試練2/逃げ場なんて、無いかもよ(後編) ◆0hZtgB0vFY
グラハムと士郎の二人がギャンブル船に戻ると、二人にとって予想外すぎる光景が広がっていた。
「……どういう話だこれは?」
「……何でさ」
ギャンブルルームにて青年が一人、例の血液を吸いだす装置を付けたままポーカー台の前に座っている。
すぐ横には利根川が一緒になってカードゲームに興じている。
衣は観戦に徹しており、隣に椅子を持ってきた少女と何やら会話を交わしている。
ギャンブルルームの主である黒服がディーラーであるようで、カードの束を手に持っている。
グラハムの姿を見た衣は椅子から飛び降り、とてとてと嬉しそうに駆け寄ってくる。
「グラハム! どうであった!」
「すまん、見失ってしまった。だが、動転しただけという事らしいし、いずれ落ち着けば戻ってくるだろう。それより……」
「ああこれか。中々に見物だぞ、利根川もカイジという男も随分とヤるようだ」
血液を採取する装置に血はただの一滴すら吸われておらず、卓には紙幣が山と積まれているのだ。
「コール」
カイジが余裕を持って宣言し、カードを開く。
ツーペアであるが、続いて開いた親はワンペアしか出来ていなかった。
グラハムも士郎も声をかけ何事かを確認したかったのだが、二人共血液を賭けるというゲームのルールを知っており、文字通りの真剣勝負であるとわかっているので、下手な真似は出来なかった。
代わりに衣が、カイジは利根川の知人であり、真宵はその連れであると説明する。
ギャンブルに自信のある二人は、血液を賭け、ポーカーでディーラーに勝負を挑んだのだ。
序盤こそ負けもあったが、回数を重ねる毎に敗戦は減っていき、今では常勝無敗となっている。
際限なく詰まれる紙幣の束。
この理由を、衣は正確に見抜いていた。
「カウンティングだな、と言っても全てを暗記は出来ぬだろうが……後は悪魔じみた洞察力。既にあのディーラーは細かな癖の一片に至るまで二人に抑えられておる」
呆気に取られるグラハムと士郎の前で、当然のごとく勝ち続ける二人。
その額が一千万ペリカを越える頃、ディーラーは苛立たしげにカードを台に投げ捨てる。
「これまでだっ! 一つのゲームで得られる限度額を越えた! これ以上お前達はポーカーを行う事は出来ない!」
カイジと利根川の二人はにこりともせず、視線を交わす。
「それと! 次からはこんなサービスは無しだ! ゲームに参加するのは一人のみ! 他の者の助力があったなら、それはイカサマを行ったとして首輪を即刻爆破する!」
サービスも何も、完全に別室で行うでもないギャンブルで、他の者が口を出すのは自然な流れであろう。
何処までが助力で、何処からが助力で無いかの明確な線引きを決めさせた後、決定に逆らうでもなくカイジは紙幣の束をごそっと、利根川に渡す。
「お前の体力で血液を賭けるのはマズイだろう」
「フンッ、当然だ。金があるのなら金を賭ける。わしはお前と違って賭けたものによって集中力が増減したりはせん」
「せいぜい増やしてくれよ。でないと次の俺の勝負がつまらなくなる」
「ほざけ若造。おいディーラー、次はブラックジャックだ。さっさと用意しろ」
勝負を利根川に任せたカイジは、グラハム達を見つけると歩み寄り話しかける。
簡単な自己紹介を済ませたると、グラハムは不審な表情を崩さぬまま問いかける。
「……まさか血液を賭ける奴が居るとは思わなかった。勝つ目算でもあったのか?」
「最初から致死量全てを賭ける程間抜けじゃない。なら、血とはいえ金と変わらねえよ」
「だとしても調子に乗りすぎではないか? あれだけ勝ったのだ、次もまた運が向いてくれるとは限らんぞ」
これには衣が答えた。
「いや、次も利根川が勝つ。最早あのディーラーでは利根川もカイジも手に負えん。戦うべき所から逃げ出すような三流では話にならん」
