とある死神の≪接触遭遇(エンカウント)≫ ◆DzDv5OMx7c
マシンは風を切り、舗装された道の上をひたすらに北上する。
後ろへと流れる風はハンドルを握る少年の三つ編みを後ろへとなびかせる。
少年の名は
デュオ・マックスウェル。
ガンダム02ことガンダムデスサイズのパイロットであり、コロニーから送り込まれた破壊工作員である。
その彼が今、目にしているのは朝焼けに照らされた黄金色の草原。
夜と昼との境目にのみ現れる幻想的な風景だ。
コロニーではまずお目にかかれないそれに、デュオは思わず目を奪われる。
ああ、こんな時でもなければバイクを止めて見入ってもいいくらいだ。
そう、こんなふざけた殺し合いの最中でなければ、だ。
「おい」
そんな彼に真横――サイドカーから声がかけられる。
短く切りそろえた黒髪を風になびかせるのは、
両儀式という名の女。
だがその名前以外、正確な目的も、この場所に誰か知り合いがいるのかもデュオは知らない。
(……ま、俺も人のことは言えないけどな)
デュオもあの場所に集まった8人に自身の素性は明かしていない。
まぁバカ正直に『テロリスト』などと名乗れるはずもないのだが。
「ん? どうした?」
「そろそろだ。バイクを止めとけよ」
声につられ、時計を見ればあと少しで長針と短針が一直線に並びそうになっていた。
確かに放送を聞き逃しては元も子もない。
頼まれたアジトの調査も6時間後に駅に戻ればいいというルーズなスケジュールだ。
取り立てて急ぐような場面でもない。
周囲を警戒しつつ、森――地図上で言うと『死者の眠る場所』を取り囲んでいる――の近くでバイクを止めると、
そのまま木陰にバイクを寄せ、腕時計が6:00を指し示すのをじっと待つ。
そして、放送が始まった。
* *
「ちっくしょおおおおおおっ!」
声を張り上げ、側にあった木に拳を力任せに叩きつける。
拳が痛み血が滲むが、こうでもしなければあふれ出る苛立ちを押さえきれない。
放送で呼ばれた死者の名前でデュオが聞き知った名前は3つ。
先ほど名前を聞いただけの『
千石撫子』を除けば、デュオが知っている名前は彼と面識がある人物だ。
――
リリーナ・ドーリアン。
いや、今やリリーナ・ピースクラフトと言った方がいいか。
完全平和主義を唱える、今や地球圏で知らない者のいない女王様。
初対面の時、撃たれそうだったところを助けたのに怒られたことは、昨日のように思い出せる。
何があろうと完全平和という理想を曲げないだろう彼女が、こんな場所で長生きできるとは思わなかったが……早過ぎる。
気がかりなのは、あのお姫様にぞっこんだったヒイロがどんな行動に出るか。
まさかヤケを起こすほど短絡的じゃあないとは思うが……。
――
プリシラ。
正直、心のどこかで覚悟はしていた。
あの狂人みたいな男が出没するこの場所で、彼女はあまりにも無邪気だった。
大した武器もなく、ロクに戦えなかっただろう彼女は殺し合いに乗ったものからすれば、格好の獲物だろう。
『合流を蹴ったのだって、俺たちとはやっていけねぇってことじゃないのかねぇ』
数時間前の自分の言葉に苛立ちを覚える。
そんな暢気な場所でないのは、十二分に承知していたはずだろうに。
それに、だ。今は駅にいる
セイバーのことも気に掛かる。
プリシラの死に一番ショックを受けているのは間違いなくあいつだろう。
とにかくあいつは余計なものを背負い込みすぎる。
どこの王様だったか知らないが、そんな生き方、自分も周りの人間も辛すぎるだろうに。
「わかっちゃいた……わかっちゃいたが、やりきれないぜ……」
彼女らの死を嘆くデュオ。
ふいに視線を横にずらせば、そこには先ほどと寸分たりとも変わらず、木に背を預ける式の姿がある。
その表情には一部たりとも変化がなく、いかなる感情の揺らぎも見出せない。
