3話「新たな道は」
G-4に存在する、カソリック系の教会。
豪華なステンドグラスとパイプオルガンを見上げる、灰色の毛皮と瞳を持った、
学生服姿の狼獣人の少女がいた。
狼少女――エルフィは、深く溜息をつきながら呟く。
彼女は、一度死んだ身だった。こことは違う別の世界でも、同じように殺し合いをさせられ、
命を落としたはずだった。
しかし、死んだはずの自分は今こうして生きて立っており、傷も体力も完全に癒え、
首には以前はめられていたものとはデザインこそ違えど、全く同じ機能を持つ死の首輪。
そして、足元には支給品が入ったデイパックが置かれている。
デイパックを拾い上げ、何列にも並ぶ長椅子の最前列に座り、中身を取り出していく。
基本支給品の次に出てきた物は、二丁の自動拳銃と、それぞれの予備マガジン。
一つはIMIデザートイーグル。強力なマグナム弾を撃ち出すが、かなり大型で重い。
もう一つはグロック19。小型かつ装弾数も多めなので使い勝手は良い。
前回の殺し合いの時、自分に支給されたのがただのボールだった事を考えると、
まさに雲泥の差。非常に恵まれていると言えよう。
だが、彼女は殺し合いなどする気は無い。元々彼女は争い事を好む性格などでは無い。
前回の殺し合いの時でも、彼女は戦いは避け、同行者と一緒、或いは単独で、
会場内を逃げ回っていた。支給品が貧弱過ぎた、というのもあったが。
「はぁ……どうしたらいいんだろう」
この殺し合いには、自分と同じく死んだはずのクラスメイト、ノーチラスや、
他にも数人のクラスメイトが呼ばれている。
それだけでは無い、全く見ず知らずの大勢の人々が、自分達と同じように、
殺し合いに参加させられているのだ。
再びクラスメイトと殺し合う事、全く知らない人々と殺し合う事など、彼女は出来なかった。
なら、自分はどうするべきだろうか。勿論死にたくはないし、人を殺したくもない。
しかしそんな甘い考えなど通用しない事は、十分自覚している。
その時だった。突然教会の正面玄関の扉が開かれた。
「!!」
驚き、咄嗟に長い椅子の陰に隠れる。
扉が閉まる音が聞こえ、足音が近付いてくる。どうやら他参加者が教会内に入ってきたようだ。
エルフィは焦った。もし相手が殺し合いに乗っていたら、この状況では戦うしかない。
グロック19のグリップを握り締めながら、エルフィは足音が徐々に近付いてくるのを感じた。
「誰かいるのか?」
どうやら、侵入者は成人男性のようだ。
「いるなら出てきてくれ。私は殺し合いをするつもりは無い。危害を加えるつもりは無い」
「……」
殺し合いをするつもりは無いと言われた所で、そう簡単には信用出来ない。
一応、自分も一度殺し合いを経験した身だ、そのくらいの事は分かる。
エルフィはグロック19を構えながら、椅子の陰から飛び出し、銃口を侵入者に向けて立ち止まった。
「! ま、待て! 撃つな!」
侵入者――くたびれたジャケットを着た独特の髪型をした人間の男性は、
突然銃を突き付けられ、反射的に両手を上げ、戦意が無い事を訴える。
エルフィとてこんな事はしたく無かったが、何しろ自分の命が掛かっている事だ。
「あなたが持っているランダム支給品を、全て床に置いて下さい」
エルフィは震える手でグロック19を保持しながら、男に命じる。
男は素直に従い、決して撃たないようにと言いながら、
まず持っていた長剣を床に下ろし、
次にデイパックの中から「ダンロップ」とロゴが刺繍されたTシャツを取り出し同じように床に置く。
「これで全部だ」
「……本当に殺し合いには乗っていないんですか?」
「ああ」
「……」
しばらく無言で対峙する二人だったが、男の真剣な眼差しに、
エルフィは嘘偽りは無いと判断し、銃を下ろした。
男も両手を下ろし、安堵の表情を浮かべる。
「すみません……」
「いや、こんな状況なら仕方無い事だ。誤る必要は無い。
私は竹内多聞。城聖大学で講師をしている。君は?」
「私はエルフィと言います。えーと、××高校に通っています」
「××高校? 聞いた事無いが……まあいい、ここで立ち話も何だ、
どこかに身を潜めて情報交換をしたいんだが、いいか?」
「ええ。この奥に多分、控室みたいな部屋があったので、そこで……」
竹内多聞と名乗った男は承諾し、床に置いた長剣とTシャツを拾い上げ、
同じく椅子に置いた自分の支給品をまとめたエルフィと共に教会奥にある神父控室へと向かった。
◆◆◆
男――竹内多聞は、自分が置かれている余りに超現実的な状況に、半ば辟易としていた。
自分は確か、数十年振りに故郷の村で行われるという秘祭の調査のために、
無理矢理ついてきた教え子と共に村を訪れたはずだった。
深夜の0時を回った頃、突然大地震と共に大音量のサイレンが鳴り響き、