カイジは意外そうに衣を見直す。
「へぇ、良く見てるなお前」
「おそらく一つのゲームでの限度額なぞ無いのであろう。それを無理にこじつけて強引にゲームを終わらせた。二人のカウンティングは完璧ではなく、まだまだ戦う余地はあったというのにだ。あの時点で格付けは済んでおる」
こうまでコケにされる程黒服は弱くはない。
だが彼にも制限があり、それは命に関わる事であるが故に、どうしても最後の一線を越えられないだけであった。
無論そんな心の機敏も、とうに二人に見抜かれている。
利根川の賭け方が強烈であったせいか、ものの十分も経たぬ間にブラックジャックも終わってしまう。
煽るように利根川は、最早台車を使わねば運べなくなった金の束をカイジにつっ返す。
「おいカイジ。奴はルーレットが得意だそうだぞ」
「上等だ、俺が決着をつけてきてやる」
「侮ってミスるなよ。ルーレットは見極めるのに少し時間がかかるぞ」
「ならお前はその間にグラハム達と話をまとめとけ。八九寺! もう少しかかるから大人しくしてろよ!」
「はーい」
意外に素直なのはカイジがただのヘタレでないとわかったせいか。
戻った利根川を、衣はグラハムが見た事もない剣呑な表情で迎える。
「やるではないか利根川。カイジ共々、全てが終わったなら衣と麻雀で勝負せぬか?」
グラハムは衣の常ならぬ気配に気付けたのか僅かにだが眉を潜める。
当然、こしゃくな罠にかけてくれたと思っていた利根川は、端から衣をただの子供だなどと思っていない。
「破滅を賭けられるというのであれば、幾らでも相手をしてやろう。が、今はそんな暇は無かろう」
「わかっておる。ふふっ、楽しみが増えたぞ。月の出る夜に必ずや相見えようぞ」
ちょっとついていけない真宵は、同じくついていってないだろう士郎を探すが、何時の間にかその姿が見えなくなっているのに気付く。
「はて、一体どちらに行かれたのでしょう?」
◇
士郎はギャンブルルームに黒子が居ないのを不審に思い、客室に探しに行っていた。
部屋には黒子の姿は無く、利根川が残した書き置きのみ。
『女性ならば仕方が無い部分はあるが、時間がかかりすぎるのは他人に迷惑がかかる。出来る限り場を弁えるように』
との注意書きがある事から、ああ、なるほどと得心した士郎は、一応女子トイレの前まで行く。
声をかけるのは非常に憚られるが、それでも状況が状況だ。これを確認せぬままには出来ない。
「おーい白井、居るのかー? 居たら返事だけでいいからしてくれー」
返事は無し。
もう一度呼びかけると、中でごそごそと動く気配がした。
「あー、居るんならいいんだ。俺達はギャンブルルームに居るから、済んだらそっちに来てくれ」
士郎の言葉を聞いているのかいないのか、黒子はトイレの中から姿を現す。
「…………すみません、体調が優れなかったもので……」
顔色を見られぬよう心持ち頭を伏せ、両手は背の後ろに。
それだけで誤魔化せてしまうのは士郎が抜けているおかげか、黒子が巧みなせいか。
「そっか、無理はすんなよ。みんな……っていうか何かぞろぞろと人が増えたんだけどさ。ギャンブルルームに居るから、落ち着いたら白井も来てくれよ」
「人が、増えた?」
「ああ、一気に四人も増えた。今利根川さんと知り合いのカイジさんが下でギャンブルしてるんだ。凄いぜあの二人、あっという間に一千万ペリカも稼いじまったんだ」
「それは……なるほど、惚けている場合ではありませんね……」
うまく隠せていたのだが、流石に下から覗き込むような真似をされてはどうしようもない。
「え、衛宮さんっ、いきなり何を……」
「ああ、やっぱり顔色悪いよ。いいから休んでおけって、後は俺が何とかするから」
「しかし……」