だがバイクを止めるよう指示したことからも、気になる人間がいないわけではなさそうだ。
「なぁ、アンタの知り合いは――」
だが、その言葉は強制的に遮断される。
隣の木に叩きつけられた、飛来物によって。
「――ッ! こっちだ!」
一瞬呆けるも、とっさにディバックからデスサイズのパーツを取り出すと、飛び込んできた両儀と身を寄せ合い、決して広くないスペースに身を隠す。
そして程なく襲い掛かる第二波がガンダニュウム合金製の盾に直撃する。
ハンマーで叩かれたような衝撃が連続して壁越しに響く。
支えた左手に走る痺れに顔をしかめながら、最初に飛んできたものを目視する。
デュオの視線の先、大きく傷ついた幹にめり込んでいるのは――、
「缶コーヒー!?」
そう、飛来物の正体は手のひらサイズの未開封スチール缶。
信じがたいが、襲撃者は何らかの方法で缶コーヒーを撃ち出しているのだ。
たかが缶コーヒーといえど、水分の詰まった鉄の塊。
直撃すれば骨折は確実。
かといってこのままでは決して状況は好転しない。
衝撃を受け続けている左手だって何時までも持つわけじゃない。
だが反撃しようにも銃と違い発射音がしないため、敵の正確な場所がわからない。
「くそっ、このままじゃジリ貧だぜ……!」
だがそのデュオの目の前で式はふらり、と立ち上がる。
「お、おい! 危ねぇぞ!」
「簡単なことだ。これをやってる奴を――殺せばいいんだろう」
言うや否や、彼女は加速した。
9メートル近い距離を一瞬にしてゼロへと還す古流武術の失われた歩法。
その技術によって彼女が向かうのは森の中。
暗闇の中にひっそりと立つ一際巨大な樹木へと駆け寄る。
接近を察知したのだろう。
大樹の陰から新たに3本のスチール缶が、式を迎撃する。
対する式は身をひねって最小限の動きでそれらを回避。
流れるような動作で懐からルールブレイカーを取り出し、更に加速する。
「邪魔だ」
青白く光る両の目がその木の"死"を直視する。
ルールブレイカーが振るわれ、紫色の軌跡を描く。
ただ、空を切るような軽い一撃。
だがそれだけで太い樹木はあえなく倒壊した。
あらゆるモノが内包する不完全な自身の破壊への願望――"死"そのものを断たれ、殺されたのだ。
ただ斬られたのとは違う。
倒された残骸を良く見れば、葉は枯れ、幹枝から力が失われていることが見て取れるだろう。
「んな!?」
だが、そんな理屈を知る由もないデュオは驚愕に目を見開く。
彼から見れば、式がナイフで木を倒したようにしか見えない。
チェーンソーでも叩き切れないような巨木を、式の細腕が一瞬で破壊したのだ。
その光景は、異常、超常、理不尽以外の何者でもない。
驚愕するデュオを尻目に、その現象を引き起こした本人は更に闇に潜む何かに向けて返す刃を振るう。
その刃に追われる様に、倒壊する木の陰から白い影が飛び出す。
白い影の正体は人。おそらくは――少年。少なくとも傍から見ていたデュオにはそう見えた。
性別がわかりにくい、という点では相対している式と似ているかもしれない。
だがその方向性はまったくの別種だ。
人形めいた式に対し、少年はどこかバケモノじみている。
黒い服から伸びるのは妙に細長い両手足。
白い髪と透き通るような肌の中、真っ赤な瞳が浮き上がって見える。
血の気のまったくない白い頬には朱色の線が走り、そこからは赤い液体が流れ出している。
少年が手にしていたのが缶コーヒーということからも、間違いなく下手人なのだが他に手にしているものはない。
てっきり巨大なパチンコか何かの小型射出機の類を持っているかと思ったのだが。
少年は自身の頬から流れ出す血を見て、驚愕の表情を浮かべている。
自身の手についた血を見つめていたその瞳は、やがて相対する少女へと向けられる。
「テメェ……何しやがった」
その問いかけに式は答えない。
