漆黒の殺人者  ◆QkyDCV.pEw




ヴァルカナはリネットを優先した。
というより、優先せざるをえなかった。スピードスターが本気で逃げにかかってくれたせいで、その姿を見失ってしまったのだ。
「アイツ、どんだけ光宗に惚れてんだよ。……ん? 惚れる? 掘れる? この場合一緒……って馬鹿な事考えてる場合じゃねえ!」
それでも探すという選択肢もあったが、より確実なのはリネットを探す方であろう。
幸い、リネットはすぐに見つかってくれた。
道路の真ん中にしゃがみこんで、座っているネコの前で指を左右に振り、ネコがじゃれついてくるのを見て笑っている。
初対面の印象がヒドいものだったのであまりそういう目では見ていなかったが、改めてリーネを眺めるとかなり可愛い子だ。後胸が超デカイ。
だからと振り回される程思春期ボーヤではないつもりだが、気にはなるのは、まあ枯れていない成人男子ならば仕方が無い所だ。
「つーか、こんだけ美人であの格好って……風俗か何かか?」
と口にした所で、慌てて自分の思考を閉じるよう気をつける。うっかり考えただけでも致命的なのだから、あの猫の前では。
仕方が無いので、あまりやりたくはなかったがヴァルカナは過去を思い出しにかかる。
徹夜で仕上げたものを朝一で提出しようとしたら、出勤してきたクソ上司が「ああ、そういえば昨日仕様変更要請来てたから、対応よろしくな」とか抜かした時。
昨日の内に言っとけよ、とか、そもそも今頃になっての仕様変更とか受け付けてんじゃねえ、とか、この変更したら使うクライアントの方で作業効率が落ちるけどいいのか(←仕様変更要請の内容はきちんと確認する基本真面目君)とか、色々言ってみたが上司は全く取り合ってくれなかった。多分、というか間違いなく、言ってる事を理解していないんだと思う。
「……挙句、直したらやっぱり効率落ちるじゃんって事でクレーム来たんだよな……」
溢れる怒りとやるせなさが脳内にはびこるピンク発想を駆逐してくれた。
よう、とヴァルカナはリーネに声をかける。するとリーネは眉根を潜めて言った。
「何か、嫌な事でもあったんですか?」
「……いや、何でもねえよ」
こんな事日常茶飯事であったはずなのに、顔に出る程嫌な思い出だったとは、自分でも驚きであった。

さて、とヴァルカナとリーネの二人は地図を見る。
スピードスターもそうだったが、やはり現在位置から考えるに、向かうのは東に向かうのが良いだろう。
北の墓地とか意味がわからないし、南の学園艦とやらは気になるものの、やはり人を探すのならばもっと開けた場所を目指すべきだろう。
そんな事をヴァルカナが言ったのだが、リーネは北にある501JFW基地というのは自分が居た基地と同じ名前だと言ってきた。
もちろんその基地の周辺はこの地図にあるような地形ではなく、それを不思議だとは言っていたのだが。
「ふむ、一度行ってみるのも良いかもな。見知った名前の場所なら、アンタの知り合いも目指してるかもしれないし」
「はい、私もそう思います」
ヴァルカナにとって見知った場所である納鳴村の事はリーネにも伝えておいたが、そこに残ったメンバーが集まるかどうかは何とも言えない。
あんな薄気味悪い場所だとわかっていれば、きっと大半の者はツアーに参加すらしなかっただろうから。
「ただ、俺はその前に東のCGS本部って所がどんな所なのか確認したいと思ってる。地図にわざわざ書くぐらいだから、何かあるのか、ってまあ、その程度の話なんだが」
「そうですね……あ、でも看板とかないと、どれがCGS本部なのかわからないかもですね」
「あー、確かにそれはあるかもな。まあいいさ、遠回りもほんの少しだし、行くだけいってみようぜ」
「はい」
ヴァルカナは、心の中を穏やかで暖かい風が吹きぬけていく気分であった。
とても簡単な事なのだ。現状を把握し、より適切であろう選択を行い、協力して問題解決へと向かって行く。
ただそれだけなのに、何故そう出来ない人間がこんなにも多いのか。
他人に委ねるだけではなく自分でも考え、行動しようとする。そうする人間が発する言葉だからこそ尊重しようという気になるのだ。
お互いがそういう人間である、と考えられるからこそ、会話が出来るのだ。子供に言い聞かせるように言ってやらなきゃならん相手を、どうやって敬意を払える対等の相手と思えというのか。
リーネとの短い会話は、ヴァルカナにとってツアーに参加してから一度も満たされる事のなかった欲求を、充分に満足させてくれるものであった。
美影あたりは冷静になる余裕さえ持てれば結構頼れるかとも思うのだが、追い詰められると色々とヒドイ事になる奴で、正直さっき走っていったスピードスターと大差無いとヴァルカナは考えている。
ナンコは、多分だがアテに出来るだろう。
ヴァルカナと選択や行動を異にする事もあったが、その判断は理解出来ないものではなく、何より声を荒げるような真似をせず、黙って行動するような妙な男らしさが頼もしい。
ちらっとリーネを見て、嘆息するヴァルカナ。
『男はこういう時、だらしねえもんなのかねえ』
ちなみにこの内心のぼやきはきっちりエスパーニャンコに拾われて、リーネには変な顔をされた。
ふと、気になった事をヴァルカナはリーネに訊ねる。
「なあ、この501JFW基地ってのはどういう場所なんだ? 基地ってのは軍人の居る基地の事か?」
「はい、そうですよ。ドーバー海峡側にあって対ネウロイの最前線として使っていた基地です。今はもうガリアの巣が無くなったんで使って無かったと思いますけど」
色々とわからない単語が出て来た。ヴァルカナは質問を重ねる。
「……なあ、もしかしてアンタ、軍人の関係者か?」
「はい、現役の軍人です。私ウィッチですから、曹長なんて階級までもらっちゃってます」
またわからない単語が出てきたが、軍事の専門用語とかなのだろう、とヴァルカナは思った。
それに、そんな謎単語よりもっと突っ込まなければならない内容を彼女は口にしている。
「軍人、って本気か? アンタまだ……学生ぐらいにしか見えないんだが。それに曹長って確か、結構エライんじゃなかったか?」
「ん? ウィッチならみんなこんなもんですよ? 階級は、その、上手い事武勲あげられたので」
「ん? んん? それはつまり、実際に戦場に出たって事か?」
「はい。これでも私、ガリア解放戦の時に501に居たんですよ」
えっへん、と胸を逸らすリーネ。何せ体積が凄いもんだから、少しそうしただけで圧巻の迫力がある。
ただ、惜しむらくはヴァルカナにはそうした軍事知識は全く無い。あったとしてもガリア開放の戦いなんて絶対に知らないだろうが。
「わ、悪い。俺は戦争とかには疎くて良く知らねえんだ。しかし……アンタみたいなのが戦争ねえ。そう言われてもピンと来ねえなあ。銃を撃った事とかもあんのか?」
軍人が戦場に出てる、と言っているのに実に馬鹿げた質問であったが、リーネは事も無げに返してきた。
「見せましょうか? 私射撃得意なんですよ」
「は?」
リーネは、これを善意で行っている。優れた射撃技術を見せてやれば、きっと安心出来るだろうなと。
恐ろしく手馴れた様子で懐に収めた銃を抜き、両腕でがっちりと固定し構え、ついでにサービスとばかりに魔力を込めて引き金を引く。
道路脇に立っていた街灯が、ただの一発でへし折れ倒れる。
細い金属の柱に命中させたのも凄いし、一発で叩き折った威力も素晴らしい。
だが一番の問題は、折った街灯はリーネが立っている場所から五百メートルは離れた場所に立っていた事だ。
拳銃の有効射程はカタログの通りだとしても概ね五十メートル以下とされている。
その十倍の距離を軽く射抜いたのだから、ウィッチと魔法恐るべしであろう。
「ね?」
と満面の笑みで言うリーネ。これだけの事が出来るんだから、きっと彼も安心出来るだろう、そんな笑顔である。
「あー、えっと、そうだな、すげぇ、よ、うん」
だが、ヴァルカナがドン引きしたのもまた、仕方が無い事でもあろう。
そして銃の知識の無い彼が、こう思ったのも仕方が無い事なのである。
『拳銃って、俺が思ってたよりずっと遠くまで届くんだな。こりゃ訓練しないと当らねえってのもわかるわ』
もちろんコレもエスパーニャンコに拾われて(略。

