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美しき水面

17話「美しき水面」

B-2に存在する、綺麗な純水を湛えた大きな湖。
畔には手漕ぎボートの有料貸出所があり、また、湖の周りに沿うように遊歩道も造られている。
洒落たデザインの街灯でライトアップもされている事から、
元々存在していた湖を、自然公園のように開発したのだろう。
平時は恐らくカップルや老夫婦、家族連れといったそれなりに多くの観光客で賑わっていたのかもしれないが、
現在は虫の音さえ聞こえない深夜、しかも、殺し合いという状況下。
この湖近辺には、人の姿は一人として確認出来ない。

いや、訂正しよう。遊歩道付近に設置された木製のベンチの一つに座り、
湖を眺めている一人の殺し合いの参加者がいた。
青みがかった黒と青の毛皮を持った、雌の獣竜。名前をリュードと言った。

リュードはベンチに腰掛けながら、夜空に浮かぶ満月の光を反射し輝く湖を、
ぼんやりと見つめていた。

「綺麗……」

揺れる水面が光輝くその光景を見て、リュードが感嘆の声を漏らす。
その声は鋭さ、凶暴ささえ感じる外見からは想像つかない程、若々しい、可愛らしい少女の声音だった。

彼女はとある極秘機関の研究施設で創造された生体兵器だった。
故に、生まれた時からそのほとんどを施設内の特別保育区画で過ごしてきた。
監視カメラと頑強な壁、天井、扉によって厳重に監視、管理されていたリュードは、
現在見ているような「美しい自然の光景」を間近で見た事が皆無だったのだ。
彼女が見ていた物は殺風景かつ無機質な研究室、実験室、自分の部屋。
たまに青空の見える外に出して貰える事もあったが、そこは高圧電流が流れる鋼鉄製のフェンスに囲まれ、
アサルトライフルを装備した警備兵が常駐する見張り台が幾つも存在し、更に何も見えないように見える空には、
極秘機関独自開発の不可視電磁バリアーが展開されていると言う、解放感とは程遠いものだった。

それ故、リュードにとって、目の前に広がる景色は非常に目新しく、美しく、感動的なもの。
いや、研究員も、警備兵も、フェンスも監視カメラも何も無い、「自由に自己意思で行動出来る状態」は、
彼女にとって何物にも代え難い感動であった。

「……殺し合い、かぁ」

リュードは自分の首にはめられた、金属製の首輪に触れ、その冷たく硬い感触を再確認する。



突然、何の前触れも無く、自分はいつもの保育室では無く、大勢の人々、
しかも明らかに研究員では無い普通の人々が大勢いる知らない大きな部屋にいた。
そして現れたセイファートと名乗る、黒い服を着、黒と白の毛皮を持った狼獣人の女性が、
「最後の一人になるまで殺し合え」と、殺し合い――バトルロワイアルの開幕を宣言したのである。
当然人々は抗議したが、リュードは特に何かを言う訳でも無く、
ただ、周囲の様子や、セイファートの様子を見回すだけだった。

その途中で、リュードは自分と容姿が良く似た雌獣竜の姿を発見する。
いや、毛皮の色が自分と色違いなだけで、後は全く一緒であった。
角の形状、しなやかに見え強靭な筋肉で覆われた肉体、形の良い乳房、長い尻尾、猛禽類のそれのような翼。
色が異なるだけで、全て自分の身体的特徴と酷似、いや、瓜二つ。
そう言えば、以前、研究員が話しているのを聞いた事がある。
自分と同様のコンセプトを用い、自分の妹にあたる生体兵器のセカンドタイプを開発している、と。
もしかしたら、あの自分と瓜二つの雌獣竜がそれなのかもしれない。

だがその思考は、突如人々と自分の首に金属製の首輪が出現した事により中断される。
そして、一人の人間の若い男性が、首輪を爆破され、殺された。
リュードは特に戦慄する事も、悲鳴をあげる事も、気分を悪くする事も無かった。
リュードと瓜二つの雌獣竜も同様だった。



「んー……どうしようかな。殺し合い……」

そして今、リュードは思考する。この殺し合いにおいて、自分はどう動くか。

「そう言えば支給品、私は何が支給されたんだろ」

まだ支給品の確認を行っていなかった事を思い出し、自分の傍に置いていたデイパックを開ける。
そして中から出てきた二つのランダム支給品。
一つはFNミニミ。ベルトリンク給弾方式の軽機関銃。
そしてもう一つはFIM‐92スティンガー。最大射程は4000Mにも及ぶミサイルランチャー。
どちらも対人兵器と言うには明らかにオーバースペックな代物である。

