玩具の軍靴の音がする  ◆DpgFZhamPE


捜査官に捕まらなければ。
あの時。
拷問を受けなければ。
自分の今は、どうなっていただろう。
弱ければ奪われる。
強くなきゃ奪われる。
奪われるばかりの世界で―――一体、どれだけの喰種がなにかを失わずにいられるだろう。
ああ、だから。
俺は、強くなる。
俺のモンは、渡さない。
俺が強くなるために―――俺に、奪わせろ。


○ ○ ○


人々の営みの光が消えた世界。
宵闇に包まれた家屋は前方を視認することすら難しく。
大きく開かれた広場には、人間の影すら存在しない。
数年は放置されているかのような感覚を抱かせる草臥れた村は、人の心に不気味な空虚を植え付ける。
何時かは雨を凌ぎ、風を阻み、人類の営みに貢献したであろう家屋も。
人間の拠点となり得る村も。
誰も住んでいなければ、ただの箱と変わらない。
名を、『納鳴村』。
人の手が介在しない、正体不明の集落。

「―――こっここっこここころ」

そして。
人が消えた世界には―――人ならざるモノが住むのが道理である。
息は荒く、視点は目まぐるしく廻り定まらない。
バリバリと頭皮を掻き毟るその掌。
見る者に威圧感を与える白く染め上げられたスーツが包む筋肉質なその身体には不釣り合いなほどの幼稚な癇癪を思わせるその行動は、異質が故の恐怖を感じさせる。

「ころ、ここ、ころすっ」
「コロス。殺すッ!!」

此が、人間の出せる声量なのか。
まるで猛獣の咆哮のような剥き出しの殺意が大気を震わせる。
白スーツの男―――『ヤモリ』と喚ばれる人ならざる人喰いの怒りは、この程度では収まらない。
標的は、己の娯楽を絶ち切った、この催し。
その、主。

「一番良いところだったのにッ!」
「こんなんじゃ意味が無ェだろうが!」
「俺がッ」
「俺が取ってきたモンだぞ!」
「俺の!!俺のモンだッ!!!」
「返せェェェェェッッッ!!!」

怒号と共に、振り回される身体。
拳は机を割り、脚は壁を打ち砕く。
ただでさえ廃墟と化していた家屋が、更に残骸へと姿を変えていく。
これは、八つ当たりだ。
行き先を失った怒りが、白スーツの男を中心に多方面に破壊という形で放出されていく。


―――ヤモリがこの催しに喚ばれる、直前。
彼は心から楽しみにしていた、遊戯を行っていた。
その繰り返し繰り返し。
何度も何度も何度も何度も、繰り返した。
そして。
―――『トビズムカデ』。
日本国内では最大クラスになるそれを、耳の中に流し込んだ。
最高に。
頭が弾けるような、快感が、した。

『そこで、ちょっと趣向を凝らしたものをやってみる事にした。こんなのどうかな?』

だが、それだけでは足りない。
肉体を甚振るだけでは、この"玩具"は勿体ない。
だからこそ。
"彼"の、精神で遊ぶことにした。

『―――母親と子供っ!』

『どっちを殺すか』

『 え ら べ ぇ 』

脳内が揺さぶられるほどの快感。
"彼"は、ギチギチと歯軋りを経て涙を流し『嘘つき野郎』『何で逃がしていないんだ』と罵った。
それが、心の底から楽しかった。
己とは無関係な母子、人質を逃がすために捕まったというのに、それが無意味だと知った怒り。
共に歩んだ人達がこれで助かったのならと、耐え抜いた痛みは無意味で。
助かって欲しかった人は、自由を奪われていた。
ギチギチと手首ごと手錠を引き千切るほどの怒りで此方を睨んだ瞳からは、それらの感情が混ぜられたような涙が溢れ落ちていた。
ああ、楽しい。
痛めつけていることが。
全てを奪うこの感覚が。
何もかもを己の所有物にしたこの感覚が―――何よりも、ヤモリを笑顔にした。


―――だが。
ヤモリの記憶は、其処で途切れている。
"彼"が母親と子供、どちらを殺すのか苦渋の決断を下すその瞬間を見る前に、ヤモリはこの場に連行された。
故に、怒り狂う。
一番の馳走を目の前で食われたようなものだ―――どれだけ怒っても怒り足りない。

「クソックソッ」

一通り暴れ尽くしたのか―――瓦礫の山となった家屋の上に座ったヤモリは、見覚えのない布袋に目を向ける。
デイパックと呼ばれるものだが、ヤモリがそんなことを知るはずもなく。
気を晴らす何かが入っていないかと手を伸ばし。
開いたデイパックの中身をひっくり返す。
大半は喰種であるヤモリには必要のない、たわいもないものだったが。
一つ。一枚の紙切れだけが、彼の関心を引き寄せた。
名簿だ。

