黄昏の破壊者  ◆L5dAG.5wZE





戦いを駆逐するべく戦場に踊り込んだ刹那・F・セイエイと本多忠勝
追われていたらしい人物の名はトレーズ・クシュリナーダ。刹那が知る、警戒する名の男。

驚愕する刹那の傍を忠勝が駆け抜ける。
相対するはバーサーカーのサーヴァント、
最強同士の三度目の激突。
止めても無駄かと、刹那はただ一声をかける。

「ホンダム! このトレーラーを!」

打てば響く。
そんな要領で忠勝が足を止めぬままに拳を振るい、横倒しになっていたトレーラーの上部を叩き正常な形へと復帰させる。
その結果を見届けることもなく忠勝は通りの向こう、強敵の待つ地へと恐れもなく踏み込んでいく。
巨人が邪魔は要らぬとばかり後退していく。一騎討ちを望んでいるのだろう。
忠勝もまた、あの敵手に抗し得るのは己のみと悟っている。遅れることなく後を追う。

(まだ奴の不死の秘密は解けていないというのに……! だが、こうなれば戦うしかないか……!)

見たところ巨人はやはり全快している様子。
加えて携えるは刹那の胴回りをも軽く上回るほどの太さを持つ柱。
あんなもので殴打されれば骨が折れるどころではない。まさしく粉微塵に砕け散ることだろう。
対抗できるのはこの島の中でもおそらくただ一人――そう、戦国最強の武人しかいない。
それを知っているからこそ、忠勝は刹那に何を言わせる間もなく自ら死地に飛び込んでいったのだ。
だが、敵手に比べ忠勝は消耗が激しい。連戦の疲労もあり、不利は否めないところだ。

ドアハッチを開き、トレーズが地に降り立つ。同時に刹那が突き付ける、サブマシンガンの銃口。
振り向き確認する。割れた窓ガラスから銃が飛び出ていたのだ。
トレーズが身に佩いている刀は無事だったものの、鼻先に銃口があっては抜刀する時間もない。

「……武器を捨てろ」

油断なく構えられた銃口はトレーズを捉えて離さない。
トレーズが鞘ごと刀を取り外し放り捨て、頭上へと両腕を掲げる。

「こんなにも早く君と再開できるとはな。できれば……まだ、出逢いたくはなかったよ」
「俺もだ。言ったはずだな、次に会う時に考えが変わっていなければお前を殺すと。
 この短い時間では……期待するだけ無駄なのだろうな」
「無論だ。私はまだ、敗者となってはいない。だから君が私に教えてくれ……私がいったい何者なのかを!」

トレーズが捨てられた刀へと目をやる。意識がそちらへの警戒に流れた刹那の一瞬の隙をつき、

「ファングッ!」

停止していた機動攻撃端末・GNファングが、トレーズの呼び声に応え呼び戻される。
GN粒子の赤い輝きが収束し、二人のちょうど中間地点へと着弾した。

「くっ……ファングだと!? スローネの……!」
「気を抜くな、刹那・F・セイエイッ!」

爆風に転がった刹那の眼前に、陽光を弾く白刃が滑り込んでくる。
とっさにサブマシンガンを掲げる。
ギィン、と甲高い音を立ててトレーズの刀は押し留められた。
膝立ちのまま歯を食い縛る、刹那。少しでも角度が狂えば銃ごと両断されそうだ。

「トレーズ、貴様!」
「無粋な真似をして済まないな。安心したまえ、君との決闘にあのようなモノは必要ない。
 この刀こそが私の意志、決意だ。さあ……私は選んだ。君も選べ、自らの進むべき道を!」
「……ッ!」

圧し掛かってくるトレーズの圧力に耐えかね、指が引き金を引いた。
でたらめに発射された銃弾がトレーラーの装甲面に跳ね回りあらぬ方向へと飛び去っていく。
トレーズが身を引いた一瞬を見定め刹那は後方に跳んだ。転がりながらも軽機関銃は手放さない。
立ち上がった刹那をトレーズは追撃するでもなく悠然と待っていた。
耳につけていたイヤホンマイクを外し、懐へと入れるトレーズ。

「この状況……たとえ俺を殺したところで、貴様もまたあの化け物に殺されるだけだ。それがわからない訳でもないだろう」
「私にとって死は恐れるべきものではない。だが無為に死ぬことは我慢ならない……。
 私のような人間は、力によって敗れなければならないのだ。それをもたらすのは君であろうと、あの異形の戦士であろうとさして違いはない。
 だが、私は君の理想を知っている。対話こそが、変革を誘発する――君はそう言った」

ヒュン、と刀を一振り。
フェンシングのように、片腕で構えこちらに向ける。

「しかし私の見たところ、君はそれを成すことを自らに任じてはいない。憧れている、と言ってもいい。
 君の知る誰かがそれを成してくれると信じているからこそ、君はその障害となるモノを討ち果たすだけの剣であろうとしている――違うかね?」

