣の部屋に居た事と申し訳ないが聞き耳を立てていた事を正直に口にする。
 事情を察した士郎は快くこれを許し、部屋の中にいる黒子と澪に声をかけ、四人での話し合いの場が設けられた。
 激しい動揺を見せていた澪も、黒子の慰めのおかげか既に随分と落ち着いていた。
 簡単な自己紹介を交わした後、利根川は皆が先走った行動など起さぬよう注意深く話し始めた。
「まず最初に明言しておきたい。わしには人殺しなぞ出来んし、そのつもりもない。それでも死にたくは無いので何とかこの地を脱出したいと思っている」
 改めてそう口にした後、核心に入る。
「わしはこのゲームを企画進行している『帝愛グループ』に所属していた」
 三人が息を呑むのが利根川にもわかったが、すぐに畳み掛けるように言葉を繋ぐ。
「だが、奴等にとって好ましくない存在であったわしは、今こうしてこの地に首輪付きで放り出されている。もしお前達が脱出をと考えているのであれば、わしの知識が役に立つかもしれん」
 すぐに黒子が口を開こうとしたが、利根川はそれを手だけで制する。
 僅かに腰を落とし、震える澪の前に立つ。
「驚かしてしまったな、すまない。だが最初に言った通り、わしは誰も傷つけるつもりはないし何とか皆で脱出をと考えておる。信じては、もらえんか?」
 先程士郎にも見せた笑み、人の心をくすぐるあけっぴろげな笑顔には、親しみや友愛といった感情が満ち溢れていた。
「え……えと……」
「はははっ、構わぬよ。無理はせずとも少しづつわかってもらえればいい」
 利根川幸雄は生まれながらにして帝愛のナンバー2であったわけでは無論無い。
 彼にも若い頃はあり、下積みの時代があり、部下より上司の方が多い時代はあったのだ。
 下手な会社なぞ比較にならぬ程厳しい競争を勝ち抜いてきた彼が、ギャンブルに強いだの、会長の機嫌取りが優れているだののみの男なはずはないのだ。
 事に人をまとめるといったスキルを、膨大な配下を抱える帝愛のナンバー2まで上り詰めた男が苦手としているはずがない。
 それは、非現実を日常としていた黒子や、歪んでいると評される士郎が相手でも通用する、いや、人間が相手であるのなら通じぬ相手など居ない応用力に富んだスキルだ。
 集団の中で自分の望むポジションを得るよう立ち回るなど、彼にとっては息をするのと同じぐらい自然に行える事であろう。
「利根川さん、それで帝愛というグループはそもそもどういった存在なのか……」
「あの遠藤とかインデックスっていうのは……」
「…………(もじもじおどおど)」
 三人(二人?)の質問にも丁寧に答え、簡単な自己紹介と共に四人は帝愛に関する共通認識を得た。

 帝愛グループとは財閥のような利益を追求する集団であり、関わる事業は多岐に渡る。
 カジノなどのギャンブルも範疇であったが、それが高じてのゲームである可能性が高い。
 ただ利根川が居た頃は少なくとも魔法などという話は無かったし、ましてやここまで露骨な形で法を犯すような事もなかった。
 遠藤もインデックスも聞いた事の無い名前であり、二人はあくまで表に出る顔であって恐らく企画運営している者は他に居るだろうと。

「随分と悪趣味なグループにいらっしゃったのですね」
 黒子の言葉に利根川は苦笑で返す。
「事業は多岐に渡ると言ったろう。右手と左手が何をやっているのか知っているのは極一部のみだ。元々ギャンブル部門と金貸し部門はリスキーすぎてわしは好かんかった」
「後ろ暗い気配ぐらいはわかりそうなものですけど」
「だとしても家族や部下の生活を放って仕事を投げ出す真似も出来ないし、確たる証拠を手にしているわけでもないしな。まだ……若い君達には難しい話かもしれんが」
 利根川の世知辛い話に重苦しい空気が漂うが、殊更に明るく利根川は続ける。
「だが、事ここに至ってはそんな事も言ってられん。大人は、大人の責任を果たすとしよう」
「アテにさせていただきますわ」
 利根川に非難出来る部分はあるにせよ、彼の立場も理解出来た黒子はそれ以上の追求を行わなかった。
 無論全てを無条件で信用するつもりもないが、少なくともこうして堂々と姿を現し、自らに不利とも思える情報をすら忌憚無く提示する姿勢からは、疑わしき所作は見受けられなかったのだ。
「あっ、あのっ……」
 不意に、今にも消え入りそうな声が聞こえた。

