18話 後悔してももう遅い
「ありえへんこんなん……何が
殺し合いやねん、こんなんできるわけないやん」
ニワトリの少年、コケヤンは支給されたボウガンを持ちながら森の叢に座り込んでいた。
彼はやまびこ村に住んでいる一匹の住人に過ぎない。
いつも平和なやまびこ村では、死や殺しなどという概念がない。
勿論彼も殺しなどした事は無いし、する気も無い。
もし友達が自分を殺しに来たら――
もし自分が友達を殺すことになったら――
そう考えると怖くなった。
「アカン。こんなとこにおったらいつ誰かに見つかるかわからん。はよ逃げな……」
その頃、同じ森の近くでもう一匹の動物がいた。
大きい茶色の体に二本の角。
イノシシの少年、コケヤンと同じやまびこ村の住人、やまのふじであった。
偶然、コケヤンの近くに飛ばされていた彼は安堵し、コケヤンに呼び掛けようとした。
「おーい、コケヤーン! そこにいるでごわすかー?」
しかし――
「ひっ!!」
コケヤンは急に声を掛けられ、勢い余って持っていたボウガンの引き金を引いてしまった。
ボウガンの矢はやまのふじの目に止まらぬ速さで一直線に飛んで行き――
そのまま矢の先がやまのふじの額にめり込んだ。
ただ、声を掛けただけだったのに、
助けを求めただけなのに、
いつもの友達に殺された――。
「コケ、ヤ……ン」
やまのふじは額から
赤い水を滴らせ、叢に崩れ落ちた。
もう、息をしていなかった――
「やまのふじ…アンタやったんか……
ヤバ、い……やん……なんやねんこれ……ワイ…友達殺してもうた……
こんなん……はなかっぱ達に顔向けできん……うっ」
その瞬間、乾いた爆発音が鳴り響いた。
そう、いつかやった誕生日パーティーのクラッカーの音に似ている――
でもここにはクラッカーなんてないはずだ――
じゃあ何で――
答えはひとつ。
撃たれたのだ。
コケヤンは胸に一つの赤くて丸い――例えるならサクランボのような綺麗な赤い丸だ。
そこからアカイモノが流れ落ちている。
そうだ、やまのふじの額から流れ出たモノと同じモノだ。
なんで自分までこんな目に会っているのか、本当に意味が分からなかった。
「あり……えへん……ワイ……まだ……死にとうない…………」
コケヤンは倒れた。
胸の赤丸から懇々と流れ出る液体。
コケヤンの視界は緑から赤に変わっていき、そのままあっという間に真っ黒になった――。
「ごめん……私も死にたくなかったの。
しまじろう達に……また会いたいの。だから――
ごめん――――」
コケヤンを撃ち殺したのは、泣きながら銃を構えているウサギの少女だった。
彼女の名前は緑原みみりん。
みみりんはしまじろう達の友達で、四人の中でも最も優しく、本来なら殺し合いなどに乗る事はないはずだった。
だが今は、このろくでもない殺人ゲームに乗った参加者の一匹に成り下がっていた。
だがそれは、もっとかけがえのないものを守るための行動だった。
悲しみと罪悪感を忘れられるように。自分は悪くないと無理矢理思い込む為に……
だが、みみりんの心に残ったのは、空っぽで空虚な気持ちと、圧し潰されて狂ってしまいそうな後悔の嵐だけだった――
「なにやってるの、私は……」
【C-3/森/一日目/深夜】
【緑原みみりん@しましまとらのしまじろう】
[状態]:健康、罪悪感の嵐
[装備]:ブローニング・ハイパワー(12/13)(残弾数10発)
[道具]:基本支給品×3、ブローニング・ハイパワー、ボウガン、ボウガンの矢(残り19本)、不明支給品3~7(自分の支給品のみ確認済み)
[思考]基本:みんなを助けたい
1:これでいいの……?
2:誰も殺したくないけど、殺さなきゃ……
3:しまじろう達はどこ……?
【やまのふじ@はなかっぱ 死亡】
【コケヤン@はなかっぱ 死亡】
[残り50匹]
【支給品解説】
【ボウガン@現実】
西洋で用いられた、専用の矢を板ばねの力で弦に引っ掛けて発射する武器。
引き金があるので狙いが定めやすい。
主に狩りに使用される。
ちなみに正式名称はクロスボウ。
ボウガンという名称は、射撃競技用品メーカーの名前から取った和製英語である。
【ブローニング・ハイパワー@現実】
ベルギーの銃器メーカー、FN社製造の自動拳銃。装弾数は13発。
正式名称は『ブローニング・オートマティック・ピストル・モデル・ハイパワー』。
量産された実用拳銃として初めて複列弾倉を採用した拳銃で、その装弾数の多さからハイパワーと名付けられた。
高い信頼性と実用性から、世界50ヶ国以上の軍隊・警察で正式採用されている。
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最終更新:2012年11月05日 12:55