その瞳は語らずともこう叫んでいる。
私もまた、君の理想の妨げとなるものだ、と。

「だからこそ、私は君に決闘を申し込む。
 君の理想とする世界に私の居場所はない。私は戦う意志を捨てられない。故に、君と私は同一の世界に在ってはならない存在だ。
 君が君の理想を貫かんとするなら――この私を排除しなければ、先に進むことはできない」
「……トレーズ・クシュリナーダ」

刹那は、男に銃を向ける。
しかし引き金は引かない。まだ言うべきことが、ある。
固く目を閉じる。あの戦いを、全ての終わりと始まりの日を思い出すように。

「お前によく似た男を知っている。俺が……ガンダムが歪め、ガンダムとの戦いの中に己の存在意義を見出した男だ」

ガンダム、という言葉を口にしたとき、トレーズの眉が僅か、顰められる。
刹那は構わず続ける。

「その男もまた、今の貴様のように己のエゴに――歪みに呑み込まれ、俺に戦いを挑んできた」
「ほう。それで?」
「俺は……ガンダムには責任がある。世界の憎しみと真っ直ぐ向き合う、受け止めなくてはならないという責任が。
 戦うことが、奴に、そしてお前にとっての救いとなるのかどうかはわからない。だが」

刹那が目を開く。その瞳は、目映いばかりの金色に輝いていた。

「だからこそ、トレーズ・クシュリナーダ。決闘の申し出……受けよう。俺がこの先もガンダムであり続けるために」

トレーズが目の錯覚かと注視したときには、もうその瞳は元の煉瓦色に戻っていた。
代わりに浮き出ているのは清冽で迷いなき戦意。
それでいい、とトレーズは刀を握る腕に力を込める。

「……では往くぞ、刹那・F・セイエイ!」
「来い、トレーズ・クシュリナーダ! 貴様という歪み――この俺が狙い撃つッ!」

宣言と共に、二人の男は駆け出した。



          ◆



「■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!」
「…………………………………………………ッ!!」

咆哮し、激突する。
噛み合う斧と鎚がギャりギャリと火花を散らし、震える大気が風を逆巻かせ、吹き抜ける。
両断せんとする戦国最強の大戦斧を、狂戦士の戦鎚が押し留める。
鉄と木という材質の差か、斧刃は食い込みはするもののあまりの質量に芯まで到達できず。
バーサーカーが鎚をひねる。ギシギシと食い込んだ刃が軋み、忠勝の剛力との板ばさみに悲鳴を上げた。
このままでは武器を破壊されると見た忠勝は自ら斧を握る手を離す。

「…………………ッ!」

勢い余って体勢の崩れたバーサーカーのがら空きになった腹目掛け、忠勝は巨体を旋回させ渾身の蹴りを放つ。
軸足が舗装された路面を抉り、大地を揺らすほどの衝撃と共にバーサーカーの腹筋へと突き刺さった。
強靭なる筋肉の防壁を、同等以上の硬度を持つ剛脚が侵略する。
たまらず苦悶の声と共に身を折ったバーサーカーの手から鎚が零れ落ち、その超重量故に砕けた大地へ沈み込んだ。
しかし忠勝は獲物を拾うことを選ばず、拳を握り込み伏せる敵手の顔面へと迸らせる。
豪腕が唸り、バーサーカーの頭部が弾かれたように跳ね上がった。
二度、三度、四度――もはや数えることもままならないほどの高回転のラッシュ。
腕のガードの上からでも確かな手応えが伝わってくる。
バーサーカー自身の腕により視界が閉ざされたと看破した忠勝は、踏み込み一撃を放つとともに背のスラスターを点火。
押し込むように巨人の体躯を後退させ、脚を止めず跳躍した。
勢いを活かし、両手を組んだ鉄槌で一気に畳み込まんとする。

「■■■■■■■■■■――!!」

だが大英霊のサーヴァントもまた、いいように弄ばれたままでいる道理なし。
狂気溢れる瞳がギラリと光り、地を這うように身を伏せ振り下ろされた拳をかわし、未だ宙にある忠勝の足を掴み取った。
拮抗は一瞬、大地に足指が食い込むほどにがっしりと立つバーサーカーに軍配が上がる。
空中から引きずり下ろされ、轟音と共に戦国最強の巨体が地へと叩き付けられた。
間髪入れずその上に飛び乗ったバーサーカー、先のお返しとばかり馬乗りの体勢で両腕を振り上げる。
両腕に鈍く残る痛み。それは取りも直さず、この鎧武者が己に匹敵する強者とだいう証左。

わかっていた。それはわかっていたこと。
そして二度に渡る果たし合いで手を抜いたつもりはなく、それでも仕留められなかった。
だからこそ、この三度目の邂逅は天の采配。

真に最強たるべきはどちらか。
この戦にて、それを確かめる!

