44話:発露
「……?」
市街地を歩いていた藤森真海は、塀に寄り掛かり苦しそうにするリカオン獣人の少年を発見する。
「……」
放っておく事も出来ず、真海はその少年に近付く。
少年は息が荒く、目は虚ろで、ほとんど意識が無いように見えた。
「ねぇ、大丈夫?」
「う……あ……腹が、痛い……」
「お腹が……? ! やだ、凄い熱……!」
少年の額に手を当てると尋常では無い熱が真海の手の平から伝わった。
この少年が何か危険な状態にある事は間違い無かった。
「と、取り敢えずその辺の家に……」
何か手当てした方が良いと、真海が少年を適当な民家に連れ込もうとした。
「ぐ、あ……ああぐぅうう」
「!?」
しかし、リカオン少年が突然、右手を左手で掴み苦しみ出す。
「あ、ア、があぁあ、ア!」
「えっ――――!?」
ズルッ、と言う嫌な音と共に、少年の右手の平から、血塗れの触手が飛び出した。
その触手は切断した蜥蜴の尻尾のようにうねうねと蠢いている。
信じられない、と言った表情で、真海は少年の手から生えた触手を眺めていた。
そして次の瞬間、触手は真海の左目から入り、脳髄を刺し貫いていた。
「…………ッ」
真海は何が起きたのか分からなかった。
ただ、意識が消える直前、左目の視界が消えて妙な事になってる、と言う事だけは理解した。
少年――――小崎史哉が触手を引き抜くと、糸の切れた操り人形のように真海は崩れ落ちた。
「あ、ア……アアァアアア……」
少女を殺害した事を理解しているのかしていないのか。
唸り声とも呻き声とも取れない声を発しながら、史哉はその場から歩き去った。
【藤森真海 死亡】
【残り 8人】
【昼/D-5市街地】
【小崎史哉 生存確認】
最終更新:2012年05月28日 18:08