目を覚ますとシュールな光景が広がっていた。
テーブルが真ん中に置いてあり、それを囲むように女性二人がイスに縛られており、その後ろには男性が立っていた。
自分も縛られているので、恐らくあの男性に捕まったのだろう。
しばらくすると、他の二人も起きた。
「……!」
「えっ! なにコレ! どうなってんの!」
二人が起きたことを確認すると、ゆっくりとした足取りで、後ろにいた男性がことらへ歩き出した。
「起きたかな。さて、卿らには私の興に付き合ってもらう」
唐突すぎる宣告、しかし、バトルロワイアルというものも唐突な宣告だってので、納得できた。
うん、こんなこともあるのだろう。世の中理不尽ばっかだもんな。
そちらの女性も納得したらしい。
もう一人女性のほうはそうはいかなかったらしい……
「イヤ! さっさとこれを外してよ!」
「ふむ、納得してくれないか……大丈夫だ。単なる賭けだよ。ただし……」
その男性は短機関銃を取り出すと、その女性の足元を撃つ。
ぱぁん、と乾いた音が響く。
男性の言いたいことは大体分かった。
「この賭けに負けたら問答無用で殺すから覚悟したまえ」
女性は状況がやっと分かったのか、黙り込む。
男性はニッコリ笑みを浮かべ、銃を下ろし、代わりにトランプを出した。
その男性の笑みは人とは思えないほど歪みきっており、不気味だった。
□□□
「さて、まずは自己紹介だ。私の名前は普蒲六景という。見てのとおり、人に勝負を申し込み、負けたら殺している。卿らの名前を聞こう」
人に賭けを申し込み、負けたら殺すって、さらりととんでもないことを言い放ちやがった。
見てのとおりと言うが、どこをどう見たらそう見えるんだよ。
と、心の中で突っ込み、男性に言われたとおり名乗る。
「日形絶斗だ。ただの高校1年生だよ」
「……世迷桜……以上」
「歩騙紗綾。いたいけな女子高校生よ」
静かに六景という男性は聞いているのかと思ったら、別の方向を向いて、トランプから4枚のカードを取り出していた。
ふと、六景という男性は何かを思い出したかのようにコチラを向く。
「いや、ご丁寧にどうも。それでは賭けの説明でもするかな」
お前が名乗れって言ったんだろうが、と、また心の中で突っ込む。
ルールをまとめる
■十回勝負。一番ポイントが低いやつが殺される。
■シャッフルをするのは六景。
■四枚あるカードのうち一枚を選ぶ。それぞれジャック、クイーン、キング、ジョーカーが入っている。
■もし、選んだカードが被った場合、ジャンケン。
■カードの配点はジャックが1、クイーンが2、キングが3、ジョーカーが0.
■もちろんこの勝負には六景も加わる。
■また、相手が引いたカードを当てれば+5ポイント、外した場合は-5ポイント。
とまあ、こんな具合だった。
「まて、省かれた気がするのだが気のせいか?」
「気のせいだ。それよりも早く始めろ」
「……少々、腑に落ちないが、いいだろう。始めるとするか。好きなものを選びたまえ」
1戦目、誰も同じのを選ぶことなく、一斉にカードを表に反した。
結果は六景→キング 日形→クイーン 世迷→ジャック 歩騙→ジョーカー、となった。
2戦目、これも誰も被ることがなく、一斉にカードを表に反す。
結果は六景→キング 世迷→クイーン 日形→ジャック 歩騙→ジョーカー、となった。
3戦目、六景が取ろうとしたカードが歩騙と被る。ジャンケンで歩騙の勝利。
結果は六景→キング 世迷→クイーン 日形→ジャック 歩騙→ジョーカー、となり、2戦目と同じ結果。
4戦目、俺が取ろうとしたカードが六景と被る。ジャンケンで六景が勝利。
また、世迷と歩騙も被ったらしいが、結果は世迷の勝利。
結果は日形→キング 世迷→クイーン 六景→ジャック 歩騙→ジョーカー、となった。
5戦目、歩騙が選んだカードが六景と被る。ジャンケンで歩騙の勝利。
結果は世迷→キング 日形→クイーン 六景→ジャック 歩騙→ジョーカー、となった。