「■■■■■■■■――!!」
「…………………………!!」

録画した映像を巻き戻すように、先刻とは真逆の光景が繰り広げられる。
バーサーカーの振り下ろす嵐のような鉄拳を、見上げる忠勝の両腕が盾となって受け止める。
一閃、二閃と結果を見届けることなくバーサーカーは拳を撃ち出し続ける。
少々まともに当たったところでこの強敵は下せないことはすでに証明されている。

ならば、どうする? 決まっている――

「■■■■■■■■■■■■――!!」

跡形もなく粉砕してから、ゆっくりと首を改めればいい。
ドドドドドドドド、と速射砲のような拳が生み出す衝突音が連続する。
音が一つ響くたびに舞い上がる噴煙、そして大小様々なコンクリートの破片。

沈み込む。
工事現場のプレス機のように、拳が至る喫水線が深くなる。
殴られ続ける忠勝の身体を中心にゆっくりと小規模なクレーターが形成されていく。
忠勝の腕の装甲が凹み、削られ、形を変えていく様をバーサーカーは観察する。
それでも、一度として急所たる顔面への一撃を許しはしない。
狂化している己と違い、敵は「守」に長けていると睨む大英雄。それでも選ぶのはひたすらに「攻」。
堅牢なる盾が立ち塞がるならば、それを上回る力を以て叩き潰すのみ。

鉄のカーテンのごとき忠勝の豪腕に自らの腕を絡ませ、押し開く。
万力のような力で抵抗されるも、僅かずつだが腕の隙間は広がっていく。
紅い瞳が、見えた。
視線が奴の瞳を捉える。敵手もまた、真っ向から睨み返してくる。

それでこそ、だ。

バーサーカーは大きく身を反らす。

「■■■■■■■■■■■■■――!!」
「…………………ッ!」

そして、反動を乗せた渾身のヘッドバット。
衝突の瞬間、どちらも目を閉じはしなかった。掲げた意地の張り合いは、互角。
衝撃は忠勝の五体を通じて地面へと伝播し、ついに耐久限界を越えた路面が崩壊した。
舞い上がり、積み上げられた瓦礫が雪崩のように崩れ落ち、中心点である二人の姿を覆い隠していく。
飛び出す影は一つ。地に降り立つは狂戦士のサーヴァント。
直後、土砂によって鎧武者の姿は完全に見えなくなった。

眉間から血を流し、拳もまた骨の形が幾分変わるほどに傷めている。
蹴られた腹部は鈍く疼き、だがそれでも、両の足で立っているのはバーサーカーただ一人。
手応えは、あった。

ついに強敵を下した余韻に浸ることはなく、近しい獲物を逃すなと本能が駆りたてる。
辺りを見回し、落とした鎚の位置を確認。鎚に加え斧も手に入る。
さきほど確認した金髪の男と、数刻前に交戦した黒髪の青年を屠るべく足を向けた。

その足を、掴まれる。
地面から突き出した無骨な腕によって。

「…………ッ!」
「■■■■――!?」

もう片方の足を叩き付けるべく、振り上げる。
だが足首を掴んだ腕はそれを待たず、これもまた先刻の再現と言わんばかりに力任せに引っぱられた。
軸足のバランスを崩され、バーサーカーの後頭部が遠心力を乗せて大地へと落下。
だが足を掴む手は離れることなく、その先にある鎧武者の本体が土砂を吹き飛ばしつつ浮上した。
兜は断ち割られ、全身の鎧も見る影なく砕かれて。しかしその燃え滾る戦意には些かの衰えもなし。
バーサーカーが捕縛されていない足で忠勝を蹴り付ける。だが、背をついた姿勢で放った蹴りは武者の片腕により容易く弾かれた。
その煽りを受け一瞬身体が泳いだ隙を逃さず、忠勝は両腕でバーサーカーの片足を握り直す。
そして、まるで百姓が畑から野菜を掘り出すように、

「…………!」

引っこ抜いた。
地に伏せていたバーサーカーの身体が180度の弧を描き、忠勝を挟みちょうど反対側の路面へと思い切り叩き付けられた。
総重量300キロを超える空前絶後のハエ叩き。
ゴバッ、といわく形容しがたい衝撃音が鳴り、その最初の栄誉を授かった道路は哀れにも微塵に砕け、粉となって舞い散る。
当然、衝撃を顔面、胸、腹、全身で受けたバーサーカーのダメージたるや想像を絶するものであった。
バーサーカー自身の強固な肉体により命を奪われることはないものの、この場合はそれが逆に悪い結果を生む。
衝撃への耐性を得ることも叶わず、バーサーカーの身体にはダメージだけが残った。
骨がバラバラになるような感覚。痺れた身体は意志が下す命令を拒否し、続く忠勝の行動を妨げることなどできはしない。
反転した忠勝が「バーサーカーを」振りかぶり、再度のジェットコースターダイブを敢行させる。
バーサーカーにできることと言えば、ただ痛みを覚悟することだけ。

