第五十九話≪人を見た目で判断するなとは言うけど≫
時刻は午後1時5分を回っていた。
病院のあるエリアG-2が禁止エリアとなり、侵入不可となる。
幸い、エリアG-2に「生きた」参加者は一人もいなかったが。
それはさておき、緑の葉を生やした木々が林立するエリアE-5にて、ある遭遇が起こっていた。
「おーうちょっと待ちな嬢ちゃん。ちょっと動かないでくれっかな?」
「大崎さん、何を……」
「まあここは俺に任しとけ」
「……」
トタンと木材で作られた粗末な休憩所のすぐ傍で、
血塗れの制服を着た狼獣人の少女と、拳銃を持った男、狼獣人の兵士、禿頭の老人の三人組が対峙していた。
男――
大崎年光は九四式拳銃の銃口をを狼少女――
藤堂リフィアに向けていた。
年光のすぐ傍にいる狼兵士――
北原大和と老人――
山本良勝は、
年光が目の前の狼少女に向かって発砲するのではないかと心配していた。
リフィアはただ三人を見据えたまま動かない。下手に動くと何をされるか分からないためだ。
今自分に銃口を向けている大崎と呼ばれた男は、隙が無かった。
年光はリフィアの事を警戒していた。
理由は、リフィアの外見である。
口元が真っ赤に染まり、どこかの高校のものと思しき青を基調とした制服には、べったりと血糊が付着している。
首と胸を負傷しているようだ。
この血塗れの外見で警戒しない方がおかしいだろう。
それに――。
「ここに来るまでに、三人の死体が並んで横たわっているのを見つけたんだが、
アンタ、心当たりあるかい?」
「!!」
年光の問いの内容に、リフィアの表情が一瞬強張った。
やはり。と年光は心の中で思った。
年光、大和、良勝の三人は森の中の山道を歩いてここまで来た。
「疲れたから歩きたくない」と駄々をこねるハゲジジイに手こずりながら。
その道中で三人は、腹から血を流して死んでいるシスター風の女性、喉を食い破られて死んでいる紫ショートヘアの少女、
こめかみに穴が空いて死んでいる高校生ぐらいの猫獣人の少女の三人の死体を発見した。
そしてずっと道なりに歩いていたら、この血塗れの狼少女と出くわしたのである。
しかも狼少女は血塗れの上、死体の事を話すと顔色を変えた。
これは何か関連性があると考えざるを得ない。
もしかすると、三人を殺害した犯人である可能性も否めないからだ。
「……あります。シスターと猫の子は私と同行していました。紫髪の子に襲われたんです」
リフィアは信じてくれるかどうか分からないと思いつつも、
何とか事情を説明して信じて貰わなければ、自分の身に危険が及ぶと感じ、
事情を話し始めた。
「……成程。三人で行動してた時に、紫髪の子がボウガンで襲ってきて、
シスターと猫少女は殺されて自分も大怪我をしたが、その紫髪の子を返り討ちにして殺した、と。
ああだから血塗れなのな。大体そんな感じか」
「はい……」
「……ふーん」
年光はこの狼少女の言う事を信用しても良いものか悩んだ。
目を見る限りじゃ嘘は言ってなさそうだが……。
考えた末、年光の出した結論は。
「……オーケー、信じるよ」
九四式拳銃の銃口を下ろし、年光が笑顔を浮かべる。
リフィアは緊張が解けたのか、安堵の色を浮かべた。
その後四人はそれぞれ自己紹介をし、各々の支給品を確認し合った。
リフィアが軍用ライフルのモシンナガン、日本刀、直刀、ボウガンと強力な武器を幾つも携えている事に三人は驚いた。
当人の話によれば自身の支給品はモシンナガンと直刀で、日本刀は同行していた
長谷堂愛という猫獣人の少女の、
ボウガンは襲撃してきた
島村露柏という紫髪の少女の物だと言う。
「刀を二本持っても仕方無いので、どなたか日本刀欲しいって方は……大崎さんは?」
「いや、俺はいい。北原さんはどうだ?」
「俺は左肩がまだ万全じゃないからなぁ。片手で日本刀を振るうのは少し辛い。山本さんは?」
「金属バットだけじゃ不安じゃから、良いかの、リフィアちゃん?」
「いいですよー。どうぞ」
リフィアは日本刀を良勝に差し出した。
良勝は喜んで日本刀を受け取った。鈍器より刀剣の方が攻撃力は上だ。
良勝は金属バットをどうするか一瞬悩んだが、万が一日本刀の刀身が折れるという事態が起きる事も有り得るため、
非常用の武器として取っておく事にした。
「それと、これなんですけど……この
殺し合いに参加させられた人の顔写真と簡単な特徴が記載された
小冊子みたいです」
「ナ、ナンダッテー」
「ちょwww大崎さん」
年光は疲労のせいかつまらないボケをかまし、大和が突っ込んだ。
それをさりげなくスルーしたリフィアが差し出したのは「参加者詳細名簿」と題打たれた小冊子。
これも当人曰く自身の支給品では無く同行していた
岸部淑子というシスターの支給品だとか。
受け取った年光が冊子を開くと、成程そこには全参加者の顔写真と氏名、外見や性格といった簡単な特徴が記載されている。
当然、今この場にいる「大崎年光」「北原大和」「山本良勝」「藤堂リフィア」の欄もある。
顔写真はいずれも学生証や運転免許証、兵士手帳といった身分証明に使われる物だった。
死亡した参加者の欄は赤いボールペンで大きく×印が描かれている。
ちなみにそれぞれの欄に書かれている事を要約すると。
≪大崎年光(おおさき・としみつ≫
武器屋経営。なので一通りの武器を扱える。それなりにいい男。楽天的に見え正義感が強い。
≪北原大和(きたはら・やまと≫
陸軍兵士。身体能力及び武器の扱いの熟練度高し。灰色の毛皮の好青年狼。道徳的人物。
≪山本良勝(やまもと・よしかつ≫
隠居ジジイ。従軍経験有。ハゲジジイ。陽気。体力に難あり。
≪藤堂リフィア(とうどう・りふぃあ)≫
高校生。ゴキブリ並の生命力。極上の乳の狼少女。天然系。おっぱいウルフガール万歳!