「…」

ゆっくりと、其処に刻まれた名前を目で追う。
そして。
一つの名前に、辿り着く。
刻まれた名前を、マジマジと見つめ。
獰猛な口元が、三日月型に歪む。
其処には、こう記されていた。

―――"カネキケン"、と。

○ ○ ○

人生、誰でもナイーブになる瞬間が存在する。
彼―――そうだ、松野カラ松でさえも例外ではない。。
運命<デスティニー>の悪戯。
闇夜に想いを馳せ、冷たい風に溜め息を乗せる。
クールな彼には似合わない、ナイーブで繊細な姿だが、今回ばかりは仕方ない。

『俺の!!俺のモンだッ!!!』
『返せェェェェェッッッ!!!』

だって、目の前で大男がこんなにも暴れている。
突然へんてこな集団に殺し合いを命じられ、更にまた何処かへ飛ばされた。
やれやれブラザー、厄介な事に巻き込まれたなと振り返ればいつもの面子はおらず。
その直後に鳴り響いた怒号の方角を見れば、コレだ。
白いスーツの大男が素手や脚で家を破壊している。
まだ此方には気づいていない。
怒りの発散に夢中なのだろうか。
どう見ても人間業ではない、人体の筋力を大幅に超越している"ソレ"を見て、カラ松は理解する。

(間違いない。アレは)

白いスーツ。染められた頭髪。人間離れした大きすぎる図体。
お世話になったことはないが、存在だけならよく知っている。
"アレ"は。

(―――『ヤクザ』だ)

間違いない。
パチンコに勤しんでいると時折見る、あの組だ。
そしてあのブラックな雰囲気を見るに、ヤバイヤクザだ。
近づいちゃいけない。
男カラ松、逃走スタンバイ。

(安心してくれホワイトスーツ。俺はお前に近づかない……!!)

既に半壊の家屋に脊を向け、ゆっくりと歩き出す。
『君子デンジャラスに近寄らず』。
真の戦士とは、崇高な頭脳とは争いを避けるものなのだ。

一歩。
気づかれた気配はない。
振り向く気力すらない。
のっそりのっそりと一歩ずつ、見つからないように逃げていく。

五歩。
大分歩いた。
振り向くことすら恐ろしい。
もし此方を向いていたら、と考えると恐ろしい

七歩。
もう走って逃げても大丈夫なんじゃあないかと思った。

が。

「ねえ、君」

声を、掛けられた。

「誰?」

背筋が凍ったような、錯覚。
気づけばカラ松は、反抗することも叶わず、半壊した家屋の中に連れ込まれていた。
もはや椅子と呼んでいいのかわからないほど劣化した木の板に座らされる。

「ああ、名乗り遅れたね。僕はヤモリっていうんだ。よろしく」
「え、ああ、よろしく」

ヤモリと名乗った白スーツの男はゆらりとカラ松の周囲を回る。
それがヤモリにとって何を意味するのか理解できなかったが―――何かを調べられている、というのはわかった。

「一つ、聞いていいかな」

突然、ヤモリがポツリと溢す。

「お、おう。構わないぜ、ホワイト」

何か機嫌を悪くさせてしまったのかと一瞬怯えたが、そうでもないらしい。
ヤモリの問い掛けは"この場に知り合いはいるか"とか"名前は"だとか、とても基礎的なことだった。
ヤクザに個人情報を与えていいものかとふと疑問に思ったが、気分を害しては此方に何か危害を加えられる可能性を考え、答えた。
六つ子のこと。
次男であること。
ずっと一緒に暮らしていること。
世界にはカラ松GIRLSと呼ばれる女の子ファンが多くいること。
自分が死ねば世界の損失であること。
六つ子ではあるが何故かこの場には五人しか呼ばれていないこと。
そして自分は世界中探しても見つからないオンリーワンカラ松であること。
ありとあらゆることを、全て答えた。
すると。

「六つ子」

ボソリ、と。
ヤモリが呟く。
珍しいのは自覚しているが、そこまで印象的だっただろうか―――と、カラ松が思った瞬間。

「片方が死んだら、どうなるかな」

理解の外の、言葉が投げ掛けられた。

「え?」

カラ松が理解した時には、既に遅い。
冷や汗が止まらない状態で、身体は恐怖で硬く固まってしまって動かない。
逃げなければ。
逃げなければ。
逃げなければ―――!

