30話「それは危険な出会いなの」
森の中を歩き続けてきた赤いノースリーブジャージ姿の青年、小野妹子は、
ようやく目的地の湖に到着する事が出来た。
「ここが湖か……何だか公園みたいな感じになってるな」
街灯や遊歩道、ボートの貸出所が存在する事から、自然公園のような感じなのだろう。
きっと平時ならば観光客で賑わっていたのかもしれないが、今では人っ子一人見当たらない。
とりあえず時計回りに湖を見回ってみようと歩き出したその時。
ドゴオオオオオオン!!!
「うわあああああああああああああああああ」
ボート貸出所の木造の建物が突然大爆発を起こした。
爆風で妹子は思い切り吹き飛ばされ、赤色のアスファルトの上を転がる。
飛び散った建物の小さな破片が周囲に降り注いだ。
両腕に出来た擦り傷と身体の打撲の痛みを我慢しながら起き上がり振り返ると、
黒煙を上げながら炎上するボート貸出所の光景が。
「な、何が起きたんだ!?」
「ごめんなさい、大丈夫?」
不意に女性の声が背後から聞こえた。妹子が声のした方向に振り返る。
「――――ッ!!?」
そこに立っていた「そいつ」に、妹子の顔が驚愕の色に染まる。
それは片手に携帯用ミサイル射出器「FIM‐92スティンガー」を携えた、青い雌獣竜・
リュードだった。
勿論、妹子の生きる世界には存在し得ない生物である。妹子が驚くのも無理は無い。
「安心して。あなたを殺す気は無い。ちょっと、これの試し撃ちをしただけ」
そう言うと、リュードはスティンガーを妹子に見せつけるように動かす。
妹子はまだ驚いていたが、日本語を話しているので少なくとも意思の疎通は可能と考え、
目の前の怪物に話し掛けてみる事にした。
「えーと、
殺し合いをする気は無い、というのは、本当なんですか?」
「……あなたは殺し合いに乗っているの?」
「い、いいえっ!! 乗っていません!」
「……そう? ならいい」
どうやら、目の前の怪物は自分に敵意は無いようだ、と、妹子は判断する。
「じゃあ、私は行くわ」
「あ、待って下さい、えーと……」
「リュードよ。あなたは?」
「小野妹子です。あの、リュードさん、僕、捜している人がいるんです! 一緒に捜しては頂けませんか!?」
妹子はリュードに同行を求めた。
これから先、捜し人である聖徳太子を捜索するのに、ロクな武器が無い状態では非常に不安だった。
「えー、嫌だ」
だが、リュードからすれば殺し合いに乗っていない妹子の事などもはやどうでも良い事だった。
従って協力するつもりも一切彼女には無かった。
「そんな、お願いします!」
「嫌」
「お願いします! 自分一人だけじゃ、苦しいんです!」
「嫌」
「お願いします!!」
「しつこい」
しばらく、燃え盛る火災現場のすぐ近くで、青年と雌獣竜の押し問答が続いた。
そして数分後。折れたのはリュードの方だった。
「……負けた。協力してあげる」
「ありがとうございます!!」
リュードの尻尾にしがみ付いた状態で礼を言う妹子。それを呆れた表情で見つめるリュード。
こうしてノースリーブジャージ青年にして元遣隋使、小野妹子と、
生体兵器の青い雌獣竜、リュードは共に行動する事となった。
「ところで、イモコ。あなた、武器は?」
「えっ、僕は……ああ、あったあった。これ、なんですけど」
そう言って妹子が見せたのは、落とした拍子に少し傷が付いてしまった、大沢木小鉄のリコーダー。
「そんな物で戦う気?」
「しょ、しょうがないじゃないですか! これしか支給されなかったんですからっ!!」
「ハァ……ちょっと待ってて」
そう言うとリュードは近くの鉄製の手すりに近付き、持っていたスティンガーを置くと、
その手すりを掴み、支柱との接合部分をその怪力で破壊し、外してしまった。
そして繋がっていたもう片方も力ずくで取り外し、手すりの一部を持って妹子に近付いてくる。
「はい」