目指すCGS本部は、当初懸念されてたように看板が無ければわからない、という事は無かった。
何故ならその建物の周辺だけぽっかりと、建造物も道路も全てが消滅していて、ごつごつとした岩肌がむき出しになった荒地になっていたからだ。
その中央に、こちらも軍事基地のような様相の、CGS基地が建っていた。
「こりゃ……どうなってんだ? これじゃまるっきり……」
ヴァルカナの言葉に、リーネを生唾を飲み込む。
「この基地周辺の土地ごと、町の中に放り込んだみたいな……」
これほどの質量をそうする方法なんて魔法のあるリーネにも、現代社会に生きるヴァルカナにも、思いつきすらしない。
警戒心をこれでもかと刺激され、ヴァルカナは慎重論を唱える。
「……行くの、やめといた方が無難か?」
だが、リーネははっきりと言う。
「いえ、これを確認しておかないと。もしかしたら他所のこうした記述の有る場所も、同じようになっているかもしれませんし」
そう言われ、納鳴村がある山が丸々一つここに持ってこられている風景を想像したヴァルカナは、背筋が寒くなって来たせいかぶるりと体を震わせた。
ただ、恐ろしさはあれど、リーネの言の正しさも理解出来る。
「そう、だな。その通りだ。他所がそうでなかったとしても、なら何故ここはこうなのか、って話になる。どっちみち、調べなきゃなんねえか」
実はこの時点でヴァルカナは、調べた所でもうどうにもならないのではないか、といった考えも持ってしまっている。
ここまでの事を出来る連中を相手に、その望みに沿わぬ形で何かをするなんて真似が、本当に出来るものかと。
そういった絶望を考えないようにする為にも、目先のやるべき事はヴァルカナに必要であった。
ただ、そういった恐怖を抱いているように見えないリーネは、ヴァルカナにとってとても不思議な存在に見えた。
『……軍人ってのも、案外本当の事なのかもな』
油断したヴァルカナの思考が、リーネが抱えていたエスパーニャンコに漏れてしまったようで。
「軍人ってのも、案外本当の事なのかもな」
「あ」
「え?」
信じてなかったんですかー、と頬を膨らませて怒るリーネに、ヴァルカナは必死にフォローを入れるハメになるのであった。
施設の側まで来ると、まだ少しぷんすかしているリーネを他所に、ヴァルカナは建物を見上げる。
横に長い大きな建物があり、その周辺に倉庫のようなものが並ぶ。また、建物の端には高い塔のようなものが建っている。
建物には大きくCGSと描かれており、ここが地図にあるCGS本部という場所なのだろうとわかる。
ただ、建物自体は古めかしいというか、はっきり言ってしまえばかなり小汚い。
ヴァルカナは入り口周辺をきょろきょろと見回す。
埃が積もっているといった様子は無い。むしろ、つい最近までたくさんの人が使用していたような、そんな感じだ。
ドアも簡単に開くし、埃もある所には溜まっているのだが、主要通路であったり人が良く使うような場所には全く積もっていない。
ただ、人の気配も全く無い。
電気は来ているらしく施設内の照明もあり、中を移動するに問題は無いが、人気の無い建物というのは例え照明があろうと不気味さ漂うもので。
リーネは非常に怯えた様子で、ヴァルカナの後ろを恐る恐るついてくる。
『いや、この基地よかよっぽどさっきの銃撃の方がおっかないだろ』
当然これもエスパー(略
「ご、ごめんなさい。で、でも、その、やっぱり怖いっていうか、おっかないっていうか、なんか不気味っていうか……」
「全部同じ意味だろ。ま、女の子っぽいと言われりゃそんな気もしてくるか……」
なんて言葉で自分を納得させるヴァルカナに、やっぱり怯え気味のリーネ。
屋内を調べてみると、外に面した場所に食堂らしきものがあり、宿舎のような場所があり、また塔になっている場所はどうやら管制塔のようなものであるようだ。
塔に登るとそこには端末もあり、ヴァルカナは興味深げにこれを眺める。
「へぇ、タッチパネルのキーボード無しか。どれ」
リーネはここに置いてある機器全てが全くわからず、目を丸くしているのだが、ヴァルカナはというと手馴れた様子で画面を叩き、システムを立ち上げる。
「何だこりゃ? こんなOS見た事無えぞ? それに、あー、もう、わけわかんねえ表示多すぎだろ」
色々とぶーたれながらも、モニターはめまぐるしく変化していく。
リーネは恐る恐るといった様子でモニターを覗き、そして画面を叩くヴァルカナを見る。
彼はとても活き活きとしていた。
「あ、あの……これ、何なんですか?」
「そいつを今確認してる所だ。外国製だからか? 何か色々とおかしな挙動すんだよなぁ。わけわかんねえ表示も多いし……って、おいおいおいおい、これマジか? おいちょっとこれすげぇぞ、なあアンタ、コイツ見てくれよ」
と言ってヴァルカナはモニターの中の表示を見せ、それが如何に凄いかの説明を始めるのだが、リーネにはもう何が何だかさっぱりわからない。
それでもヴァルカナはというと、如何にこのシステムの機能が高いものか、どれだけ現行のモデルと比べて優れているのかを延々説明し続ける。
「いや、マジでコイツはありえねえ。軍事用システムってなこうまで性能が違うもんなのか? 世代にして三つぐらいの差がついてないか? くっそ、コレ俺にくれよ。そしたら仕事なんざ幾らでも……」
そこまで口にして、自分が会社から捨てられた事を思い出し、そして、今自分が置かれている立場を、ようやく思い出せた。
「あ、あー……しまった。すまん、つい、あんまりにすげぇシステムなんで我を忘れちまった……」
かの世界では所謂オンボロに類するものなのだろうが、火星にまで航行しテラフォーミングの上居住出来るまでにしてしまう程進んだ時代の端末である。
ヴァルカナが驚くのも無理は無い。
それを見て即座に使えるヴァルカナも大したものであるが、まあ今のものと比べると、使いやすさといった部分も進化しているおかげであろう。
ちなみにリーネの世界にこの手の端末なんてものは無い。時代的には第二次世界大戦前後であるからして、当然だろうが。
取り繕うようにヴァルカナは続ける。
「と、とにかくだ。この基地の内装はわかった。そっちのデカイ画面見てもらっていいか? そう、そこに……っと、これでいけんだろ。ほら出た。地図があるだろ? 幾つか目を引くものがあるけど、中でもやっぱ目玉は武器庫だな、後でここを確認しに行ってみよう。他にもモニターをここから確認出来るから……」
ヴァルカナはそこで言葉を止め、全くリアクションの無いリーネの様子を見てみる。
彼女は、もう見るからにわからないという顔をしていた。
「軍人ってなこういうの苦手じゃマズイんじゃないのか?」
「ご、ごめんなさい……えっと、とりあえず……あそこに映ってるのがここの地図だって事はわかりましたっ」
「……そんだけわかってくれてりゃいいわ。よし、早速見に行ってみるか」

