思春期を殺した少年の翼 ◆mist32RAEs
玄関を開けてすぐのところにソレはあった。
様々な種類の草木が周囲に生い茂る、外見だけがおんぼろな山中の洋館。
その出口から出てきたヒイロと
ファサリナを出迎えたのは少女の死体だった。
茂みの真ん中に投げ出された血まみれの死体だ。
上等な服にいくつもの銃創。そこから溢れ、すでに生乾きの赤黒い液体。
よく見れば身体のそこかしこに死斑が浮き出ており、耳や鼻から血液混じりの体液が垂れ流され始めている。
生前はさぞかし見目麗しい少女であっただろう。
だが今は誰もが目をそむけるほどに死の気配を振りまいているだけの物体に成り果てた。
これが死だ。
人がモノになる。
そこに幻想はない。
人が腐り果てる。
そこに美しさなどない。
ソレはもう人ではない。
「リ……リリー……ナ……」
それはヒイロの掠れた声だった。
ファサリナは少なくともここで出会ってから、この少年のこんな声を聞いたことはなかった。
鍛え上げられ、引き絞った若い身体が微かに震えている。
何があろうとも動揺とは無縁と思われた鉄面皮のこの少年が、だ。
それだけでファサリナはヒイロの心中を察した。
この死体の首元を見れば、自分たちと同じ境遇であることは容易く知れる。
そしてヒイロの知る人物であることも彼の反応を見れば一目瞭然だ。
ファサリナにその名前を教えなかったのは警戒していたが故だろう。
ゼクス、トレーズなどの名前とは違う、迂闊には教えられない大事な名前だったはずだ。
その名前の持ち主である少女。この目の前の死体が……リリーナ。
下手に声などかけられない。
ゆえにヒイロの呟きを最後として、この場に空虚な静寂が満ちていった。
今は彼は何を思うのだろう。
ファサリナがヒイロについて知ることはあまり多くない。それゆえにその心中を慮ることなどできなかった。
佇む少年は動かない。まるで一枚の写真のようにファサリナの見る風景は固まっていた。
「…………少しお伺いしてもよろしいでしょうか、ヒイロ」
無視しているのか聞こえていないのか、反応はなかった。
ただ立ち尽くして少女の死相を凝視している。
その視線を遮るようにしてファサリナはかつてリリーナと呼ばれた少女の遺骸へ、そろりと身を寄せた。
その手には洋館の内部から携えてきたカーテンの布地がある。
ヒイロが動かぬ間に館の中から調達してきたのだ。
それをイスラムの女性が纏うスカーフのようにしてリリーナの身体へ巻きつけていく。
「何のつもりだ……」
弱々しく呟くように。
その声には力がなかった。
「この方は貴方の大事なひとなのでしょう……?」
「何のつもりだと聞いている」
やや強い声。
だがいまだに虚ろな感情を隠せるほどのそれではない。
「弔う前にせめて死化粧を」
「……化粧?」
「ええ、この方の姿を見ることができるのはこれで最後。ならば出来る限り美しく、貴方の想い出の中へ刻んであげたいと思います……」
手櫛で髪を軽く整え、顔の汚れをカーテンの裾で丁寧に拭きとってやる。
ヒイロはその作業を邪魔しない。佇み、ファサリナがリリーナを清める作業を言葉ひとつ発さず見つめていた。
自分の背後に立つ少年は今、悲しみとともにこの少女の記憶を己の脳裏に焼き付けているのだろう。
それでいい。肉体は死んでもその生前の記憶は誰かの心の中に残る。
ならばその死者はその思い出の中で永久に生きることになると、同志たる
カギ爪の男はそう言っていた。
ファサリナの記憶の中にはあの優しげな微笑が今でもはっきりと思い出せるほどに深く刻まれている。
そう、例え肉体は死んだとしても自分の中で同志は生き続けているのだ。
だからこその理想のために躊躇わずこの身を捧げることができる。平和と調和を目指すその想いが胸の中にある。
ヒイロにもそうあって欲しい。この少年は強い。安々と悲しみに折れるような人間ではないだろう。
だがこの島に連れ去れられてきた現状のファサリナにとっての唯一の希望たる彼には、自分と同じ気持ちを理解して欲しい。