「ああっ、もうっ、白井は女の子なんだから。辛い時はちゃんと辛いって言っていいんだぞ。白井が頑張ってるのは俺も知ってるけどさ、調子が悪い時ぐらい頼ってくれよ。ははっ、流石に白井程頭は良くないけど頑張るからさ」
女の子なんて言葉を真顔で言われ驚いたせいだろう。
何を言うんだと抗議しようと身じろぎした時に、思わず隠していた手を前に出してしまったのだ。
「おい、白井……お前それ、怪我してるじゃないか」
慌てて隠すがもう遅い。
士郎が腕を引っ張ると無理に逆らう事も出来ず、切り傷だらけの両手が顕になる。
「どうしたんだよ一体!」
「……転びました」
物凄く苦しい言い訳だが、士郎はその点は何も言わず、近くの客室に引っ張り込むと傷の治療を始めた。
「痛いんなら痛いって言えって。恥ずかしい事でも何でもないだろ」
「…………」
士郎はデイバックから救急箱を取り出すと、乱雑にならぬよう丁寧な処置を施していく。
消毒液を使い、ガーゼを当てて、包帯を巻いていく。
黒子は無言でされるがまま。
士郎も余計は事は言わないので、包帯が肌をする音のみが耳に入る。
「……あまり、甘やかさないで下さい……」
「ん?」
「何もかも投げ出して、逃げたく、なっちゃいます……」
「……そっか」
これで完成、と士郎は黒子の両手を揃えて握る。
「その時は俺に一言声かけてくれよ。女の子一人じゃ、逃げるだけでも大変だろうしな」
顔中が歪んだ黒子は、士郎の手を振り払い、その場でくるっと回って背を向ける。
「どうしてっ……どうしてこんなっ……」
「白井?」
「お姉さまがあんな事になったのに……何で私はまだ息をしてるのですかっ……何で私は痛いなんて思えるんですかっ……何で……何でっ!」
『優しくされて嬉しいなんて思っているんですか! お姉さまは、もうそんな事考える事も出来ないのに! 私は悔しくて悲しくて、身動き取れない程絶望してるはずなのにっ!』
士郎も黒子に倣って背を向ける。
「見られるの嫌だろうからそっぽは向いておく。けど、一人で居るのは良くないと思う」
黒子からは弱々しい、今にも消え入りそうな返事がかえってくる。
「……やっぱり衛宮さん、甘やかしーです……」
「かもな」
だから士郎は、後ろから聞こえてくる音も気付かないフリをしてやるのだった。
◇
士郎と黒子の二人はギャンブルルームに向かいながら、幾つかの事柄を話し合う。
黒子の瞬間移動という超能力に士郎は驚いていたが、今は使えないので皆に言うのは止めて欲しいといわれ、士郎は簡単に頷く。
表面上は平静を取り戻した黒子であるが、心の内に決して埋めえぬ虚無と、治める事敵わぬ激情の嵐が共に存在している。
この状態で正確に演算出来る自信は黒子にも無かった。
士郎も若干の魔術が使えるという事を黒子に説明したが「強化」の魔法しか使えず成功率も低いので、これも敢えて口にして変に疑われるのもどうかという黒子の意見により、聞かれるまで話さないという事にあいなった。
二人がそんな事を話し合っていると、あっと言う間にギャンブルルームに着いてしまう。
ちょうど、ルーレット対決の決着がついた所であった。
「衛宮さん、あのうず高く積まれた紙幣って……」
「勝った分だよなぁ。台車丸々一台分ってどんだけあるんだ一体」
ルーレット台を前にしたカイジは、まだまだこれからと気を吐く。
「どうした……アンタは取り返さなきゃならないんだろ……恐らく、帝愛から提示されている限度額がある……損害がそいつを越えないように、しなきゃならないんだよな。さあ、いっぱいまで行こうぜ。俺はっ……! とことんっ……! 付き合うっ……!」
素人が見てもわかる程明らかな形で精神の均衡が崩れているディーラーは、ただカイジに言われるがまま、ボールをルーレットに放ろうとした時、ソレが起こった。
『既に貴方に預けられている金額を逸脱しております。即座にギャンブルを中止して下さい』
ギャンブルルームに響き渡る声。