二人で基地内を探索した所、武器に類するものはその全てが無くなっている事がわかった。
地上車両のようなものがあるらしいのだが、その為の倉庫はもぬけのからで、ヴァルカナが先程端末で調べた、在庫として置いてあるはずの銃器も一切無し。
運搬用のキャリアーすらなくなっているのだから徹底している。
「ま、当然と言えば当然か」
「……この調子だと、501基地も同じように装備一式全部無くなってるかもしれません」
「仕方ねえさ。ただ、ここの施設の設備は使えるみたいだしな。とりあえず管制塔に戻るか……っと、忘れてた。一応確認の為に動力室だけ見とこう。ここ、他所と電気が独立してるみたいなんでな。多分、発電機がある。となれば、発電機回す為の燃料もあるはずでな」
ぽんと手を叩くリーネ。
「あ、それは良いですね。車の燃料とか手に入るかもしれませんし」
「そういう事だ。移動の事を考えたらこの際二輪でもいいから、何か乗り物が欲しい所だしな」
二人はそんな事を言い合いながら動力室へと。
とはいえ二人共大型の発電機なんてほとんど未知の機械であり、とりあえず動いているらしい事はわかったが、燃料を何処から引っ張って来ているのか、何処に溜めてあるかは結局探したがわからないままであった。
仕方なく引き上げようとなったのだが、ヴァルカナはもう一つ、予備の発電機があった事を思い出し、そちらの部屋へと向かう。
そこにあった発電機は、何とも、言いようのない形をしていた。
「……こりゃ、まるで……」
「私、こんな形の発電機始めて見ます」
その発電機としてはありえない、不可思議な形状に何処か薄ら寒いものを感じた二人は、そそくさとその場を離れ管制塔へと戻って行った。
管制塔に着くと、ヴァルカナは幾つか実験してみたい事がある、とリーネに申し出る。
リーネは内容を聞くと快くこれを了承し、極めて協力的にかつ手際良く実験をこなしていく。
リーネはのんびり屋でおっとりした子だが、軍務についていた。
軍務は一つのミスで取り返しのつかない人死が出る世界であり、そんな中でずっと生活してきたリーネは、ただ一つの作業を行うだけでも惰性で仕事をしている人間とは真剣さがまるで違うのだ。
実験を現実に実行に移すにはどうすればいいのか、具体的に想像しながら事に当るのだから、作業毎にヴァルカナへと問う一言一言全てが的を射ているのも当然であろう。
ヴァルカナはそんなリーネを見て、ああ、やっぱり仕事ってこうでないとな、とか考えていたり。
上司が彼女であったなら、部下が彼女であったなら、きっと自分は今こんなにはなっていなかったのだろうか、なんて事まで考えてしまう。
「ヴァルカナさん?」
不意に声をかけられ、驚き我に返るヴァルカナ。
「あ、ああ、悪い。えっと次は……」
「え? 実験項目まだありましたっけ?」
いや、無い。
「っだー、すまん。そうだこれで終わりだ。ご苦労様だ、少し休憩しよう」
「はいっ。じゃあ私お茶入れてきますね。給湯室見つけておいたんです」
「そ、そうか。悪いが頼む」
そのきょういのめかにずむ以外は高校生ぐらいにしか見えない彼女であるが、今までヴァルカナが面倒見て来たどの部下より仕事の出来る子だ。
PCは苦手のようだが、この調子なら教えればすぐに身につけられるだろう。
ヴァルカナはかなり本気で彼女と一緒に仕事がしたくなってきていた。
「いっそ俺も自衛隊にでも入るか? 軍人がみんなコレだってんなら、マジで仕事し甲斐あるだろうし……自衛隊にプログラマーの募集ってあったっけか?」
まあ自衛隊は自衛隊で、軍隊は軍隊でまた別の苦労があるものなのだが。
かなり真剣に身の振り方を考え出したヴァルカナであるが、仕事始めてまたあんな目に遭うかもと思うとどうにも踏ん切りがつかない。
さんざ考えた結果、貯金が無くなってどうしても稼がなきゃならない必要が出てきた時の選択肢にしておこう、とかかなり逃げ入ってる結論を出す。
そんなさして建設的でもない結論が出た辺りで、リーネがお茶を持って戻って来た。
「お待たせしましたー。ここ、武器は無いですけど幾つか甘いものは置いてありました」
お茶は紅茶らしい。菓子は見た事の無いものだったが、リーネ曰く、食べてみたらおいしかった、だそうだ。
たくさんあったが、一つを除いて全部おいしかったらしい。その一つとやらが、三日月・オーガス君ご推薦の火星ヤシなのだが。
管制室から外を眺めつつ、二人は優雅にティータイムである。
ヴァルカナは菓子を口にすると、甘みが脳に染み渡るような美味さを感じた。本気で頭を使った後の菓子は格別だ。
また、紅茶をゆっくりといただくと、歪に揺れていた思考がフラットに戻っていく気がする。
こうした習慣が全く無いヴァルカナは、やっぱり仕事に適度な休憩は必須だよなぁ、などとやはりこの場にそぐわぬ事を考える。
「いっそ、ここを拠点にするのも良いかもな」
すぐにリーネが同意してくれる。
「はい、キッチンもあるし、食料の備蓄もあるみたいですし。ただ、まあ、その……目立ちますよね、ココ」
「だなぁ。町の中に突然荒地だしな。ま、その辺は501基地ってのを見てから考えればいいか」
「はい…………っ!!!?」
突然リーネが、ヴァルカナの服を引っ張り端末の陰へと引きずり込む。
「な、何だ?」
「人です。基地の方へと歩いて来ています」
驚いたヴァルカナもそちらを確認すると、人影は黒のロングコートを着て、目深に帽子を被っている。
またタバコを吸っているようだ。見た目だけだとガラの悪い人間に見えなくもない。
ヴァルカナはごくりと唾を飲み込んだ。
「よ、よし。んじゃ打ち合わせ通り行くか……なあ、本当にいいのか? 俺が行ってもいいんだぞ?」
「駄目です。こういう危ない事はウィッチである私が行くのが一番なんですから」
ウィッチの意味はわからないが、多分軍人の種類か何かを表わしているのだろうと当りをつけるヴァルカナ。
「そうか、わかった。なら悪いが任せる。くれぐれも気をつけてな」
「はいっ」



