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業を生み出しモノ

15 業を生み出しモノ


宇田川龍磨の人生は最悪だった。
幼少のころから父親から虐待を受けて育ってきた。
学校では普通に、ただ普通に装う。
誰にも知られてはいけないのだ。
自分が苦しんでいる事は。
その理由は単純すぎて逆に分からないようなものだ。
それでも、確かに俺はその理由を持って戦い続けてきた。
ただし、その戦いもすぐに終わりを告げた。
いや、形を変えていったと言うべきだろうか。

(なんで、言ってくれないんだよ!)

俺のライバルにして実の兄――――浅倉翔、兄上が俺の苦しみにすぐに気付いた。
一緒に戦って行こうと、誓ってくれた。
その日から、いや――――もっと前からだが、僕は兄に強く尊敬を抱くようになった。
そしてつい先日……と言うよりはつい先ほどの出来事だ。

「さようなら、兄上」

俺は、兄上に殺された。
正確に言えば殺されたのではなく、殺されに行ったのだ。
如何にして兄上が俺を殺すか。
それをすべて計算して、自分の生涯に幕を閉じた。


――――――――はずであった。


俺が今立っているのは、それとはまた別の殺し合いだ。
だが違うのは、一回目の殺し合いより軽く始まり、重いなぞを残した事だ。
教師が死んだと言う事はなく、ただのあいさつのみ。
だがしかし、それでも何かがおかしかったのだ。
威圧感、とでも言うのだろうか。
あの声の主はそれが違った。
常任離れした、殺気とは違う不気味な感じ。
それに対して俺は少なからず恐怖を抱いていた。

「――――何故、こうなった」

わからない、確かに自分は死んだはずだ。
あの感触を今でも思い出す事が出来る。
あの出来事はすべて俺の錯覚だったのか。
いや、そんな事はあり得るはずがない。

「考えてても始まらないな、まずは名簿とやらを見なければ……」

最悪の場合、兄もここにいる事になる。
だが、その心配はなかった。
浅倉翔はこの場に呼ばれてはいない。
しかしながら、同時に違和感を感じる。
津村匠、須藤凛と一緒にいるアイツだ。
あいつはあの時、死んだはずだ。
だが、名簿には名前がある。
同姓同名の可能性もあるが、今のところそこは保留しよう。
そして今一番考えなくてはいけない事がある。

この殺し合いに対する、行動だ。

あの時は兄がいてとっさに行動を取った。
だが今は、兄がいない。
殺し合いに乗ってもいい、主催に対抗しようと動いてもいい。

「――――それもやはり、後に考えよう」

そのうち、何か転機があるだろう。
その時に決定することにしよう。
次に支給されたらしき物品を見る。
出てきたのもは、綺麗な刀だった。
見る物すべてを取りこんでしまうような、そんな刀だった。
俺の心も、徐々に引かれていった。

どくん

何かがおかしい、目が離せない。
手を放そうにも、放せない。
刀の柄を強く握りしめる。

どくん、どくん

心臓が高鳴る。
この気持ちと言うか、感触は何なのだろうか。
少しづつ刀身が現れる。

どくん、どくん、どくん、どくん

いつの間にか現れる刀身を見て体を動かそうとした。
だが、体が動かない。
いや……動かないのではない。
誰かに動かされている。
俺を操っているかのようだ。
操り人形、その子単語がお似合いなのだろうか。

どくん、どくん、どくん、どくん、どくん、どくん、どくん、どくん

刀身が半分現れた。
そのころには俺はおかしくなっていた。
紅く染めたい、この美しい刀身を。
人の血で、紅く紅く紅く紅く染めたい。








どくん









俺は、殺人鬼へと成り果てた。



◆            ◆



「あぁ、ねみぃ」

俺は重い体を起こした。
別に前日何をやっていたわけでもない。
珍しく休養日でゲームでもやっていた気がする。
少しづつ記憶がよみがえってくる。

視界が遮られたあの時、
安心院とかいう変な女の声、
そして「殺し合い」とかいう単語、

ああ、全部思い出した。
俺はその殺し合いとやらに呼ばれたんだった。
どうしてこんなただの被検体を連れてくるのかが分からない。
特に俺みたいなやつだ、他にもっとふさわしい奴がいるだろう。

「ふゎあああ……やっぱねみぃな」

もう一度草むらの上で寝転ぶ。
こうして外の空気に触れるのは久方ぶりなのだ。
こうやって落ち着いて眠っていたって罰は当たらないさ。
風が心地よく空から降り注ぐ日差しが心地いい。
こういうのを俗に言う春日和と言うのだろう。
今が春かどうかなんてわからないけどな。

「――――もう寝ちまおうかな……」

少しづつ夢の世界へと意識が自動で移っていく。
視界が徐々にブレてくる。
そしてそのまま夢の世界へ――――。
と、まではならなかった。
草を踏む音、それが若干遠くからだが聞こえてくる。
俺はその方向へと視界を傾ける。
少年――――?が刀を持って、徐々にこっちに近づいてきている。
最初から刀身を抜いている時点で良い予感はしなかった。
だが、その予想は的中してしまった。

「――――ッ!」

少年が急に走りだし俺へと向かってくる。
俺は急いで眠っていた体を起こし迎撃態勢を取る。
彼は異常なほどのスピードでこちらに来る。
俺は自分自身の筋肉を硬化させた。
そしてそれを力任せに――――振りぬく!