「「……」」
良勝とリフィアは何だか悲しい気持ちになっていた。
比較的まともな説明欄だった年光と大和の二人は掛ける言葉が見付からなかった。
◆
とにもかくにもいつまでも立ち止まっている訳にはいかないので、
四人は共通の目的地である市街地を目指して進み始めた。
手斧を持った男・年光とリボルバー拳銃・コルト パイソンを構えた狼兵士・大和の二人が先頭を行き、
後ろからモシンナガンを持った狼少女・リフィアと日本刀を携えた老人・良勝が続く。
「ところで大崎さん、わし、足が結構キツいんじゃが」
「頑張って下さい」
「……」
いつからこの男はこんなに自分に対してスパルタになったのだろうと、
良勝は心の中で思っていた。
「でも……首と胸をボウガンの矢で貫かれて、よく生きていられたね」
「はい、こう見えても結構身体丈夫なんで」
「……丈夫とかそういう問題じゃない気がするんだけど」
後ろでは大和がリフィアの異常な生命力に驚いていた。
時刻は午後1時40分。
木漏れ日の差し込む山道を、殺し合いに抗う四人が進んで行く。
【一日目/日中/E-4東部・山道】
【大崎年光】
[状態]:疲労(中)
[装備]:手斧
[所持品]:基本支給品一式、九四式拳銃(2/6)、九四式拳銃の予備マガジン(6×6)、
織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分、食糧1/2消費) 、織田信治の首輪
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:山を迂回し市街地を目指す。
2:北原さん、山本さん、リフィアと行動を共にする。
3:襲い掛かってきた者はまず説得。駄目なら殺す。
[備考]
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。
【北原大和】
[状態]:疲労(中)、左肩に銃創(応急処置済)、返り血(中)、
[装備]:コルトパイソン(6/6)
[所持品]:基本支給品一式、357マグナム弾(47)、織田信治の水と食糧(水一本と食糧半分)
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。そのためにも仲間を集める。
1:山を迂回し市街地を目指す。
2:大崎さん、山本さん、リフィアと行動を共にする。
3:襲い掛かってきた者はまず説得し、無理なら戦闘もやむを得ない。
[備考]
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。
【山本良勝】
[状態]:全身に軽度の打撲、擦り傷、疲労(大)
[装備]:日本刀
[所持品]:基本支給品一式、双眼鏡、古びた金属バット
[思考・行動]
基本:殺し合いからの脱出。
1:北原さん、大崎さん、リフィアちゃんと行動を共にする。
2:仲間を集める。
3:首輪を外す方法を探す。
[備考]
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。
【藤堂リフィア】
[状態]:首、胸元に貫通創(命に別条無し)、返り血(大)、口元が血塗れ
[装備]:モシンナガンM1891(5/5)
[所持品]:基本支給品一式(食糧1/4消費)、7.62㎜×54R弾(50)、直刀、参加者詳細名簿、
クロスボウ(0/1)、ボウガンの矢(86)、四人分の水と食糧
[思考・行動]
基本:殺し合いはしない。 脱出方法を探る。
1:大崎さん、北原さん、山本さんと行動を共にする。
2:襲われたら戦う。
[備考]
※生命力が異常に高いです。頭部破壊、焼殺、首輪爆発以外で死ぬ事はまずありません。
但し一定以上のダメージが蓄積すると数十分~一時間ほど気絶します。
※参加者詳細名簿により、全参加者の容姿と名前をある程度把握しました。
最終更新:2009年11月21日 18:16