 澪は熱心に利根川から様々な事を聞きだそうとしている黒子と士郎を見ている内に、自分が何も出来ず怯えるのみな事を恥ずかしいと思うようになっていた。
 同い年の士郎はこんな信じられない事件に巻き込まれているというのに、自分の意見をはっきりと持っていて、相手が大人でも物怖じせずに話しかけている。
 同じ女の子でしかも年下の黒子に至っては、あの怖い黒服の人相手に堂々と渡り合うなんて真似までしていた。
 翻って自分はどうだと考えた時、これを恥じる程度には澪は自尊心を持ち合わせていた。
 だから、ともかく、口を開こうと思った。
「あっ、あのっ……わ、私も、手伝う。何が出来るか、わかんないけど……その……」
 何と言ったものかわからぬままに、どもりがちにぽつりぽつりと告げる澪。
 黒子と士郎は同時に笑みを見せ頷くと、澪はやはり顔を赤らめるが、今度は俯いたりはせず照れた顔のまままっすぐに三人を見返していた。
 放送が、船内に響き渡ったのはこの直後である。



  ◇



 黒服からギャンブルの内容を確認したグラハムと衣は、利根川が帝愛の人間であるとの言葉は真実だと確信する。
 そもそも、こんなゲームに無理矢理参加させられた者達の前で、帝愛の人間であったなどと口にしたらいきなり袋叩きにされてもおかしくはない。
 黒服のように自身を守る何かが無ければ、到底出来る事ではなかろう。
 ついでとばかりに利根川という人物について訊ねてみたが、やはり「知らん」とにべもない返事である。
 ではと戻ろうとした二人の足を止めたのは、ギャンブル中でも聞き落とす事のないよう、備え付けの船内放送からも聞こえるようになっていた定時放送であった。
 グラハムは問題無い。未掲載の人物にも死者にも知り合いは居ないのだから。
 衣はどうかと様子を伺ったグラハムは、彼女が両手をきゅっと握り締めたまま震えているのを目にする。
「……知り合いが居たのか?」
 すぐに返事があったのがグラハムには意外であった。
「つい先日、大会で戦った者の名が……池田は、あまり覚えておらぬが、加治木は中々に猪口才な奴であった……」
「麻雀の大会か?」
「うむ……正直、信じられぬ。あの時卓を共にした者が既におらぬなどと……」
 透華を失った瞬間を思い出したのか僅かに身震いすると、すがるようにグラハムを見上げる。
 潤んだ瞳で、しかし訊ねる事すら憚られるのか口を真一文字に引いたまま、グラハムの瞳をじっと見据える。
 グラハムは、なるほど、子供を持つというのはこういう事かと小さく息を吐く。
「私の名はグラハム・エーカー。フラッグファイターにして、宿敵ガンダムを倒す者。愛成就するその日まで、決して倒れぬ者の名だ」
 昂然と胸を張るグラハムに、ただそれだけで衣が笑みを取り戻せたのは、為した男がグラハム・エーカーであるからだろう。
 例え言葉の真意はわからなくても、グラハムが自らに刻んできた生き様が、発する言葉に覇気をもたらす。
 ガンダムを倒す、その為だけに幾たびも死線を潜り抜け、更なる死地へと身を躍らす勇猛果敢なる兵士の言葉が、凡百のソレと同等であろうはずがない。
 恐れる気も無く死地へと向かう勇敢な軍人達の信頼を一身に受けて尚、小揺るぎもせずグラハム・エーカーであり続けた男は、このゲームの中にあっても、やはりグラハム・エーカーのままであった。
「無用な心配は兵士への侮辱だぞ衣」
「……うんっ!」
 戦友からの信頼とはまた別種であるが、衣が向ける希望に満ちた視線は、グラハムに新たな力を与えてくれると信じられたのだ。
 とても居心地悪そうにしている黒服を他所に、ほほえましく見つめ合う二人。
 頼むから他所でやってくれと嘆く黒服へのフォローは、思わぬ所からなされた。
「む?」
 グラハムがその気配に気付いて目をやると、少女が階段を駆け下りギャンブルルームへと姿を現したのだ。
「ひっ!?」
 グラハム達の姿を認めるや、小さい悲鳴をあげギャンブルルームを通り過ぎ、更に下へと逃げていく。
 恐怖に歪んだ顔が印象的であった少女。咄嗟の事にどう判断したものかグラハムが迷っていると、上から更に別の人間が駆け下りてくる。
「秋山! おい秋山待てって!」
 少女と同い年ぐらいの男が現れると、迷っていたグラハムも行動を起す。
 銃を抜き、強い口調で静止するよう警告すると彼は足を止めた。
「君が誰かは知らないが、怯え惑う少女を追いかけるのは一体どういう理由からだ?」
 男、衛宮士郎は人が居た事に驚いた様子だったが、慌ててグラハムの行動を咎める。
「お、おいっ! ここで戦闘は厳禁だろ! それ撃ったらアンタが危ないぞ!」
「民間人を守るのが軍人の役目だ」
 ちらっと黒服を見て動く様子が無い事を確かめたグラハムは、薄笑いを浮かべ士郎に向き直る。
「……やはり相打ちに持ち込む程度の猶予はあるようだな」
「待ってくれ! 誤解だって! あの子知り合いが放送で呼ばれたせいで錯乱してるんだ! 今の状態で外になんて出たら彼女が危ない!」
 与えられた情報は少ないが、時間も無い事を理解したグラハムは衣を見下ろす。
「わかった。衣はここで隠れているんだ。黒服が何を言おうとギャンブルには手を出すんじゃないぞ」
 衣もまた状況を把握したのか、何かを言いたそうにしつつも口をへの字に曲げて我慢する。
 グラハムは良い子だと衣の頬に手をやると銃を懐に収める。
「すぐに戻る。急ぐぞ少年」
「え?」
「私も共に行く。君が不埒な行為をせぬよう監視する意味でもな」
「え? え? あ、ああっ、えっと、……はい」
 急な展開に頭がついていってない士郎であったが、急がないと彼女が危険であるので色々聞きたい事を後回しにして一緒に追う事にした。