つい先程放送で聞いた女の声だ。
黒服はその場にがっくりと崩れ落ち項垂れる。
カイジ、利根川の二人が稼いだ総額、一億二千三百万ペリカ。元手ゼロからの開始であるから、これは全て黒服の負け分に等しい。
これほどの金額を、たったの一時間弱でむしり取ったのだ。
カイジ、利根川恐るべしである。
『カードゲームはEカードを除き全て終了、ルーレット等ディーラーが必要なギャンブルもこれにて閉鎖となります。長らくのご愛顧、ありがとうございました』
嫌味ですらなく淡々と告げる口調は、少女の物でありながら無機質に過ぎるせいか成人女性のそれに聞こえる。
よろよろと部屋の隅に向かった黒服は、そこにあった椅子に深く腰掛け、以後言葉を発しようとしなくなった。
こうしてギャンブルルームでの一回戦、利根川カイジ連合による対黒服戦は圧倒的勝利に終わった。
利根川は既にグラハムとの話し合いを終えていて、曰く、オリジナルギャンブルは確かに利根川の言う通りであったと、信用を得る事に成功。
先の失礼な態度は酒故の事、情けない話ではあるが、どうか許して欲しいと利根川が謝罪したのも、良い方向に働いていた。
まるでギャンブルがわからない真宵に対し、都度説明するといった形の衣は、少しづつだが打ち解けた会話も出来るようになった。
カイジと利根川は相変わらず仲が良いのだか悪いのだかわからないが、とりあえず、今ここで揉めるつもりは無いらしい。
黒子も見た目は落ち着いたようだし、グラハムは軍人だけあって頼れる男性であるようだ。
ようやく安定してきたようだ、そう考えた士郎は、澪を探しに行くべく皆に話を通そうと口を開きかけ、止まった。
きぃっと扉が軋み、両開きのそれを押し退けるように長身の男が部屋へと入ってきた。
濃い黒のスーツを着込み大剣を担ぐ銀髪の男。
グラハムが皆を代表して問う。
「君は?」
「
明智光秀と申します。皆さんは、一体どうしてこのように集まってらっしゃるので?」
「このゲームとやらから脱出する為に、協力したいと思っている人間が自然と集まった。これから色々と相談しようと思っていた矢先だ」
「それは素晴らしい。民を殺さず脱出するというのであればこの明智光秀、戦国の世を生きる武将の誇りに賭けて、お力添えさせていただきましょう」
後ろを向いて手招きをする光秀。
扉の影からおずおずと姿を現したのは
秋山澪であった。
驚いた士郎が駆け寄ると、澪はみんなに向かってぺこっと頭を下げる。
「ごめんなさい、勝手な事して……」
しっかりと自分を取り戻している澪を見て、士郎達は安堵の吐息を漏らす。
そして、澪を連れて来てくれたこの男、明智光秀に信頼の眼差しを向けるのだった。
◇
光秀は座り込んで震える澪の着ている服に目を付けていた。これもまた随分と上等な造りだ。
育ちも良さそうであるし、充分すぎる食事を取っていると思われる血色の良さが、裕福な環境を想像させる。
「お一人ですか? 大丈夫、危害は加えませんよ」
いずこかの姫であろうか、少なくとも恥女や人殺しのような荒事に慣れた気配は持っていない。
「何やらお疲れのご様子。急がなければならない用事でもありましたか?」
「…………えっと」
どうやら怖い人では無いようだと澪は思い始めたが、こうして改めて問われても、全速力で走っていた理由なんて自分でもよくわからない。
「怖い人でもいましたか?」
澪はふるふると首を横に振る。
「嫌な人は?」
またも首を横に振る。
「では……嫌な事は?」
ずーんと重苦しい空気を背負う澪。
光秀は澪から視線を逸らし、彼方の空を眺める。
「実は、私も嫌な事がありまして」
「え?」
「つい先程聞こえた声は、私の大切な人が……死んだと。私のあずかり知らぬ所で、大切な、大切な方……猛き竜の右目は二度と私と相見える事は無いなどと……」
