18 悲愴/悲想
【0】
愛する人が死んだらあなたはどうしますか?
悲しみの果てに絶望して死ぬのでしょうか。
苦しみの果てにそれを乗り越え強くなるのでしょうか。
寂しさの果てに違う恋へと移るのでしょうか。
人によってとり方は変わる。
愛していた人を殺され、死に場所を探し人を殺そうとした者。
愛していた人を無残に殺され、呆然自失となっている者。
愛していた人に助けられ、絶望の果てに希望を見つけ殺人を犯す者。
それぞれ、形は違えど似た状態である。
絶望の先には絶望しかない。
絶望を超えたらまた絶望が待っている。
救われない、救えない。
そしてこの話の主役――――彼もその一人。
絶望の先に希望は掴めるのか。
はたまた、絶望しか待っていないのか。
――――では、見てみよう。
【1】
いったい何があったのかわかりませんでした。
ただただ走るうちに、私はここにいました。
訳がわかりません。
意味不明です。
何故走っていたらこんな場所にいるのでしょうか。
時をかける少女の場所バージョンと言ったところでしょうか。
それにしては場所が指定できないので、変な能力です。
――――本当そんな能力が私にあったところで使うことなんてないのでしょうけれども。
今現在の状況は、ただの平地で私は座っています。
何をしようと言う事もなく、ただぼーっとしているのです。
人を殺すのなんてできるわけありません。
かと言って殺されるのも嫌なので。
このまま時間が過ぎてしまえばいいななんて思いながら、ただ座っているのです。
空を見るとこれ以上ないほどの青空が広がっていました。
嵐の前の静けさなのか。
嵐が通り過ぎた後の静けさなのか。
どちらにしろ、嫌な予感というものがします。
誰かに見つけてほしいなと思いつつ、見つけてほしくない。
この場にいる知り合いは5人いるけれども、私の味方をしてくれる人はいるのかわかりません。
基本的に静かで、誰よりも落ち着いてるような須藤君も。
誰にでも陽気に振る舞うムードメーカーな津村君も。
どんな状況に陥っても皆をまとめてくれるような宇田川君も。
怖い人たちとつるみながらも、優しいところがある笹川君も。
私の数少ない心を許せる友達である麗華ちゃんも。
皆、私の味方になってくれるか分からない。
そういえば、少し前もこんな事を考えていた気がします。
ここに来る前、違う
殺し合いにいた時。
その時は確か小林君が私の前に現れました。
そして、須藤君が私を助けてくれました。
その時須藤君に対してどう思ったのかは思い出せない。
でも、嬉しかったような気がする。
私を助けてくれる人がいた、それだけでもとてもうれしい。
しかし、今回は私の前には誰も――――。
「……」
いや、いました。
どこにでもいそうな――――それこそ普通と言えるような外見の人。
だけれでも私は、彼に恐怖を覚えました。
全てを諦めたような目、
今から私を殺さんとするような殺気、
何故か私に向けて伸ばされている手――――。
「……俺は、俺はッ……!」
何故か手を降ろし、何かをつぶやき始めました。
何をしているのか私にはわかりません。
けれども何度も自分の手を見て、こちらを見ては何かをつぶやいています。
「……トンコツ、俺は――――絶対に」
その人は再び私に向けて手を伸ばしました。
少しづつ、少しづつ手が握られていきます。
そして、完全にその拳が――――。
グチャッ
【2】
何が起きているのか分からなかった。
対面している二人の男女を見かけて俺が声をかけようとしたときだった。
片方の女の子の頭が、潰れた。
俺自身も何が起きたのかが分からなかった。
少なくとも、この俺――――青木林にとって人生でこんな異常事態を目の当たりにした事は……一回だけあった。
俺がここに呼ばれる前、そこであった『殺し合い』でだ。
あの不気味な男――――意味不明な能力を使ったあの黒幕とか言うやつだ。
だが、あの黒幕とは何かが違う気がする。
あの女の子を殺した男は、何か迷っているようにも見えた。
しかし、黒幕野郎は迷いもなく人を殺していきやがった。
その違い、そんな些細な違いである。
だけれども、青木林にとってはそんな事は関係ない。