不死身気味な人間を見事打ち倒したジンは、一緒に居たもう一人の女を探しがてら東へと足を向けた。
だが、女の姿は見つけられず。
仕方が無い、と踵を返す。また、こちらに来たもう一つの目的は既に果たしてある。
ジンのバッグの中には、愛用のタバコ『GAULOISES』のカートンが山程放り込んであった。
ビルの屋上から周囲を監視していた時、ジンの愛用タバコですら置いてそうな店の目星をつけていたのだ。
これで無くなる事を心配しないで好きに吸える。そう思えるだけで心が晴れがましくなれるのだから、スモーカーとは随分と安上がりな人種である。
ジンが次に目指しているのは、地図上に表記のある中で、意味がわからない『CGS本部』と書かれている場所だ。
世の中舐めてる「マルノウチスゴイタカイビル」なんていう名前のビルは本当にあったし、こちらも何かしら使える施設ではないかと思ったのだ。
そういった施設を地図に書く事で、主催者は或いは人を一箇所に集めようと考えているのかもしれない、といった読みもあった。
だが、町並みが突然消えてなくなり、いきなり荒地になってその先に軍事基地らしき建物が見えるのはちょっと予想外であった。
ジンが軍事基地と見たのは、一際高い建物が管制塔であり、また施設を取り囲む鉄条網の造りが戦闘を考えて作られたものであると見抜いたからだ。
ジンは少し悩む。
身を隠しながら夜陰に乗じて移動するかどうか。
しかし建物の灯りは周囲の荒地を照らしきっており、この照明の影を縫うのは少し骨が折れそうだ。
それに、基地であるのなら、視界以外にも何か接近を報せる手段があるかもしれない。
大事を取るのならここは踏み込むべきではないだろう。
だが、まだこの会場に放り込まれて半日も経っていない今なら、この基地を有効活用してる者がいる可能性も低い。
よしんばそういった人物が居たとしても、今は他参加者からの情報を欲しているはず。
敵愾心を煽るような真似を避ければ、まずは情報交換といった形になるだろう。
それこそジンのように視界内に入るやいきなり殺しにかかれるような人間はそうはおらず、それをジン自身も良く知っているのだ。
当然、いきなり撃たれる可能性もゼロではない。
だが、ジンはタバコに火をつけ暢気に基地へと歩いていく。
この辺りのクソ度胸は、流石に人生裏街道まっしぐらであっただけはある。
こちらからだと、基地の様子は良く見えない。
そのまま基地入り口まで辿り着いたジンは、わざわざ出迎えにきてくれたお人よしに、声をかける。一応、友好的なつもりで。
「アンタも、殺し合いをしろと言われてここに連れてこられた口か?」
その重苦しい声といい、人を小馬鹿にしたような口調といい、まるで友好的とは程遠いものであったが、ジンと相対する少女、リーネはありったけの勇気を振り絞って口を開く。
「あ、あの。わ、私リネット・ビショップっていいます。あ、貴方は、その、こ、殺し合いを、しようという人ですか?」
だったとしても、口に出して言う馬鹿がいるか、と内心で笑いつつ、ジンは応える。
「いいや、そのつもりはない。俺の名はジンだ」
あからさまにほっとした様子の少女、リネットはここではなんですから、と基地内にジンを案内する。
ここでいきなり撃ってやってもいいんだが、その前に聞ける事は聞いておこう、とジンは少女リネットの言うがままに後に続く。
基地の入り口を入ってすぐの所に、待合室のような待機所があり、そこに少女は腰掛けるよう勧めて来た。
ジンは、そうか、と長椅子にどっかと座り込む。その男オーラ漂う座り方に、密かにリーネがビビっていたのだがジンは気付いていないようで。
新しいタバコを取り出し、火をつけるジン。
「で、だ。お前はこのクソみたいな状況に、何か心当たりはあるか?」
「い、いえ。一体誰が何を考えてこんな事をしたのか……」
「だろうな、こっちも似たようなもんだ。ただ、俺はこれまでに既に一人、女に会っている」
リーネが勢い良く立ち上がる。
「え!? それって芳佳ちゃんとかエイラさんとかサーニャちゃんとかですか!?」
その剣幕にもジンは全く動じた様子はない。
「いや、斗和子と名乗っていた」
あからさまにがっかりした顔のリーネに、ジンは続ける。
「その斗和子という女が、蒼月潮という少年を探していたんだが、見ていないか?」
リーネは首を横に振る。
そこで、ジンはリーネがジンから目を逸らした事に気付く。
いや、逸らしたのではない。
意思を持って、そちらを見ている。
だが、その視線や表情からは、急ぎの何かであるといった気配は感じられない。
そして、表情が変わった。
ジンは察する。
恐らく、コイツには他に仲間が居る。ソイツと何かで連絡を取り合いながらジンと話をしているのだ。
用心の為? 最初はそのつもりだったのだろう。だが、今やその何者かと連絡を取った事で、少女リネットは表情を強張らせてしまったではないか。
当人隠せてるつもりらしいが、ジンの目は誤魔化せない。
「……大した情報も無し、か。だが、まあハズレもあるさ」
ジンは全くその気配を感じさせぬ、殺意も殺気も何もかもを消し去った状態から、作業のように懐より銃を抜き、引き金を引いた。

ヴァルカナはエスパーニャンコを有効活用する術を考えついていた。
幾つかの実験で判明したエスパーニャンコの読心能力は、ある程度距離が近い事と、対象を目で見ている事が必要なようだ。
若干の問題点として、リーネの声を口にする時と、ヴァルカナの声を口にする時とでニャンコの条件が変化しているらしい点だが、これはより条件が厳しいヴァルカナに合わせる事にした。
ヴァルカナは、音の聞こえずらい壁越しにモニターを介して部屋の中をニャンコに見せる、という方法が可能か試し、上手くやれるとわかったのだ。
なのでヴァルカナはジンが来た時も、リーネが招きいれたカメラのある部屋の隣に陣取り、そこで手持ち端末を使って部屋の中をニャンコに見せつつ、ジンの心の声を拾っていたのだ。
結果は、それはもうヒドイものであった。
『いいや、そのつもりはない。俺の名はジンだ』【もちろん殺さんよ、今の所はな】
『で、だ。お前はこのクソみたいな状況に、何か心当たりはあるか?』【こういうマヌケな質問しとけば、大抵の奴は油断してくれるもんだ】
『だろうな、こっちも似たようなもんだ。ただ、俺はこれまでに既に一人、女に会っている』【さて、どんな反応を見せるか】
『いや、斗和子と名乗っていた』【……どんだけ油断してくれてんだコイツは。これで俺がもう二人も殺ってるなんて知ったらどんな顔するやら】
この時点でヴァルカナは、ニャンコをその場に置いて部屋の窓から外へ飛び出している。
ジンとリーネの居る部屋の窓、その外から大きく手を振る。位置的にちょうどジンからは背中側になっていて見えない場所なのだ。
そこで決めてあった合図を送る、この合図を見たら速やかに逃げるようにと言っておいた。
リーネは話に夢中でこっちを見ていない。声をあげるわけにもいかないヴァルカナは、もう必死の形相で手を振っていた。
『その斗和子という女が、蒼月潮という少年を探していたんだが、見ていないか?』【こうまで普通の人間だと、生かしておく価値もないか】
【何だ? 後ろ? ああ、なるほど仲間が居るという事か。だが不意打ちではない。まったく、暢気で平和で、笑えてくるな】
ようやくリーネがヴァルカナの合図に気付いてくれた。だが、遅かった。
エスパーニャンコはその殺意の声を拾えず、ヴァルカナもまた彼の殺気を全く感じ取れず、気がついたらもう発砲されていた。
愕然とするヴァルカナであったが、どうも様子がおかしい。
リーネとあの男、ジンの間に、光る線が立っている。おかしな表現だが、これが一番適切な言葉である。
リーネはというと、銃声が鳴った後だというのに傷一つ無いようで、こちらを見て逃げろ、と言っていた。

