それは不思議な出会いなの ◆jjkBJLIXVM
「宇宙開発局ってどっちですか」
「どっちも何も、地図を見ればわかると思いますが」
「・・・今どこにいるのかわかりません」
「ひょっとして迷子ですか」
「・・・・・・すいません」
「別に謝らなくても。そうですね、ここがE-2の北寄りですから南東に進んだ後、橋を渡ってしばらく東に歩けば着くと思います」
「ありがとうございます。じゃあ俺はこれで」
「ちょっと待ってください。折角ですし情報を交換していきませんか?」
「断る」
「即答ですか。情報はあるに越したことは無いと思うのですが」
「俺は急いでるんだ」
「・・・1人でできることなんてたかが知れています。互いの情報を照らし合わせればあなたの探しものが見つかるかもしれませんよ」
「へぇ、そうなのか。賢いなお前」
「普通だと思いますが。ここは目立つので場所を移しましょう―――」
「こんなところですか」
ショッピングセンター3階、衣料品をデイバックに詰め込んでいたエツァリがぽつりと呟く。
彼の目的を完遂するにはあの男との決着をつけねばならないのは自明の理だ。
しかしエツァリはあの男によって恐怖を刻みつけられた。歩き始めた道のりはあっという間に閉ざされてしまった。
彼の旅路には必ずもう一度あの男が立ち塞がるだろう。当然、そうなれば今度こそ殺される。
あの男を思い出すだけで足は萎え体が震える。勝てる道理などない。戦えるはずがない。
だがエツァリは認めたくなかった。彼女への想いは死の恐怖程度のもので消えてしまうようなものではないと。
だから、エウァリはその問題は先送りにすることにした。
こんなにも長く険しい道なのだ、そんな先のことを考えてもしょうがない、と。
今は自分の出来ることだけを考えよう、と。
それでは何も解決はしていない事など自分が一番分かっている。そうでもしなければ自我を保つことができなかったのだ。
まずは目の前の小さなことから始めよう。
道中立ち寄った学校で手に入れた少女の皮膚、それをもとに作成した変装用の護符。
諜報員であるエツァリからしてみると素顔はできるだけ晒したくないというのが本音、早速護符を使おうと思ったのだがいざ使おうとした段階でふと幾つもの問題に気付いた。
まずこの護符の成り立ち。この護符はオリジナルとなった人物が存在し、その人物は既に死亡してしまっている。
護符は外見に関してならばそっくり再現することができるが、本人の性格や記憶までは対象外。
もしオリジナルをよく知る人物に遭遇した場合、なぜ生きているのかとしつこく問い詰められた上で同行を余儀なくされる可能性が高い。
一時的な会話ならいざ知らず、行動を共にするとなれば記憶喪失で強引に押し通すくらいしか手が無くなるのだ。
主催者に対する不信感を募らせることはできるが万が一護符が破壊された場合のリスクを考えれば到底釣り合わない。
次に服装。エツァリの着ている服は
海原光貴の通っていた学校のもの。当然男子の制服である。
対してこの護符を使用した場合、エツァリの姿はあの女学生のものになる。
つまりはたから見れば「女なのに制服はおろか下着まで男モノ」というとっても怪しい風体になるわけで。
理由を聞かれれば「いやぁ実はワタクシ男装癖がありまして」とかなんとか、胡散臭い事この上ない。
最初の問題も合わせて考えれば実に頭が痛くなる話だ。どうやって言い訳をしろというのか。
そしてこれはあくまで気分の問題なのだが何よりも重大な問題がある。それはエツァリが男性であり、護符で化けるのは女性であるという点だ。
先ほども述べたが護符は外見に関しては完璧なのだ。身長体重から体型や声までそっくりそのまま本人と同じになるのだ。
それってつまりどうなんだろう。なんとも背徳的な感がするのは気のせいではあるまい。
というかこの「本人と同じ容姿に化ける」という能力自体が今のエツァリには向いていないのだ。
殺し合いに乗った場合はいざ知らず、ゲームを破壊する立場にある者にとっては大道芸程度の意味合いしかない。
とはいえ使えるカードが多くて困ることは無い。何かあった時のためにも変装は常に使えるようにしておくべきだ。
そうこうしているうちに大方の探しものは見つかった。次は彼に頼まれたおつかいに行くとしよう。
「つまりあなたは放送を聞き逃したと?」
「気が付いたら寝てて・・・」
「はぁ、わかりました。では放送の内容を言いますのでメモを用意して下さい」
「なんでメモを出すんですか」
「禁止エリアや死者の情報は以外と量がありますからね。全て覚えておくのは大変なのでメモに取るんですよ」
「頭いいなお前」
「それはわかりましたから。まず禁止エリアですが―――」
タキシードが風を切る。黒い影が市街地を駆け抜けていく。
