SILENT HILL

41話「SILENT HILL」

「ここは…村、か?」

明かりの点いたランタンを左手に持ちながら、エリアG-1の廃村地区に足を踏み入れたのは、
右手に小型の電動回転鋸を装備した、半袖の緑色ジャケットにジーンズ姿の少年、須田恭也。
G-2に広がる果樹園にて一人の襲撃者と交戦し、逃れた後、園の西口から続く古道をずっと進み、
そして辿り着いた場所は人気の絶えた集落だった。
電気など通っているはずも無いので、
敵に発見される恐れはあるがランタンを灯さなければ、ほとんど足場が見えない状態だ。
雑草に覆われほとんど見えなくなってしまっている道、
屋根が陥没し屋内が瓦礫の山と化した廃屋、
錆に覆われタイヤが地面に埋もれている軽トラック、
もう永久に配達物が投函され、配達される事の無いポスト、
今にも倒れてしまいそうな、腐食の進んだ木製の電信柱……。
廃村を形成する多様な要素が、ランタンの明かりによって照らし出される。

「村、か……」

そう言えば自分はネットの掲示板に書き込まれた情報を見て、
羽生蛇村という山奥の寒村を訪れ、そして怪異に巻き込まれた。
そして気が付いた時はこの殺し合いに呼ばれていたのだなと、恭也は思う。

「それにしても……」

周囲を見渡しても廃屋や廃車などの殺伐とした風景が広がるのみ。
家屋は倒壊寸前で中に入っても何か役に立ちそうな物があるとは思えず、身を潜める事も出来そうに無い。
どう見てもこの廃村で得られる物は何一つ無いように思えた。
もし廃墟マニアなら涙が出る程嬉しい場所かもしれないが、
生憎恭也は廃墟マニアでは無かった。

近くの廃屋の壁にもたれ、デイパックの中から地図とデバイスを取り出す。

(今いるのはエリアG-1……ここか。やっぱり廃村地区……地図のかなり端の方だな。
北に真っ直ぐ進めば、街に出れるのか)

現在位置を確認し地図と照らし合わせる。
そして街にこれからの行き先を定め、地図とデバイスをデイパックの中にしまい込む。
市街地であれば人も集まりやすく、何かしら物資もあるだろう。

「よし……行くか……」

デイパックを背負い、ランタンを翳し道を照らしながら道を進み始めようとした。
だがその時。

ガンッ!!

「ぐあっ!」

突然、恭也の後頭部を鋭い衝撃が襲う。
思わずその場に昏倒する恭也を、更に何度も衝撃が襲い掛かる。
何度も何度も何か細長い、しかしそれなりの強度を持った棒状の物で殴打されている。

「や…め……!」

とにかく頭部を両手で防御しながら自分を攻撃している襲撃者に訴えるが、
当然襲撃者がそれに耳を貸すはずも無い。
身体中を襲う激痛。このままでは殺される。
この襲撃者は確実に自分を殺す気でいる、何とかしなければ殺される。
恭也は右手に持ったチップカットソーのスイッチを入れた。
そしてそれを襲撃者のいる方向に思い切り薙ぎ払いを掛けた。

「ぎゃあああああっ!!」

若い男の悲鳴、そしてガリガリガリと回転鋸が何かを切り裂く嫌な音、手から伝わる確かな手応え。
ほぼ同時に、攻撃が止んだ。
身体中の痛みに耐えながら、恭也は顔を襲撃者の方に向ける。

「ぐあ……あ……っ」

両手で胸元を押さえながら苦しみ呻き声を発する、
服装からして恐らく自分と同年代の高校生の少年。
だがその頭部は尖った耳に長いマズル、銀色の毛皮に覆われ、
ズボンの腰の部分からふさふさの尻尾が生えていた。
それは恭也が知る限りでは、開催式の時に見たこの殺し合いの主催者・セイファートと同様、
空想上の生き物であるはずの狼男――獣人であった。
普段の日常であれば非常に驚くだろうが今はそんな事どうでも良かった。

ブレザーを着込んだ狼少年は真っ赤な鮮血が滴り落ちる胸元を押さえながら、
眉間に皺を寄せまさに獣の形相で恭也を睨み付ける。
威嚇するかのように鋭い牙を剥き出しにする狼少年に恭也はたじろぐ。
よく見れば右手に火掻き棒を持っていた。どうやらあれで殴られたようだ。
再びチップカットソーのスイッチを入れ、回転音を唸らせる刃を狼少年に向ける。