ジンは、内心のみで叫ぶ。(もちろんこれもエスパーニャンコに拾われている)
『またかっ! 神様って奴ぁよっぽど俺の普段の行いが気に食わねえみてえだな!』
銃弾が当たっても治る。堅い体で銃弾を受け止める。謎の壁ができて銃弾を弾く。(←new!)
相手の少女は、椅子から立ち上がりながら懐に手を入れる。
『くっそ!』
ジンは即座に身を翻し、椅子を少女の方に蹴り飛ばしながら部屋の入り口から外へと飛び出す。
この反応速度の速さは、ジンの持つ反射神経の鋭さとは別に、銃が必殺の間合いですら通用しない事例を何度も見て来た事が影響していよう。
頭の何処かに、また駄目なのではといった考えがあったのだ。
そして対するリーネであるが、こちらも見た目程余裕があった訳ではない。
窓の外からヴァルカナが危険を報せてくれたおかげで、どうにかシールドの展開が間に合ってくれた。
それが無くても油断はしていなかったが、確定の話を出してくれたのはありがたかった。
ジンの真正面からの不意打ちは、驚く程に鋭かった。だが、リーネもまたネウロイと戦い続けて来たウィッチだ。
雨霰と降り注ぐ赤色の光線を、当たる当たらないを見極めながら高速飛行しつつかわし、或いは受け止めていくなんて真似をしているのだ。
その反射神経たるや、常人のそれを大きく凌ぐものであろう。
ただ、リーネはジン程に地上での体の動かし方を学んでいる訳ではない。
反射神経だけでは体は動いてはくれない。素早く動くためには、そうした動きを体に慣らしてやらなければならない。
そういった部分でリーネはジンに劣る。結果、リーネは部屋の外にジンが逃げ出すのを許してしまったのだ。
慌てて後を追うリーネだったが、辛うじて角を曲がるジンの後姿を確認するに留まる。
そのまますぐにジンを追わなかったのは、ヴァルカナとの合流を優先したからだ。
側にさえいればシールドで守れるという自信があったのだろう。
駆けて来たヴァルカナに、リーネは力強く言う。
「屋内に逃げ込まれました。追いましょう!」
「あ、ああ。だが、その、だ、大丈夫なのか? さっき撃たれたように見えたんだが……」
「だから私はウィッチなんですってば。シールドがありますから、ヴァルカナさんも私の側を離れないで下さいね。あの程度の銃なら何発撃たれたって大丈夫ですから」
え? お前一体何を言っているんだ、的な顔をするヴァルカナを他所にリーネは走り出し、これを慌てて追うヴァルカナ。
案外体力のあるヴァルカナだが、リーネもまた訓練を重ねている軍人であり、二人はCGS基地の奥へと駆けて行く。
ヴァルカナは手元にこの基地で見つけた携帯端末を持っており、これを見ながらリーネに続く。
「この先は右だ。左に行っても結局は同じ所に着くし、右の方が早え」
「はい、ヴァルカナさんは前に出過ぎないで下さいね」
ジンの姿はもうとっくに見えなくなっていたが、基地の内装をこうして端末で確認出来るヴァルカナは、ジンを確実に追い込むような移動が出来るのだ。
「そこの角を抜けると合流……」
曲がった直後、さっきのものとは比べ物にならない大きな銃声が響く。
リーネのシールドは間に合ったが、弾かれた弾丸は壁面を抉るように削り取る。
「さっきの銃じゃない? けど、手持ちの銃なんかじゃ私のシールドは抜けません!」
そんなリーネの声が聞こえたわけでもないだろうが、通路の先で長大なライフルを構えたジンは、ああ、やっぱりかあ、と心底嫌そうに眉根を寄せる。
『……アンチマテリアルライフルまともに食らっても、微動だにしないってなどういう事だよおい……』
今回の相手の不死身度は前二人とは比べ物にならないらしい。
試しに後二発撃ってみたが、一発目は先と同じようにそのまま弾かれ、二発目は、何とこちらに向かって走りながら易々と弾いてくれた。
魔法陣とでもいうのか、謎の紋様が広がって、そこに当った銃弾は威力がどうあろうと容易く弾かれてしまう。
それに最初の一発目は不意打ちでもあった。視認はギリギリ間に合っていたようで、そこからあの光る紋章盾が広がるまでのタイムラグは、ジンの体感ではゼロに等しかった。
足止めにすらならないのでは撃つ意味が無い。ライフルをバッグに放り込みながらジンは二人に背を向け逃げ出した。
ここでジンは思考をすぱっと切り替える。
現在の手持ちの最強武器ですら抜けないというのなら、今のジンでコイツを殺す事は出来ない。
なら今は全力でこの場を逃げる事だ。
リーネは少女とは言え軍人であるし、ヴァルカナも先にも言ったが案外運動能力は高い、だが、単純な身体能力だけを考えたならジンは二人を圧倒している。
殺しとは、タフな仕事だ。それを続ける、続けられるという事は、既に彼は一般人の枠内に納まる人間ではなくなっているという事。
彼の横柄な態度も、他者を見下した姿勢も、全ては、最後の最後は自分ならば相手が何者であろうと殺せるという絶対の自負あっての事。
そんなジンを支える最も重要な要素である彼の肉体能力が、低いわけがないのだ。

元より整然なんて言葉とは無縁なこの施設の造りも相まって、ジンはどうにか二人の追及をかわし一息つく事が出来た。
とはいえ施設の外には出られず、奥の部屋、発電機がある大部屋に逃げ込んでいるのだが。
「さて、一発逆転……なんて真似が出来るかどうか」
ジンはさっき二人がやったように、この部屋の発電機を調べ始めた。
「……水素エンジン? おいおい、この規模の基地の発電に水素エンジンだって? 冗談はよしてくれよ……」
そしてジンもまたこの発電機の燃料を探す。しかしこちらはいともあっさりと見つける事が出来た。
「多分、これか……だが」
目の前に固定の端末がある。だが、これを使ってしまって、こちらを探してる奴等に見つからないだろうか。
だが、このままではジリ貧でもある。
ままよ、と画面に手を伸ばす。慣れるのに少し時間がかかった。
こちらはヴァルカナがそうした時間よりも手間がかかっている。流石にその筋の専門家には適わないようだ。
だが、システムが理解出来ると、そこからは速い。この発電機の仕組みをあっという間に把握してしまう。
水素エンジンはその燃料である水素の保存方法に問題があり、例えば液体にするなどしても、ガソリンと比べて保存の為の体積効率はよろしくない。
だがここの発電機はというと、水素吸蔵合金を使用し、金属に水素を吸わせ吸着させる事で保存していたのだ。
その保存効率の高さにジンは目を剥く。その分金属の劣化が激しいのでは、と思ったが流石にそのデータまでは見つけられなかった。
だが、それはいい。ジンが欲しいものは既に見つけてある。
「く、くっくっくっくっく……コイツは、派手になりそうだな」
一歩間違えば自分も死ぬだろう、そんな策を考え付いたジンは、愉快でたまらぬと笑う。
戦いが命賭けなのは当たり前で、ならば戦わなければならない以上死の危険なぞに怯えるのは全く意味の無い行為だ。
むしろ楽しむぐらいでなくてはな、とジンは本気で思っていた。