「ああ、今のは違うんだ。兄弟が死ぬ前に、助けなきゃねって言おうとしたんだ。
紛らわしくて……すまないね」

カラ松の緊張を察したのか。
ヤモリがニコりと笑い―――カラ松の肩に、その大きな手を置いた。
カラ松も冷や汗を垂らしたまま、ぎこちなくニコリと、返す。

(もうやだ……帰りたい……)

その時だった。

「すいませェん……」

第三者の声が、響いたのは。




○ ○ ○

「人生二度目の誘拐なんて、洒落にならないよなァ~、勘弁してよ…」

学生服の男、広瀬康一が一人。
この村―――納鳴村で、ポツリと立ち呆けていた。
一人になるまでの殺し合い。
頬を撫でる冷たい風に、もはや廃墟に近い、人影すら存在しない村。
もしかしたら殺し合いをする前に『オバケ』とか『リング』の『貞子』みたいな化け物が出てくるんじゃあないか?
触れちゃいけない『ユーレー』でも出てくるんじゃあないか?
否応なく根拠のない恐怖を煽る無人の村に、康一の心がすくむ。
爆発物が含まれた首輪が与える、首元の冷たさが恐怖を一層増幅させる。

(せめて『空条承太郎さん』が近くにいてくれたらなァ~…いやッ!駄目だ!心を強く持つんだ広瀬康一ッ!
ぼくは『スタンド使い』なんだ!上手くやればこの殺し合いを阻止できるかもしれない!)

頬を叩き、気合いを入れる。
勇気を出すんだ広瀬康一!と己を鼓舞する。
いつまでも怯えて立ち止まっている訳にはいかない。
頼りになる空条承太郎は近くにいないのだ。
ならば、自分がやるしかない。
あの『説明の場』―――五人の男が死んだあの場所では、何やらルールブックを配っていると言っていた。
まずはそれを確認しなければ、と周囲を見渡した康一の目に入ったのは、何の特徴もないバッグが一つ。
これのことだろうか、と中身を漁ってみると―――ルールブックというには薄すぎる、数枚の書類を発見した。
ぺらり、と捲ってみる。
そこには、数多くの名前が刻まれていた。
日本人から外国人まで。最終的には渾名のようなものまで羅列されているそれを、康一はマジマジと見つめる。

「じょ、『仗助くん』に『億泰くん』ッ!!『露伴先生』までッ!!」

そこには。
この殺し合いの会場に呼ばれていないことを願った友の名が、記されていた。
だが、同時に深く安堵してしまった。
東方仗助と虹村億泰がいるのなら―――どんな逆境だって、覆せる。
これまでそうだった。
どんなに『駄目だ』と思う事態ですら、みんなとなら解決することができた。
これからもきっと、そうなのだろう。
沸いてきた勇気のままに名簿を読み進めると。

「『吉良……吉影』…?」

この状況下で。
最も見たくない、男の名を発見した。
思わず気が動転して書類を落とす。

「このッ!『この男』はッ!何故!ぼくらにやられて『救急車に轢かれた事故で死んだはずのこの男』がッ!」

女性の手に強い執着心を見せる、連続殺人犯。
精神エネルギーの具現化―――『スタンド』。
物体を爆発物に変え、熱源を自動追尾する爆弾を放つ危険なスタンド、『キラークイーン』を持つ男。
そして。
最期は東方仗助らに追い詰められ、事故という形で己の人生に幕を下ろした殺人鬼。
この男が野放しにされていては、恐らく犠牲者は加速度的に増える。
『スタンドはスタンドはでしか攻撃できない』。
覆されないこの絶対条件は、つまり、スタンドを持つ者と持たない者の絶対的な戦力差を表している。
早く対処しなければ。
『吉良吉影』は、この場でも正体を隠し殺人を続けるだろう。

「こうしちゃいられない…吉良吉影の危険をみんなに知らせなくちゃ!吉良吉影に誰かが殺される前にッ!」

ピタリ、と。
動き出した康一の、身体が制止する。
吉良は確かに放っておいては何よりも危険だ。
だが。
この殺し合いの状況下で、誰を信用してこな話をすれば良いものか。
『もしもし』と話かけた相手が殺し合いに乗った参加者だとすれば、自ら死にに行くようなものだ。

(でも…ぼくの『エコーズact3』ならッ!
確実に相手の行動を止めることができる…『殺さず』に『無力化』する…その両方が)

