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聖徳太子の楽しいバトルロワイヤル

【前回までのあらすじ

天才ピアニスト銀河進はついに黒鍵のみでチューリップを演奏することに成功したが、血の繋がらない妹に指がカニみたいと嘲笑され円形脱毛症に陥る。

一方、同じく円形脱毛症の暗黒王ジョンはバイト先の後輩に陰から「キムチ」と呼ばれていたことに激怒し、さらに仕事場の空気が気まずくなる。

そして砂場をココアパウダーに変えることにまで成功した暗黒仮面トムは、
調子に乗って荒れに荒れたお肌を異様なほどモチモチに変えてしまった無茶がたたり円形脱毛症に陥る。

はたして彼らの頭皮の行方は? そして最近抜け毛の気になるロンリネスマスクのお肌の微妙な張りの秘訣とは?

物語は激動のクライマックスへ突入!






「なんだよこのおにぎり具が入ってないじゃないか。具をもっと入れろよまったく……あ、具をグッと入れろ」

聖徳太子(ノーパン)は小野妹子と共に遣隋使になった。皇帝煬帝に会うため船で洛陽を目指していたはずだったのだが、いつの間にかバトルロワイヤルという珍奇な祭に参加することになっていた。

「むしゃむしゃ……しかし妹子のやつ……しゃむしゃむ……このバトルロワイヤルに……しゃぶしゃぶ……乗るつもり……しゃぶ……なのだろうか……ゲェーップ」

スポーティーな私に嫉妬して襲いかかってくることもあり得るな――太子はそんな馬鹿なことを考えながら、デイパックを肩にかけ周辺の探索にあたる。
呑気に鼻歌を交えながら、悠々と街路を闊歩するその姿は、どこからどうみても変質者そのものであった――。

「ツナが大好き小野妹子~、枕の中はツナでいっぱい~トゥナイトゥ!」






「畜生っ・・・!! 畜生、畜生っ・・・!!」

――平山幸雄は、良くも悪くも、いたって普通の人間であった。

例えば、彼の有する瞬間記憶能力。これは日常で役立つことは確かだが、それを彼が使いこなす機会などめったになかった。

いつか知り合いの刑事に唆され、ヤクザの麻雀の代打ちを務めたときも、自らの徹底的な確率主義が災いし、瞬間記憶能力を生かす間もなく彼は玉砕した。

その時に彼は痛感したのである。自分は天才とはほど遠い、ちまちま小銭稼ぎをするしか能のない小者なのだと。

――以来、しがないギャンブルにかまけること数年……すっかり負け犬根性の染みついた彼に訪れた転機が、此度の鷲巣麻雀であった。が、しかし――。

「なんでっ・・・こんなことがっ・・・!?」

鷲巣邸に向かう途中、目の前に黒い霧が立ち込めたかと思うと、次の瞬間には彼の意識がぷっつりと途絶えた。

そして気がつけば、烏合の衆と共に殺し合いが始まり、現在に至っている。

「俺は麻雀しに来たんだ・・・殺し合いなんて寝耳に水・・・!!」

昭和の怪物と畏怖される鷲巣巌だが、彼はそれなりの覚悟を持ってリスクある麻雀を打つことを了承した。

しかし、勝率イーブンのゲームを殊更忌避する彼にとってすれば、一歩間違えれば即己の死に直結するデスゲームなど、本来ならば御法度。

つまり、ここ数年のしょぼい生活から脱却するための足掛かりになるのではと、半ば冷静さを欠いた判断でもあった。

そこに追い討ちをかける、普通人にとって全く勝算の見込めない殺し合いを強要させられたとあっては、水に浸した紙同然、一触即発の精神状態に追い込まれるのは至極当然のことであろう。