「――――――――!」

少年はバク宙をしてそれを避けた。
いや、そんな軽やかにやれるのか。
こいつはあれか、雑技団にでも入っているのか。
だが今は驚いている場合ではない。

「まっ……さっさとやってしまいましょうか、ねぇ!」

両腕を硬化させて無理やりに戦い続ける。
ゴリ押し戦法と言ってしまえばそうだが、相手も攻撃できないようである。
このままどうにかして攻撃してとどめを刺そうかと考える。
だが、相手は一切隙を見せない。

「隙がないが、俺には関係ねぇ!!」

俺に戦法と言うものは関係ない。
ただ力で押してどうにかする、それがこの場で一番良い策のはずだ。
――――多分な。

「ドラァ!ダラァ!うおりゃああああああああああああああ!!」

意味不明な掛け声とともに攻撃が繰り出される。
ラッシュ、と言えば聞こえはいい。
だが実際はただ空ぶっているだけである。
一発も攻撃が当たっていないのだ、恥ずかしいにもほどがある。
アクロバティックな回避をしている彼は疲れを一切見せない。

「――――まったく、何が何だかわけわかめってこういうこと言うんだよねぇ……」

どうしようかと今頃作戦を立てる。
このまま行くと自分は体力切れになる。
常人よりスタミナがあると言っても、目の前にいる彼とは比べ物になりそうにない。
どういう身体構造をしているか分からないが、俺が疲れ切ったころに殺す戦法だろう。
それが分からないほど、俺も馬鹿ではない。
打破策もなさそうで、もう面倒だしさっきと同じでいいんじゃね?、そう思い始めてきた頃だ。


左横から何かが飛んできた。


その尖った何かは確実に俺を襲っていた。
あの少年が仕掛けてきたのかと思ったが、彼の方にも飛んできている。
向こうはそのナイフに気付いていないようである。
俺を凝視していて視界が狭まっているのかもしれない。
――――まぁ、誰がやったのかは知らないが、このまま何もしなければこめかみに刺さってお陀仏だ。

「ッ――――痛ぇえ!」

左腕でそれを防ぐ。
尖ったもの、調理ナイフは俺に刺さった数秒後消え去った。
だが、傷だけは残っていた。
ふと気付くと、少年はこめかみにナイフが刺さっていて倒れていた。

「――――これは、逃げるべきかぁ?」

もし彼に近づいて
襲われたら今度こそ一貫の終わりだ。
ここで死んでやるほど、俺もつまらない奴ではない。
仕方ないが、戦略的撤退と行こう。
俺は文字通り、尻尾を巻いて逃げだした。
別に尻尾は無いけどな。

【朝/A-8】
【被検体01号@他の方のオリキャラ】
[状態]左腕に刺傷(未処置)
[所持品]基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・状況]
基本:殺しあう気なんてねえ
1:今のところは逃げる
[備考]
※新需要ロワ参加前からの参戦です


◆        ◆


「逃してしまったな……まぁいい、一人は殺した」

僕――――福沢正也は木陰で落ち着いていた。
先ほど二人の人間を見つけ、両方に対し攻撃を仕掛けた。
片方はこめかみに当たり死亡。
もう片方は気づかれて逃がしてしまった。

「――――――――霊歌」

自殺志願者の彼が最後に出来た希望――――柄部霊歌、
彼が守ろうと誓った女性である。

「待っていてくれ、僕が必ず……生き残らせてあげるよ」

壊れているなんて言うのは知っている。
狂っているのは、百も承知だ。
でも、それがどうしたのだ。
僕は狂っているのだ。
だからどう出ようが、僕の勝手だ。
常識に囚われない様にしてやろうじゃないか。

「――――さぁ、始めようか」



狂ったこの物語を



【朝/A-8】
【福沢正也@他の方のオリキャラ】
[状態]能力使用による疲労(極小)
[所持品]基本支給品、不明支給品(1~3)
[思考・状況]
基本:全ては霊歌の為に。
1:柄部霊歌が生還でき次第自害する
2:もしも霊歌が殺されたら皆殺しにする
[備考]
※サイキッカーロワ「Brother×Sister」終了後からの参戦です



◆    ◆



「――――」

一人の少年が目を覚ました。
こめかみから血を流しながら周りを見渡す。
先ほどまでいた男が消えている。
いつの間にか気絶していたのだと自分の状況を知った。

「――――――――」

妖刀村正、かつて幾人の血を吸った凶器の刀である。
その刀に彼は支配されている。
悲劇は再び、繰り返される。

【朝/A-8】
【宇田川龍磨@変哲オリ】
[状態]右のこめかみから出血
[所持品]基本支給品、妖刀村正@重要無し1st
[思考・状況]
基本:獲物を探し、斬る
1:(――――あいつらは?)
[備考]
※変哲オリ死亡後からの参戦です


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最終更新:2012年05月29日 21:09
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