むしろそれ被せるように、更なる質問を返す。
「――お前、超能力者か何かか」
「あン? それがどうした」
「別に。訊いてみただけだ。
それに――お前が何をしているかなんて関係ない。
力を"殺せ"ば、そんなものあってもなくても同じことだからな」
白青の静謐な視線と、真紅の獰猛な視線が真っ向からかち合う。
「チッ……"アイツ"と同じのが2人も3人もいるってワケかよ。
だったら……手加減する必要はねェよなァ!」
次の瞬間、デュオは我が目を疑った。
少年が手首のスナップだけで投げたはずのスチール缶は、唸りを上げ放たれたのだ。
弾丸もかくやというスピードで式に襲い掛かる。
だが常識ではありえないその光景に、式は驚くそぶりすら見せず行動に移る。
「「なっ!?」」
期せずして、デュオと少年の声が重なる。
それは式の取った回避方法があまりにも常識はずれだったからに他ならない。
式は――跳んだのだ。
いや、それは"飛んだ"と表現したほうがいいかもしれない。
まるで猫のような身のこなしで、鬱蒼とした木々をかわしながら真上に跳躍。
森林の深青に純白の着物が踊る。
それを見たデュオは一瞬、ここがコロニー内であるかと錯覚する。
それほどまでに重力を感じさせない跳躍で、白髪の少年に襲い掛かる。
「チッ!」
だが、対する白髪の少年も後方へと跳ぶ。
少年の足が行ったのは軽いバックステップ。
だがその距離は"軽く"などで表現されるものではない。
その距離、約十メートル。
真正面からでも常人には無理な距離を少年は跳び、式の攻撃を回避して見せた。
「おいおいおい……勘弁してくれ」
その光景を見ていたデュオは一人ごちる。
ふわりと浮かぶような両儀式の跳躍、跳躍を無理やりに数倍に伸ばしたような少年の跳躍。
自分たちガンダムパイロットも大概人間離れしているとは思ったが、ここにいる連中はそれどころではないらしい。
アレならまだトロワのサーカスジャンプのほうがよっぽど物理法則にのっとっている。
そんなデュオの視線の先で、黒髪の少女と白髪の少年は一定の距離を持って対峙する。
その距離は僅か数メートル。
式にとってその程度の距離が意味を成さないのは先ほど証明されたばかりだ。
だが対する白髪の少年も奇妙な前傾姿勢をとる。
構えそのものは素人くさいが、逆にそこからどのような攻撃を繰り出すのか想像し難い。
だが、それでも向かい合う以上、対抗手段となりえるのだろう。
つまりこの数メートルは互いに一撃必殺の間合い。
両者の間に緊張が高まり、周囲の木々をざわめかせる。
デュオもフェイファーツェザリカを構え、事態が動くのを待つ。
だが、
「――やめた」
ふいに式が構えを解いた。
「お、おい! 何やってんだ!」
「もういい、白けた。デュオ、後はお前の好きにしろ」
そう、心底つまらなそうに零す。
その行動に誰よりも困惑しているのは、相対していた白髪の少年らしい。
いぶかしむような目でこちら側を見ている。
「おい、なめてンのかよてめェは!」
「なめてるのはどっちだ。
今、確信した。お前――、最初からこっちを殺す気なんてなかっただろ。
なんだ、せっかく楽しめるかと思ったのに興醒めじゃないか」
「……式、そりゃ一体どういう意味だ?」
デュオの問いかけに、式はめんどくさそうな視線を返す。
「俺達はこいつの特訓につき合わされたんだよ」
「特訓?」
「あの缶を投げてくる攻撃――
俺には効率のいい戦い方を探しているように見えた。
殺す気がないのに人に向けて撃ったのは、反撃を受けない距離と最長狙撃距離の見極め……どうせ、そんなところだろ」
少年から返されるのは舌打ち。
それは『認めなくはないが肯定』ということなのだろう。
つまりこれは殺し合いではなく、単なる接触であったということだ。
一歩間違えば大怪我ですまなかったのだから怒りを覚えないと言えば嘘になるが、