自分は意識を失い――気がつけば、この殺し合いとやらに参加させられていた。
周囲には大勢の人々、自分と同じ日本人や外国人風の人間、
ファンタジーの世界に出てくるような狼や狐の頭を持つ、獣人のような者も多くいた。
たった今自分の目の前にいるエルフィと名乗った少女も、灰色の狼の頭を持っている。
しかし普通に日本語を話しているので、意思の疎通は可能のようだ。
自分の支給品は西洋風の長剣と、「ダンロップ」とロゴが刺繍されたTシャツ。
Tシャツはともかく、長剣は鋭利な刃を持つ本物の剣。十分な殺傷能力があった。
説明書には長剣は「ミスティーズ王家王子、クリス・ミスティーズ愛用の長剣」とあった。
名簿に「リリア・ミスティーズ」という同姓の名前があったが、何か関連があるのだろうか。
とにかく、それなりに強力な武器を多聞は支給されていた。
しかし多聞は殺し合う気など毛頭無い。
あの正体不明の狼女の言いなりになって殺し合いなど、余りにも馬鹿げている。
恐らく殺し合いに乗っている奴も出てくるかもしれない。
そういった奴と出くわしたら、正当防衛なら交戦もやむ得まい。
同行していた教え子、安野依子がこの殺し合いに呼ばれていなかったのは幸いだった。
もし呼ばれていたら、きっと真っ先に命を落としていただろう。
しかし、あの地震とサイレンの後、自分がいなくなって、彼女はどうしているのだろうか。
それに、あの地震とサイレンは――両親を失ったあの日のものと酷似していた。
もしかしたら、彼女も両親のように――。
いや、ここで考えていても始まるまい。
何とかして、元の世界に帰る方法を――この狂った殺人ゲームから脱出する方法を探るべきだ。
そのためには、まずは同じ考えを持つ仲間を集めた方がいい。
今出会ったエルフィという狼獣人の少女は、仲間になってくれそうだ。
とりあえずは彼女と情報交換するとしよう。
(安野……無事だといいんだが……)
心の中で元の世界の教え子の安否を気遣いつつ、
多聞はエルフィと共に教会聖堂の奥にある扉の中へ入っていった。
【一日目/深夜/G-4教会】
【エルフィ@自作キャラでバトルロワイアル】
[状態]:健康
[装備]:グロック19(15/15)
[所持品]:基本支給品一式、グロック19の予備マガジン(5)、IMIデザートイーグル(7/7)、
デザートイーグルの予備マガジン(5)
[思考・行動]:
0:殺し合いには乗らない。
1:竹内多聞さんと情報交換をする。
2:クラスメイトと合流する……?
[備考]:
※本編死亡後からの参戦です。
【竹内多聞@SIREN】
[状態]:健康
[装備]:クリスの剣@ムーンライトラビリンス改造版
[所持品]:基本支給品一式、ダンロップのTシャツ@永井先生
[思考・行動]:
0:殺し合いには乗らない。脱出手段を探す。そのためにも仲間を集める。
1:エルフィと情報交換をする。
2:襲われたらそれなりに対処はする。
3:安野……大丈夫だろうか。
[備考]:
※初日0:00にサイレンを聞き、意識を失った直後からの参戦です。
従って幻視能力は目覚めていません。
※クリスの剣の持ち主「クリス・ミスティーズ」と、名簿に書かれている名前、
「リリア・ミスティーズ」は何か関係があるのではないかと考えています。
≪支給品紹介≫
【グロック19】
オーストリアのグロック社の自動拳銃、グロック17のコンパクトモデル。
手頃な大きさで装弾数も多く使い勝手は良い。
本ロワでの支給者であるエルフィの出典元、自作キャラでバトルロワイアルにも登場。
女子二十三番:間由佳に支給され、エルフィは彼女にこの銃を向けられている。
【IMIデザートイーグル】
イスラエルのIMI社が生産している世界有数の大口径自動拳銃。
様々な口径モデルがあるが、本ロワで登場する物は強力な50AEモデルである。
かなり大型で重いが、女性でも扱う事は出来るという。
【クリスの剣@ムーンライトラビリンス改造版】
リリア。ミスティーズの兄でミスティーズ王家王子のクリス・ミスティーズ愛用の魔法剣。
王家の証も兼ねている。魔法剣とあるが実質的には恐らく普通の剣。
原作では持ち主であるクリスがうっかり落としてしまい、
リリアが拾うか拾わないかで、シナリオが分岐する。
改造版ではリリアが必ず拾うようになっており、「リリアスラッシュ」という技が使えるようになったり、
終盤のある敵との戦闘でクリスからこの剣を借りて一騎打ち(リリアが圧勝)をしたりした。
【ダンロップのTシャツ@永井先生】
永井先生こと永井浩二が仕事着として着ていたという、
DUNLOPのロゴが印刷された黒いTシャツ。
普段着にしているとも言われるが詳細は不明(本人は否定していた)。
現在も着ているのかどうかも不明。
最終更新:2010年01月03日 12:43