『エコーズ』。
文字と音、そして重さを操る広瀬康一の『スタンド能力』。
それさえあれば、敵を無力化することだって不可能ではない。
その康一の決意が形になるように、身体から爬虫類のような奇妙な生物が出現する。
尻尾は長く身体は短い―――まるで蜥蜴のようなその生物は、滑らかな尻尾を持つ反面、背中は亀を思わせる硬い甲羅を背負っていた。
これこそが『エコーズ』。
三種類ある内の、形態の一つ。
『act2』と呼ばれる、実感を持つ文字を操るスタンドである。

(幸い、ぼくのスタンドは耳が良いし、射程距離も長い。偵察にはうってつけだ)

ふわふわとエコーズが上昇し、空へと昇っていく。
人気の無い村。
誰かが住んでいた形跡こそあれど、生活感がない―――数年は生き物が立ち寄ってないであろう民家が大半の村。
それらを全て見分けられるほど高く、エコーズは上昇する。
幸福なことに、村自体は然程大きくはないらしい。
50mしっかりと上昇した景色からは、この村全体がはっきりと確認できた。

(誰か一人でも発見できると良いんだけど―――ん?)

エコーズの視点が、一つの家屋に止まる。
エコーズの視界は康一にも共有されている。
スタンドの感じた違和感を、感じ取ったのだ。

(やけに一件、ボロボロな家がある)

そこにあったのは、不自然に破壊された家屋。
目を凝らしてよく確認してみれば―――中に、二人。白と青。
人影を、認識できた。
それほど遠くない場所に、人がいる。

(ここからじゃよく見えないけど…人だッ!人がいるぞッ!)

昂った精神を、吐き出すように康一は拳に力を込める。
とりあえず接触しなくては。
殺し合いに乗っていたらエコーズで身動きを止めて拘束する。
反対ならば、共に協力する
空条承太郎はいない。
仗助、億泰は何処にいるかわからない。
ならば。

(ぼくだけだ。ぼくだけでもしっかりしないと―――)

スタンド使い、広瀬康一は人影の方向へ向かって走る。
第一声は何が良いだろうか。
『殺し合いに乗っているのか!』
駄目だ。いきなり疑っては交渉もできない。
『あのー…貴方、「どっち」の人なんですか…?』
これも駄目だ。あまりにも抽象的過ぎる。
そして、結局。

「すいませェン…お二人…参加者の方で…すよね…」

そして。
この瞬間。
納鳴村に、三人の男が、出揃った。

○ ○ ○

三人の情報交換は、意外にもスムーズに進んでいた。
名簿の中の誰が知り合いで、敵で、誰が仲間なのか。
誰が信用できて誰が信用できないのか。
『スタンド』のことは伏せて話していたが、吉良吉影の危険性は十分に伝わったようだった。
話を聞く限り、この場の男三人は殺し合いに否定的なようだった。
最悪の場合「エコーズ」での足止めを考えていた康一からすると、これは朗報だ。
嘘をついているようにも見えない。

「すまないね……ここを破壊したのは僕なんだ。
ほら、こんなことに参加させられたからね。ちょっと感情的になっちゃったみたいだ」

白スーツ―――ヤモリが、少し頭を下げる。
ほぼ半壊した家屋のダメージは、ヤモリという男の苛立ちによるものらしい。
要するに、八つ当たりだ。
強制的に参加させられたこの現状に、酷く怒りを覚えたらしい。
正義感が強いのだろうか―――康一は、彼にも仗助の髪型のようにデリケートな部分があるのだろうかと敢えて詮索しなかった。
『どうにも許せないことがあれば、暴れまわることの一度や二度もありますよ』。
そう言ってヤモリを肯定すると、ヤモリはもう一度、すまないね、と呟いた。
……その背後で青の男、カラ松は全力で首を振っていたが。

(ないないないないぞっ!何を考えているんだミニボーイ!
どう見てもデンジャラスな近寄っちゃいけないタイプのヤツだろう……!)

男、カラ松。
必死にアピールするが、康一には全く気づかれず。

(頃合いを見て逃げよう…!こんな危険人物の側にいられるか……ッ!)

