f-2エリア。そこのエリアには一軒の洋館が不気味に建っている。
窓は何があったのか割れて蜘蛛の巣が張られ、壁には植物のツルが伸びているという一言で言うなら『いかにも』な容貌をした洋館だ。
三村信史は、配布されたPDAをいじっていた。
本来これは禁止エリアや死者の詳細などを確認するためのアイテムなのだが、三村の目的はそこにはない。単純に、こっくりにハッキングを仕掛けてみようと思ったのだ。
『こっくりさん』ーーーーそれは三村も知っている有名な怪談だが、やはり心のどこかに認めたくないという思いがあったのだろうか。
「……どうなってんだよ、電波の発信源が掴めねえぞ」
PDAを乱暴に地面に叩きつけてから、しまったと思う。
あれが無いとこの先非常に不便だ。壊れていたら困るーーーーーそう思ったときに、三村は初めて気付いた。彼の居る一階の更衣室のクローゼットの中から、誰かがこちらを見ているのを。
「……こ、こんにちは」
「こんにちは」
あっちから話しかけてくるとは思わなかったが、どうやら相当おびえているらしい。
この極限状態における恐怖だけではない、もっと大きな恐怖によるものか。
少女の名前は、浅川夕。
とある優しい兄に溺愛され、自らは周りからの理不尽な心理的暴力によるトラウマを植え付けられた悲しい運命の少女である。そして、超能力の研究を何十年分も進める『核』とされる。
◆
「……何だ、悪かったな。嫌な事思い出させちまって」
夕から全ての話を聞いた三村は、さすがにばつが悪そうな顔をした。
最初ずっと隠れていたのは、他人に対するトラウマのせいだったのだろう。
「…でも、何で俺に話してくれたんだい?」
「……信史君は、優しい人。だから、大丈夫、みたい」
にこっ、と笑顔を見せる夕。
しかし、三村は胸を締め付けられるような思いがした。儚げな笑顔を、何度この少女は壊されてきたのか。『研究所』に追われるというのはどれほど過酷なのか。
彼女に比べれば、自由がないだの言っていた大東亜の生活の方がよっぽどましだ。
浅川智弘。
夕がどんなに悲惨な目に会おうとも、身を挺して夕を守ろうとする『自慢のお兄ちゃん』。この少女を唯一真に理解できる人物だと言うことを信史は知った。
きっと、そいつは七原のような奴なのだろう。
明るくて、正義感が強いクラスメイト。
案外桐山和雄のように、空虚な奴なのかもしれない。
桐山和雄。『プログラム』にて、自分と相棒ーーーー瀬戸豊を殺した張本人。
今回も
殺し合いに乗っているのだろう。もし殺し合いに乗っていないのならこれほど頼もしいこともないが、それは期待するだけ無駄だ。
やれやれ、と思ったその時だった。
夕の肉体が小さく揺れ、その胸元に一つの赤い傷口を作っていたのだ。
直後に三村を、桐山に撃たれた時と同じような激痛が襲う。
夕と信史は呆気無く倒れ、ただ襲撃者を睨みつけることしかできなかった。
銀髪の男。若くはないが、中年というのは早いような。
目は血走り、明らかに正気の目ではない。信史たちをあざ笑うような笑みを浮かべて、窓から身を乗り出した。
逃がすものか。近くにあった適当な鋏を持つが、間に会わない。
しかし、一発の銃声が、男を窓の外に吹き飛ばした。
◆
「信史……君、だいじょうぶ…?」
「なわけあるかよ」
二人とも重傷だったが、やはり夕の方が傷が深い。
「おにい…ちゃん……に、つたえて…」
口からは血がこぼれ、次第に目から光が失われていく。
信史も、意識が遠のいていく『二度めの死』を確かに感じていた。
「私は、お兄ちゃんの妹でいられて、幸せでした」
直後に、夕の肉体からすべての力が抜け、二度と動かなくなってしまった。
信史は、先ほどの男を撃った人間に、あくまで予想で声をかける。
「……桐山か」
「……ご名答だ。よく分かったな」
桐山は、ひとりの少女を連れていた。中学生ではあるだろうが、どこか浮き世離れした印象を受ける少女。あの桐山が子連れとはな、と苦笑する。
「…殺し合いには乗っていない」
「……それは、いいんだけどな…一つ、頼まれちゃくれないか」
桐山は三村の止血をしようとはしなかった。
それは、三村の傷がもう助からないものだと暗に示していた。
「浅川智弘って奴に、夕ちゃんのーーー最期の言葉を、伝えてほしい」
「…会ったなら伝えよう」
「……頼んだぜ、桐山」
三村信史ーーー"第三の男"もまた、沈黙した。
「…和雄、どうするの?」
「ルクス・ゴドウィン。それがさっきの男だ。血痕が無い、つまりは防弾服だろうな。わざわざ追う気は無いが見つけたら殺す」
やはり結果しか考えてはいない。
三村信史と浅川夕の死が、感情の無い桐山に心を与えることはなかった。
しかし、桐山が他人の言葉を他人に伝えようとすることは大きな変化なのかもしれない。
【深夜/f-2】
【桐山和雄】
基本:この儀式を終わらせる。
1:三村の言葉通りに浅川夕の言葉を浅川智弘に伝える。
2:見つけたらルクス・ゴドウィンを殺す。
【メリーさん】
基本:儀式を終わらせる。
1:これが殺し合いなの…?
2:和雄についていく
【浅川夕@オリキャラ】
【三村信史@バトル・ロワイアル】 死亡
【残り35/40人】
◆
ルクス・ゴドウィンは幸運だった。
防弾越しでもかなりの衝撃の桐山の射撃により、崖下の木に転落したのだ。
まだ目は覚まさない。
【ルクス・ゴドウィン】
基本:『神』になるために優勝する
※遊星に倒される前からの参加です
最終更新:2011年08月06日 00:05