ヴァルカナは携帯端末を覗き込みながら、焦りに焦っていた。
何処をどう見ても、見落としなんてない。
この奥に必ずアイツは居るはずなのだ。
しかし、リーネが突入しても、倉庫になっている部屋はもぬけのからで。
リーネが止めるのも構わず、室内の探索にヴァルカナも加わる。だが、まるで誰かが存在したような様子は無い。
追い詰めている間に、一度全館の電気が消えてしまった事があった。
すぐに復旧したのだが、動力室に何かあったのかとそちらを見るも、特に誰かが居る様子は無かった。
これは結果論であるが、この時ヴァルカナでもリーネでも、機械の異常に気付けるだけの知識があれば、また別の結果もありえただろう。
ここに来るまで、動力室含む全ての部屋の検索を終えているが、何処にも彼の姿は無い。
最後の部屋は、特にくまなく何度も見回し、そしてヴァルカナはたった一つだけある、その可能性に思い至った。
リーネに断りその部屋を出ると、以前に検索した部屋に戻り、上を見上げる。あった。
通風孔。
天井に据付式のエアコンのように張り付いているものがある。
「映画かよ!?」
そんな怒鳴り声と共にヴァルカナは机を引き寄せその上に乗り、天井の通風孔の枠を引っ張り剥がす。
ヴァルカナの記憶ではこの部屋が一番そうしやすい部屋で、案の定、びっくりするぐらい簡単に、金属の枠は外れてしまった。
恐らく一度外して簡単に固定だけしてからここを通って逃げたのだろう。通風孔には何かが通った跡がくっきりと残っている。
通風孔はまっくらで、正直まともな神経の持ち主ならここを這い進もうなんて気にはならないものだ。ヴァルカナだって絶対に嫌だ。
危機感にかられたヴァルカナはリーネに言った。
「コイツ……絶対、ヤバイ奴だ。リーネ、下手に手を出すのはマズイ。今はとにかくやり過ごして警察が来るのを待とう」
正しい。とことん正しい判断である。
ただ問題はリネット・ビショップは無力な民間人などではなく、むしろ危機に際し呼び出され対応する警察側の人間である事だった。
「すみません、ヴァルカナさん。なら尚の事、見過ごす訳にはいかないんです。一度外に出て、ヴァルカナさんは避難させますので、どうか……」
ヴァルカナは見るからに嫌そうな顔をして、額に手を当てて考え込み、そして結論を出した。
「……わかった。なら俺も手伝う。ってもアイツ相手に殴り合いが出来るとも思えねえから……そうだな、管制塔使えれば端末使ってアンタの力になれると思う」
具体的にどんな事をするのかの説明をリーネにすると、本当にそんな事が出来るのか、とリーネはとても驚いていた。
銃弾なんて効きませんから、とか平気な顔で言うコイツの方がよっぽどわからねえがな、と思った所で、ヴァルカナは部屋に置いてきたエスパーニャンコの事を思う。
『部屋の中から自分で勝手に移動とかしねえだろうし、まさかアイツも猫殺す程暇じゃねえだろう。全部が終わったら迎えに行ってやらねえとな』
でも今は、居ると色々と面倒なので居ないのがちょっとありがたかったり。
二人は一度管制塔へと向かうべく建物を移動する。もちろん、周囲への警戒は怠らない。
建物内を移動しようとヴァルカナは思っていたのだが、リーネは開けた場所の方がシールド警戒はしやすい、と言ったので一度建物の外に出て一気に管制塔まで走る。
隠れられる場所を利用した地上戦は、当然空戦ウィッチであるリーネはあまり得意としないのだ。
見通しの良い所で、反応速度勝負の方がよほど勝ち目があると考えているようだ。
そしてそのリーネの、ネウロイのビームを見てからシールドを張る尋常ではない反射神経が、またここでも活きる。
「管制塔!?」
そんな言葉と同時にリーネがシールドを張ると、妙に軽い音と共に弾丸が弾かれる。射撃先も特定出来ており、それは管制塔の一番上であった。
リーネのシールドの後ろに回りこみながら怒鳴るヴァルカナ。
「クッソ! アイツこの基地始めてじゃないのか!? 何だって一番オイシイ場所を抑えられるんだよ!」
「建物の中に急いで! 管制塔や艦橋に重要物が集中しているのは何処も一緒って事でしょうか」
「あいよ! こうなると手持ちの端末だけで何とか指示するっきゃ……」
「いえ、あの人が管制塔に居ると確定したのはありがたいです。ヴァルカナさんは今の内に基地の裏側から管制塔の死角を縫ってここを脱出して下さい」
管制塔を使えれば、数少ないが監視カメラもあるし、幾つかのセンサーも使えたかもしれなかったのだが。
先にあそこに陣取られたとなると、ヴァルカナに出来る事は極端に少なくなる。
そもそも一介のプログラマーに、銃撃戦の最中で何かしろと言われても荷が重過ぎるのだ。
何とか建物の中に逃げ込んだ二人は、物陰から管制塔の上部をのぞき見る。
「……悪い、俺は先に行かせてもらう。アンタも、くれぐれも無理だけはしないでくれよ」
「はい、では合流は501基地で」
「ああ、待ってる。ヤバかったら逃げるんだぜ、いいな」
そう念を押すヴァルカナの表情が面白かったのか、リーネはくすりと笑った。
「はい、ではまた後で」
足手まといにならないよう、彼は言い争う事もせずその場を走り去った。
その辺の機微はリーネも理解している。
第一印象こそあまりよろしくなかったものの、こうして一緒に居てみると、彼は他人を思いやれる良い人だと思えた。
彼が走り去った後、一度だけちらりとそっちを見てみると、彼もまた走りながらちらりとこちらを振り返っていた。
目を丸くするリーネに、ばつが悪そうに手を振るヴァルカナ。どうやら、可愛らしい所もある人らしい。
彼を見送った後、リーネは牽制の為に手持ちのワルサーをジンが居ると思しき場所に撃ち込んでみる。
もちろんハンドガンで届く距離ではないのだが、リーネの持つ固有魔法は射撃の強化であり、この程度の距離ならば何の問題にもならない。
隠れていた相手がようやく見つかったのだ、こうして銃撃を繰り返して足を止め、機を見て一気に管制塔を昇り制圧する。
相手の武器ではリーネのシールドは抜けないのだから、これでほぼ確実に勝てるだろう。
後は素早い動きで逃げられるという事の無いように、管制塔の内部構造を思い浮かべつつ、追い込む算段を立てる。
そして数度銃撃を管制塔に撃ち込んだ後で、一気に屋内を管制塔へと走る。
そんなリーネの足元に、まとわりつくように走りこんで来た小さい影が。
「猫さん?」
何時の間に部屋から出てきたのか、エスパーニャンコがリーネを見つけ走り寄って来ていたのだ。
何処か遠くから、金属が折れる音が聞こえた気がした。