結局、あの男との情報交換は
ヴァンにさして有用な情報はもたらさなかった。
あえて言うのなら死者に関する事くらいだろうか。
プリシラ。ヴァンの事を好きだと言ってくれたあの少女はこのゲームで命を落とした。
その事を聞いてもヴァンは自分でも意外なほどに落ち着いていた。あるいはプリシラを夢に見た時から既に彼女の死を予感していたからかもしれない。
どちらにせよもうあの笑顔を見ることはできないし、彼女にヴァンがしてやれることは何も無い。
カギ爪の男。エレナの仇である奴もまた死んだ。
誰に殺されたのかは知らないがあの男の事だ、最後まで気味の悪い笑顔を浮かべていたに違いない。
というよりそもそもこの会場にはいなかった可能性すらある。何しろカギ爪の男はヴァン自身が殺したのだから。
「ここが橋だから・・・あとは東にまっすぐか」
もちろんこれは本人がそう思っているだけで実際のところは
- 放送を聞いたら必要な情報をメモにとる。というか放送をちゃんと聞く
- 禁止エリアには入ってはいけない
- 普通の人間はそんなに調味料は使わない
など、かなりの事を教えてもらったのではあるが。
そんな彼だが、男の言葉を一つだけはっきりと覚えていた。
「この会場に
上条当麻という学生がいる。そいつは人との約束も守れないような最低野郎だからもし会うことがあれば一発殴っといて欲しい」
その頼みをヴァンは二つ返事で了承した。
理由はよくわからなかったが、その言葉にはなぜだか共感できるものがあったのだ。
その上条当麻とかいう奴にあったら、遠慮なくぶん殴ってやろう。
でもちょっと待ってほしい。なにか大切なことを忘れているような・・・?
(あいつの名前・・・ウミハラ・・・えーと・・・)
―――肝心な人物の名前をきちんと覚えていないヴァンなのであった。
「ヨロイ、ですか。そんな大型の起動兵器が開発されたという話を聞いた事はありませんね」
「それを言ったら魔術に超能力って何だ。そんなもんが本当にあるのか」
「しかしあなたは実際に空飛ぶ黒衣の女性と遭遇しているのでしょう」
「いや・・・確かにそうなんだが・・・」
「・・・どうやら互いの認識にズレがあるようですね。もう少し詳しくお話を聞かせていただけますか―――」
「F-1の真ん中あたりにヘンな女がいる。ちょっと心配になってきたんで様子を見てきてほしい」
別れ際、エツァリの行く先がショッピングセンターだとわかるとヴァンはこのような要求をしてきた。
聞けばあの巨人達の戦闘があった場所のようだが、目的地とそう離れていなかったため引き受けたのだ。
そしてそれは引き受けて正解だった。何しろ、
「まさか、もう首輪を解除している人がいるなんて思いませんでしたよ」
参加者達を縛る首輪、その戒めから既に脱出している人物に会うことができたのだから。
首輪さえなくなってしまえば主催者から受ける制限は大幅に減少する。逆にいえば主催者を打倒しようと思えば首輪を解除することが何よりも先決なのだ。
願ってもみなかった幸運。後はこの人物から首輪の解除方法を聞き出して実行に移すのみ、の、はずなのだが。
(・・・なるほど、これが彼の言っていた“ヘン”な理由ですか)
その女性は眠っていた。そして何をしても起きなかった。
声をかけても、ゆすっても、つついても、てんで反応を示さなかったのだ。
もしかして既に死んでいるのは、と思ったが微かに呼吸しているので生きている事は間違いない。
何者かに襲われて脳に障害を負ったのか、とも思ったのだが外傷も無い。
どこをどうみても健康そのものなのに、女性はこんこんと眠り続けている。
(やれやれ、まるで白雪姫ですね)
ここで粘って起きるのを待つのも一つの手ではある。
しかしこんなマップの端にやってくるような者はそうそういない以上、エツァリは参加者間での情報を手に入れることはほとんど不可能になる。
それはこのゲームにおいては大きなデメリットだ。やはり多少の危険は冒してでも情報は欲しい。
となるとこの女性を担いで殺し合いの場を徘徊することになるのだが、
(・・・さすがにそれは無いでしょう)
そんなものはゲームに乗った者からすれば格好の餌食だ。楽してスコアが2つも稼げるのだから見逃すはずがない。
移動することも留まることもよろしくない状況で、だが彼は一つの名案を思いついた。
変装用の衣類を調達している際に気が付いたのだが、デイバックはどれだけ大量の物を入れても質量が増えないのである。
これを利用しない手はあるまい。早速女性を担ぎ上げデイバックの中に詰め込む。
倫理的に見ればあまり褒められた行為ではないが状況が状況だ、女性も大目に見てくれるだろう。
問題はこのカードをいかにうまく使うかということだ。さて、次はどう動くべきか?