光秀の横顔を見ていた澪は、光秀が急に振り向き儚げな笑顔を見せてきたせいで大層驚く。
「そんな事あってはならないので、私はこの声を信じない事に決めました」
あまりにあっさりと発生した問題をクリアしてみせた光秀に、澪はただ呆気に取られるのみ。
当の光秀はというと、手を差し伸べ澪に立ち上がるよう促す。
「お勧め、ですよ」
「は、はいっ……」
独特の話し口調や染み入るような深みのある声のせいか、澪は光秀の言葉に引き寄せられる。
後輩が見知らぬ所で死にました、貴女もまた同じ運命です。なんて言われるより余程信じられるだろう。これらが全て嘘であるとするのは。
「全てをあるがまま受け入れなければならないなんて法、何処にもありません。全ては貴女が思うままに為すべきでしょう」
小難しい言い方になってきたせいか、光秀の真意を汲み取る事は出来なかったが、それでも解決に至る道を示してくれた光秀に、澪は感謝の言葉を述べる。
光秀は笑って受け入れ、これまでにあった事を問うと澪は洗いざらいを説明し、ではギャンブル船に戻ろうとなったわけだ。
さて、今回は少々趣向を変えてみますか。
血に塗れた衣服ではなく、当地の文化に合わせたものに着替え歩み寄りを見せ、静かに、穏やかに心の中に染み渡る。
愛する者を、眼前にて失う絶望、後悔、無念、恐怖……これは、出会うなり殺し合うだけでは得られぬでしょう。
それに、この地はどうも勝手が違う。
建物にしても出会う人々の衣服にしても、そもそも支給品だのといった道具達がわからない。
一呼吸置くのもまたよろし、かと。
彼女、秋山澪さんの話ですと、随分と善人が多いようですし、私も……ああっ、浅井長政のような正義を語るのもいいですねぇ……クックフフッ……
◇
議長は年齢からか利根川が引き受ける事になった。
とにもかくにも、お互いわからない事、不明瞭な事、ありえない事が多すぎる。
中途半端な知識程無意味で有害なものはない。
ならば現時点で確認しうる事を皆で共有すべし、との議長利根川の言葉に皆が納得した結果である。
ちなみに会議室はギャンブル船の3Fの大広間を用いている。
それぞれが席につき、利根川の言葉を待つ。
一番最初に先程利根川が黒子達に語った内容を皆に説明し、利根川が帝愛に居た事、カイジがそれと戦った事を説明した。
その際、黒子達に不自然に思われぬ程度に、カイジに対しても嘘とは取られない繊細な話し方を利根川はしていた。
つまり、利根川は仕方なく帝愛に従っていたと、カイジ以外にはそう伝わるような言い方をしたわけで、この辺はもう老練という他あるまい。
それからしばらく経ち、既に皆が思う様話を繰り返した後であり、このまま話をしても埒が明かぬと議長の判断を求められる。
三十分近く、各人が好き放題といっても過言ではない程フリーダムに意見を述べていた中で、利根川は一人冷静に状況を見続けていた。
「まず、申し訳ないが基準をわしに置かせてもらう。その上で話を続けるので、意見ある時は前提を忘れぬように。
わしの常識からは、白井の言う超能力の存在は正直理解出来ぬ。が、その不可思議な力に、明智も出会ったという話だな」
「ええ……幾ら攻撃を仕掛けようと、まるで鏡に剣を突き入れているかのように……全てが反射されてしまいました」
明智のこの言葉を聞いた黒子は、当初憤怒に席を立つ勢いであった。
一方通行(アクセロリータ)と呼ばれる黒子の知る強力な超能力者の持つ能力だ。
同じく強力な超能力者である
御坂美琴を倒しうる、というより一方通行レベルでなくば御坂美琴は倒せぬと黒子は断じる。
彼が殺し合いに積極的であるとの明智の言葉は、黒子にそんな想像図を突きつけたのだろう。
「現状超能力に関してはこんな所か。次に、これもまた判断に苦しむのだが……明智、お前は
織田信長の配下である戦国武将だと?