彼は人よりも正義感というものが強い。
『人を殺した』という事実は変わらないのだ。
理由があろうとも、『悪』は『悪』である。
「おい、そこの奴……何してるんだよ!」
「ッ――――!!」
青木林の声に反応し、声をかけられた男――――桜井弘斗は肩をビクリと揺らす。
桜井の鼻からは血が出ていて、それを急いで桜井は手で拭う。
「――――アンタには、関係ない」
「関係あるよ、見ているところで人が殺されたんだ……放っておけるわけがない」
「は、じゃあ何だよ……ここで俺を殺すのか?」
「――――いや、殺さないよ……それじゃあさっきまでのお前と同じだ」
青木林は真っ直ぐに桜井を見る。
少なくともどこかで、青木林は感づいていたのかもしれない。
桜井弘斗の心にわずかに残る、心の迷い。
「殺し合いなんかやめて、あの安心院とか言うやつを倒す事を考えよう」
その青木林が言った言葉は、単純にして明快。
だがしかし、その意味は『不可能』を意味していた。
桜井も自分の能力を駆使しても、あの不気味な主催には勝てないと思っている。
今まで数多くの『星人』を相手取ってきた桜井でも感じた事がない、別の恐怖。
恐怖を感じたのは青木林も同じであろう。
「――――何バカなこと言ってるんだよ」
「俺は本気だよ、少なくとも冗談で言っているわけじゃあない」
「じゃあ、あいつを……安心院を倒せる確証はあるのかよ!」
「いや、ないよ」
「な……!?」
あっさりとした返答である。
しかも即答という。
「でも、諦めるのは早い……最後までやってみないと分からないだろうよ」
「……無理だ、絶対に無理だ……そんな事やるのなんて無駄だろうが……!」
「無駄なんかじゃない! きっと同じ考えをしてくれる人はいる!」
「ッ、黙れええええええええええええええええ!!」
桜井は手を前に突き出し、それを握――――。
「催眠行使。貴殿はその攻撃行為を即刻中止せよ」
れなかった。
右手に強烈な重みを感じ手を降ろしてしまった。
声がした方向――――そこには一人の少年が立っていた。
「――――さーて、どういう状況なんだ? これは」
その男の名前は――――◆xR8DbSLW.wと言った。
【3】
◆xR8DbSLW.wにとっての幸運はその書き手特権ともいえる能力の使用の幅である。
使用できるのは、彼自身が作りだしたオリキャラである。
つまるところ、彼が作りだした別次元でのキャラクター、『人無結』も使用可能なのである。
そしてもう一つの幸運はその使用時間。
使用時間はキャラクターの性能――――と、もうひとつ。
使用可能なオリキャラの数に反比例している。
オリキャラの数が少なければ使用可能時間が長い。
例えば◆VxAX.uhVsMの例でいえば古川正人の能力が5分使える。
だがしかし、彼はオリキャラの数が多い。
そして◆xR8DbSLW.wの場合は違う。
人無結の能力の使用時間は――――5分である。
「――――さぁて、これはそれなりに面倒だけど……やってやりますか」
◆xR8DbSLW.wは笑う。
目の前の男、桜井弘斗に向けて。
その理由は、人無結の能力を使っているにもかかわらずいまだ戦いの意思を示しているからだ。
攻撃行為自体は出来なくなっているはずだ。
そう判断できる理由の一つに、今桜井は手を動かせていない。
いや、別に手を握るのが起動条件ではないのかもしれないけれども。
何にしろ、攻撃が禁止された時点で勝機はないはずである。
この人無結の能力は強大なものである。
うまく能力を応用すれば、◆VxAX.uhVsMの能力であった『幻想創造』をも超える。
この敵が能力者だとしても、負ける可能性は薄い。
時間切れ、タイムリミットが来なければだが。
「凝縮行使。空気、数多の剣の体に凝縮せよ」
これで止めを刺す、そう言わんばかりにいきなり全力投球である。
時間切れで敗北するよりは、最初からとどめを刺した方が良いに決まっている。
そう思っての攻撃である。
空気の剣が生成され、一斉に桜井に向かう。
普通の人間であれば数多の剣に斬り裂かれただろう。
だが――――相手は普通ではない。
「ッ、あああああああああああああああああ!!」