無愛想だが妙に誰かの気持ちに敏感なところのある不器用な彼に、自分の気持ちを理解して欲しい。
汚れた女だ。自覚はしている。
よりによって、少女の死によって悲しみにくれる
ヒイロ・ユイにこの自分を理解して欲しいと、浅ましくもそう言っているに等しい。
だってこの哀しみは一人で背負うには重過ぎる。傷の舐めあいでもいいから誰かの理解が、温もりが欲しかった。
同志が生きているにせよ死んでいるにせよ、その理想のために自分がやるべき事は多く、道は険しい。
その道をたった独りで行けというのか。誰かを頼りにするのはそんなにもいけないことなのだろうか。
そんなはずはない。ヒイロでも、異常とも言えるほどの強靭な精神であろうとも、そんな気持ちを少しでも抱かないはずはない。
だって彼は、ああ見えてとても優しい子だとファサリナは思うからだ。
ヒトは結局自分のことしか理解できない。
ゆえに自分の弱さを真っ直ぐに見つめられればこそ、誰かの弱さを汲み取れる優しさが生まれるのだから。
それができるなら、きっと――、
――ごめんなさい。
この少女がヒイロにとってどんな存在なのかは知らない。
だがこころの中で謝りの言葉を呟いて、ファサリナはリリーナの唇に彼女自身の血で紅をひいた。
半ば乾いたその血は赤というより暗褐色に近い。
生前は清楚で明るい雰囲気を纏っていたと思われる快活そうな少女の猊は、白蝋と見紛うばかりの青白い肌にダークな口紅という組み合わせによって、妖艶ともいえる気配に包まれていた。
血に汚れてボロボロのドレスはその全身を包んだカーテンの布地によって隠されており、その顔はファサリナの化粧によって見違えるようだ。
茂みの緑に覆われたローブ姿の美しい少女がそこにあった。
「なぜこんなことをする」
ヒイロの質問は先ほどと同じだった。
ファサリナは全ての作業を終えて振り向き、少年の真ん前まで歩み寄る。
相手は微動だにしない。だからこちらからさらに一歩近づく。
「……答えろ」
互いの瞳の中に向き合う相手の姿が映る、それほどの近さ。
ヒイロの瞳は揺れている。それがファサリナには見えた。
「ヒトは死んでしまってもその人を大切に思う人間の記憶の中で生き続けます。それこそが思い出というものではないでしょうか」
「……否定はしない」
「それに……女は想いを寄せる殿方には一番美しい姿を見せたいと思うものです。この方もきっとそう思うでしょう」
「何を勘違いしているか知らないが、俺とリリーナは――」
ファサリナがさらに一歩踏み出した。
顔と顔が触れ合う距離。
ふわりと柔らかな風が女の匂いを含んでヒイロの肌に触れた。
そしてその発生源たるファサリナの肌も触れ――――なかった。
「ええ、ですからこれは私の一方的な勘違いです……ごめんなさい、ヒイロ」
まさに触れるか触れないかの距離で、生めかしい薄桃色の唇が言葉を紡いだ。
その言葉をくだらないと切って捨てる、そういうことをヒイロはしない。
ただ無言で答えを隠す。否定ではなく、答えることを拒絶。
「――同志が生きている確率は……殆ど無いと言っていいでしょう」
「何?」
すっと距離をとってから視線を外して、ファサリナは言った。
冷静に考えればわかることだったのだ。
「同志を付け狙う者の名前を覚えておりますか」
「
ヴァン……だったか」
「ええ、彼は思い返せば同志のことを『カギ爪』と呼んでいました。おそらく彼は同志のお名前など知らないのでしょう」
「そうか……俺とお前の情報のみによる推測だが、この島には何人かの括りごとに何らかの面識がある人間同士が集められている」
名簿にファサリナの知る名前は、自分自身の他にいくつかある。
ヒイロも数こそ違えど知る名前が複数あるという。
つまり知り合いが全くいない人間はここにはいないのではないだろうか。
この何でもありのサバイバルにおいて、面識のある知り合いという存在は、徒党を組んで身を守る上でとても有効だ。
それにヒイロにとってのリリーナのように、ファサリナにとってのカギ爪のように、守りたい存在があるならばこそ自ら捜索のために動くだろう。