『怒れ』と言われて怒れる人間は人間はごくごく少数であろう。
少なくともデュオはそういう人間ではなかった。
怒るタイミングを失ってしまったデュオは『俺もとんだお人よしだよなぁ』と独りごちながら、銃口を下ろす。
「……ったく、どいつもこいつも自分勝手すぎるぜ……。
おい、そこのお前。まずは名前ぐらい教えやがれ」
「……
一方通行(アクセラレータ)だ」
ぽつりとつぶやいたその言葉が、名前だと気づくのに一瞬遅れる。
セイバーといい、普通の名前のほうが少ないのかね、ここは。
まぁ自分たちの名前だって半分コードネームのようなものなのだが。
「そうかい。オレはデュオで、こいつが式だ」
自身の名を名乗ったデュオに一方通行が僅かに反応する。
真っ赤な両目を丘の向こうに向ける。
「――テメェの知り合いのプリシラって女の死体なら、この草原の向こうだ」
「なっ!」
「勘違いすンじゃねェ。やったのは鎌を持った気色悪ィ変態野郎だ」
その言葉に式は隠しもせず嫌悪の表情を浮かべる。
だが自身も似たような表情を浮かべているに違いない、とデュオは思う。
彼らの脳裏の浮かんだのは間違いなく同じ人物なのだから。
――
明智光秀。
この殺し合いに嬉々として乗っていた気持ちの悪い男。
攻撃を行いつつ歓喜する。
攻撃を受けても愉悦に浸る。
まともな神経を持って相対すれば十人が十人同じ感情を抱くに違いない。
やはり、まだこの近くにいやがったか。
「……他に用がねェならオレァ行くぜ」
「おい! ここは情報交換するところだろうが、普通は!」
「バカかテメェは?
さっきみたいな物音立てた場所で情報交換する何ざ、どうぞ撃ち殺してくれって言ってる様なもンだろが」
確かにさっきの戦いで周囲に物音が響き渡った可能性は十二分にある。
「動いてなけりゃD-6のデパートにゼクスって奴がいる。聞きたいならソイツにでも訊きやがれ」
「ゼクス……
ゼクス・マーキスか!?」
「あン? 知り合いか? その顔を見るに仲良しこよしの関係ってわけじゃなさそうだがなァ?
――まァ、俺には関係ねェけどな」
先ほどから、言葉の端々に違和感を覚える。
一方通行の言葉を額面どおりに受け取れば――、
「おい、ってっことは……お前はゼクスのところに戻らないのか?」
「はン、アイツとは元々そこらで出会っただけの間柄だ。
情報は交換したしな、今更合流したところで大したメリットがあるとも思えねェ。
それに……あんなクソ野郎がそこらにいるンなら……チンタラやってるヒマはねェみたいだしなァ……!」
そう言って一方通行が浮かべるのは飢えた獣のような凶悪な笑み。
「あー……だったら、俺らと一緒に行動するってのは……」
「ハッ、それこそまさかだ。テメェらと仲良しこよしとか死ンでもごめンだ。
それにな――」
そのまま赤い視線を式に向ける。
「――何より、その女とオレが"合う"とは思えねェ」
「――ああ、それは俺も同感だ」
まったくだ、とデュオは内心、二人の言葉に同意する。
デュオとて奇人変人の相手は散々してきているが、この2人の潤滑油になれる自信はさらさらない。
そもそも自分は他人に合わせるのは得意だが、まとめあげるのは柄じゃない。
「……所で、お前、どこか行くあてはあるのか?」
「あン? テメェに言う必要があるのかよ」
「情報が欲しいならのD-6にある駅に寄ってみろ。
そこには遮蔽物も多いし、まだ何人かいるはずだ」
式の台詞にデュオは面食らう。
「おい式、何勝手に言ってんだ!?」
「別にいいだろう。こいつも一応は『バトルロワイアルを壊す側』ってわけだ。
だったらあいつらと会っても別に問題はないだろ?」
式はそう言うが、デュオの疑念は晴れたわけではない。
あの跳躍をできる人間がただものであるはずはないし、そもそもプリシラを殺したのがコイツでないという保証はない。