「っ……」

高速で回転する円形の鋸刃を見て気圧される狼少年。
それを見てここは押すべきだと判断した恭也は脅すようにチップカットソーを突き出す。
しばらくお互い睨み合いをしているだけだったが、
やがて狼少年が自分の方が不利だと判断したのか、舌打ちし、
傷口を押さえながら走って逃げて行った。

「いっ……てぇえええ……」

狼少年がいなくなった後、恭也の身体中を再び激痛が襲う。
殴られた腕を見ると見事に線状に青痣が出来ていた。恐らく衣服の下も同じだろう。
動けない程でも無いし我慢出来ない程でも無いがかなりの激痛である事には変わり無い。

「ランタン、壊れちゃったな…」

狼少年に奇襲された際にランタンは落下し、破損してしまい最早使用不可能。
スタート時より明るくなってきたとは言え、まだかなり暗い。
無闇に暗い場所を歩くと道に迷う可能性もある。

(明るくなるまで…せめて肉眼で道が見えるようになるまで待つしかないか……)

無理はせず明るくなるのを待つ事にした恭也。
適当な廃屋の壁に寄り掛かって座り、ふぅっと深く息を吐く。

「何でこんな事になっちゃったんだよ……」

そして自分が今置かれている殺し合いという状況に、愚痴をこぼした。



廃村の外れの林の中。
息を切らして走ってくる、ブレザー姿の狼獣人の少年――神田修次。
呼吸を整えながら速度を落とし、やがて立ち止まる。

「ぐっ…」

胸元には真一文字の傷が出き、ネクタイが切断され、
傷口からかなり大量の血液が流出していた。
苦痛に顔を歪める修次は、自分にこの傷を負わせた先程の自分と同年代と思われる人間の少年に対し怒りを露わにする。

「くそっ…あの野郎……」

傷口がズキズキと痛む。
幸い出血の割には傷は浅いようだが、鋸の刃で切り裂かれた傷口は果たして上手く治癒出来るかどうか。

「……まあ、最初に襲ったのは俺なんだけどさ。
やっぱ、火掻き棒じゃ大したダメージ与えられねぇな…畜生、主催者の奴、
本気で殺し合いさせたいならもっとマシな武器よこせよ」

その怒りは自分に支給された火掻き棒に、
そしてこの殺し合いの主催者にまで向けられる。

「ん、そう言えば……」

何かを思い出し、傷の痛みを我慢しながら自分のデイパックを漁り始める修次。
そして取り出したのは薬草のたっぷり詰まった袋。
それは修次がこの殺し合いにおいて初めて殺害した参加者から奪った支給品の一つ。

「これ、効くのかな。えーと、使用方法は……食べればいいのか?
うわ、まずそうだな、オイ」

薬草の外見は普通の緑色の葉っぱ。
これを食べろというのは、完全に野原に生える雑草を食べるような気分である。
修次は狼獣人。当然肉食である(一応野菜も食べるが)。
しばらく手にした薬草を見詰めて立ち尽くしていた修次だったが。

――意を決して口の中に放り込む。

そして咀嚼ッ……!

「成程成程……まっずいなあ~~~~」

予想通りの味だったようだ。


【一日目/黎明/G-1廃村】

【須田恭也@SIREN】
[状態]:肉体的疲労(中)、身体中にダメージ(大)、右上腕に切り傷
[装備]:チップカットソー@自作キャラでバトルロワイアル(バッテリー残量:89%)
[所持品]:基本支給品一式(ランタン破損、放棄)、流血@浦安鉄筋家族(200粒入り)
[思考・行動]:
0:殺し合いには乗らない。脱出手段を探す。そのためにも仲間が欲しい。
1:明るくなるのを待つ。その後街へ。
2:傷の応急処置を済ませたい。
[備考]:
※初日0:00にサイレンを聞き、駐在警官に撃たれ川に転落し、
意識を失った直後からの参戦です。 従って幻視能力は目覚めていません。
※ランタンを破損、放棄しました。


【一日目/黎明/G-1廃村東北外れ】

神田修次@オリキャラ】
[状態]:肉体的疲労(中)、胸元に真一文字の切り傷、薬草の効果により治癒能力増大中
[装備]:火掻き棒@SIREN
[所持品]:基本支給品一式、薬草@オリジナル(消費中)、
蜘蛛糸玉@オリジナル(3)
[思考・行動]:
0:優勝を目指す。他参加者を殺す。
1:うう~~んまっず~~~い(泣)
2:もっとマシな武器が欲しい。



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最終更新:2010年02月07日 10:39
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