  ◇



 部屋に残るは二人。白井黒子と利根川幸雄。
 衛宮士郎に後を任せた黒子は、改めて放送の内容を間違えぬようメモ帳に書き記す。
 ただえんぴつの走る音のみが妙に大きく部屋に響く。

 ぱきっ

 芯が折れた音。
 こちらは名簿に直接書いていた利根川が音に気付き顔を上げるが、シャープペンに持ち替える黒子を見て、問題無しと作業を続ける。
 利根川は随分と筆の遅い黒子に合わせて時を待ち、メモ帳をしまった所で声をかけた。
「そちらで知人が呼ばれるような事は無かったのか?」
 利根川は黒子への評価を一段階下げる。
 予期されていたはずの質問なのに返事が遅すぎた。
「……いえ」
「そうか」
 以降言葉を発する事もなく、中野梓の名が続けて呼ばれた事で大きく取り乱し部屋から逃げ出していった澪を待つ。
 衛宮士郎は健康そうな若い男性であり、同い年とはいえ澪に追いつくのも難しくは無いだろうと、その点に関して特に心配はしていなかった利根川は、にも関わらず無用に不安を感じているのか無言になった黒子に僅かながら失望する。
 賢すぎるのも良くないが、かといって愚かすぎるのも考え物だ。
 小娘一人が喚き逃げ出した程度でここまで大人しくなるなどと精神が脆すぎる。今までは強がっていただけか。
 無言のままでいれば向こうから耐え切れず発言すると踏んでいたのだが、どうやら利根川の方から話を振らねば進まないと口を開きかけた所で、黒子はぼそっと呟く。
「一人、居ました。すみません」
「ん?」
御坂美琴14才、エレクトロマスターのレベル5、極めて強力な電撃を操ります。破れ死亡したという……言葉が信じられぬ程に」
「電撃? エレクトロ……何だって?」
「自在に電気を操る超能力です」
 素っ気無くそれだけを伝えると、席を立って一言だけ利根川に断る。
「顔を、洗ってきます」
 有無を言わせず立ち去る黒子に、利根川は良いとも悪いとも答えず見送った。
 廊下の足音に聞き耳を立て、不審な挙動が無い事を確認すると、トイレにでも行ったかと思考を継続する。
 考えるべき事は山ほどあるのだから。