本能寺の変の最中ここに来たと。グラハム以外の全ての者が、歴史的人物として明智光秀を認識しているのだが。
更に名簿に載っている織田信長、
真田幸村、本田忠勝、
伊達政宗、
片倉小十郎も本当に歴史上の人物であると」
明智もまた信じられぬといった顔をする。
「皆さんは、遠き未来から来られたと……いやはや、てっきり許しがたき裏切り者、悪辣非道な不忠者と罵られていると思っておりましたが……後世ではそれなりに評価されてるとかで、少し驚いています」
「もっとも、明智が歴史上の人物であったとしても、今の我々にとっては別にどうという事もないのだがな。
武術に長けているというその腕をアテにさせてもらうぐらいか。そして極めつけが……」
これはもうどう言っていいものやらと利根川は悩むが、仕方無いのでそのままを口にする。
「ガンダムと呼ばれる巨大……ああっ、口にするのすら憚られるが……ロボットが居て、それを倒す為に、
グラハムはロボットのパイロットをしていると。西暦2307年の、宇宙には居住空間となる巨大な箱が浮かぶ世界で」
凄い! かっこいいぞグラハム! と感激してるのは衣だけである。
こういう事を言い出す人が居るって時点で既に怪異ですね、とは真宵さんのお言葉だ。
「この地は日本だとばかり思っていたが、こうなってくるとそれすら疑わしくなるな。というかグラハム、ロボット云々と抜かすお前は何故日本語で話をしているんだ?」
「日本語? 確かに日本でも使われているだろうが、ユニオンの言葉をたった一個の経済特区程度で括る意味がわからんのだが」
言葉が通じていない。
もう一度、と口を開きかけた所で、鋭い声を発したのはカイジであった。
「待てっグラハム! お前もう一度『日本』と言ってみろ!」
「ん? 『日本』がどう……」
カイジは、愕然とした表情でグラハムを見やる。まるで、バケモノか何かを見るように。
「……利根川、いや、他の誰でもいい、グラハムの口元を良く見ていろ……口の動きと、発せられる言葉が、ズレているっ……!」
全員が、そうグラハムもが確認する。
利根川が魔法、と呟くと皆押し黙る。少なくとも、利根川に近い常識を持った人間にこの現象を説明出来る者など居なかったのだ。
そしてそれは数百年先の未来人であろうと、ダンディにスーツで決めた過去の偉人であろうと、超常を常とする超能力者であろうと、説明など出来ない事象。
最後に、ずっと押し黙っていた士郎が黒子に断りを入れ、これだけ非常識が並ぶのならと自身が出会った事件について語る。
聖杯戦争と呼ばれる、魔術師達の戦いを。
元幽霊の真宵、全部それなりにだが受け入れる。
テレポーター黒子、未来過去問わず、時間移動に関する出来事には懐疑的、だが、士郎の言う聖杯戦争は信じる。
雀士衣、全部良くわかっていないが、パイロットのグラハムはかっこいい。
バンドマン澪、そりゃ頑張っていこうと思ってるけど、これに返事しろって無理。
正義の味方士郎、聖杯戦争なんてネタ振っといてロボットは信じられないとか言い出せず苦悩している。
(海が好きじゃない方の)カイジ、流石に後悔っ……! 何でも信じるとかっ……! 言い過ぎたっ……!
フラッグファイターグラハム、超能力に魔法いずれも脳量子波研究の延長か? しかし、過去の世界に来てしまっただと?
武将光秀、未来の世界に魔術妖術ですか。なるほど、世界はいつも不思議でいっぱいですね(←さらっと受け入れてる)
一般人利根川、 貴 様 等 自 重 し ろ ……頼むから、せめて理解の及ぶ範囲にしてくれ……
こうして各人が持つ情報を共有する事は出来た。
だが、それだけであった。
それぞれが咀嚼し、理解しきるまでにはまだまだ時間がかかる。
ゲームの転覆をと考える人間が集まり、膨大なペリカをその手にした。
各々の出身世界の違いを知り、それらを忌憚無く語り合える程度には信頼関係も作られている。
しかし、そこから先、新たな戦略を如何にして組み上げるか。
暗中模索は続く。情報も、装備も、まだまだ足りないっ。皆で脱出する為には、もっとたくさんの力が必要となろう。
……既に、たった一人が生き残る程度であるのなら、充分なだけのモノは揃っているのだが。
【B-6/ギャンブル船・3階会議室/一日目/朝】
【
天江衣@咲-saki-】
[状態]:健康
[服装]:いつもの私服、ぬいぐるみを抱いている
[装備]:チーズくんのぬいぐるみ@コードギアス反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない、麻雀を通して友達を作る
1:エスポワール会議組と一緒に行動する
2:ひとまず一万ペリカを手に入れて、ギャンブル船で『麻雀牌セット』を手に入れる
3:そしてギャンブルではない麻雀をして友達をつくる
4:まずはグラハムに麻雀を教える
5:チーズくんを持ち主である『しーしー』(
C.C.)に届けて、原村ののかのように友達になる
【備考】
※参戦時期は19話「友達」終了後です
※グラハムとは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。
※参加者は全員自分と同じ世界の人間だと思っています
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※エスポワール会議に参加しました
【
グラハム・エーカー@機動戦士ガンダムOO】
[状態]:健康
[服装]:ユニオンの制服
[装備]:コルト・パイソン@現実 6/6、コルトパイソンの予備弾丸×30