「………………………………ッ!!」

鬼神のごとき形相で、戦国最強の武人は辺り一帯の全てを蹂躙し始めた。
倉庫、電柱、建材、土嚢。
ありとあらゆる目に付く物を、例えて言うならまさしく「人柱」そのものでめったやたらに打ち砕いた。
水が湯に変わるほどの時間を経ることもなく、小型の竜巻が荒れ狂ったような惨状が広がっていく。
掴んだ足首からの抵抗が弱まった。
ここが好機と見て取った忠勝は勝負に出んと敵の両足をホールド、スラスターを全開にしてその場で旋回を始める。
暴虐が止んだとなんとか地を掴み反撃に出ようとしたバーサーカー、だが伸ばした手は高速で過ぎていく路面を捉えられず。
路面に忠勝が撃ち込んだ両の足がドリルのように回転し深く突き刺さる、そしてそれ以上の速度でバーサーカーを振り回す。

回る視界。増していくその速度は周囲に何があるのかさえももはや定かではなく。
やがて、バーサーカーの感覚が地が遠くなったことを看破する。
投げられた? いや、そうではない――

浮いているのだ!
あろうことか、自身のみならずバーサーカーを抱えたまま、この戦国最強は高く高く飛翔している!

そしてその上昇の間も回転は止まらない。
あまりの速度で掻き回される空気の層が真空を生み、バーサーカーの肌を浅く切り裂き始めた。
やがて耳から音が消え、静寂の世界に至る――発生した本物の竜巻の中心点。
角度を変え、地面に対しやや斜めになったところで、忠勝は片腕を離し径の範囲を広げた。
安定を捨て遠心力を得る。さらに大きく回り出すバーサーカーの巨体。
回転が最高速度に達したと判断したところで、

「■■■■■■■■■■■■■――!!?」

忠勝が手を離し、空高くバーサーカーが「射出」された。
乱回転するバーサーカーの五体。いかに大英雄といえども翼なき身、空にあっては姿勢を回復させることなど到底不可能だ。
目まぐるしく回る視界の中、鎧武者が何かを拾う姿が見える。
何か――あの、大戦鎚。
身の丈3m近い大巨人がこれまた5mに迫る長大な木柱を地に突き刺した。
腕を組み、落下する獲物を待つ戦国最強。
おおよそ最適の距離にまで近づいたと見るや、鎚を引き抜き両手で構え、反身を引いて大きく後方へ振りかぶる。
ここまでくればバーサーカーにも理解できる。
なんとなれば、一度目の対決ではこの状況から敗北を喫したのだ。

――バーサーカーのサーヴァントが、空中戦に置いて本多忠勝に勝る道理なし。

この後の展開は、つまり――



「………………………………ッッ!」




名付けるならば、バスターホームラン――!

音速を超えた証に歯切れのいい音を空中で鳴らした戦鎚は、衝撃に自ら砕けながらもバーサーカーの頭部を空の彼方まで吹き飛ばすことに成功する。
テコの原理でその場で回転するバーサーカーの首から下。
だが、本多忠勝は止まらない。
半分ほどになった鎚を捨て、今度は斧を引き抜いて身体ごと首なしの骸へとくれてやる。

腹のあたりで真っ二つ。
返す刀で上半身、心臓の位置を狂いなく斬り裂き肉塊が三つに。


だが、それでも本多忠勝は止まらない。


一度目は腹に大穴を空けた。
だが、立ち上がった。

二度目は脳を掻き回し、またその容れ物ごと粉砕した。
だが、立ち上がった。

日の元の国ではついぞ聞かないあやかしの類か、この戦士は何度討ち果たそうとその都度傷を癒し立ち上がってきた。
平和を求める少女を救えず砂を噛む思いで撤退した後、忠勝はずっとこの強敵を屠る方法を考えてきた。
相棒たる青年は倒す方法を見つけるため情報を集めると言った。
しかしそんな余裕はなく、また武人の矜持が許しはしない。
今持てる力のみで、忠勝ただ一人の力でこの業敵を討ち果たさずして何が『戦国最強』か。

忠勝の出した答えは二つ。
どちらも単純にして明快、だが行うは難きこと――他ならぬ、この本多忠勝以外には!


一つ、黄泉返るたびに何度でも滅殺すること。
このような争いに首輪をつけ送り出されているということは、奴は決して真なる不死の存在ではないと、相棒と見解が一致している。
が、具体的に何度殺せば限界が訪れるのか、それは定かではない。
だからこそ、この案は保留。

忠勝が選び実行したのは二つ目の案。
過去いずれの場合もこの魔性のモノは欠けた身体を再生して立ち上がってきた。
つまり、人体の一部分でも残してしまえば再生するということ。
であれば話は簡単だ。

すなわち――再生など叶わぬほどに五体全てを斬り刻み打ち砕き、塵も残さず魂までも葬り去る!