 客室にトイレは備え付けられていたが、年頃の少女が出会って間もない男性が居る中これを使用出来ぬのも道理であろう。
 自身の持つ超能力に関して一切伝えられていない利根川は、走り去った澪を追うのに黒子の能力が適しているにも関わらず使用しなかった点も追求しようが無いはずだ。
 そんな言い訳を自分に施し、ここでならばと今にも破裂しそうであった理性の檻の封を切る。
 こんな状態で、瞬間移動など出来るはずがない。
 女子用トイレ洗面台の前に立ち、溜めに溜め込んでいた毒気を肺が空になる勢いで吐き出す。
 目の焦点が合わず、呼吸も千々に乱れ、恐らく脈拍すら正常を保ててはいまい。
 血管が浮き出る程に充血した目、荒々しく上下するもいからせたまま落ち着く気配すら感じられぬ両肩、可憐さと美しさを伴った容貌は見る影もない程醜く歪んだまま凝固している。
 爪が食い込む程握り締めた手、黒子はこれを振り上げ、正面の鏡に叩きつける。
 手の甲ではなく並んだ四本の指側を鏡にぶつけると、歯止めが利かなくなったのか逆の腕でも同じ事を始める。

「馬鹿っ!」

 壁にすえつけられた鏡は、破壊を目的とせぬ打撃では微動だにせず。

「馬鹿っ! 馬鹿っ! 馬鹿嘘つきっ!」

 続いて放たれた左手は、それと意識せず拳槌にて行われ、みしっと鏡は音を立てる。

「嘘ですわっ! こんなヒドイ嘘っ! ひどすぎる嘘をっ!」

 繰り返される衝突は、黒子の意識によらず効果的な打撃を生み出す時もある。

「どうしてあんな事言うんですの!? お姉さまは、私は、そこまで恨まれるような事をしましたか!?」

 手ごたえが変わる。そこからは早かった。

「嘘つきっ!」

 一筋の亀裂。

「嘘つきっ!」

 四つ又に別れ、更に八つに。

「嘘つきいいいいいいっ!!」

 粉々に砕けた鏡。黒子は、洗面台に縋りつくように崩れ落ちる。
 呼吸をすら放棄した運動は容易く限界を迎え、後に意識の空白を残す。
 失われた酸素を充分に取り戻した黒子が、最初に思ったのは両手に感じる鈍い痛み。
「……どう、しましょう、これ」
 砕けたガラスの破片で切れた両手。
 激昂が収まりまず気にかかったのは、自身の痛みと他人から見られる自分の姿である事が、黒子は無性に悲しかった。



