図書館にて

美しい死に方。それを俺は求めている。しかしそんな方法は中々見つからない。
外傷を残さず、痛みがなく、一瞬のうちに死ぬ。それが自分の求める死に方。
首吊り自殺はどうか。首に傷が残るし、苦しむ。ダメだ。
練炭を使うのはどうか。痛みはない、しかし、一瞬で死ねない。ダメだ。
睡眠薬を使うのはどうか。下手をすれば生き残り中毒になりかねない。ダメだ。
投身自殺はどうか。外傷が残るし、下手をすれば生き残る。ダメだ。
他にも述べるとキリがない、十回は自殺しようとしたが、どれも美しくないと思いやめた。
やはり心破裂を起こして死ぬのがもっとも美しいと思っている。
つまり俺を殺すのであればデスノートでも持ってこい。それが条件だ。
できれば早く殺してほしい。老人まで生きたくない。早めに殺してくれ。

「全く…バトルロワイアルか…」

そう言う宇骨は静かにイスに座り本を読んでいた。
ここはC-6、D-6に位置する図書館。色々な本が存在する。
彼は紅茶を飲みながら本を読んでいた。
なぜ、紅茶があるのか、宇骨はデイバッグを開くとそこにはティーセットとロングボウと矢が入っていた。
早速紅茶を作り、飲みながら本を読んでいる。これが今の状態だった。
これを読み終わったら行動を開始する。宇骨はそう思っていた。しかし

「う、動くなよ!動いたら撃つからな!」

その男が現れるまでは。
宇骨はゆっくりと後ろを向く。それくらいはしても撃たれないと踏んだからだ。
見ると汗ばんだスーツ姿のおっさんがいた。
足は短足、ブタみたいな足。腹回りは非常に分厚そうな脂肪に覆われている。まさにブタ。顔はむくんでいて鼻が大きく、メガネをかけている。やはりブタだ。
総合的に見てブタとしかいえない外見のおっさんが銃を構えている。

「お、お前!殺し合いに乗っているのか?」
「乗っていません。そちらも乗ってませんよね?」
「も、もちろんだ!乗るわけないだろう!」

おっさんは上擦った声で問い、乗っていなかったと分かった瞬間、安堵の表情を見せた。
それと同時に持っていた銃をおろし、その場に座り込んだ。

「ふ~最初に会ったのが君でよかったよ。私の名前は十村鈍吉だ。」
「初めて会った人を信用していいんですか?」

現にそれで死んだ人がいることを宇骨は知らない。念のため聞いているのだ。
おっさんは二コリと笑うと

「君から殺気は感じない。だから大丈夫だ!」
「はぁ…宇骨計です。それにしても・・・いや、なんでもないです。」

失礼極まりないことを平気で言おうとしてしまった…
しかしおっさんをそれに気づいたのか、優しい笑顔で

「この体のことかい?ブタに見えるだろう?笑えるよな!ハッハッハッ!」
「はぁ…」

と笑い飛ばしてくれた。どうやら体型は気にしてないらしい。
どうやらこのおっさんはどこかの会社に勤めるサラリーマンらしい。
非常に仕事ができると自慢げに話してくれた。半分聞いてないが…
部下にも慕われているとも話す。こっちは何とか全部聞けた…

「それでこの後どうするんですか?十村さん。」
「もちろんこの殺し合いにはのらなっ”……

その瞬間十村は正面に倒れた。
その後ろには片手にハンマーを持った女が一人いた。なぜ気づかなかったのか…
急すぎた展開に動くことができない。
その女はまたハンマーを十村の頭に振り下ろす。何度も、何度も。
しだいに十村の頭が潰れていく。そのさまを見て宇骨は

綺麗だ…




――――――

その女には彼女がいた。優しかったし、彼女に尽くしてくれた。
彼女の名前は、藁畝薊。
大工の娘である。
もちろん彼女も大工として生きるつもりである。彼とともに…
しかしそれは叶わぬ夢とかした。
このバトルロワイアルで彼は死んだ。目の前で爆破されて。
彼女の目に映るのは首から上がない彼の死体。
彼女を壊すにはそれで充分だった。
D-5に位置する森に転送された彼女は迷わず図書館に入った。
片手にハンマー、そして座り込んだ男を見かけるとそこに近づきハンマーを振り下ろす……




――――――

もちろん美しくない。しかし、それは死に方だ。殺し方としては綺麗だ。
おっさんには申し訳ないが殺し方は綺麗だ。文句の言いようがない。
まだ女はおっさんの死体にハンマーを振り下ろしている。そろそろおっさんの全身の骨は粉々なのではないだろうか。
宇骨はイスに座り込む。そして冷めた紅茶を飲む。
女のやっていることが終わるまで待とうかと考えている。
彼女の最後を見届けたくなったからかな。さて

「それまで本を読もうかな。」

そう宇骨は呟くと読みかけの本を手に取りまた読み始めた。
ちなみに紅茶はおいしかった。

【十村鈍吉 死亡】

【D-6/図書館/一日目・日中】

【宇骨 計】
[状態]健康、強い自殺願望
[装備]ロングボウ、矢×15
[道具]支給品一式、ティーセット
[思考・行動]
基本:生き残る。まずは…
1:ゆっくりと本を読む。

【藁畝 薊】
[状態]精神崩壊
[装備]ハンマー
[道具]支給品一式、ランダム支給品×1
[思考・基本]
基本:???
1:この男を粉々にする。

【参加者特徴】

宇骨計
高校1年生。学校には来るが屋上に行き本を読むだけに学校に来ている。
自殺を図ろうとしたことがあり10回もあるとか。
自殺願望があり、美しく死にたいと思っている。

十村鈍吉
ブタのような外見をした男性。しかし体型は気にしていない。
職業はサラリーマン。独身。仕事はデキる。
見た目に反し運動ができるとか(本人談

藁畝薊
高校1年生。大工の娘。卒業したら跡を継ぐと決めている。
彼氏がいる。彼氏との関係は良好。
積極的に人と関わる明るい性格だったが…

Back:001とある男の失敗 投下順で読む 口は災いのもと
GAME START 宇骨計 そして図書館には誰もいなくなる
GAME START 十村鈍吉 GAME OVER
GAME START 藁畝薊 そして図書館には誰もいなくなる

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年03月12日 19:45
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。