「………………………………………………………………………………………………ッッッッ!」

目にも止まらぬとはまさにこのこと。
旋回し回転し舞い踊る大戦斧が、餌を与えられた猟犬のように狂戦士の肉体へ喰らいつく。
顔はない。しかし首はあるので首を刈る。
首を落とさば次は二つに分かれた胴体の内片方、左腕を根元から斬り飛ばす。
それが終われば右腕を。ついでに右胸部をも二つに捌く。
斧を寝かせ、邪魔な肉塊を乗せ空中へ跳ね上げる。
ようやっと爪先が地についたバーサーカーの下半身を、容赦なく蹴りつけた。
目線より少し上、太い足が二本。
その中間を刃が駆け抜け、左と右の生き別れ。
十字に切って、四つに分ける。
頭上で斧を回転。超人ミキサーとでも表現しようか、高速鋭刃が四つから八つ、八つから十六と肉片を量産していく。
落ちてきたバーサーカーの「元」両腕・胴体もまた巻き込まれ、血風が混じる赤茶色い嵐として吹き荒れる。

充分なほど細かく砕いた、と確信した忠勝は、戦斧をその形状のままの用途――すなわち軍配、烈風打ち出す大団扇として横薙ぎに振るった。
三度、天へと舞い上がるバーサーカーであったモノ。
斧を放り出し、再び戦鎚を手に今度は忠勝も跳び上がった。

「…………………………………………ッッ!」

肉塊がそれぞればらばらになって飛び散る前に、一塊りのまま。
豪腕の生み出す再びのフルスイングが、狂戦士の名残りを跡形もなく吹き飛ばす。

頭と身体、それぞれ別の方角に。
見る影もなく、残す影もない完全な消失。
地に降り立った本多忠勝は、今度こその勝利を確信して膝をついた。
とたん、全身至る所から噴き出す蒸気。痛む身体の限界を越えてオーバーヒートした証。
連戦による疲労、征天魔王に刻まれた傷、バーサーカーの豪腕による全身各所のダメージ。
常人ならばとうに死に至ってもおかしくないほどの痛みを背負い、しかし意地と信念で無茶を通したがゆえの失調。
思うように動かない身体。だが、忠勝の眼はまだ死んではいない。

こちらは勝利したものの、まだ相棒が戦っている。
忠勝の声は届かないものの、あの金髪の偉丈夫と何事もなく和解したのなら相棒は必ず援護の手を入れてきているはずだからだ。
もちろん忠勝とバーサーカーの戦いに何ら影響を与えることはできないだろうものの、あの青年は忠勝一人に重荷を押し付けることを決して自分に許しはしない――そういう男だ。
そんな相棒だからこそ、共に戦場を駆けるに足るのだが。

とにもかくにも状況を確認するべきかと、忠勝は震える腕を地に落ちた斧へと伸ばす。


だからこそ――下を見ていたからこそ、気付かなかった。


「――――――――――■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」


忠勝目がけ落下する、未だ折れぬ狂戦士の殺意に満ちたその瞳に。
忠勝の背を、超高高度からの落下の勢いを存分に生かしバーサーカーが踏みつける、否、踏み砕く。
背面の推進装置、装甲、そしてその中身をも等しく破壊する重爆の一撃。


「…………ッッ!?」


二度目、そう二度目の土潜りを強制体験させられる忠勝。
その上に傲岸と立つバーサーカー。両腕両足心臓に頭、どこをとっても欠損はなく負傷の色もない。
理解の外にある出来事に忠勝の意識が一瞬オーバーフローする。
そこにバーサーカーの渾身の剛脚。視界が黒に閉ざされる。
忠勝は悟る。己が解釈は間違っていたと。
この敵手は、どう殺そうと再生するのだ。だからこそ再生の途中、傷を癒す最中にも間断なく攻勢をかけ限界点まで一気に殺すべきだった。
それに気づかず気を抜いた自身の不覚――!

悠然とバーサーカーは得手の獲物たる大戦斧を拾う。
これがあるなら折れた鎚を使うまでもない。
多少刃毀れがあれど狂戦士が振るうにあたり問題はない。それを確認したバーサーカーの背後で、巨大なものがぶつかり合う音。
振り返ったバーサーカーの期待通り、鎧武者は立ち上がっていた。
そうこなくては――今度はこちらのターンだと、バーサーカーが一歩を踏み出す。
立ち上がれはしたもののダメージは大きく、忠勝は腕を上げることすらもままならない。

にじり寄ってくるバーサーカーに、忠勝ができたことはただ徹底抗戦の意志を秘めた視線を叩き付けることだけ。
そして、


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!」


腰から上を、叩き切られた。
吹き飛んでいく最強の武人の胴部。倉庫群の一角に叩き付けられ、動かなくなった。
残された脚は見事に大地を噛んだまま、見事にも倒れることなく。どこまであっぱれな男であることか。
もはや首を取る必要はあるまい――己がごとき不死の肉体を持っていない限り、立ち上がることは不可能だとバーサーカーは確信する。
そしてそんな輩ではないと、今までの交戦が物語っている。そんな小細工に頼らず、鍛えた自らの技だけで戦う素晴らしき益荒男だということは。

