アットウィキロゴ

よく似た奴

 月下の森林の中、一人の少年がいた。
 彼は震えるわけでもなく、高揚としているわけでもなく、かと言って冷静でもなかった。
 心境は言わば微妙である。いつもと同じことなのだが少し違う。だから微妙である。
 なぜなら彼は前にも殺し合いを経験していた少年、天野雪輝なのだから。

 支給品にはボウガンとその予備矢、そして彼の所有日記、無差別日記だ。もちろん携帯電話である。
 武器もあるし情報量が多い未来日記もある。これでなんとか大丈夫だ、と考えるほど能天気ではない。
 彼はこの殺し合いでは全員が未来日記を所有していると考えていたからだ。
 その思考に至らせたのは参加者名簿である。
 そこには自分の知り合い、いや恋人である我妻由乃、そして他の未来日記所有者もいたからだ。
 雨流みねね、ジョン・バックス、火山高夫。三人のうち、二人はもう死んでいるはずだった。
 だが嘘をつくはずはない。ついても意味がないからだ。
 それでもおかしいはずだ。いくら時空王と言えども、一回死んだ人間は肉体しか元通りにならない。
 その矛盾が彼の微妙な心境になった原因である。
 ともかく元々の日記所有者は四人もいる。だから他にいてもおかしくないと考えたのだ。
 五十八人の日記所有者。こうも多いと注意散漫ではならない。
 もっともこの考えは間違っているし、雪輝もいずれそれに気付くことになる。
 きっかけは日記に書かれた予知だ。もっともこの予知能力、制限されているので大まかにしか書かれていないが。

 日記には男と会う、としか書かれていなかった。どんな格好かもどんな体格かも本来なら書かれているはずなのに。
 そして雪輝の目の前に男はいた。彼は思う。
(変人だ)
 袖が破れた道着、やけに長い鉢巻、上に逆立った髪型。どうみてもコスプレだ。
 体格は無駄によく筋肉もよく見える。相当に体を鍛えた者だとわかることができた。
 それ以上に雪輝が変人と思った原因は、
「貴様、強者か!」
 と指を指しながら言ってきたことである。
 こう言われたらどうも返しようがない。「はい、強者です」とはせいぜいこの場にいる由乃ぐらいだろう。
 もちろん、それは自分を守るためだ。彼女はこの場でも自分を優勝させようと多くの者を殺すに違いない。
 それに関して雪輝はどうとも思わなかった。かと言えば殺し合いに乗る気はない。まあ、しょうがないのかな、という感じだ。
 彼はこの場でも傍観者で居続ける。それが彼の処世術でもあったし基本思考でもあった。
 そして由乃が殺した中にこんな人間がいたことも思い出す。
 そう。12thだ。この場にはいないもの、よく似ている。この浮き具合が。
 内面もよく似ていることがわかるのは雪輝が彼に対話を持ちかけた時だ。

「つまり俺はわが師、アキオに近づくためにこの場、強者を求めているのだ」
「……なんか大変ですね」
「大変なんてものじゃない。己の限界に勝たねばならないのでな」
 相当に変な者だった。自分をヒーローと思っている12htならこっちは格ゲーのキャラが師匠である。
 どっこいどっこいだが、彼は未来日記を持っていなかった。それだけの違いだろう。
 だが今回はそれだけの違いが気になる。変人、こと駒田シゲオは未来日記自体知らなかったのだから。
 彼の支給品は武器になるスーパーボールである「超躍弾(スーパーボール)」と中身のある生クリーム絞り器だけだった。
 両方とも未来日記の「み」の字もない。知らないはずである。
 ということは時空王は単純に殺し合いをさせる気である。
 一体、なぜ、なんのために。
 そう彼は自問自答するが、すぐにそれはそうなのだから仕方がない、という結論に達した。
 問題解決は二の次である。まず第一は身の安全。
 そのために味方となってくれるであろう由乃を探すことに彼は決めたのである。

 シゲオは自分より強い者と戦いにいくらしい。よくわからないが無事を祈るしかないだろう。
 森の暗闇の途中、帰り際に彼は雪輝に話しかけた。
「なあ、一つ聞きたいんだが」
「なんですか?」
「アドルフ・ヒトラーって強いのか?」
「……わかりません」
 そう名簿にはあの有名、というか悪名高い独裁者、アドルフ・ヒトラーがいた。
 本物かどうかは知りもしない。一回、死んだ人間が生き返っているのだから可能性はゼロではないのだ。
「まあいい。いたとしたら奴に聞いてみるよ。強さのヒントくらいは知ってるかもしれん」
「知ってますかね」
「知ってるだろう。だってフランス革命の英雄だろ?」
「……」
 まったくもって違うがゲームの中で生きていた彼なのだから仕方ないのかもしれない。
 まあ知っていてもおそらく同姓同名の人物だろう。アキオは暗闇の中、消えていった。

【一日目/深夜・晴れ/森林(東部)】

【天野雪輝@未来日記】
【状態】健康
【装備】ボウガン@現実
【道具】無差別日記のレプリカ@未来日記 ボウガンの矢(10/10)@現実 通常支給品
【思考】基本:身を守る。
    1:由乃と会いたい。
※駒田シゲオと情報交換をしました。

【駒田シゲオ@エアマスター】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】超躍弾(スーパーボール)×5@めだかボックス 生クリーム絞り器(中身有)@WORKING!! 通常支給品
【思考】基本:強い者と戦いアキオに近づく。
    1:ヒトラーから強さのヒントを聞きたい。
※天野雪輝と情報交換をしました。

【ボウガン@現実】
くわしくはクロスボウ。音が出ない狩りとかに使うアレ。
矢じりとかに毒とかを仕掛けられる分は拳銃より強い。威力は負ける。

【ボウガンの矢@現実】
ボウガンの矢。十本入り。容器付きだが結構重い。三本だと折れない。

【無差別日記のレプリカ@未来日記】
自分を中心とした周囲の未来を無差別に予知する能力を持つ。
かなりの情報量を持つがバランス調節のため大雑把に予知が書かれている。

【超躍弾(スーパーボール)@めだかボックス】
武器になるよう改造が施されたスーパーボール。1個あたり定価120万円。五つあるので600万。ブルジョアすぎ。

【生クリーム絞り器(中身有)@WORKING!!】
生クリームをニューって出す容器。店長が大体食べてる。

夜の街 時系列順 [[]]
暗闇 天野雪輝 [[]]
暗闇 駒田シゲオ [[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年12月26日 18:26
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。