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2(グラハム・衣確認、ペリカは無い)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。断固辞退
0:エスポワール会議組と一緒に行動する
1:主催者の思惑を潰す
2:ガンダムのパイロット(刹那)と再びモビルスーツで決着をつける
3:地図が本当に正確なものかどうかを確かめるために名所を調べて回る
4:衣の友達づくりを手伝う。ひとまずは一万ペリカを手にいれ、『麻雀牌セット』を買ってやりたい
【備考】
※参戦時期は1stシーズン25話「刹那」内でエクシアとの最終決戦直後です
※衣とは簡単に自己紹介をしたぐらいです(名前程度)
※刹那・サーシェス以外の参加者が自分とは違う世界の人間であることに気づいていません
※バトル・ロワイアルの舞台そのものに何か秘密が隠されているのではないかと考えています
※利根川を帝愛に関わっていた人物だとほぼ信じました。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※エスポワール会議に参加しました
【
利根川幸雄@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康
[服装]:スーツ
[装備]:Draganflyer X6(残りバッテリー・20分ほど)、即席の槍(モップの柄にガムテープで包丁を取りつけた物)
[道具]:基本支給品一式、シャトー・シュヴァル・ブラン 1947 (1500ml)@現実×26本
:特上寿司@現実×61人前、予備バッテリー残り×4本、空のワインボトル×4本
[思考] 基本:ゲームからの脱出。
1:油断、慢心はしない。
2:エスポワール会議組と脱出への突破口を模索する。他人は利用。
3:カイジと共に得た一億二千三百万ペリカの使い道を考える
※天江衣が自分を嵌めたと思い込んでいます。
※ギャンブルルームについて情報を知りました。
※エスポワール会議に参加しました
【
白井黒子@とある魔術の禁書目録】
[状態]: 健康
[服装]: 常盤台中学校制服
[装備]:
[道具]: 基本支給品一式、ルイスの薬剤@機動戦士ガンダムOO、ペリカード(3000万ペリカ)@その他、不明支給品(0~1)*本人確認済み
[思考]
基本: 殺し合いはせずに澪や士郎の知り合いを探し出しゲームから脱出するけど、もうそんな事もどうでもいいかもしんない
0:エスポワール会議組と行動を共にする
1:情報の為にギャンブルをするか否か。
2:互いの信用できる知り合いの探索
3:一方通行、
ライダー、
バーサーカー、
キャスターを警戒
5:衛宮さんはすぐに人を甘やかす
4:何もかも投げ出してしまいたい
[備考]
※本編14話『最強VS最弱』以降の参加です
※空間転移の制限
距離に反比例して精度にブレが出るようです。
ちなみに白井黒子の限界値は飛距離が最大81.5M、質量が
130.7kg。
その他制限については不明。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
※エスポワール会議に参加しました
【秋山澪@けいおん!】
[状態]: 健康
[服装]: 桜が丘高校制服
[装備]: なし
[道具]: 基本支給品一式
[思考]
基本: 死にたくない。殺したくない。皆に会いたい。特に律に会いたい。
0:エスポワール会議組と行動を共にする
1:知り合いを探す
2:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
[備考]
※本編9話『新入部員!』以降の参加です
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
※エスポワール会議に参加しました
【
衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]: 健康、額に軽い怪我(処置済み)
[服装]: 穂村原学園制服
[装備]: カリバーン@Fate/stay night
[道具]: 基本支給品一式、モンキーレンチ@現実 、不明支給品(0~2)*本人確認済み
[思考]
基本:主催者へ反抗する
0:エスポワール会議組と行動を共にする
1:女の子を戦わせない。出来るだけ自分で何とかする
2:
セイバーや黒子、澪の信用できる知り合いを探す
3:一方通行、ライダー、バーサーカー、キャスターを警戒
4:黒子が辛そうにしている事に気付いていて、事あるごとに気にかけている
[備考]
※参戦時期は第12話『空を裂く』の直後です。
※残り令呪:1画。
※Eカード、鉄骨渡りのルールを知りました。
※駐車場のない船尾側から入ったため、武田軍の馬@戦国BASARAを見ていません。
※エスポワール会議に参加しました
【伊藤開司@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康 疲労(小)
[服装]:私服(Eカード挑戦時のもの)
[装備]:シグザウアーP226(16/15+1/予備弾倉×3)@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考]
基本:人は殺さない……なるべく……なるべく人が死なない方向でっ……!