桜井は叫び声とともに自らの周りにバリア空間を作る。
空気の剣はバリアに跳ね返され、桜井に攻撃を与えるに至らない。
そして桜井はバリアを張りながら『攻撃の態勢』を取る。
◆xR8DbSLW.wはそれを見て疑問を浮かべる。
なぜ、『攻撃』が出来るのだ。
「防御行使。僕の体に能力を通すな」
間一髪の行使により、桜井の攻撃は回避する。
だが、行使と同時に空気の剣が消えた。
これで◆xR8DbSLW.wは理由を理解した。
超能力を一つまでしか使えないように、規制されている。
考えてみればそうである。
5分のみとはいえ、この能力は凶悪すぎる。
安心院なじみにも引けを取らないかもしれない能力。
だが、能力の幅が規制されていれば、この能力も力が弱まる。
しまった、と◆xR8DbSLW.wは思った。
これではあの少年、桜井を倒すのは不可能に近い。
それに戦い始めてもう4分くらい経つ。
残り1分で何ができるのか。
いや、何もできないだろう。
向こうの体力が消耗されるかもしれないが、それはこちらも同じだ。
ギリギリまで戦ったとして、もし勝ててなかったら俺はあそこで死んでいる女の子と同じ目に遭う。
その結果、◆xR8DbSLW.wは一言だけこうつぶやいた。
「転送行使、青木林、僕ともにこの場から退避させる」
【4】
一気に目の前の景色が変わる。
先ほどまで平野にいたが、どうやらここはマンションのようだ。
っていうかついでに送った青木君もいなくなっている。
どうやら違う場所にいるようだ。
「……はぁ、どうしようかな……面倒なことになっちゃったし」
戦闘が終わり、改めてこの状況を思い出す。
呼ばれているのは、殺し合い。
「――――それにさっきのって、版権キャラに青木君だったよな……考えてみれば」
青木君も転送させておいて何を言っているのだ自分は。
さっきまではとっさのことだったので結構気が動転していたのだ。
落ち着いている風には見せてたんだけれども。
あくまで僕は一般人なので。
超健全な高校生だからね。
文句言った奴はひっぱたくから出てこい。
「……さぁて、とりあえずまぁ……どうしようもないんだよなぁ」
人無の能力が使えなくなった今、彼はただの学生だ。
他のオリキャラはただの高校生と小学生だ。
能力持ちの奴なんていない。
いや、いることにはいるのだが……使えるのは一人だけだ。
「とりあえず……ここからは動かないでおくかな……」
デイバックを手に取り、中身を探る。
中から出てきたのは、携帯電話であった。
というか、スマホである。
「……ほぉ、色々アプリみたいなのが入ってるな、とりあえず見ていくか」
【朝/E-8マンション】
【◆xR8DbSLW.w@非リレー・書き手】
[状態]健康
[所持品]基本支給品、スマホ@
オリジナル
[思考・状況]
基本:殺し合いをする気はない
1:武器なり能力なり対策ができたら行動する
[備考]
※オリキャラについての知識は規制されていません
※版権キャラについての知識は一部規制されています
【5】
目の前で起きている戦いをただ呆然と見ていることしかできなかった。
青木林は自分の弱さを嘆いていた。
主催を倒す、と大見栄を張った瞬間これだ。
あの時あの男をさせたのも、俺の力なんかじゃないのだ。
きっと俺はあの時遊ばれていたのだ。
圧倒的な力量の前に、ただ踊らされていた。
あと一歩まで追い詰めたからどうした。
それはすべて、『創られた』シナリオだったのだ。
早い話、自分は弱い。
主催を倒すとか、そういう事は言ってはダメな奴なんだ。
「それが……」
妹を生きて帰らせて、俺は死んだ。
家族を救った
ヒーローに聞こえるかもしれないが、そんな事はない。
俺は百合を――――1人にしてしまった。
辛い思いをさせてしまったのだ。
俺なんか、端っこで怖がって怯えてればいいのだ。
「…………それが、」
「それがどうしたああああああああああああああああああ!!」
叫ぶ、喉がつぶれるのかというほど。
マイナス思考に潰されてたまるか。
いつまでも、どこまででも強くあろうとする。
それが俺だ。
百合を守れるのは誰だ。
俺だけだ。
主催を倒せない?