「あぐ、うう・・・くくくっ、くそったれ・・・ありえない・・・断じて・・・!」

何処とも知れぬ薄暗い森の中……開口を吐く不純な日本語の羅列は、皮肉にも彼のその精神状態を最も端的に示していた。

がりがりと近くの樹木をかきむしる姿も相余って、見る者は凡そ常軌を逸しているとしか思えないだろう。

しかし、これこそ通常。

死を目前にして容易く錯乱。これこそ心理の理(ことわり)。

「カカカ・・・そうだ・・・それでいい・・・それが普通・・・存分に狂え狂え・・・!」

――そんな彼の様子を可笑しそうに笑いながら、しかし器用にも息を潜めつつ、遠巻きに窺う一人の老人がいた。

誰であろう、平山幸雄を地獄へといざなおうとした張本人――昭和の怪物こと鷲巣巌(わしず・いわお)である。

「平山幸雄・・・ククク、あやつは捨て置いても何ら支障はなかろう。むしろ錯乱したあやつを泳がせ、参加者の始末役を一任させるのもまた一興・・・!」

それにいざとなれば――と、鷲巣は背広の懐から黒いノートを取り出しながら、にやりと醜い邪笑を浮かべる。

「デスノート・・・まさかとは思ったが、こんな不可思議な帳面がこの世に実在するとはな・・・」

疑わしい一品だったが、鷲巣巌は既に試し書きを施していた。その証拠に、彼の足下には生気の抜けた瞳をカッと見開き、地べたに這いつくばる少女がいた。

「ククク・・・たしか、梨々・ハミルトンとかいったか? すまんのう・・・わしゃあ、おなごとて容赦はせんタチでな」

(ククク・・・しかしマヌケ・・・実にマヌケ・・・!
これだから最近の童は好かんのだ・・・どいつもこいつも緊張感に乏しい・・・!
わしが十にもならぬ頃には、どのような不測の事態にも動ぜぬ鋭利な判断力を培っていたというのに・・・!)

『お爺さん、そのノートは?』

『いや、なぁに・・・わしゃあ、ちょいとココが弱くてのう・・・名前をメモせんとすぐ忘れてしもうてな。
すまんが、お嬢ちゃんの名前をこの老いぼれに教えてもらえんか?』

『そういうことでしたらもちろん! わたしは――』

「馬鹿・・・典型的なお人好し・・・!
名前一つにしても利用価値は多分にあるというのに、この体たらく・・・!」

鷲巣はクッククと腹を抱えて笑いをこらえながら、梨々・ハミルトンの亡骸を無情にも踏みにじる。
その姿たるや、まさに外道!!

「クカカカ・・・さぁて、のんびりとはしてられんの。
血湧き肉踊る殺し合い・・・なんとひさかたぶりか・・・!
あんなまどろっこしい麻雀なんぞの数倍興ずるわ・・・!」

世界有数の法治国家と化した現代日本において、未だに弱者を弄ぶ残虐非道な殺人ゲームを繰り返していた鷲巣巌。

その高慢なる胸中にあったのは、ただただ己が矜持を満たそうという底抜けの貪欲さと、それに比例して肥大する、潤しようのない砂漠のごとき渇きであった。

――ぬるい、ぬるすぎる!

――なんと張り合いのない。

――つまらん。

苦肉の策として考案した鷲巣麻雀も、彼にとって何のこともないただの娯楽となってしまっていた。

殺せども殺せども、戦時の血潮を呼び覚ますことのできぬ苛立ちの矛先は、やがて彼に附帯する僕たちにも向けられたが、それでも叶わぬ欲望の昇華。

――この殺し合いに参加させられたのは、そんな矢先のことであった。

募り募った鬱憤を晴らす絶好の機会――彼が欲していた殺しの正当性を見事にクリアーしたこの状況は、まさに鷲巣にとって楽園に等しかった。

(さて・・・まずは、どうしたものか・・・)

高ぶる熱情を抑えつつ、鷲巣は現状を冷静に分析し始める。

(・・・デスノートを扱う上での大まかなルールはすでに把握した。
が、どうにも解せん・・・こんな強力な武器を支給するからには、何か相応のリスクがあのガキに付きまとうはず・・・。

デスノートの効力が発揮する鍵は大きく分けて3つ。

1つ目は人間であること。

2つ目は名前と顔が一致すること。

3つ目は記入した死因に矛盾がないこと。

人間にしか効果は現れない・・・つまり地獄人と名乗ったあやつ――アノンには効かないということは自明の理か・・・。
だが、ここで問題となるのはそんなことではない・・・。

わざわざこのような注意書きをせねばならん、もっと他の理由があるということ・・・。















あ゛・・・!?















待て待て・・・?

ということは、つまり人外・・・化け物の参加っ・・・!?

この殺し合いにっ・・・!?

あり得るぞ・・・主催者が人外ならば参加者が人外でないという根拠がどこにあろうか・・・。

そして名前と顔が一致すること・・・これもかなりの曲者・・・!

顔を隠されたり偽名を使われたりなんぞすれば、いざという時に殺せんということっ・・・!

幸いにも参加者名簿があるが、真偽を確かめる術がなくてはどうしようもない。

なるほど・・・このノート・・・強力ではあるが、同時に過信しすぎればいざという時に足下を掬われかねん・・・ということか。
命の危機にさらされたシチュエーションで、はい、効きませんでした・・・では話にならんっ・・・!)