そう言って妹子に鉄パイプのようになった手すりの一部を手渡し、妹子はそれを受け取った。
長さは1M程で、そこそこの強度とリーチを合わせ持っている。少なくともリコーダーよりは遥かに使える武器になった。
「あ、ありがとうございます」
「とりあえず、しばらくはそれで我慢してね」
リュードはデイパックにスティンガーをしまうと、中からもう一つの武器、FNミニミを取り出し装備した。
スティンガーもミニミも見た事が無い妹子は目を見張る。
「それじゃあ、街の方へ行こうか。街なら人も集まりやすいだろうし」
「は、はい」
リュードと妹子は北の方角、市街地方面へ伸びる道路を進んで行った。
その二人の後をこっそりついてくる、白い犬獣人の女性、大村寿美の姿があった。
右手にリボルバー拳銃、エンフィールドNo.2を携え、前方を歩く二人に気付かれない程度に、
絶妙な距離を保ちながら後をつける。
(まさか、あんな威力の兵器を支給されてる奴がいるなんて……)
寿美は先程、リュードがスティンガーのミサイル弾を試射した際に起こった爆発を目撃していた。
あんな威力を持つ兵器を持った相手に、拳銃で正面から挑むのは自殺行為と考え、
こっそり後をついて不意を突くつもりでいたのだ。
いや、それだけでは無い。実は寿美は現在位置や方角を知るのに必要な小型端末機・デバイスを、
湖に来る前、うっかり落として破損してしまった。
なので二人の後をついていけばいつかこの森を抜けられる、とも思っていた。
(とにかく、しばらくはあのケモ竜とジャージ男の後をつけていこう。
そうすれば多分、この森も出れるかもだし、不意を突いて殺す事だって出来るはず。
……考えが甘いかなぁ。いや、何とかなるでしょ。うん)
そんな事を考えながら、寿美はリュードと妹子の後をつけて行った。
【一日目/黎明/B-2湖周辺】
【小野妹子@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和】
[状態]:両腕に擦り傷、全身にダメージ(小)、市街地方面へ移動中
[装備]:鉄パイプ(手すりの一部)
[所持品]:基本支給品一式、小鉄のリコーダー@浦安鉄筋家族
[思考・行動]:
0:殺し合いには乗らない。とにかく聖徳太子を捜す。
1:リュードさんと行動を共にする
2:襲われたら……どうする?
3:市街地へ向かう。
[備考]:
※単行本第九巻第168幕「聖徳太子の持っている木の棒」より後からの参戦です。
【リュード@オリキャラ】
[状態]:健康、市街地方面へ移動中
[装備]:FNミニミ(200/200)
[所持品]:基本支給品一式、5.56㎜×45㎜200発金属リンク(10)、
FIM-92スティンガー@自作キャラでバトルロワイアル(0/1)、70㎜ミサイル(5)
[思考・行動]:
0:「
レオーネ」と思われる自分と瓜二つの雌獣竜を捜す。
1:殺し合いに乗っている者は殺す。
2:イモコと行動を共にする(不本意だが)。
3:市街地へ向かう。
[備考]:
※自分と瓜二つの雌獣竜(レオーネ)の名前を直感的に探り当てました。
【大村寿美@オリキャラ】
[状態]:健康、小野妹子とリュードの後をつけている
[装備]:エンフィールドNo.2(6/6)
[所持品]:基本支給品一式(デバイス破損)、380エンフィールド弾(30)
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗り優勝を目指す(が、まだ少し迷いがある)。
1:前方の二人(小野妹子、リュード)に見つからないように後をつける。
[備考]:
※デバイスを破損しました。自分で現在位置、時刻、方角が確認出来ません。
※B-2一帯に爆発音が響きました。
※B-2湖のボート貸出所が炎上し、煙を上げています。
最終更新:2010年02月10日 01:51