そんなの知った事じゃない、強い人を探せばいいんだ。
諦めたら、そこで試合終了なのだ。
そうやって漫画でも見たような気がする。
息を吐き、頭の中を整理する。
ここに呼ばれている人間で信頼できるのは誰だ。
まず自分の妹――――青木百合、俺が信じないで誰が信じるというのだ。
次に友達である――――相川友、真っ直ぐな部分があるこいつなら、この殺し合いに反抗しようとしているはずだ。
後は誰かいないのか、と思ったがいない。
津本辺りがいてくれれば大分落ち着けるんだが、いないなら仕方ない。
「……絶対に、今度こそ終わらせてやる」
前回の殺し合いから、続いてしまったこの悪夢。
それを今度こそ終わらせようと、一人の少年は立ち上がる。
「首を洗って待っていろよ、主催さんよ……!」
【朝/E-8】
【青木林@他の方のオリキャラ】
[状態]健康
[所持品]基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを潰す
1:仲間になってくれる人を探す
[備考]
※DOLロワ2nd終了後からの参戦です。
【6】
「……ハッ、テレポートかよ……向こうも何か能力があるのか」
先ほどまで戦地となっていたこの場所には二人しかいなかった。
いや、正確にいえば一人と一つである。
先ほどこの少年、桜井弘斗に殺された不幸な少女、狭山雪子。
桜井は彼女の死体を見て、ニヤリと笑う。
「待ってろよ、トンコツ……さっさとここから帰って……あいつらを皆殺しに……ッ!? が、ゲホッ」
桜井の口から嘔吐物が漏れ出す。
吐いた後、桜井はゆっくりと周りを見る。
先ほどまで起きていた状況から信じられないこの平和な空。
紅く染め上がっていたあの空はどこへと消えたのだろうか。
「ハッ、はぁ……まぁ、ここがどこかは分からないけど……俺は死ねない」
少年は再び拳を握った。
超能力を使うためなどではない。
決意を、再び固めるためだ。
「トンコツを殺したあいつらを、皆殺しにするまでは……死ねない」
桜井は死体に目をくれる事もなく立ち去った。
彼を止められる、止める事が出来る者が、現れるのだろうか。
【狭山雪子@変哲オリ 脱落】
【残り 95人】
【朝/E-7】
【桜井弘斗@GANTZ】
[状態]超能力使用による疲労(大)
[所持品]基本支給品、不明支給品
[思考・状況]
基本:ここから出てあの屑共を皆殺しにする
1:誰であろうが容赦はしない
[備考]
※カタストロフィ編、敵地潜入時からの参戦です。
| 前の話 |
|
次の話 |
| くるったふたりのおはなし |
SS順 |
初期化 |
| START |
狭山雪子 |
|
| START |
桜井弘斗 |
[[]] |
| START |
青木林 |
[[]] |
| START |
◆xR8DbSLW.w |
[[]] |
最終更新:2012年09月19日 22:40