俯瞰せよ、人々よ

d-4ーーー古びた屋敷の中で、地獄の悪魔エルシィは、ただ歩き回っていた。
地獄から逃げ出した悪人の魂通称『駆け魂』を狩るエリート部隊の一員である彼女は、本来かなりの落ちこぼれであった。
が、協力者の桂木桂馬の力添えもあり、計4匹の駆け魂を捕まえ、一躍エリートとなる。
本人にその自覚は無いようではあるが。

「……どうしよう。歩美さん、死んじゃったよ…」

不安を口にすると同時に、内心かなりの驚きがあった。
新悪魔であるエルシィを、拉致するという時点でふつうの人間には不可能である。
そして、荒耶宗蓮は悪魔とは違う。
解析不可能な相手に、エルシィは言い知れぬ不安を覚えていた。人間相手に、これほど大きな恐怖を抱いたのは初めてかもしれない。
例えば、同じ悪魔のハクア・ドゥ・ロット・ヘルミニウムならばきっと今ごろは何かしらの方針で動いただろう。
桂木桂馬と離れている状態で、彼女に判断を委ねるのはかなり無謀であった。

「……神様……」

譫言のようにつぶやいた直後。
エルシィの胸元から、一本の刃が生えていた。
間違いなく心地点を貫通しているため即死している。

背後で口を真横に引き裂くように笑うのは、哀れな殺人鬼。


「は、ははは。やっぱり簡単だ、殺すのは。アハハハハハハハハハハハハハ!」

白純里緒。
可愛らしい名前と同じく、中性的な顔立ちをした青年。
数年前、とある少女に振られてから堕落の道を歩み、荒耶宗蓮の手のひらで踊らされた哀れな連続猟奇殺人鬼。
『食べる』という起源の覚醒と、依存性が桁違いの麻薬、ブラッドチップの売人であることから、彼は両儀式に狙われ、殺された。
だが、この白純里緒は殺された記憶を意図的に消されている。
恐怖を抱かない狂犬。
その次の標的を見定めると、白純は食欲を抑えきれないというように舌なめずりをした。どこから見ても、獰猛な野獣であった。

獲物に選ばれた少女ーーー汐宮栞に、まっすぐ駆けていく。


本を愛しすぎた少女、汐宮栞は、屋敷の中の古い本を読んでいた。
しばらくするとはっとなって、

「……ぁ、いけない。こんなことしてる場合じゃないや」

文学少女で若干天然な栞は、不安を感じていないわけではなかった。
ただ、栞にとって『砦』である書斎に入ることは、彼女に確かな落ち着きを与えた。
かつて、『駆け魂』に取り入られた際、桂木桂馬に助けられたのだが、その記憶は確かに残ってなどいない。

ただし、脳裏には、古ぼけて消えかけた記憶として薄く残っている。
だから、栞が桂馬を求めないのだ。
デイバックの中は一応確認したが、中には黄金の剣一本が入っていた。栞は運動神経はまったく無いのだから、持つだけ無意味だ。
そろそろ仲間を探しておこう、と書斎を出た直後。

殺人の瞬間を、目撃した。

白純里緒の恍惚に満ちた表情に、思わず歯ががちがちと鳴る。
ふっ、と栞の方を見る白純。片手にはドスを構え、怪物じみた身のこなしで突撃してくる。目は正気を失っている、狂人の目だった。

「ひゃはははっ!」

一気に距離を詰めた殺人鬼。
栞は思わず反射的にデイバックを振るった。白純の手からドスが落ちるが、そのまま栞に覆いかぶせるように、拳を作る。
そのまま、栞の顎を横から掠めるように殴り飛ばす。
重心を維持できなくなった栞は倒れ込む。
殺される、と栞は確信したが、現実は更に非情だった。
白純は倒れた栞の腹にのしかかり、そのまま拳を振りあげる。

「や…め……………ぎゃぐっ!あぎっ!ぎゃふッ!」

栞の顔に叩き込まれる暴力の嵐。歯が折れ飛ぶ。

一体何分、肉を打つ音が鳴り響いたろうか。栞の口は脱力したように開かれていた。

顔はぼこぼこに腫れ上がり、片方の頬肉は無くなって、歯茎がむき出しになっていた。

「もう…ゆるひ…て」

拳は振りおろされ続けた。
殴殺。
刺殺斬殺撲殺補食を行ってきた白純は、ただ新鮮さだけを追い求めていた。

「ブッ!…@#E$%&*%$#…」

顔面を足で踏みにじる。踏みにじる中で、栞は二度と動かなくなった。


エルシィは、ただ逃げ回っていた。
彼女の幸運は、親友のハクアの羽衣のおかげで、白純を騙せたことだろう。

「君、大丈夫?」

【汐宮栞@神のみぞ知るセカイ】  死亡
【残り38/40人】

【深夜/d-6】
【白純里緒@空の境界】
[状態]拳が血塗れ(栞の唾液、歯などが付着)
[装備]ドス
[所持品]不明1
[思考・行動]
基本:殺し合いを楽しむ。

【エルシィ@神のみぞ知るセカイ】
[状態]恐怖
[装備]ハクアの羽衣(残り二回まで)
[所持品]不明1
[思考・行動]
基本:???


いつか君が瞳に映す 投下順 リア充爆発しろ
GAME START 汐宮栞 GAME OVER
GAME START 白純里緒 残酷歌劇
GAME START エルシィ 残酷歌劇
GAME START 上條恭介 残酷歌劇

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最終更新:2011年06月29日 22:51
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