そんな危険人物を協力関係にある彼らの元へ送るのは、あまりにも無謀すぎる。
だが一度渡された情報は止めることは出来ない。
一方通行は口の端を吊り上げると、笑みを形作った。
「ハッ、そうかい」
背中を向け、デュオたちが来た道を南下し始める。
式はその姿を見送ることなく踵を返し、木陰に隠してあったバイクへと歩き出す。
そして、呆然とするデュオに向けて振り返り、口を開いた。
「行くんだろ? そのプリシラって奴が死んだところに」
* *
そして数分後、彼らは血溜りの中に倒れこむ少女の骸を発見した。
探す必要はなかった。
草原の緑をぽつんと染める赤い色はあまりにも目立ったからだ。
全身につけられた傷が、決して安らかな死に様ではなかったことを示している。
嬲るようなこのやり方、確かにあの男らしい。
だが、あの一方通行と名乗った少年の疑いが晴れたわけじゃない。
「……しかし、あいつを行かせて良かったのかね?
オレからしてみりゃ、かなりヤバい奴に見えたけどな」
「いや、大丈夫だろ」
疑念に満ちたデュオの声とは正反対に式の声は暢気とすら感じられるものだ。
「何だ、嫌に自身ありげだが、何か根拠でもあるのかよ?」
「ああ、だってあいつは俺みたいに殺人を嗜好するモノじゃない。
かといってあの男みたいに殺戮を快楽とするでもない。
結局のところ、"手段"としてしか人を殺せない――ただの人間だ」
……その声色がどこかうらやましそうに聞こえたのは、きっと錯覚だろう。
それよりも先ほど口にした言葉には気になるところが一箇所あった。
「……ちょっと待て。
その言葉をそのまま受け取ると、お前は殺人犯ってことになるんだが……」
「ああ、そうだよ。俺は"殺人鬼"って奴だからな。
――何だ? 気になるか」
「……別に。ある意味じゃ、俺も似たようなもんだ」
その言葉に今度は式が怪訝な表情を浮かべる。
デュオは殺人鬼ではない。
だがそんな理屈、自分たちが殺したOZ兵士やその家族にとっては関係ないことだろう。
彼らにとって自分は殺人犯、破壊者、――死神。
そんなものと同じだろう。とはいえ、殺戮者に落ちる気などさらさらありはしないが。
それよりもデュオにとって気になるのは、先ほどの巨木を倒した一撃なのだが。
だが、今の状態で聞いたところで理解できるとは思えない。
正直なところ、まだ混乱しているのだ。
戦闘中に見せた人間離れした挙動を含めて。
(……本当に同じ人間か、こいつら)
そんな胡乱げな視線を式に向けざるを得ない。
それに先ほどの言葉は裏を返せば『明確な目的があれば殺人を戸惑わない』ということだ。
あの不可思議な力とあわせて、危険人物であることに変わりはない。
今からでも後を追うべきか?
そう考えた矢先、デュオは朝日を受けて照り返す、"それ"を見つけ、苦笑する。
「……ったく、ヒイロといい、気遣いの判りにくいヤツがどうして多いもんかね」
亡骸のそばに置かれていたのは一本のコーヒー缶。
無造作に置かれたそれは、まるで彼女に対する手向けのようだった。
死体を埋めるわけでもない、直接弔うわけでもない。
だが、そこには何らかの感情の証があった。
「……ま、とりあえずは信用してもいいのかもな」
一方通行に関する感想をそれで締めくくり、血の気を失った顔をまっすぐに見据える。
その表情は先ほどまでの少年のものではない。
ガンダムデスサイズのパイロット、"死神の相棒"デュオ・マックスウェルのものだ。
「悪いな……仇を討つことぐらいしかやれることはなさそうだけどな」
最後にもう一度黙祷してデュオは少女の亡骸に背を向け、歩き出す。
道具のない状態で埋葬するのは
デュオがバイクに跨り、イグニッションキーを回す。
するとすでにサイドカーに乗り込んでいた式が口を開く。
「それで……これからどうするんだ。
あの白髪頭の言うとおりゼクスとやらに会うのか?