「おー。これはアタリだね」

そう言ってリュードは弾薬帯が収納されたケース付きのFNミニミを、片手で軽々と持ち上げる。
軽機関銃とは言え、7㎏もの重量があるのだが。
細く、華奢にも見える肉体からは想像出来ない程の筋力が彼女にはあるようだ。

「ミサイルランチャーは、予備の弾が少ないなぁ。ミニミを主力にしよう。こっちは予備弾も多いし」

FIM‐92スティンガーをデイパックの中に押し込み、ミニミを装備する。
そして再び、自分がこの殺し合いにおいてどう行動するべきか考え始める。
リュードは開催式の時に発見した、自分と瓜二つの雌獣竜の事が気になっていた。
彼女は一体何者なのか、それが知りたかった。
名簿を開いて見る。すると、一番最後の「レオーネ」という名前だけがやけに気になった。

「……」

確証は無い。何の確証も無いが、あの自分と瓜二つの雌獣竜はこの名前だと思った。

まずは彼女を探す事にして、ならば、他の参加者についてはどうするべきか?
正直に言って、全く見ず知らずの人間や獣人達を助けようとは思わない。
だが、かと言って、進んで彼らを殺しに行く気にもなれない。
リュードは生体兵器として戦闘訓練や強化訓練を何度も行ってきたが、
性格そのものはいたって温厚で、むしろ争いは好まなかった。
勿論、殺せと指示されれば、しっかり殺す。その際に、特に躊躇や後悔と言った念は無い。
だが、今現在、自分に指示を送る者もいない。

「殺し合いに乗っている人だけなら、殺しても大丈夫かな」

この殺し合い、ゲームに乗る者もいれば、恐らく乗らない者もいるだろう。
もしかしたら、泣き叫んで助けを求める人も大勢いるかもしれない。

「……よし」

リュードの行動方針は決まった。
自分と瓜二つのあの紫がかった黒と赤の毛皮を持った雌獣竜――恐らくレオーネという名前――を、
探し出す。その道中、殺し合いに乗っている者は殺し、乗っていない者は放っておく。
行動方針が定まった所で、リュードは再び湖の方へ向き直す。
相変わらず、満月の光が湖の水面に反射しキラキラと輝いている。

「……もうちょっと、見ていこう」

リュードはミニミとデイパックを傍らに置き、ベンチに腰掛け、再び湖を眺め始めた。


【一日目/深夜/B-2湖】

【リュード@オリキャラ】
[状態]:健康
[装備]:FNミニミ(200/200)
[所持品]:基本支給品一式、5.56㎜×45㎜200発金属リンク(10)、
FIM‐92スティンガー@自作キャラでバトルロワイアル(1)、70㎜ミサイル(5)
[思考・行動]:
0:「レオーネ」と思われる自分と瓜二つの雌獣竜を探す。
1:殺し合いに乗っている者は殺し、乗っていない者は放っておく。
2:もう少し湖を見ていく。
[備考]:
※自分と瓜二つの雌獣竜(レオーネ)の名前を直感的に探り当てました。


≪オリキャラ紹介≫
【名前】リュード
【年齢】不明(精神年齢20代前半)
【性別】女
【職業】生体兵器
【性格】温厚だが、殺人に対する忌避感は皆無
【身体的特徴】青みがかった黒と明るい青の毛皮を持った直立二足歩行の獣竜。
身長は206㎝と長身。よく引き締まった、魅力的な身体付き
【服装】全裸(服を着るという概念が無い)
【趣味】読書
【特技】翼を使っての飛行、本能的に仕込まれた格闘術(柔道、空手他)、銃火器の扱い
【経歴】日本風国家内のとある極秘生体兵器研究施設で生み出された。
同様のコンセプトで生み出された「妹」に当たる存在がいるが、
彼女は認知していない。「リュード」はコードネーム
【備考】敵とみなした相手には容赦無く、原型を留めぬ程にまで破壊する


≪支給品紹介≫
【FNミニミ】
1974年に完成した分隊支援火器。非常に軽量かつ完成度が高く、
米軍や自衛隊を始め世界各国の軍隊で制式化されている。
ミニミとはフランス語の「mini-mitrailleuse(小型機関銃)」の略。

【FIM‐92スティンガー@自作キャラでバトルロワイアル】
1978年に米軍制式となった携行地対空ミサイル発射器。
出典元の自作キャラでバトルロワイアルでは本ロワの参加者の一人でもある、
男子二十六番:森屋英太に支給され、後に男子十九番:玉堤英人の手に渡った。




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最終更新:2010年01月03日 11:31
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