狂気の塊であるかと思われたその頭脳は、しかし常人ではけして辿り着けぬ予測を導き出していた。

これこそ、彼が昭和の怪物と恐れられる最大の由縁である。

柔軟な発想、奇抜な計略、大胆な行動。
狂気ありきの鷲巣などではない――鷲巣ありきの狂気なのだ。

すべては計算により裏付けられし確信から生ずる結果なのである。

(冷静になるのだ。目先のことに捕らわれ、大局を見失ってどうする。

そもそもだ。あの小僧が約束を守るような聖人君子に見えるか? あ? いやいや、見えん見えん!

つまり、わしはこの殺し合いを生き延びると同時に、あやつを出し抜く方法をも考えなければならないということ!

だが・・・どうやって・・・?

この首輪を外す手段は、今のところ皆目見当もつかん。

もし可能性があるとすれば、その手の知識に富んだ参加者の協力を扇ぐしかあるまいが、しかしリスクが高すぎる。

裏切られたりなんぞしたら即アウツ・・・終わり・・・!!

…しかしだ。

…何もしないわけにも・・・もちろんいくまい。

目下は信頼に足りる協力者の探索が先決・・・そして直接的な殺傷武器の確保も平行して行うべきか・・・。

しかし、これはこれで面白くなってきた・・・狩るか狩られるか・・・首筋がヒリつくような圧倒的スリルっ・・・!

わしは登りつめるぞ・・・このサバイバル・・・帝王はこの鷲巣巌ただ一人・・・!!)

恍惚の笑みをこぼしながら、鷲巣巌はそっとその場を後にする。

そして、淡い鶯谷色の木漏れ日に包まれてゆく森の中に、たった一人取り残された平山幸雄は、ただただ己の不運を呪い続け、涙する――。






「なんてことだ。摂政ともあろう私が道に迷ってしまうとは」

小野妹子を捜す聖徳太子は、スラム街の路地裏を通り抜け、しばらく歩いた先に位置する森の中をうろうろとさ迷っていた。

時折、そこらに生えている雑草を無造作に引っこ抜き、デイパックにひたすら詰め込んでいる。無論、妹子を見つけたら即座に投げつけて嫌がらせをするためだ。

「ツナがないから雑草で妥協してみたが、やはり小石にでもすればよかった……ん?」

太子がちょうど30本目の雑草をむしり取った時、不意に気味の悪い雑音が彼の耳の奥を衝いた。

……えない……うぐぐ……しょう。

若い男の声。更に言うならば奇声。獣の発するそれである。

「ひえぇ~~~。幽霊が出るなんて聞いてないよ!?」

おっかなびっくりしながら、太子はジャージの裾を強く握り締める。

みるみるうちに汗ばんでゆく両の手のひら。

彼はようやく気が付いた。ここは殺し合いの場であるということ。そして、まともな武器も持たずふらついている自分は、他の参加者にとって恰好の的だということに――。

「ちくしょ~~こんなところでリタイアするわけにはいかんだろ。妹子に嫌がらせするまでは死んでも死にきれんわ」

無様に震えながらも、彼は背負っているデイパックに手を伸ばし、がさがさと中を漁り始める。やがてそこから取り出したのは、鳥のクチバシを模した先端が特徴的な短い杖だった。

「とりゃ、とりゃ! どっからでもかかって来んしゃい!!」

【スラム街近郊の森/1日目/06:30】

【平山幸雄@アカギ】
[状態]:錯乱
[装備]:なし
[道具]:空気ピストル@ドラえもん/SWORD@カードキャプターさくら
[思考]
第一行動方針:うぐぐ・・!
基本行動方針:逃げろ・・・とにかく逃げろっ・・・!

【鷲巣巌@アカギ】
[状態]:健康
[装備]:デスノート
[道具]:ERASE@カードキャプターさくら
[思考]
第一行動方針:首輪を外せる知識を持った人物の捜索
第二行動方針:殺傷武器の確保
基本行動方針:サバイバルを制する

【聖徳太子@ギャグマンガ日和】
[状態]:健康
[装備]:封印の杖@カードキャプターさくら
[道具]:なし
[思考]
第一行動方針:小野妹子
第二行動方針:正月は芋しか食べねえ
基本行動方針:ツナ

【梨々・ハミルトン@吉永さんちのガーゴイル 死亡】

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最終更新:2011年07月26日 22:20
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