その逆としてヴァンという男のような誰かの命を付け狙う人間という存在にとっても、理由こそ違えどその誰かを探しに自ら動く動機となる。
自分だけの命が大事なら、どこかに引きこもっていれば生存確率は格段にアップする。
だが皆がそうしていたら、ほとんどのプレイヤーは遭遇する確率が激減、殺し合いも発生する確率は同様に低くなる。
結果、帝愛の言う『ゲーム』はつまらないものになるだろう。少なくとも自分たちを監視して殺し合いを眺める存在にとっては。
ヒイロもファサリナも知人の捜索にあたって一人での単独捜査に限界を感じているからこそ、こうして行動をともにしているのだ。
それがないならわざわざ危険を承知で歩きまわったりはしない。見知らぬ誰かと組むこともなかったろう。
帝愛はそれを見越してこのような人選をしたのだとしたら。
「ヴァンという男が名簿を見たとき、カギ爪の本名が書かれていたとしてもそれが目的の人物とはわからない……」
「ええ、ですから彼にもわかるように『カギ爪の男』と書いたのでしょう」
理屈は合う。
ヒイロもそれを認めた。
だがそれを認めるということはファサリナ自身が最も認めたくない想像を認めることと同義だ。
「それを受け入れてこれからお前はどうする気だ」
「同志の理想を果たすために動きます。同志の想いは私の胸の中で生きている。私はそれを実現させなければなりません」
「生き残って同志とやらの代わりを果たすために動くか。それがこのゲームに乗るということなら……」
――お前を殺す。
ヒイロは無言でそれを伝える。
その瞳の中に最早、揺れは無い。
「ヒイロ、貴方の中のリリーナさんは貴方に何を望むのですか?」
「質問の意味が理解できかねる。わかるように言え」
「貴方が最も守りたかったヒトはもうこの世にいないのですよ? そしてそれは私も同じ」
ファサリナはそっと悲しげに眼を伏せた。長いまつげが濡れた瞳に被さり、眼から透明な液体を溢れさせる。
ヒイロ・ユイはたしかに強い。だがその強さはその若さには余りにも似あわず、ゆえにファサリナの眼には歪に映った。
感情を肯定するも、自身の感情そのものは完全に制御しているように見える。
まるで恐怖を知らない、完璧に訓練された兵士のようだ。
そんな彼が揺れたのはこの少女の死を見つめた時だけだった。
土壇場でも揺らぐことなく、自分の生き死にの境目ですらクールに状況を見つめることができるにも関わらずだ。
リリーナという少女がヒイロの大切な人物だということは誰にでもわかる。
しかしそのような人間らしい感情を持ち合わせているのに、なぜこうも自分を生き死にの埒外へと捨てられるのか。
ファサリナには未だにヒイロ・ユイを完全に理解することはできない。
だが完全に理解せずともアキレス腱を握れればそれで十分。
「……だから何だ」
「私たちは……協力できるのではないでしょうか。もし主催の力が死者を生き返らせることが可能であるなら――」
「馬鹿げている。冷静になって考えろ」
「それをいうならば、私達がここへ連れ去られた事自体がすでに馬鹿げたことです」
それを完全に否定する意見をヒイロは持っていないはずだ。
ファサリナ自身、世界中で暗躍するカギ爪の組織では幹部といってよい。
そんな組織の最重要人物を拉致など、少なくともファサリナの知る世界の人間にできるわけがない。
「……だとしたら、どうする。優勝賞金の十億では、お前と俺の求める人物をそれぞれ五億×2で蘇生・帰還させればそれで終わりだ」
「私はそれで構いません。同志の胸の中で私はあの方の記憶となって、そして一つになるのですから」
「自己犠牲か……俺もそうだと何故お前は考えられる?」
きっとこの少年も同じはずだ。
少なくとも彼にとって最も大事な存在は己ではないのだ。
だから例え自身がどうなろうとも、リリーナという名の少女のことを最優先にするだろうという確信があった。
「貴方は平和を求める同志のお考えを私から聞いたときに、その思想を肯定して下さいました。
ですが貴方はその一方で、このゲームを主催する帝愛に戦いを挑むことを躊躇っているようには見えません」