  ◇



 グラハム達が去った後、残された衣はというと誰が来ても良いように隠れる場所を探していた。
 まず目に付いたのはルーレットを行う台の下。
 大きめの台は彼女の小柄な体が隠れるに充分であったが、下の柱が随分と太く、台自体も低く作られているせいかうまく入りきる事が出来ない。
 それでも苦労して奥へと入り込むと、ようやく一安心とばかりに息をつく。
 黒服男は参加者達に味方する事を当然禁じられていた。
 だが、あまりといえばあまりにすぎるので思わず口をついて出る。
「……おい、尻が丸見えだぞ」
 スカートで覆われてはいるが、身をかがめているせいかお尻のラインが綺麗に写る。
 無論こんなガキに興味なぞない黒服にそういった意図は無いし、むしろあったら放置しているだろう。
「うひゃうっ!」
 大慌てでもぞもぞと動くが、やはり隠れきれず、逆にスカートがたくしあげられてその下がほのかに見え隠れしはじめた。
「こ、これでどうだ?」
 繰り返すが黒服はガキなぞに興味は無い。
 例え世に幾百幾千とこの状況を、素敵なパライソラッキースケベを期待しているロリコン共が居ようと、彼にとっては死ぬ程どうでも良かった。
「……それ以上入れないのならそこは諦めろ」
 黒服は黒服なりにこの場で参加者を待ち構える間、恐らく繰り広げられるだろうコンゲームを期待していた。
 命を賭けた必死なやりとりを、一部の隙すら許さぬギリギリの戦いを、と心構えを整えていたらコレである。
 注意深い者達が容易くギャンブルに手を出さないのは予測出来た事だが、その為にこの場に居る人間としては、是非ギャンブルに挑んで欲しいとも思う。
 そんな黒服の願いは即座に叶えられる。
「おいっ! そこの黒服! ここは本当にエスポワールなのか!」
 衣が慌ててルーレット台に隠れようとして失敗している。
 最早こんなガキに用なぞ無くなった黒服は、期待に満ちた心が表に出ぬよう自制しつつ用意してある言葉を紡ぐ。
「そうだ! ギャンブル船、希望の船『エスポワール』のギャンブルルームへようこそ!」
 帝愛でも有名であった他に類を見ない常識外れの男。
 身一つで利根川を破り、当時の会長兵藤和尊にまで手をかけた奇跡のギャンブラー、伊藤開司のような男を、黒服は待っていたのだ。
 なので、その後ろにひっついている衣より小さい子供の存在はさらっと無視する事にした。

 カイジが黒服からギャンブルルームの説明を受けている間、真宵は暇そうに足をぶらぶらと振っていた。
 衣は、これぞ千載一遇、審念熟慮も必要であるが、機を逃しては道は開けぬと前へ進む。
 友達は作れる、そう信じ続けていればとグラハムも言ってくれたのだ。
 衣は彼を信じるように、彼の言葉もまた、信じてみる。
「わ、私は天江こよも……じゃ、じゃなくってころも、衣だ!」
 真宵に向かって自己紹介。
 返事を期待していると察した真宵は、つまらなそうに視線を向ける。

「話しかけないでください。あなたのことが嫌いです」

 大きく真後ろにのけぞった後、衣はへなへなとしりもちをつき、ここに第一ラウンド終了と相成ったわけで。
 黒服との会話の途中であったカイジは見るからに嫌そうな顔をする。
「……お前それ会う奴全員に言ってるのか?」
「うるさいですカイイジさん」
「名前を間違えるなと何度言わせる気だ……」
「失礼、かみました。カジさん」
「完全に別人だろそれ……」
 つっこみスキルというには甚だ心許ないが、それでもこの数時間でそれなりに返事はするようになったらしいカイジ。
「誰しも失敗はあります。こよもさんも間違えてころもと名乗っておりましたし……」
 涙目でしゃくりあげかけていた衣は、何くそと不屈の闘志で立ち上がる。
「違う! ころもはころもだ!」
「ほら、またかんだ」
「かんだのはこよもの方だ! ころもはころもで! それ以外に名など無いっ!」
「わかりましたころもさん。それと繰り返しになりますが、あなたが嫌いなので話かけるのは遠慮してください」
 痛烈なカウンターにより二ラウンドKO。
 完全にやる気を削ぎ取られた衣は、俯き加減にひっくひっくとしゃくりあげる。
 目の端からこぼれる雫は敗北の証。
 大慌てなのはカイジである。いきなり出会った少女を泣かすなぞ、まともな人間なら心が痛んでしかるべきである。
「こ、こらお前! 何て事言い出すっ! あー、えっと、ご、ごめんなさい」
 しかしカイジ、幼女を慰める術なぞ知らぬ。
 そもそも対人折衝能力も著しく低い、社会不適合者である。
 女っ気なぞと無縁なカイジが、同世代の人間とのスムーズな交流すら為せぬカイジが、接点すら存在せぬ子供を相手にしたカイジが、どうして衣を慰められよう、いや出来まい。
 際物なれど、社会人として立派に成立していたグラハムとは比べるべくもないのである。
 案の定、びえーんと泣き出してしまう衣。
「あー、カイジさん最低です。女の子を、それもこんな小さな子を泣かすなんて貴方は本当に人の子ですか? いや変質者なのは知っていますが」
「誰がどう見てもお前が原因だろうが!」
 わいわいと騒々しいギャンブルルーム。
 呆れ顔の黒服のみが、新たな乱入者の登場に気付けた。
「ようこそ、ギャンブル船エスポワール、ギャンブルルームへ」
 乱入者は黒服に一瞥をくれた後、唯一居る顔見知りに向け、黒服同様呆れ顔で問うた。
「……お前は一体、何をしているんだカイジ?」
 聞き覚えのある声に顔を上げるカイジは、その先に、捜し求めていた相手を見つける。
「やっぱりここに居やがったか利根川っ!」