そう強く、心に決めた。
破壊の一部始終を見ていたカラ松にとって、ヤモリは恐怖の対象でしかない。
康一にとって大柄な男の白スーツ等の奇抜な衣装は見慣れたものかもしれないが、カラ松は違う。
化け物。ヤクザ。
いつかあの暴力がこちらに向けられると思うと、鳥肌が収まらない。
しかし。そんなカラ松の危機感情を他所に、二人の話し合いは続いていく。
いつの間にか、ヤモリの提案で―――『あんていく』と書かれた店に向かうことになったらしい。
其処に僕の求めているものがあるかもしれない、というのがヤモリ談。
康一とて向かうべき場所は特に無かったため、賛同したらしい。
カラ松としては「ブラザーのため」と松野家へと向かうことを提案したかったが、如何せんヤモリが怖い。
とりあえず黙っておくことにした。
……まあ、この時は。
ブラザー達がそう簡単に死ぬはずがない―――そういった驕りが、心に存在していたのだろう。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか」

康一の言葉に、二人が反応する。
康一を先頭に、カラ松、ヤモリが後ろをついて歩く。
成り行き上、カラ松のすぐ後ろをヤモリが歩いている形になっているが、カラ松自身恐怖で緊張で気を抜けない。
まるでゼンマイ仕掛けのロボットのような歩き方で、進んでいく。

(誰でもいい……!!この地獄から早く解放してくれ……ッ!)

カラ松の願いは虚しく、誰にも届くことなく。
三人の進軍が、始まった。









六つ子って。
目の前で片割れが死んだら―――どうなるかなぁ?


うずうず。
もやもや。
抑え切れぬ欲望が、ヤモリの中を蠕動する。
松野カラ松は、六つ子らしい。
同じ時に生まれた、六人の兄弟。
六人の家族。六人の自分。
小さい頃からずっと一緒で―――ほぼ六人は、もう自分自身のようなものだと。
カラ松は、そう語っていた。
ならば。
目の前で、その兄弟を殺せば。
喰えば、どうなるのだろう。
怒るのだろうか。泣くのだろうか。
茫然自失とするのだろうか。
わからない。だって、試したことがない。
六つ子なんて貴重な存在、遊んだことがない。
ああ。殺したい。遊びたい。
情報交換において、ヤモリは自身が『喰種である』ということは伏せておいた。
ただ、食物アレルギーが酷いのだと、虚偽の情報を渡していた。
だって―――こんなにレア物(六つ子)に怪しまれて逃げられたら、勿体無いじゃないか。
カネキケン……"リゼ持ち"までの前菜でしかないけれど。
松野家の六つ子は、とても魅力的な"玩具"に見えた。
ああ。どうなるかな。
端から一人ずつ殺したらどうなるかな。
目の前で長男と三男や、四男と五男、どっちを殺すか選ばせるのも楽しそうだ。
出会い頭に二人の兄弟が会話を交わす前に殺すのも面白い。
首を複数セットにして長男に送り付けるのはどうだろうか。
ああ、殺したい。色々考えると欲望が止まらなくなってきた。
ああ、駄目だ。ここで殺しては後の楽しみがパァだ。
せっかくいい玩具を見つけたのだから、最も楽しめる場面で殺さなきゃ意味がない。
ああ、殺したい殺したい殺したい―――いっそのこと、この康一とかいうやつで時間潰しをするのもいいかもしれない。
我慢できなくなった時は、隠れて康一くんで遊ぶとしよう。
それまで、我慢だ。
殺さずに、味方をしてやるとしよう。
ああ、出来ればペンチや鋏、ノコギリなんて道具も道中探すとしよう。
目一杯"玩具"で遊ぶには、綿密な準備も必要だ。





―――S+レート、『13区のジェイソン』。
嗜虐趣味を強くもつその化け物は、息を潜めてその機会を待つ。
狙いは六つ子。全員で遊ぶ。
切って潰して砕いて喰って。
どんな反応をするのか―――その時を待つ。
首に鎌の刃を掛けられているような危機的状況であることすら知らず、康一とカラ松は前方を歩いていく。





―――ああ、いつ殺そう。

【C-7 納鳴村/深夜】
【広瀬康一@ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに反対。
1:吉良吉影の危険性を伝え、捕まえる。
2:ヤモリ、カラ松とあんていくに向かう。
※本編終了後より参戦
※スタンドのことは「どうせ見えないだろう」と隠しています。

【松野カラ松@おそ松さん】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:帰る。
1:ヤクザ(ヤモリ)が怖い。頃合いを見て逃げたい。

【ヤモリ@東京喰種】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:カネキで遊ぶため探す。主催は殺す。
1:あんていくに向かい、カネキを探す。
2:松野家の六つ子で遊びたい。二人ぐらい揃うまでは大人しくする。
※喰種だということを周りに話していません。食物を食べられないことに関してはアレルギーと嘘をついています。

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GAMESTART 広瀬康一 029:快楽殺人者との付き合い方あれこれ
GAMESTART 松野カラ松 029:快楽殺人者との付き合い方あれこれ
GAMESTART ヤモリ 029:快楽殺人者との付き合い方あれこれ

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最終更新:2016年07月23日 09:39