ジンは管制塔の上から見下ろす形で狙撃を行える、最高の位置取りをした、つもりだった。
しかもどうやら相手はハンドガン一丁のみのようで、流石にこれはどうにもしようがなかろうと思っていたのだが、あの女、こちらに向けてハンドガンを構えたかと思うと、撃って来た。
多分あの銃、見た目はワルサーに見えるが、中身はNASA開発のスーパー宇宙銃か何かなのだろう。
銃弾は管制塔のブ厚い窓ガラスをぶちやぶった挙句、奥の壁をすり鉢状に砕いてくれやがった。
威力も意味不明だが、その狙いの正確さも大したもので、しかも敵さん管制塔の内部構造を知っているようで、階段を降りて逃げられないよう、そちらを牽制するようガンガンぶっぱなしてくる。
本来、角度が悪すぎてジンを牽制するなんて真似絶対出来るはずがないのだが、壁の薄い部分なら平然とぶち抜くあの馬鹿げた威力が不可能を可能にしているのだ。
「……つくづく、エライ所に来ちまったな」
それでも勝利への道筋は立てている。
いるのだが、仕掛けは済んでいても、それが何時動いてくれるかがまるでわからない。
発電機の安全装置を軒並み外し、物理的にパイプを一本レンチで外してしまった上で、発電量を上げにかかる。
燃料である水素を大量に必要とする為、水素吸蔵合金が反応をしだし、水素を放出すると共にこの金属が激しく熱を持ち、これで発火させるといった事を考えていた。
のだが、この金属がまずクセモノで、ジンの常識から考えてこんなにも吸収効率の良い金属はありえない。
何かしら未知の金属だとして、こういったモノに使う為の合金であるのなら、多分発熱も対策がしてあるのでは、とも思うのだ。
その場合、発火には何か別のものが必要になる。
実際、水素が漏れ出してからかなり経つのに全く爆発する気配が無いのは、多分水素吸蔵合金の発熱での発火は不可能だったという事なのだろう。
だがそれでも、現在発電機周辺は水素と、大気中に当たり前に存在する酸素が大量に混合された状態であるはず。
後は何かのきっかけで火がついてくれれば、思った以上の爆発が起きるはず。
なのだが、冷や汗が止まらないぐらい、今はヤバイ事になっているとも思っていた。
「幾らなんでも、時間かけすぎたか……これだと、貯蔵水素量次第じゃ管制塔まで吹っ飛ぶんじゃねえのか?」
ジンが狙った水素爆発とは即ちそういう類の危険な仕掛けであった。
水素は比重が非常に軽い為、ほっとくとすぐに空に飛んでいってしまうものだが、発電機があったのは地下であり、早々に希釈されるという事もあるまい。
と、思ってたら、来た。

体感の震度は十ぐらいつけてもいいだろう、と思える程。
掛け値なしに、その衝撃でジンの体が宙に浮いた程だ。
そのまま盛大にすっ転んで、端末が据え付けてある台に勢い良く腰をぶつけてしまう。
基本運動神経の良いジンには、この手のドジで体をぶつけるといった事がほとんど無い。
なので、妙に恥ずかしいやら痛いやら。
そこらに転がった帽子をかぶり、恥ずかしさを誤魔化しながら立ち上がる。腰がじんじんと痛むのが憎らしい。
「どう……なった?」
管制塔の窓は全て砕けて落下しているが、外は全く見えない。
吹き上がった煙が、十メートル近くある管制塔全てを覆ってしまっているのだ。
それだけでも爆発の凄まじさがわかろうものだ。
ジンは、自分の声が聞こえない事で気がついたのか、耳を叩いてみる。やはり、全く聞こえない。
出血があるでもなし、一時的なものだろうと、ジンは口元を服の裾で覆いながら煙が落ち着くのを待つ。
幸い、ジンが居る管制塔上部は程なくして煙は晴れてくれた。ただ、管制塔下部と基地は未だ煙の中。
ジンは、なら仕方が無い、とタバコに火をつけかけてふと止め、バッグを漁って食事を取り出した。
タバコには食欲を減衰させる効果もある。ヘビースモーカーなジンは、食事は自分で意識して取るようにしないと、面倒だで済ませてしまいがちになるのだ。
黙々と、バッグの中にあった幕の内弁当を平らげる。結構な値段がしそうな造りであったが、特に感慨もなくジンはさっさと全てを食べ終えてしまう。
砕けた窓枠から外を見下ろす。
未だ煙は施設全てを包んでおり、まるで山頂から雲海を見下ろしているような気分だ。
それでも建物のおぼろげな形は見えて来ており、そこから一体何がどうなったのかの全容を知る事が出来る。
といってもそんなややこしい事ではない。地下から爆発が起こり、建物内部を爆風が吹き荒れ、一部脆かった箇所を吹っ飛ばしたという事だろう。建物自体は概ね原形をとどめている。
ただ、ジンの目が一つの異常を見て取った。
管制塔へと伸びている部分だけが、特に崩れ方が激しいのだ。まるでその真下で爆発したかのように。
煙が晴れてくるとその異常がよりはっきりと見えて来る。
横長の建物が、縦に裂ける形で天井まで崩れ落ちてしまっている。しかし、あの位置は発電機があった場所とはまるで違う。
爆風が建物内をどう吹き荒れたかがわからないので何とも言えないが、あそこだけが脆かった理由はジンには思いつかない。
ジンはバッグを手に取り、ライフルを組み立てたままで抱えながら、管制塔の階段を下っていった。
降りている最中、小さく、とっとっと音が鳴る。これはジンの足音だ。
耳は正常に戻ったらしい。安堵しつつ管制塔の下端へ。まだ煙がうっすらと漂っていて咳き込みかけるが、根性で耐えて口元を裾で覆う。
管制室を降りきってすぐの所から外に出ると、幾分か煙も楽になっていた。
こうして下から見ても、その異常さがわかる。
そこだけ、超巨大な包丁でかまぼこを切ったように、綺麗に建物に切れ込みが入っているのだ。
何がどうあろうと絶対死んでいるだろう、もし仮にそこに居たのがジンだったなら例え千人居ても皆死んでいるだろう現場に向かうのに、ジンは警戒を怠らなかった。
近寄ると、切れ込みというよりは天井が落ち、複数階層まとめて崩れ潰れた、という感じだ。
不意に、ジンはある事に気がつき慄然とする。
その崩れた場所から管制塔に至るまでの建物は、ほとんど爆発の影響を受けていない。
いや、上階は爆風を受けている。だが、一階部の廊下は綺麗なままであるのだ。
更に更に、恐ろしい事がもう一つ。
ジンの復活した聴覚が、ほんの微かにだが、人の声らしきものを拾って来たのだ。
地上十メートルにまで爆煙が吹き上がる程の水素爆発のまっただ中にあって、未だ息をしている存在があるというのか。
声のする方に、慎重に歩を進めるジン。
「……よし……しか……よ…か……よし……」
場所は、最も瓦礫が山と積まれている箇所。いや、そのすぐ、側から。
ジンは、それを見つけた時の驚きを何と表現していいのかわからなかった。
「痛いよ芳佳ちゃん、苦しいよ、怖いよ芳佳ちゃん、助けて、もう何も見えないよ、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん何処……」
と、口にしているのは、瓦礫の山の方を向いて座っている、一匹のネコであった。
或いはこの奇妙なネコに注意を引いておいての奇襲狙いか、とも思ったのだが、全く全然、そんな事は無く。
ネコは次第に言葉を減らしていく。
「……もう、何も……わかんないよ、芳佳、ちゃん……ごめんね、私、やっぱり芳佳ちゃんの役に、立てないみたい……ご、めん、ね……」
それを最後に、ネコはもう何も言わなくなった。ネコは、にゃーんと一声鳴いたが、ジンにはその意味がわからないままであった。