それとも当初の目的どおり『悪のアジト』とやらを目指すのか?」
どうやら式自身は決める気がさらさらないらしい。
どうでもよさげな表情に戻り、背後のシートに体を預ける。
ゼクス……いや、ミリアルド・ピースクラフトとの関係は決していいものではない。
かつてはOZの将校として敵対する位置にあり、今だってホワイトファングの首魁として敵対している。
その上、妹を失った彼がどのような行動に出るか。
直接会ったことがない分、ヒイロ以上に予想がつかない。
だがこんな状況は彼にとっても不本意だろう。
もしかしたら一時休戦ぐらいは出来るかもしれない。
一方で当初の目的どおり悪のアジトを目指すという選択肢もある。
プリシラの遺体を確認したため時間を消費したし、探索時間はいくらあっても足りない。
何らかの物証のようなものがあればあの
真田幸村を納得させやすくもなるだろう。
「……さて、どうしたもんか」
予想通り、隣からの返答はなし。
デュオはハンドルを指で叩きながら、思考する。
そして、彼の出した結論は――
【C-6/草原南東部/一日目/朝】
【デュオ・マックスウェル@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:健康
[服装]:牧師のような黒ずくめの服
[装備]:フェイファー・ツェリザカ(弾数5/5)@現実、15.24mm専用予備弾×93@現実、
BMC RR1200@コードギアス 反逆のルルーシュR2
[道具]:基本支給品一式×2、デスサイズのパーツ@新機動戦記ガンダムW、メイド服@けいおん!
[思考]
基本:なるべく殺したくはない。が、死にたくもない。
1:『敵のアジト』に向かい、中を調査。正午までには『D-6・駅』に戻り、詳細を報告。
もしくは『』にいるというゼクスと接触する。
2:明智光秀、
平沢憂には用心する。
3:デスサイズはどこかにないものか。
[備考]
※参戦時期は一応17話以降で設定。ゼクスのことはOZの将校だと認識している。
正確にどの時期かは後の書き手さんにお任せします。
【両儀式@空の境界】
[状態]:健康、光秀へのわずかな苛立ち
[服装]:私服の紬
[装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~1
[思考]
1:とりあえずデュオと一緒に敵のアジトまで行く。その後も共に行動にするかは未定。
2:黒桐は見つけておいた方がいいと思う。
3:光秀と荒耶に出会ったら、その時は殺す。
4:首輪は出来るなら外したい。
[補足]
※首輪には、首輪自体の死が視え難くなる細工がしてあるか、もしくは己の魔眼を弱める細工がしてあるかのどちらかと考えています。
※荒耶が生きていることに関しては、それ程気に留めてはいません。
※藤乃は殺し合いには乗っていないと思っています。
【C-6/草原南東部/一日目/朝】
【一方通行@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康 能力使用不可能
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、缶コーヒー×14、ランダム支給品×1(確認済み)
[思考]
1:このゲームをぶっ壊す!
2:打ち止めを守る(※打ち止めはゲームに参加していません)
3:D-6駅にいるという奴らに接触する。
4:機会があればプリシラの遺言を伝える
[備考]
※知り合いに関する情報を政宗、ゼクス、プリシラと交換済み。
『一方通行の能力制限について』
【制限は能力使用時間を連続で15分。再使用にはインターバル一時間】
【たとえ使用時間が残っていても、ある程度以上に強力な攻撃を使えば使用時間が短縮されます】
【今回の使用はあまりに過度の能力だったため、次からは制限される可能性があります】
ゼクスのいた世界について情報を得ました。
主催側で制限を調節できるのではないかと仮説を立てました。
飛行船は首輪・制限の制御を行っていると仮説を立てました
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最終更新:2009年12月24日 23:12