「怖気付いたのかファサリナ。奴らは確かに強大だが、お前がその力に屈するというなら、敵として排除するまでだ」
「そうではありません、貴方自身のあり方のお話をしているのです」
「俺自身だと……!」
なぜファサリナがヒイロ・ユイの事をそう思ったのか。
それは一つの疑問がきっかけだった。
平和を肯定し、だが戦いに躊躇いを見せない――矛盾したように見えるこの二つの要素は少年の中でどうやって並びたっているのか。
争いを忌避するから平和を求めるのではないのか。
ならば何故迷いなく闘争の中へ飛び込む決断を下せるのか。
その答えはおそらくこれだ。
「貴方は平和を肯定する――ですが、その平和の中に貴方が入ることを考えていない」
ヒイロは答えない。
だがその平和を担う存在がヒイロ自身でないことはファサリナにも解る。
その研ぎ澄まされたナイフのような闘争技術と冷徹な意思は、戦争のためだけに存在するものだからだ。
「貴方の言うように行動して、結果として勝利するに至ったとしましょう。ですが、その確率はどれほどのものなのでしょうか?
怖いのではありません。私の存在の全ては同志のためにあります。同志が理想を追い求めるのならば、その理想のためにこの身を捧げます。
ですが私は貴方とは目的を違えるものと思っていました。貴方が何のために戦っているのかわかりませんでしたから。
ゆえに言い出せずにおりました。貴方は強い……そして……貴方のような殿方の敵になるのは辛いことです。
ですから――」
ちゃきり。
コルトガバメントの冷たい音。
「ヒイロ……」
少年の右手が構える暗い銃口がまっすぐにファサリナを狙っている。
「もういい、わかった。お前は俺とは道を違えた。ならばここで殺す」
「いいえ、違いません。貴方は私と同じです!」
「違う。俺は、己の妄執と作戦目的を混同などしない」
「ならばなおのこと貴方の冷静な判断で見極めて下さい! 貴方の言うようなことで同志が生き返る確率はどれほどのものですか!?
私達を拉致してきた彼らの言う事を鵜呑みにすることは確かに危険かも知れません。
ですが普通は、わざわざここまで大規模な仕掛けを施してまでこんな回りくどいことをするでしょうか!?」
そうだ。
相手は――帝愛は普通ではないのだ。
どうやって自分たちを連れさってきたのか分からない。
どうやっていつの間に爆弾首輪を取り付けたのか分からない。
どうやってこのデイパックに質量を無視した荷物を入れられるようにしたのか分からない。
「彼らに勝てますか? よしんば勝ったとしても私達の求める人間を生き返らせることができなければ、それは勝利でも何でもありません。
つまり彼らが生き返らせる技術を持っていることを信じなければ、貴方の作戦は成り立たない。
貴方は帝愛の常軌を逸した『魔法』を信じているのです! 人を、人間を生き返らせることが可能だと!」
「……!!」
ヒイロの表情が変わった。
眉間に険しい皺がよって、その秀麗な眉目を歪ませている。
ぎりっ、と歯が軋む音が聞こえてきそうなほど唇の端に力がこもっているのがわかる。
「もし貴方が……自らの命すら捨ててこの方を救いたいと願うのならば、私たちは協力できるはずです。
二人で生き残りましょう。私達全てを生きながら拉致した相手と戦うよりは、勝率は遥かに高いのではないですか?」
「…………最後に残ったお前が俺を裏切り、同志と二人で生還する可能性もありえる」
「その時はどうぞ……約束のとおりにしてください」
――お前を殺す。
以前、ヒイロはファサリナにそう言った。
ファサリナの提案では、優勝者となるのはヒイロ・ユイ。
そして望みはリリーナとカギ爪の蘇生と帰還。
自身の生死は度外視。
だがファサリナとて何の計算もなしでこの少年を信じたわけではない。
このようなことを約束しようと、最後まで生き残ることができなければ一切の意味を成さないのだから。
今の段階ではどうとでも言えるただの口約束でしかない。
その時になってヒイロが信じるに値しない相手と分かったならば、その時はその時だ。
