46話:DIABOLOS
放送が終わりまた静まり返った市街地を、異様な影が徘徊していた。
全身から触手が飛び出し蠢いているリカオン獣人の少年。
目にはほとんど生気が無く、足取りも覚束ない。
「……ああ……ア……」
リカオン獣人の少年、小崎史哉はすっかり変貌してしまっていた。
彼の体内に巣食っていたのは、彼自身は知る由も無いが、軍の関連研究機関で開発された危険な寄生虫。
触手は寄生虫が肥大化した物だった。
思考は寄生虫に支配され、史哉本人の理性はほとんど無いと言って良いだろう。
「……」
そんな彼の目に止まった物、それは島役場への道を示す看板だった。
◆
レスター・コリンソンは島役場二階の一室で溜息をついていた。
この
殺し合いに呼ばれた仲間二人、どちらも再会する事無く死んでしまった。
そんなに悲しい訳では無いが今まで何度か共に冒険した仲なので思う所はあった。
同行者である優衣は首輪の解析に余念が無い。
それをレスターは傍で見守る。邪魔はしないように。
「一階に行ってくるよ」
「うん」
一階の様子を見に行こうと、レスターが部屋を出る。
レスターは階段を下りて一階へ下りた。
ガシャアアァアン!!!
「!!?」
突然正面玄関のガラス戸が枠ごと吹き飛ばされ、ガラス片が派手に飛び散った。
「何だ!?」
「な、何……あれ?」
駆け付けた唐橋圭輔と深谷春那、バイロン、レスターは入口に現れた「それ」の異様な風貌に息を呑む。
全身から触手が生えたリカオンの少年。
「ガアァアアアァアアアアアアアア!!!!」
少年とは思えない咆哮をあげる。
どう考えても友好的では無い。
四人は一斉に攻撃態勢を取る。
圭輔と春那、バイロンは持っていた銃を少年に向けて乱射した。
無数の銃弾が少年の身体を引き裂くが、倒れる様子は無い。
突然リカオン少年が触手を一本伸ばす。
「がっ」
触手はレスターの心臓を刺し貫いた。
「ま、マジか……よ」
触手が引き抜かれると、レスターは崩れ落ち、血溜まりを作り絶命した。
間髪入れず、少年は銃撃を続けていた三人に向け触手の束による薙ぎ払いを掛けた。
派手な音を立て、圭輔と春那は壁に叩き付けられた。
「がはっ……あ……は、春、那」
吐血し身体中に痛みを感じながら、圭輔は春那の方を見る。
だが、直後に絶望した。
春那の首があらぬ方向に曲がっていたからだ。
「……勝手に……死ぬなよ……まあ、俺もすぐ、そっちに――――」
圭輔が言い終わらない内に、触手が彼の身体を貫いた。
「……何なんだ……こいつ……は」
最後に生き残っていたバイロンも、同じ末路を辿った。
「……っ」
音を聞き付け二階から下りてきた、久木山父子と優衣が惨状に絶句する。
「……!!」
リカオン少年の顔が三人の方へ向けられる。
次の瞬間、父子の身体を触手が貫いていた。
忠則は心臓、凌河は脳髄、どちらも致命傷だった。
「あっ……あ」
「おとう、さ……」
「ひっ、い、ああぁあ、あああぁああ!?」
行動を共にしていた者達が一瞬で皆殺しにされた。
優衣は悲鳴を上げ急いで逃げようとする。
だが、階段を上り切った所で触手に捕えられた。
「! ああ、嫌、嫌だ……死にたくない……あああぁあ」
ズルズルと階段を引き摺られ身体の至る所を打ち付けるのにも構わず、優衣は必死に触手から逃れようとした。
だがそれらも全て徒労に終わる。
間も無く優衣は身体を腰から引き千切られ、血と内臓を撒き散らし苦痛の中で死んだ。
「……ウウ……アア……」
後に残ったのは、自分を失った哀れな少年のみとなった。
【レスター・コリンソン 死亡】
【深谷春那 死亡】
【唐橋圭輔 死亡】
【バイロン 死亡】
【久木山忠則 死亡】
【久木山凌河 死亡】
【鈴木優衣 死亡】
【小崎史哉 優勝】
【ゲーム終了】
最終更新:2012年05月28日 19:25