  ◇



 ギャンブル船を下りた士郎とグラハムの二人は、桟橋から離れた角を曲がる人影を見つけ、これを追う。
 グラハムは軍人であり、パイロットとして訓練も重ねており、並の男では太刀打ち出来ぬ体力を誇る。
 並ぶ士郎はというと流石にそこまでの訓練は望めないにしても、剣の英霊をして体力は充分と言わしめる程常日頃から鍛錬を行っていた。
 なればこそ、走りながら会話というより疲労を増すような事も平然と行えるのだろう。
「名は?」
「衛宮士郎。あんたは?」
「グラハム・エーカーだ。彼女は足が速いのか?」
「そこまで彼女を知ってるわけじゃないけど、俺達より早いって事は無い……と思う」
 あちらこちらと二人で走り回り澪の姿を探すが、どんな逃げ方をしたものか彼女の姿を見つける事は出来なかった。
 先に足を止めたのはグラハムだ。
「ここまでだ士郎」
 いきなりファーストネームで呼ばれた事に少し驚いたが、さして気にする事でもないので黙認する。
「ここまでって……」
「連れを残してこれ以上船から離れるわけにはいかん」
「そりゃ……そうだけど、秋山はどうするんだよ」
「単に動転しただけなら落ち着けば戻ってくるだろう。お前が彼女を脅すような真似をしていなければだが」
「しないよそんな事。でもそれまでに危ない奴に出会ったらどうすんだよ」
「地図にある目立つ船だという事を考慮に入れれば、どちらがより危険かは自明だろう」
 士郎も残してきた黒子や利根川が心配ではある。
 不承不承であるが、グラハムの提案を受け入れた。
「一度戻って白井達に断ったら、俺はもう一度探しに出るぞ」
 と条件を付けはしたが。
 グラハムは微笑で答える。既に士郎が悪辣な人間ではないとグラハムは見ていた。
 そして士郎もまた、見ず知らずの少女の為、ギャンブルルームで銃を抜くなんて真似をしてくれたグラハムを、まるで疑っていなかったのだ。

 もし、後少しグラハムの判断が遅かったなら。
 家を一軒挟んだ所で疲れきって座る澪を見つけられたかもしれない。
 無論彼を責める事など誰にも出来はしない。
 神ならぬ身のグラハムが全てにおいて最善を選びうるはずもないのだから。
 だから、息の整った澪が、驚きに目を見開いているのも、グラハムに責任のある事ではない。

「どうかしましたか、お嬢さん?」

 そう声をかけてきた大剣を背負ったスーツ姿の男。明智光秀に澪が見つかってしまったのも、全ては間が悪かった故、それだけである。
「あ……わ、私……」
 長身の彼にすら大きすぎる剣を無造作に肩に背負う姿は、澪にとって馴染みの深いスーツという現代衣装をまとってすら、畏怖と恐慌の対象となろう。
「なるほど、その首輪……あなたも殺し合いに参加している方ですね」
「ち、ちがっ……わ、わたし、は……」
「貴女のような年端も行かぬ少女まで……業の深い事です」
 背なに陽光を受けるせいで明智の表情まで見えぬのが、澪にとって幸運であったかどうかなど、この出会い同様見極められる者などいはしなかった。