「これで終わりか?」
「はい。かなり有益な話し合いでした。ありがとうございます」
「はぁ」
「探し物、頑張ってくださいね」
「お前もな」
「では僕はこれで。お互い頑張りましょう、ヴァンさん」
「あぁ。ところでお前、名前なんだっけ?」
【F-1中央部/一日目/昼】
【海原光貴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:健康、疲労(中)
[服装]:ブレザーの制服
[装備]:S&W M686 7ショット(7/7)in衝槍弾頭 包丁@現地調達 、黒曜石のパワーストーン@現地調達
[道具]:支給品一式、コイン20束(1束50枚)、大型トランクケースIN3千万ペリカ、衝槍弾頭予備弾薬35発
洗濯ロープ二本とタオル数枚@現地調達 、変装用の護符(
加治木ゆみ)、加治木ゆみの首輪、変装用の衣類、蒼崎橙子の人形@空の境界
[思考]
基本:主催者を打倒し死者蘇生の業を手に入れて
御坂美琴を生き返らせる。
0:殺し合いに乗った奴は殺す。必要なら他者に協力を求める。
1:蒼崎橙子の人形@空の境界から首輪の情報を聞き出す
2:これ以上彼女の世界を壊さない為に上条当麻、
白井黒子を保護
3:
バーサーカーと
本多忠勝を危険視
[備考]
※この海原光貴は偽者でその正体はアステカのとある魔術師。
現在使える魔術は他人から皮膚を15センチほど剥ぎ取って護符を作る事。使えばその人物そっくりに化けることが出来る。海原光貴の姿も本人の皮膚から作った護符で化けている。
※タオルを一枚消費しました。
※主催者は本当に人を生き返らせる業を持っているかもしれないと思っていますが信用はしていません。
※上条当麻には死者蘇生は効かないのでは、と予想しました。
※加治木ゆみを殺したのは学園都市の能力者だと予想しています。
※海原光貴に化ける為の護符を完全に破壊されました。今現在の姿はエツァリそのものです。
※ヴァンと情報交換を行いました。
※蒼崎橙子の人形を生きている人間だと思っています。
【E-3西部/一日目/昼】
【ヴァン@ガン×ソード】
[状態]:満腹、ダンを奪われた怒り
[服装]:黒のタキシード、テンガロンハット
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[道具]:基本支給品一式、調味料×大量、徳用弁当×6、1L入り紙パック牛乳×5
[思考]
基本:ダンを取り戻す
1:とりあえず宇宙開発局に行く、道に迷ったら人に聞く。
2:機械に詳しい奴を探す
3:向かってくる相手は倒す
3:上条当麻を探して殴る
4:主催とやらは気にくわない
[備考]
※26話「タキシードは明日に舞う」にてカギ爪の男を殺害し、皆と別れた後より参戦。
※ヴァンは現時点では出会った女性の名前を誰一人として覚えていません。
※死者が蘇生している可能性があることを確認しましたが、結論は保留にしました。
※第一回放送の内容を海原光貴から聞きました。
※海原光貴と情報交換しました。
※海原光貴の名前は忘れかけています。
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最終更新:2010年01月12日 20:17