だが彼がファサリナが感じた通りの人間だったなら――ヒイロに殺してもらえるのは悪くないことかもしれないとファサリナは思っていた。
「先程、私に手榴弾を分けていただいたお返しです……もし協力していただけるなら、これを」
「ゼロシステムだと……!?」
前もって確認しておいたファサリナの支給品のひとつだ。
携帯できるようにメット型になっており、これをかぶる事で効果を発揮できるらしい。
だがいまいちデザインがごつくて気に入らず、そして説明書きに書いてあったリスクの大きさゆえに今まで使おうとは思わなかった。
だが強靭すぎるほど強靭な精神を持つこの少年ならば、もしかしたら有効に使えるのではないだろうか――そう考え、ヒイロに渡そうと思ったのだ。
「ククク……ハハハハ……ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
メットを手にとって説明書きを読み終わったヒイロは突如として笑い出した。
彼のこんな行動など全く予測していなかったファサリナは思わず首をかしげながらも問う。
「ヒ、ヒイロ? いったい……」
「……いいだろう。ならばお前の選んだ未来が正しいかどうかゼロに聞いてやる……!」
戸惑うファサリナをよそに、皮肉気な形に口元を歪めながらヒイロはおもむろにそのメットを被ってスイッチを入れた。
ブゥン、という起動音と、続いて甲高い電子音。
その連続する音はモーターが回転数を上げるように、どんどん速くなっていった。
「ぐっ……」
「ヒイロ……!?」
――――そして少年は血塗られた未来を垣間見る。
◇ ◇ ◇
殺した。
殺し続けた。
ナイフで、銃弾で、毒で、爆弾で、モビルスーツで。
貫いた、切り裂いた、燃やした、沈めた、押し潰した。
一度としてその意味を疑わず、その価値を慎重に推し量り、弱者の声なき声の代弁者として、己の感情など一切顧みることなく。
地球政府に立ち向かい、凶弾に倒れたコロニーの英雄――ヒイロ・ユイの名を与えられたのはそのためだ。
少年の肉体はコロニーのためにあった。
少年の感情は平和を求めるものたちのためにあった。
少年自身のために少年が動くことなど何一つとしてなかった。
だからこんなことはいつもどおり。
いや――もしかしたら名もなき少年は今、初めて己自身の中から沸き起こった感情に従ったのかもしれない。
平和を創り上げるのは彼女の役目だ。
自分は戦うことしかできないから。
だから平和をもたらすことができたなら、彼女に自分は必要ない。
殺した。
死んだ。
殺した。
死んだ。
殺した。
死んだ。
たくさん、たくさん、たくさん、たくさん――――だから、どうした。
「命なんて安いものだ…………特に俺のは」
――――――――――リリーナ。
◇ ◇ ◇
「ぐううっ! はぁっ……はぁっ……」
「ヒイロ!」
息も荒く、ヒイロは膝をついてかぶっていたそれを脱ぎ捨てた。
どさりと草のうえにヘルメットが落ちる。
そこへファサリナが心配そうな表情で駆け寄った。
「大丈夫ですか!? 貴方ならと思ったのですが、やはり……」
「いや……問題ない」
ゼロが見せた未来はすでになく、ヒイロの目の前にはファサリナの心配そうな表情と、そしてリリーナの遺体。
状況を確認する。訓練によって身体に無意識レベルで染み込んだ行動。
身体能力問題なし。
精神面、ゼロシステムからの回復まで数秒。
肉体の動きを確認するようにゆっくりと立ち上がった。
「ファサリナ――」
「はい」
第二回の放送が近い。
太陽が真上でギラギラと輝きながら二人を見つめていた。
その光に照らされたファサリナは、どこか写真のようにぼんやりとヒイロの瞳に写っていた。
「答えは出た。俺は――――」
C-3/憩いの館/1日目/昼】
【ファサリナ@ガン×ソード】
[状態]:健康
[服装]:自前の服
[装備]:ゲイボルグ@Fate/stay night
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1個(確認済み)