  ◇



 利根川は伝えるべき事を伝えきれずなし崩しに半数が欠落してしまい、どうしたものかと思案にくれていた。
 そうこうしている間に黒子も部屋を出てしまい、一向に戻ってくる気配が無い。
 もし三人に騙されているとするなら、これは由々しき事態であろう。
 だが利根川は心底それは無いと確信している。
 三人の善意を信じているわけでは無く、自身の人物眼に自信があるだけだが。
 部下を使って仕事をするのに慣れすぎたのか、こうして自分が動く感覚がまだ思い出しきれずにいる。
 ガキ共の機嫌取りなど本来利根川の仕事ではない、とはもう考えない。
 覚悟を決めたのだ。壇上から見下ろすのではなく、自らも会場に降り立ち、泥に塗れ、手間を、労苦を重ね、勝利に至ると。
 自己暗示の一つや二つ、容易く出来ずして帝愛でのし上がるなど夢のまた夢よ。
 数十年の時を社会の暗部にて生き抜いた男は、暗き誇りを胸に部屋を出る。
 戻らぬ黒子にメモを残し、再度グラハム、衣と対決する為に。
 階段を降り、ギャンブルルームに至った利根川は、その場に居た人物を見て幸運は我にありとほくそ笑む。
 伊藤開司、絶望的な生存率のギャンブルを、不屈の闘志と見事な機転で乗り切った超がつくイレギュラー。
 この男も参加していると聞いた利根川は、是非とも手駒、いや、共に戦う同志としてカイジを欲した。
 のだが、こうして出会えたカイジはというと、子供相手にぎゃーぎゃーと場も弁えず騒いでいた。
 失望の大きさは察してあまりある。
 それでも自制が利いていたおかげで、乱暴なコケにするような口調は避けられた。
「……お前は一体、何をしているんだカイジ?」
 すぐに気付いたのか怒鳴り返してくるが、そこに死地を乗り越えた圧倒的なまでの生命力は感じられない。
「やっぱりここに居やがったか利根川っ!」
 グラハムの姿は見えず衣は何だか知らんがガキっぽくぴーぴー泣いているし、もう一人ガキが増えている。
 武装の有無と、室内の隠れ得る場所に注意しつつ、利根川はカイジに歩み寄る。
「何をしている、と聞いたんだ。カイジ、このゲームに参加させられたお前は、一体何をしているのだ」
 意図が察しきれぬのか睨みつけながらも、カイジの怒鳴り声が止む。
 利根川は言下の意味すら取れぬカイジを見て、今の利根川をして自制が難しい程の怒りを覚えた。
「平和を享受しぬるま湯に生きた余人ならいざしらず、お前までもがまだ『本気』になっていないというのか!?」
「な、何を言って……」
 突如現れた利根川の怒声に、衣は驚き泣くのをやめ、真宵もまた呆気に取られたまま利根川とカイジを交互に見るのみ。
「予想は出来ていた! ああ、出来ていたとも! あれほどの集中力と勝負強さ、ここ一番の覚悟がありながらエスポワールへと墜ちてきたお前には、決定的でどうにもならぬ弱点があるだろうとな!」
 黒子達との邂逅では完全な自制に成功したが、利根川を地獄の底に叩き落した張本人であるカイジを前に、その無様な姿を目にして冷静でなどいられなかった。
「お前は追い詰められるまで、いや、お前の精神が限界と認めるまでは例え追い詰められていようと決して動かない!
 いや、体は動いている。だがっ! 肝心要のお前の脳が働いていないのだ! 白痴のごとく状況に流されるのみで、
 状況改善に動こうとしない! お前は! どうしようもない程に! 社会生活が困難なレベルで怠惰な人間なのだよ!
 それだけならばただ他人の餌として無様に飲み込まれていくだけだ。だがっ! お前はもう知っているのだろう!
 自分にどれだけの力があるのか! 戦いさえすれば誰にも負けぬ覚悟を自身にすら見せ付けているのだろう!
 なのに何故まだそんな惚けた顔で遊んでいるっ! 何時まで眠っているつもりだ! さっさと目を覚ませカイジ!
 ここは既に何時死んでもおかしくない戦場の只中だぞ! 本気を出す前に死ぬ真のクズに成り下がるつもりか!?
 お前ならば! とうに脱出に向けてプランの一つや二つ、実行に移していてもおかしくはないはずだろう!」
