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愉笑虐猫

18話:愉笑虐猫

森の中の今は使われていない孤児院。
かつては子供達の声が響いていたであろう大広間で、
青い猫獣人の少女井本萌実は支給品である旧式自動拳銃、アストラM902を眺めていた。
予備の弾倉もセットで支給されておりしばらくは武装の面においては心配は無さそうだ、
と、萌実は思う。

「どうしようかなぁ、んふっ、どうしよっかなぁ」

楽しそうな様子、その顔からは恐怖や困惑と言ったものは感じられない。
心の底からこの催しを愉しんでいる――そういった感じである。

「誰か、来ないかなっ。来たらこれで頭ぱーんってしてあげるのにー」

無邪気な口調とは裏腹に発言の内容は物騒極まり無い。
誰が聞いてもそう思うであろう。
彼女は実際に思想がかなり危険な部類に入る。
もっともそれは彼女自身だけの原因では無いのだが。




(やっと建物見付けて休もうかなと思ったのに、危なそうな女の子がいるぅぅ、最悪だわ……)

青白毛皮の雌人狼、アドレイドは扉の隙間から奥に居る猫少女の様子を伺い落胆していた。
軍事施設跡にて殺し合いをやる気になっている参加者をやり過ごし、
森の中を歩き回って疲弊した末ようやく休めそうな建物を見付け中に侵入したのは良いが、
建物の中にも、「やる気」になっている参加者がいたのだから無理も無い。
いい加減に休みたいと思っていたがとても無理そうだ。

(あれは…「井本萌実」って子かな? ここはやっぱりやり過ごすのが良いわね、銃持ってるっぽいし、逃げよう……)

こちらの武装は木製のバット。
身のこなしには自信はあったが流石に銃相手に大立ち回りを演じられる気はしない。
余程腕の立つ者なら銃相手でも剣や槍で突っ込み勝利出来るとは聞くが、
アドレイドはそこまで自信過剰にはなれなかった。
足音を立てないようにそっと扉から離れようとした。

バキッ

「!!」

しかし足元に落ちていたプラスチック製のトレイか何かをうっかり踏み付け派手に音を鳴らしてしまう。
肝が一気に冷却されていくのをアドレイドは感じた。

「……誰かいるの?」

扉の向こうから少女の声と近付いてくる足音が聞こえ、アドレイドの脈拍数が跳ね上がる。

(やばい! やばい! 早く逃げないと!!)

気付かれたのならもはや忍び足の必要は全く無い。
アドレイドは侵入してきた裏口、では無く表玄関の方に向け駆け出した。
間も無く背後で扉が開く音が聞こえた。

「いーたー待ってよー」

ダァン! ダァン!

「うわぁあ!」

楽しそうな声を発しながら銃を発砲してくる少女に恐怖を覚えながら、
アドレイドは必死に玄関口を目指す。
そしてようやく辿り着いた、が、そこに待っていたのは残酷過ぎる現実。
玄関口は表から板で打ち付けられてしまっていた。

「嘘ぉおおおお!!」

そう言えば入ってきた裏口も表から板で打ち付けられていた形跡があった。
誰かが無理矢理剥がしたのだろうが表玄関にその行為は適用しなかったのか。
これなら裏口に向かっておけば良かったとアドレイドは後悔したが最早後の祭り。

「畜生、こうなったら」

ならば自分がその行為を適用してやろう、と、アドレイドが思ったのかどうかは不明だが。

「らあぁああああぁああ!」

少し距離を付け、封鎖された木製の玄関扉に向かってアドレイドは突撃していった。

ガシャアアァアアン!!!

派手な音と共に打ち付けていた板ともども玄関扉は、
アドレイドの体当たりにより吹き飛んだ。

「ぐうぅ!!」

扉やガラス片と共に強か地面に身体を打ち付け、身体中が痛む。
しかしそれに構わず、アドレイドは森の方向に向け再び走り出した。

ダァン! ダァン! ダァン!!

三発の銃声がアドレイドの背後より響く。

「ぐっ…?」

背中から腹部にかけ何かが貫くのをアドレイドは感じた。
弾が当たったのかもしれないが、今はそれを確認するような余裕は無かった。
走る事は出来る。走れる限りあの少女からは逃げなければならない。

「ああぁあああぁあああ!!!」

傷の痛みと恐怖を紛らわすためか、アドレイドはあらん限りの大きな絶叫を発しながら、
雑草に埋もれつつある森の中の道を走って行った。

「……逃がしちゃったかぁ、流石に人狼だね、一発当たっても効かないかぁ」

玄関付近で逃げていく人狼の背中を見詰める猫獣人の少女、井本萌実。

「まあ良いかぁ……まだ他にも沢山いるだろうしね。私も移動しよっかなー」

尚も楽しそうな様子で、萌実は孤児院の中へと戻って行った。


【早朝/D-3孤児院】

【井本萌実】
[状態]健康
[装備]アストラM902(15/20)
[持物]基本支給品一式、アストラM902の弾倉(5)
[思考・行動]
0:殺し合いを楽しむ。
[備考]
※特に無し。


【早朝/D-3孤児院周辺の森】

【アドレイド】
[状態]背中から腹にかけて貫通銃創
[装備]木製バット
[持物]基本支給品一式、カップラーメン詰め合わせ(カップラーメン×8)
[思考・行動]
0:自分優先。生き残る。
1:井沢るな、井本萌実を警戒。
[備考]
※特に無し。



≪キャラ紹介≫
【井本萌実】 いもと・もえみ
青い猫獣人の少女。バストが大きく幼い顔付きの美少女。
身体能力、生命力、戦闘能力どれを取っても常人離れしている。
軍の兵器開発部による「死体より兵士を生み出す計画」によって生まれた生体兵器の一人で、
小神さくらの後発兵器に当たる。さくらに比べ感情の発露や意志疎通のレベルが高まっているが、性格的に難がある。

≪支給品紹介≫
【アストラM902】
井本萌実に支給。予備弾倉5個とセット。
ドイツのマウザーC96をスペインのアストラ社がコピーした自動拳銃。
M902は弾倉を延長し、セミ/フルオート切り替え機能を付けた改良型。



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最終更新:2012年04月29日 00:12
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