M67破片手榴弾x*********@現実(ヒイロとはんぶんこした)
軽音部のラジカセ@けいおん(こっそりデイバックに入れた)
[思考]
基本:ヒイロと協力、無理だと判断した場合単独で殺し合いに乗る
1:ヒイロと共に行動する
2:間欠泉を調べ終わったら、早く新しい同士を集めたい
3:なるべく単独行動は避けたい
4:ゼロなどの明確な危険人物を排除。戦力にならない人間の間引き。無理はしない。
[備考]
※21話「空に願いを、地に平和を」のヴァン戦後より参戦。
※トレーズ、ゼクスを危険人物として、デュオ、五飛を協力が可能かもしれぬ人物として認識しています
※ヒイロを他の惑星から来た人物と考えており、主催者はそれが可能な程の技術を持つと警戒(恐怖)しています
※「ふわふわ時間」を歌っている人や演奏している人に興味を持っています
※ラジカセの中にはテープが入っています(A面は『ふわふわ時間』B面は不明)
【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW】
[状態]:左肩に銃創(治療済み)
[服装]:普段着(Tシャツに半ズボン)
[装備]:基本支給品一式、ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW
コルト ガバメント(自動銃/2/7発/予備7x5発)@現実、M67破片手榴弾x*********@現実(ファサリナとはんぶんこした)
[道具]:B-2と記された小さな紙切れ@現実
『ガンダムVSガンダムVSヨロイVSナイトメアフレーム~
戦場の絆~』解説冊子
[思考]
基本:???
1:リリーナ……
[備考]
※参戦時期は未定。少なくとも37話「ゼロ対エピオン」の最後以降。
※D-1エリアにおいて数度大きな爆発が起こりました。
※ヴァンを同志の敵と認識しています
※ファサリナの言う異星云々の話に少し信憑性を感じ始めています。
※ファサリナのことは主催に対抗する協力者として認識しています。それと同時に、殺し合いに乗りうる人物として警戒もしています。
【ゼロシステム@新機動戦記ガンダムW】
正式名称「Zoning and Emotional Range Omitted System」(直訳すると「領域化及び情動域欠落化装置」)。
分析・予測した状況の推移に応じた対処法の選択や結末を搭乗者の脳に直接伝達するシステムで、端的に言うと勝利する為に取るべき行動を予めパイロットに見せる機構である。
高性能フィードバック機器によって脳内の各生体作用をスキャン後、神経伝達物質の分泌量をコントロール。
急加速・急旋回時の衝撃や加重等の刺激情報の伝達を緩和、或いは欺瞞し、通常は活動できない環境下での戦闘行動を可能とする。
更に外部カメラ、センサーによって得た情報を、パイロット自身の視聴覚情報として伝達する事も可能である。
しかし本システムが提示する戦術とは、基本的に単機での勝利を目的としたもので、目的達成の為であればたとえ搭乗者の意思や倫理に反する行為も平然と選択する。
状況によっては搭乗者自身の死や機体の自爆、友軍の犠牲もいとわない攻撃など、非人間的な選択が強要される事もあり、これがパイロットの精神に多大な負担をかける。
そのため、ただゼロシステムを使うだけではシステムに命令されるがまま暴走するか、もしくは負荷に耐え切れず精神崩壊・廃人化を招く恐れがある。
本システムを体験した
デュオ・マックスウェル曰く、「まともな人間に扱える代物ではない」とのこと。
ヒイロはエンドレスワルツの五飛戦において、このシステムの命令を完全に捩じ伏せながら戦っていた。
このロワ内では携帯できるようにメットの中にシステムが内蔵されている。外見デザインはTV版最終決戦でドロシーがかぶったものを参照。
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最終更新:2009年12月30日 23:53