 利根川は一方的にカイジを弾劾する。その気迫は、コンビニで店長に逆らう程度が関の山であるカイジに抗えるレベルではない。
「そ、それは……お、お前を見つけて、聞くべき事を聞きだしてから……」
 弱腰なカイジの言葉が燃え盛る利根川の怒りに油を注ぐ。
「このっ……馬鹿者が! わしを見つけてどうする!? 何故そこから思考を進めない! ハナっからわしを頼るだと!?
 こんな、こんな大馬鹿にこのわしが…………わしが全てを知っているとでも!? わしにさえ会えれば脱出出来るだと!?
 これは帝愛の仕掛けた死のゲームだぞ! そんな安易で甘えた思考が通用しないのはお前も良く知っているだろう!
 こうして説教を受ける事自体ありえぬ幸運だと何故わからん! ああっ、くそっ! 目覚めてから出直せと言いたい所だが、
 今のわしにもそんな猶予は無いっ。だからそのままでも構わん。わしが貴様を叩き起こしてやるっ……」
「お前、一体何を言ってる……」
「わしと共に来いと言っているんだ! 目覚めたお前とわしならば! 事がギャンブルなら絶対に負けんっ!」
 まさかまさかの共闘の申し出。
「はっ、ははっ、利根川。まるでお前も単なる一参加者だと言っているように聞こえるぞっ……! それを、信じろというのか利根川!」
「会長の死、わしの首輪、あくまで判断材料の一つであって、決定的な証拠たりえぬ……
 しかし、その決定的な証拠とやらをこの場にて一体誰が証明してくれる。
 何か一つでも確証を持てるような事柄がこのゲームにおいて存在すると思っているのか?
 万事に確証を得られぬリスキーな戦いっ……! なればこそのギャンブルだろうっ……!」
 利根川の言葉を遮るように、カイジはルーレット台に拳をたたきつける。
「ふざけるなっ……! 俺は、お前がやった事を決して忘れないっ……! 石田さんや佐川の無念を!
 犠牲になった者達の絶望を! 俺の命を弄んだ怒りを! 俺は、お前の口車にだけは金輪際乗ってやらんっ……!」
 カイジに向け、ゆっくりと歩を進める利根川。
 その眼前に憤怒の顔を突き出す。
「そうだカイジ。ようやく、らしくなって来たではないか……野良犬には野良犬の誇りがある。
 如何に強大な相手であろうと決して怯まぬ、考えられぬ捨て身っ……!
 自暴自棄とは似て非なる、奴隷が皇帝を滅ぼすそれが最後の、絶望の光だっ……!」
 至近距離にて睨みあう二人。既にカイジは利根川に気圧されてなどいない。
「俺がお前を監視する。ここが例え地の底、地獄の最奥であろうと、お前の好きにだけはさせないっ……!」
「やってみろ。お前という抑止力がわしの逃げ道を塞いでくれる。この地を圧倒的な勝利と共に脱出する。その為だけに全てを注ぎ込めるよう、わしを抑え続けてみせろ!」
 カイジは利根川をいまだ倒すべき強大な敵であると考えていた。
 そして利根川もまた、カイジに敗北し、その実力を自らに匹敵すると認めている。
 互いが互いを、全てを賭して倒すに足る相手であると信じていればこそ、極限のゲームにおいて、信用ではなく信頼に足る相手として見られるのだ。
「このゲームの真髄、それは……『信じる事』だ。わかるかカイジ」
「全てを疑うのではなく、信じられる部分のみを信じる。帝愛のルール、出会った人間達、お前の言葉……全てに嘘がある。しかし、同時にある真実を掬い出し、見極めるっ……!」
「全てを疑い、同時に全てを信じる……僅かでも間合いを見誤れば死だ。そこまで踏み込んで、初めて勝利の道が見えて来るっ……!」
 唐突にカイジは振り返り、真宵をまっすぐに見据える。
「真宵、お前が幽霊だったって話、俺は信じよう。帝愛が言う魔法も、全てを俺は受け入れてやるっ! その上でっ!」
 誰よりも自身に向けてカイジは言い放つ。
「このゲームに……ふざけた人殺し共に……俺は勝つっ!」



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最終更新:2009年12月01日 08:28