ここまで得点を集計すると、六景と世迷が10点、俺こと日形が9点、歩騙が0点となった。
□□□
「おかしい! どうなってるのコレ!」
そうわめき散らすのは、5連続でジョーカーを引いた歩騙紗綾だった。
どうやら、この結果が不満らしい。
当然、その怒りの矛先は、シャッフルをしていた六景に向いた。
「5連続ジョーカーはおかしい! 絶対何かしてるでしょ!」
「失礼な。私はイカサマなどはしないぞ。単に卿の運が悪いのだろう」
「運が悪いにもほどがあるでしょ! あなたが何かしてるのは分かるのよ!」
「何度も言うように私はイカサマなどはしない。私は真剣勝負を好む。イカサマという無粋な行為はしない」
「フン! 嘘に決まってるわよ! さあ、早く認めなさい!」
「卿はしつこいな。してないと言っている」
「ぜっっっったいなにかしてるわよ! 早く白状しなさい!」
完全なる言いがかり、八つ当たり、クレームだった。
確かに俺もあそこまで運が悪かったら、少し疑うが、さすがに声にしたりはしない。
「さあ、早くこれを解いて! イカサマしたんだから、さっさとしちょうだい!」
次の瞬間、六景が立ち上がり、銃口を歩騙に向けた。
次に銃声が二発。
銃弾はどこに当たったかというと、歩騙の右足に一発、左足に一発。
「うぎぃぃぃぃぃ!!」
「口を慎め。卿は私を怒らせた。私は真剣に勝負をしたかったのにこのようなことになるとは残念だよ」
「ふざけないで……何が真剣によ……イカサマをしたクセに……うぁあ!」
さらに銃弾が歩騙の右腕の肉を抉り、貫く。
「さて、卿が主張を変えるのであれば、私は何もしない。どうする?」
「ふざけないで……イカサマをしたくせに……」
「そうか。ならいい」
何の前触れもなく、六景が手を叩いた。
次の瞬間、歩騙という女性が縛られていたイスを残してそこから消えた。
それは六景が突然手を叩いたように、突然、何の前触れもなく、そこから跡形もなく消えた。
「さて、続きをするか」
「おい、待て……アイツはどこに行った……?」
「ん?彼女なら捨ててきた。さて次のゲームだ」
「どこにだよ……? どうやって捨てた……?」
「どうでもいいだろう。卿は他人をそんなに気にかけるのか? 卿はお人よしか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「それに方法などどうだっていいだろう。卿には関係ない」
「…………」
「彼女のことは忘れたまえ」
「…………」
どうにも釈然としなかったが、次のゲームが始まるのでそれに集中することにした。
【???/???/一日目・夜】
【普蒲 六景】
[状態]健康
[装備]
[道具]支給品一式
[思考・行動]
基本:ゲームを楽しむ
1:今を楽しむ
【日形 絶斗】
[状態]健康、縛られている
[装備]なし
[道具]なし
[思考・行動]
基本:生き残る
1:この勝負に勝利する
【世迷 桜】
[状態]健康、縛られている
[装備]なし
[道具]なし
[思考・行動]
基本:???
1:……勝利
【???/???/一日目・夜】
【歩騙 紗綾】
[状態]???
[装備]なし
[道具]なし
[思考・行動]
基本:???
1:???
【参加者特徴】
普蒲六景
ギャンブラー。人を見つけて勝負をし、相手が負けたら殺す。
しかし、殺し方は一切不明。捕まったことはなし。
その笑みは人とは思えないほど歪んでいる。
日形絶斗
真面目な不良。高校1年生。
なんでも高校デビューに失敗した結果、こうなった。
根は真面目なので、成績は優秀であり、冷静である。
世迷桜
無口で無表情。高校1年生。
本をいつも読んでおり、休みの日はいつも図書館にいる。
部活には入ってはいない。運動はできるほう。
歩騙紗綾
高校3年生。クレーマー。
無理やり言いがかりをつけて、謝罪を要求させる。
そのため、学校内ではいつも一人。全然いたいけな女子高校生ではない。
最終更新:2012年06月04日 22:30