1:エスポワール会議組と一緒に行動する。
2:利根川を監視する意味で同行する
3:得たペリカ(利根川と二人で一億二千三百万ペリカ)を如何に使うか考える
4:魔法、超能力を認めようと努力するが難しく、ちょっと困ってる
5:『5分の退室可能時間』、『主催の観覧方法』が気になる。
6:八九寺のボケは基本スルー。
[備考]
※Eカード開始直前、賭けの対象として耳を選択した段階からの参加。
※以下の考察を立てています。
・帝愛はエスポワールや鉄骨渡りの主催と同じ。つまり『会長』(兵藤)も主催側。
・利根川はサクラ。強力な武器を優遇され、他の参加者を追い詰めている。かつギャンブル相手。
・『魔法』は参加者達を屈服させる為の嘘っぱち。
インデックスはただの洗脳されたガキ。
・戦国武将はただの同姓同名の現代人。ただし本人は武将だと思い込んでいる。
・
八九寺真宵は自分を幽霊だと思い込んでいる普通人。
※デイパックの構造に気付いていません。
※エスポワール会議に参加しました
【八九寺真宵@化物語】
[状態]:健康
[服装]:私服、大きなリュックサック
[装備]:
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品×1~2 紬のキーボード@けいおん!
[思考]
基本:まずはお約束通り、知り合いを探してみることにしましょう。
1:?
2:エスポワール会議組と一緒に行動する。話し相手は欲しいので。でも微妙に反応がつまりません!
3:
阿良々木暦と
戦場ヶ原ひたぎを捜す。
[備考]
※「まよいマイマイ」終了後以降からの参加。
※デイパックの構造に気付いています。
※エスポワール会議に参加しました
【明智光秀@戦国BASARA】
[状態]:ダメージ(大)疲労(小)
[服装]:上下黒のスーツに白ワイシャツ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式 、信長の大剣@戦国BASARA
[思考]:偶には搦め手もまた良し
1:一刻も早く信長公の下に参じ、頂点を極めた怒りと屈辱、苦悶を味わい尽くす。
2:信長公の怒りが頂点でない場合、様子を見て最も激怒させられるタイミングを見計らう。
3:途中つまみ食いできそうな人間や向かってくる者がいたら、前菜として頂く。
4:この美味しそうなチームを、如何に頂くか……
[備考]
※エスポワール会議に参加しました
【ギャンブル船について(追記)】
賞品の中に【参加者の
現在位置(1時間) 3000万ペリカ】がある。位置は要求者のデバイスにリアルタイム送信される。1時間有効。
更に長い時間有効なものは更に高額になる。
またギャンブルルームにおける『戦闘行為の禁止』には穴あり。
ギャンブルルーム外からの攻撃に対しての対応は不明。
タラップは船頭側と船尾側にあり、船頭側に駐車場がある。
施設の位置は、甲板下の3階にスイートルーム客室、食堂、会議室。2階にギャンブルルーム。1階に駐車場。他にも施設は存在している。
カイジ、利根川の大勝利により、Eカードを除くカードゲーム、ディーラーを必要とするギャンブルは現在使用不能です
【エスポワール会議の内容】
天江衣、グラハム・エーカー、利根川幸雄、白井黒子、秋山澪、衛宮士郎、
伊藤開司、八九寺真宵、明智光秀
以上九人によって行われた情報交換
グラハムからガンダムがいる世界の事を聞きました
光秀は戦国の武将であると聞きました
黒子から超能力の存在を聞きました
士郎から聖杯戦争(サーヴァント情報含む)について聞きました
利根川より帝愛に関する話を聞きました
一方通行(アクセラレータ)という反射を特技とする危険人物が居る
魔法により本来通じぬ言語が通じるようになっているっぽい
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2009年12月07日 22:58