だが、結果は結果だ。
勝利したのはバーサーカーのサーヴァント。
敗北したのは戦国最強の武人。

最強証明は成された。
それ以上の時間を浪費することを良しとせず、バーサーカーは次なる獲物を狩るべく斧を担いで駆け出した。



          ◆



予測される敵の進路へ向けて腰だめに構えたサブマシンガンを乱射する。
しかし孤影は巧みに半壊した倉庫や建材の影に滑り込み、開けた射線にその身を晒すことはない。
刹那は腰に差した拳銃の重みを再確認する。接近されれば次も斬撃を防げるという保証はない。

焦りを加速させるのは、遠方から響く破砕音。
忠勝が向かった先だ。今、相棒は単騎であの不死者へと立ち向かっている。
刹那が駆け付けたところで大したことはできない。だがそれでも、何もせず傍観することなどガンダムマイスターの矜持が許さない。
そして、刹那が彼ら人外の武を誇る者達の闘争に一つだけ介入する方法がある。
他でもない、現在交戦中のトレーズが持つGNファングだ。
砲台としては生身の人間に向けるなど想定されていない、桁外れの火力。充分にあの巨人への脅威たり得るはず。
だが当然のこと、トレーズは大人しく抵抗を止める男ではない。であれば力づくで、ファングを奪取するしかないのだ。
一刻も早くこの難敵を突破し、かつ武装を奪う。
中々に困難なミッションプランであると言えた。

視界いっぱいに黒が広がる。
反射的に迎撃した刹那だったが、直後にそれはトレーズが放り出したマントであると理解した。
黒布を貫いた銃弾はその向こうで倉庫の外壁に着弾し甲高い音を立てる。つまり、命中弾はないということ。

「頂く!」
「くっ……!」

正面に気を取られた隙をつき、トレーズは一気に刹那の懐へと飛び込んできた。
閃いた銀光が刹那の首を狙い迸る。
横薙ぎの剣閃を身を転がすことで避ける。そのまま身体を旋回させ、トレーズの足を払うべく水面蹴りを仕掛けた。
が、足に予想された反動はない。
視界の端で飛び上がったトレーズの足刀が跳ね上がり、刹那の顎をかち上げた。
後ろに引っ張られたように弾かれた刹那を追い、トレーズが踏み込もうとしたその鼻先に突き付けられる拳銃。
引き金を引けばその弾丸は確実にトレーズの脳天を貫く、そんな位置。
足を止めたトレーズもまた刀を前に構え、刹那の構える拳銃を鼻先を触れ合わせる。
刃と銃を間に置き、刹那とトレーズの視線が絡み合った。

「俺は、この島で一人の少女と出会った。武力ではなく対話による協調を全世界単位で行い、戦争を根絶するという理想を持った少女だ」
「……リリーナ・ピースクラフト、か。彼女は……放送で名を呼ばれていたな」
「彼女を知っているのか……俺は、護れなかった。手の届くところにいながら、彼女の命を救うことができなかった。
 だが……いや、だからこそ、せめて彼女の遺した理想を成就させてやりたい。
 ガンダムに乗る俺が言うのはおこがましいのかもしれない。所詮俺は破壊者だ……だがな!」

拳銃を握る左腕、指を動かしマガジンを排出。
地に落ちる弾倉が一瞬トレーズの目を引き、間を置かず刹那の足に蹴り上げられる。
トレーズの顔面へ飛ぶマガジン。未だその内に数発の弾丸を残し。
そして、薬室にはまだ一発の弾丸が、残っている。

「そんな俺だからこそ、できることもある!」

マガジンを撃ち砕く。
粉々に散る金属片。飛礫となってトレーズを襲う。
たまらずトレーズが腕を交差させ顔面を覆う。
同時に立ち上がった刹那がサブマシンガンを構え直し、トレーズが気配を頼りに刀を突き出すタイミングはまったく同時。
銃弾がトレーズの左腕に喰らいつき、白刃が刹那の脇腹を深く斬り裂く。
血飛沫が舞い、それでも両者動きを停滞させることはない。

「では聞こう、君に一体何ができるというのだ!?」
「世界を歪める者達を駆逐することだ!」

逆手に持ち替えたトレーズの刀が刹那の首を掻き切らんとし、
滑り込ませた刹那のサブマシンガンの銃身の上を火花を散らし滑りゆく。

「武力を用いるのなら、それは完全平和主義とは矛盾しているのではないか!」
「知っているさ!」

トレーズの左足が刹那の右足を踏み抜き、力が緩んだところを身体ごと体当たりする。
刃が刹那の頬を掠め、赤い線を生んだ。

「俺達が世界にとって異物だということはわかっている!」
「ならばどうして君が彼女の理想を継げるなどと言える! 君にその資格があると思うのか!?」

持ち直された刀が沈み、弧を描く。
刹那の掲げたデイパックが両断され、勢いをさほど減じぬままに肩口を斬り裂いた。
しかし斬り抜けることはない。
サブマシンガンの銃身が刀を受け止め、瞬時に巻き付いたショルダーストラップがその自由を奪う。
血に濡れた刀身は著しく摩擦係数を落とし、引き抜くことも叶わない。