リネット・ビショップは、爆風にすら反応出来る程の反応速度を持ち合わせていた。
彼女の目は、押し寄せる衝撃の波をすら見て取れていたのだろう。即座に、最大出力のシールドを展開する。
そのシールドの大きさは通路全てを覆う程。これなら、すぐ横のエスパーニャンコも守りきれる。
そしてこのシールドはというと、それこそストライカーユニットの助けがあれば戦艦や空母の装甲ですら容易くぶちぬくビームを防ぐ程のもので、この水素爆発にすら耐える事が出来た。
だが、威力と衝撃の範囲をリーネは見誤った。
ウィッチのシールドは弾く、であって衝撃を吸収する訳ではない。だから通路一杯を埋めつくす衝撃はシールドによって逃げ場を失い八方へと破裂したのだ。
左右はまだ良い。そのまま外に逃げるだけだ。
だが、下方向は砕く事すら出来ぬ地面であり、その分は弾かれ一緒に上へと突き抜けていく。
一階天井を下からぶち破った衝撃波は、二階部を吹き荒れる衝撃波と合流し、更に荒れ狂い二階部を強固な壁面天井ごと粉々に砕いてしまったのだ。
そして大量の瓦礫がリーネの頭上へと。優れた反射神経でそちらにもシールドを張る事が出来たリーネだが、頭上より崩れ落ちる瓦礫を弾き返す事など出来るはずもない。
かわし逃げる身体能力は、流石のリーネも持ち合わせていなかった。
そのままシールドごと瓦礫に埋もれてしまう。後は、もう、誰にも助ける事は出来ない。
シールドを維持する魔力が尽きると、ゆっくりと大量の瓦礫がリーネにのしかかって来て、それでも隙間に急所を滑り込ませる事は出来たかもしれないが、いずれ脱出出来なければ怪我の出血と呼吸困難で死に至る、という話だ。

ネコは何時までも瓦礫の山を見つめたままで、ジンはこの薄気味悪いネコをとりあえず殺しておこうと銃を抜きかけ、思いなおす。
あのリネットという少女の尋常ならざる反射神経を見て、少し、負けん気を起こしただけだ。
ジンは足元に転がるガラスの破片を手に取る。
ネコまでは、大股に踏み込んで一歩半。
ジンの激しい動きに反応し、ネコが振り向き飛び上がる。
その為足に力を込めた所で、ネコにすら届く程低く低く踏み込んだジンの腕が、ネコの首前を通り抜ける。
ジンは、ガラス片を捨てると、一人呟いた。
「ま、俺もまだまだ捨てたもんじゃねえな」
ネコは、首から血を流しながらひくひくと震え、時期に動かなくなった。
ふと、建物の奥、管制塔とは逆側の端に当る場所付近から、数箇所灯りが見て取れた。
発電機は吹っ飛ばした。なのに灯りが付くという事は、予備電源でも作動したか。
これだけの目に遭いながらも、予備電源やら送電線やら電球やらが残っているのが、何とも滑稽で。
さっきの不可思議な破壊の仕方に関して、ジンはあれは少女の謎盾によるものだと、ほぼ正確に把握していた。
そして恐らく少女は、そのまま瓦礫に埋もれて死んだだろうとも。
彼女といい、ここの施設といい、と、ジンは思わず一人ごちる。
「なるほど、この世界ってな俺が考えるよりずっと、何もかもがタフに出来てやがるって事か」
それは何故か、ジンにとって不快な思いつきではなく、何やら笑い出したい衝動に駆られるようなものであった。



ヴァルカナはその瞬間、背後から物凄い衝撃を受け大地を勢い良く転がるハメになった。
それでも避難の為距離を開けていたのが幸いしたか、ガラス片やら瓦礫やらにぶつかる事もなく、地面を転がったせいでしこたま土を口の中に放り込まれた程度で済んだ。
そして我が身を起こして建物の方を見て、もう、駄目だと即座に悟った。
煙は天空高くにまで吹き上がり、建物全体が何も見えなくなる程の爆煙だ。
ヴァルカナはもう建物からはかなり離れていたというのに大きく転ばされる程なのだ。
そのど真ん中に居ただろうリーネがどうなったかなんて、見るまでもない。
間違いなくあのジンという男も死んだろうが、ヴァルカナにとってはそんな事どうでも良かった。
「嘘……だろ? あれで、死んじまったってのか? ……アイツ、そんな、死ななきゃなんねえような、そんな奴じゃねえだろ……女の子だぜ? まだ、学生ぐらいじゃねえのか? 何だよこれ、何だよそれ……」
CGS本部を取り囲む荒地から、見上げるように立ち上る煙を見つめ、ヴァルカナはよろよろとその場を立ち去る。
もっと離れなくては危ない、そんな思考が働いたのだ。
ヴァルカナは、エスパーニャンコが今ここに居なくて、本当に良かったと思った。
自分が今何を考えているかなんて、エスパーニャンコに頼まなくてもわかる事だが、わざわざ言葉にして聞きたいとは思わない。
そう、良かった、だ。
ヴァルカナの心を占めるのは、俺じゃなくて良かった、である。
リーネはヴァルカナの事を考え、先に避難を促してくれた。そのおかげでこうして生きながらえている。
感謝はしてるし、もし彼女が生きていたのなら幾らでも恩返しをするつもりはある。
でも、もう彼女は居ないのだ。
それを悲しむよりも、同じようにヴァルカナも消えてなくなりそうな所を助かった事が嬉しかった。

そんな事を考えてしまう自分に、何より腹が立って仕方が無かった。



【リネット・ビショップ@ストライクウィッチーズ】死亡
残り57名


【D-2/早朝】
【ヴァルカナ@迷家-マヨイガ-】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3(武器はあるらしいがまだ見せていない)
[思考・行動]
基本方針:誰が殺し合いなんかするか
1:リネットが死んじまった。
2:501基地に向かう予定だったが……。
3:スピードスターを警戒。


【E-2/早朝】
【ジン@名探偵コナン】
[状態]:健康
[装備]:拳銃(ベレッタ)
[道具]:支給品一式、ベレッタの予備弾薬 対物ライフルバレットM82(分解して専用鞄に収納済み)と予備弾薬、蒼月潮の似顔絵(超似てる)
[思考・行動]
基本方針:
1:蒼月潮に会い、斗和子が何者かを聞く。(斗和子に首輪を外し脱出を行えるだけの力があるか、どうすれば斗和子を殺せるかの二点は必ず確認する)
2:斗和子ルートでの脱出が不可能ならば、蒼月潮に斗和子を殺させ、しかる後蒼月潮をジンが殺す。
3:斗和子ルートでの脱出が不可能ならば、最後の一人になる事で自らの有用性を証明し、主催者の意図がどうあれジンを生かしておく事に価値があると認めさせる。

※その他 ジンは殺した人間の名前は忘れるので、若狭悠里とリネット・ビショップの名は既に記憶に無いでしょう。斗和子の不死身っぷりをその目にしました。


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017:戦う意思 ジン :
025:猫も喋らずば撃たれまい ヴァルカナ :
025:猫も喋らずば撃たれまい リネット・ビショップ GAME OVER

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最終更新:2016年09月01日 12:25