刈割

16話「刈割」

くそっ、有り得ない。
俺、神田修次は昨日は家でいつも通り眠ったはずなのに、目が覚めたら殺し合いだなんて。
俺はただの高校生だぞ? 戦闘員でも何でも無いのに。
首には爆薬が入っている物騒な首輪まではめられて、地図やら食糧やらが入ったデイパックも渡されて。
最悪だ。悪い夢なら今すぐに覚めてほしい。
でも、夢じゃ無いんだよな……結構近くで男の首輪が爆破されるのを、人が殺される光景を見たんだし。
鉄錆臭い血の臭いだって、間違い無くリアルだった。

周囲は今にも倒壊しそうなボロボロの廃屋が何軒も建ち並ぶ廃村。
しかも真夜中とくれば、不気味極まり無い。
まあ、夜空に満月が輝いているから、真っ暗って程でも無いんだけれど。
しかし満月かぁ。狼獣人である俺は気がちょっと昂るなあ。
思いっきり月に向かって遠吠えしたくなるけど我慢だ。
そんな事したら自殺行為だ。もう殺し合いに乗っている奴が何人もいるかもしれない。
おまけに俺のランダム支給品は何とも貧相な火かき棒。
これ、似たような物をじいちゃんの家の焼却炉で見た事あるんだけど。
畜生、あのセイファートとか言う奴、もっとマシな物をくれっつの!
だがまあこれでも何度かブッ叩けば殺す事は出来るか?

名簿を見たけど俺の知り合いはどうやら一人もいない。
なら、優勝を目指すのも大いにアリだ。
しかし、もうちょっとまともな武器が欲しいよな。

「お、第一村人……じゃない、第一参加者発見」

前方をとぼとぼと歩く鮫獣人の女の子を発見した。
どうも俺の通う学校とは違う学校の制服を着ているみたいだ。
俺には気付いてないな。よし、殺るか!
俺は火掻き棒を構えて、一気に女の子に走って近付いた。

「えっ!?」
「死ねっ!」

女の子が気付いたが、関係無しに火掻き棒を振り下ろす。

「痛いっ! 痛い痛いよ! やめて!」

女の子の頭から血が流れるが、ここで躊躇しては駄目だ、もう後には引けない。
俺は泣き叫び地面に蹲る女の子を無視し何度も火掻き棒で殴打し続けた。

「やめてえええ! 痛いよおお!」

頭を両手で保護しながら必死に耐える鮫獣人の女の子。
この火掻き棒では殺すには相当な数叩かなければならないだろう。
最初は躊躇無く殺すつもりだったけど、泣き叫ぶ女の子を見て段々罪悪感が湧いてくる。
いや、駄目だ。甘い考えは捨てるんだ。だけど火掻き棒じゃ威力不足だ。

「ぎっ!?」

俺は火掻き棒を地面に捨て、女の子に馬乗りになり、両手で思い切り首を絞めた。

「あ゛あ゛っ、く、苦しいよぉ……死にたくないよぉぉ……」

女の子は首を絞める俺の両腕を引き離そうと必死に抵抗するが、
恐らく力を入れているのだろうが全く通用しない。
そうしている間にも俺は女の子の首を絞める力を強める。

尚も首を絞め続け、数分後に、鮫獣人の女の子は動かなくなった。
細く開かれた目の瞳は虚ろで、口からは泡を溢れさせている。
俺は……遂に、一人殺した……!

「ハァ、ハァ、もう、戻れないな」

この名も知らぬ女の子には悪い事をしたとは思うが、
こうしなければ生き残れないゲームなんだよな。本当に御免よ。
俺は女の子の持っていたデイパックを漁り、中から水と食糧を引き出し、自分のデイパックに押し込む。
そしてランダム支給品を探すと、食べると傷と体力が癒えるという薬草が詰まった袋と、
投げると相手の動きをしばらく封じ込める事が出来るという蜘蛛糸玉を三つ手に入れた。
武器では無かったが、とりあえず役に立ちそうな物で良かった。

「……御免。マジで御免」

謝って許される事じゃ無いって事は分かっている。けど謝らずにはいられなかった。
地面に横たわる鮫獣人の女の子の死体に後ろ髪を引かれる思いだったが、
俺は火掻き棒を拾いデイパックを背負うと、その場を後にした。



【最上佳奈@オリキャラ  死亡】
【残り  44人】



【一日目/深夜/H-1廃村】

神田修次@オリキャラ】
[状態]:健康、罪悪感
[装備]:火掻き棒@SIREN
[所持品]:基本支給品一式、薬草@オリジナル(残り50枚)、
蜘蛛糸玉@オリジナル(3)
[思考・行動]:
0:優勝を目指す。他参加者を殺す。
1:次はどこへ行こうか……。
2:もっとマシな武器が欲しい。



※H-1廃村に最上佳奈の死体とデイパックが放置されています。
最上佳奈のデイパックの中身=水と食料無しの基本支給品



≪オリキャラ紹介≫
【名前】神田修次(かみだ・しゅうじ)
【年齢】17
【性別】男
【職業】高校生、ガソリンスタンドのバイトをしている
【性格】明朗活発
【身体的特徴】銀色と薄い灰色の狼獣人。引き締まった身体付き
【服装】学校の制服である紺色のブレザーと灰色のズボン
【趣味】ゲームセンター通い
【特技】スポーツ万能
【経歴】中学時代は野球部エースだったが高校になってからは帰宅部
【備考】名字を「かんだ」とよく読み間違えられる

【名前】最上佳奈(もがみ・かな)
【年齢】18
【性別】女
【職業】高校生
【性格】優しい、努力家
【身体的特徴】青い鮫獣人。尖った耳がある。ナイスバディでとても可愛らしい
【服装】学校の制服であるカーキ色を基調としたセーラー服
【趣味】自宅の花の世話
【特技】手先が器用
【経歴】両親と妹がいる普通の家庭で育つ
【備考】卒業までに処女を卒業したいと思っているらしい


≪支給品紹介≫
【火掻き棒@SIREN】
火の周り具合を調節するのに使う長い金属製の細い棒。
ゲーム中においては主人公・須田恭也がかなり終盤まで主力武器にしていた。
もっと他に武器になりそうな物があるような気がするが。

【薬草@オリジナル】
様々なRPGに登場する回復アイテムの代名詞とも言える存在。
本ロワに登場する物は50枚の葉が布袋に押し込められている。
食べると体力が若干回復し、傷も軽い物なら治癒が早くなる。
厳密にはオリジナルでは無いかもしれないが、一応オリジナル出典とする。

【蜘蛛糸玉@オリジナル】
蜘蛛型モンスターの吐き出す糸を加工し、投擲出来るようにした物。
投げると相手に糸が絡み付き、身動きを取る事が困難になる。





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GAME START 神田修次 NEXT:SILENT HILL
GAME START 最上佳奈 GAME OVER

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最終更新:2010年01月17日 22:27
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