「世界は……無意識の悪意に溢れている。誰しもが心の奥底に悪意を潜め、だが気付こうとしない……」
「その通りだ。だからこそ、私のような者が時代の渦中に立たねばならなかった。まさしく人の世の黄昏と言えよう……。
 そして私は私に任じた役割を果たした。残る私もまた……等しく処断されねばならない。世界の憎しみを清算するには罰を受ける者が必要だからだ。
 私を裁く、それが君の成すべきこと。敗者になりたいと望む私に相応しい終焉だ」
「まだだ! まだ貴様の役目は終わってなどいない!」

血を吐く刹那の瞳からはまだ力が失われてはいない。
だからこそトレーズも情けをかけることなど考えず、空いた手で鋼鉄の鞘を抜き青年の頭部へと叩き付けた。
額が割れ、噴き出す血潮。
それでも、視線はトレーズを貫き離さない。

「その役割は……俺達が担う!」
「何……!?」
「俺達ソレスタルビーイングは、対話による世界には不要の存在だ……!」

鞘を掴む刹那の腕は震えていたが、奇しくも左腕を痛めているトレーズの握力と拮抗する。
頭部、肩、脇腹と三か所から激しい出血を被りながらも、一向に気勢が衰えない。

「武力により紛争への介入……確かに一時的に争いは収まるだろう。だが根本的な解決ではない……。
 ガンダムは人の心の悪意までは根絶できないからだ。時が経てば憎しみが再燃し、引き金を引く者が現れるだろう。
 俺達はそんな歪みを駆逐する。誰もが俺達を恐れ、安易に武力で他者を害しようと思わなくなればいい。
 その間に、対話によって憎しみを鎮火する者達が人の心を繋いでくれる。彼女……リリーナ・ドーリアンやマリナ・イスマイールのように」
「憎まれ役を引き受けるというのか? 誰に頼まれた訳でもないだろう」
「そうだ、俺が自らの意志で選んだ道だ……俺達ソレスタルビーイングは存在し続けることに意味があった。
 神ではなく自らの意志で世界と向き合う……それが、存在するということ、生きるということ!」 

刹那を立ち上がらせるのは、自らの信念それのみではない。
ロックオン・ストラトス――ニール・ディランディ。
クリスティナ・シエラとリヒテンダール・ツェーリ、JB・モレノ。
志半ばで散ったソレスタルビーイングの仲間。刹那は彼らの願いを受け継ぎ、今こうして生き長らえている。

「俺達は戦争を根絶し続ける。やがて一つにまとまった世界が俺達を必要としなくなるまで。
 それでいい……俺たちもまた、駆逐されるべき存在だ。世界か変革を迎えるのならば、古き存在である俺たちもまたその役目を終える。
 だが、貴様はそうではない……貴様には、破壊者でしかない俺と違い、やれることがあるだろう!」
「……なんだと、いうのだ」
「わかって……いるはずだ!」

鞘を引く。同時に刀を押さえつける手を緩めた。
右手と左手、選べるのはどちらか一つ。
刹那が鞘を奪い取り、トレーズが刀の自由を取り戻した。
だが刀にはまだサブマシンガンが絡まっている。
刀を大きく振り、戒めを吹き飛ばしたトレーズの目前に、満身創痍の身体を押して刹那が飛び込んできた。
身体ごと独楽のように一回転し、遠心力を乗せた刃が刹那を襲う。

刹那にトレーズのような本格的な剣術の心得はない。
しかし何も問題はない。
何故なら、
幼いころに腕利きの傭兵に仕込まれた体術が、
マイスターとしての戦いの日々の中絶えず研鑽してきた戦闘者としての感覚が、
なによりエクシア、そしてダブルオーと共に幾多の難敵を打ち破ってきた膨大な戦闘経験が、ここにある!

「ここは……俺の距離だッ!」

視てもいないのに白刃の軌跡が予想できた。
この男、トレーズ・クシュリナーダの技量は刹那が記憶する最も手強いモビルスーツパイロットとほぼ同等。
あの男――戦場の修羅、グラハム・エーカーとの四度に渡る戦いは、刹那の剣戟戦闘のセンスを極限まで研ぎ澄ませてくれた。
そうとも、あのトランザム同士の激突に比べれば何ほどのこともない――遅すぎるくらいだ!

頭上を瞬間に通り過ぎる光。本来断ち切るはずだった刹那の首はそこにはなく、代わりに刀自身の鞘を斬り割った。
半ばから鋭利な切り口を見せ分かたれた鋼鉄の鞘。長さにして短刀程度。
伸びた刹那の両腕にしっかりと収まり、ナイフのような輝きを見せる。

息つく間もなく刹那が繰り出す左の刺突。刀を持つ右腕の手首へと迫る。
未だ刀の加重が抜けておらず引き戻す時間が足りないと見たトレーズは、あえて負傷した左手を前面に出す。
自然、前方へと放り出された血液が刹那の顔を直撃。反射的に目を閉じたもののその狙いは甘くなる。
刀の重さを利用し腕を下げる。鞘の先端は衣服と肉を多少削り取ったものの、握力に影響を及ぼすほどでもなく。
返す刀での斬撃、だが刹那は攻撃が不発だと見るや即座に一歩を踏み込んだ。
膝が触れ合うほどに接近する。刀が巡る領域の内側に入られ、ならばと手首を逸らし柄での打撃にシフトする。
脇の下の急所に強打を受け、刹那の息が詰まる。
だがここで退いては押し込まれる。それがわかっているからこそ、痛みを無視して更なる攻勢をかけるべく刹那は頭を跳ね上げた。
身長の差から刹那の後頭部はトレーズの顎へと吸い込まれるように衝突。
衝撃は等価――だがダメージは刹那の方が大きい。一瞬くらりと意識が遠のいた。
トレーズの姿が、あのときの「奴」に重なる――四年前、最後の戦いがフラッシュバック。

あのときは、歪みを断ち切ることができなかった。
結果としてあの男は四年もの間ガンダムに、刹那に執着し続け、戦うだけの人生を歩んでしまった。
それを望んだのはあの男。だがそうさせたのは刹那自身。
ガンダムは歪みを駆逐する者。
だが、その歪みが間違ったものだとしたら――正しく変革することができるのだとしたら。
ただ殺すだけでは何も変わらない。だから、

(違う――俺はもう、あのときとは違う!)

無意識のまま、右手の短刀を逆手に持ち替え振り下ろす。
トレーズの左大腿部へと突き立ち、飛び出た熱い血によって刹那の意識が覚醒する。
短刀を落とし、腰の刀へと両腕を伸ばす。
踏ん張りが利かないトレーズの身体を肩で突き飛ばした。

「ぐうっ……!」

片足の自由が利かないトレーズは無様に地に転がる。
刹那は奪い取った刀を構えようとし――だが、重みに負けて膝をつく。
全身の痛みは緩慢なものになりつつある。もう、時間がない。

トレーズもまた落ちていたサブマシンガンを拾う。片足立ちになって、銃口を刹那へと向けた。
荒く息を吐くのは両者とも同じ。
だがトレーズには大腿部しか深手と言える傷はなく、身を隠されでもしたらもう刹那に追うだけの力は残っていない。
それを察したか、トレーズは微笑みサブマシンガンの残弾を確認した。
腰の後ろから新たな弾倉を取り出し、装填。暴威の力を呼び戻す。
その整った顔に浮かぶのは恍惚の色。
勝利など求めてはいない。死力を尽くした戦いの果ての敗北――それこそが求めるもの。
だからこそ、トレーズは後退など選びはしない。
刹那の命が尽きる前に決着を付けると、その瞳は物語る。

一時の静寂。
もう、どちらの耳にも本多忠勝とバーサーカーの交戦の音は聞こえない。
目に映るのは、お互いにただ一人の男のみ。

「やはり、私の目に狂いはなかった。君こそが私を敗者へと貶めてくれる者だ」
「……満足か、これが。こんな戦いが……貴様の望む理想なのか」
「いかにも……さあ、もはや言葉はいらない。私を打ち倒し、君は前に進みたまえ。
 自らの意志で戦い、勝者となった君は誰にも勝るほどに尊い。君の輝きを最期に私に焼き付けてくれ」
「そう、か。なら……終わりにしよう。俺にはまだ、やることが残っている」
「望み通りに……!」

手を、開く。
刹那が、トレーズが同時に武器を放り出し、地に落着すると同時に蹴り出した。
刀と銃が交差し、離れる。
刹那が銃を、トレーズが刀を。
屈み伸ばした手がそれらを掴むのは同時、しかし立ち上がるのは一人だけ。
片足の自由が利かないトレーズは、剣を弓をつがえる様に引き、飛ぶ。

牙を突き刺すように。
射線を避けようともせず、正面から突き進んでくる金の影。
刹那は構えた銃の引き金を――引いた。



銃声が、静寂を切り裂いた。





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132:みんな! 丸太は持ったか!! バーサーカー 149:破壊者たちの黄昏
132:みんな! 丸太は持ったか!! トレーズ・クシュリナーダ 149:破壊者たちの黄昏
132:みんな! 丸太は持ったか!! 刹那・F・セイエイ 149:破壊者たちの黄昏
132:みんな! 丸太は持ったか!! 本多忠勝 149:破壊者たちの黄昏



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最終更新:2009年12月19日 22:11