18話「野良ミャオ」
チッ、一体どういう事なんだい、
殺し合いって。
アタシ、ドーラ・システィールは自分の部屋でいつも通り眠ったはずなんだけど、
目覚めたら妙なウルフリングの女が主催の殺し合いとやらに参加させられていた。
それだけじゃ無い、周りには大勢の人間や獣人がいて、
明らかに戦いとは縁の無さそうな奴がほとんどに見えた。
そして今アタシがいるのは海の見える夜の砂浜。
空には満月が輝いていて、影が出来るくらい明るい。
「最後の一人になるまで殺し合え、ねぇ……酔狂にも程がある」
おまけに首には爆破装置付きの物騒な首輪まではめて。
下手な事すれば、開催式の時のあの人間の男みたいになっちまうって訳か。
ったく、アタシは犬じゃねぇってんだ。首輪なんて……。
まあとにかく、支給品とやらを確認するかね。
地図に、名簿、妙な小さな機械、ランプ、かい? ペンとメモ帳、
これは……水と、パンみたいだねぇ。どっちも見た事も無い入れ物に入っているけど。
それで後は……何だいこれは? 武器……なのか?
説明書が付いているねぇ。どれどれ……。
「ふうん……」
成程、この「自動拳銃」って奴は超小型の大砲って感じかねぇ。
このグリップって所を握って、引き金を引けば弾丸が発射されるって事かい。
これは中々、アタリの武器を引いたみたいだね。
出来ればいつも使い慣れているボウガンが良かったけど。
「!! 誰だい!?」
「うわあ! 待ってちょ! 俺は殺し合いには乗ってないちょ!」
気配を感じ、自動拳銃――H&K USPを構えて振り向くと、
そこにはいかにも貧弱そうな人間の男が立っていた。
アタシが銃を突き付けた事に怯えたのか、男は両手を上げて戦意が無い事を訴える。
「う、撃たないでちょ」
「アンタが変な真似しなきゃ撃たないよ。アンタ、殺し合いに乗っていないって言ったけど、
本当かい?」
「ほ、本当だちょ!!」
ふうん、嘘はついていないようだね。まあ、例えついていたとしても、
こんな貧相な男、すぐに締め上げれば終わりだけどね。
アタシは銃を下ろす。すると男も顔に安堵の色を浮かべて両手を下ろした。
「悪かったね。アタシはドーラ・システィール。アンタは?」
「は、春巻龍ちょ」
ハルマキリュウ? 変な名前だねぇ。
まあいいか。見た感じ、連れて行っても完璧に足手纏いになりそうだし、
支給品何持っているのか聞いて、いい支給品だったらブン盗っていこうか。
「リュウ、アンタ支給品は何なんだい?」
「支給品? えーと、ちょっと待ってちょ……」
そう言うとリュウは地面に座ってデイパックの中身を漁り始めた。
呆れたね、こいつまだ自分の支給品を確認していなかったのかい。
「あ、これみたいちょ」
そう言ってリュウは取り出した物は何の変哲も無い鉄パイプ。
うーん、アタシが持っているUSPの方が何倍も良い武器だね。
「分かった。それじゃあ、頑張りな」
アタシはそう言い残しその場を後にしようとした。
これ以上こいつに構う必要も無い。
ところが。
「待ってちょ~! 置いてかないでちょ~!」
リュウの奴、アタシの右足にしがみ付いてきやがった!
「離しな! アンタなんかに構ってられないんだよ!」
「そんな事言わないで一緒にいてちょ~! 死にたくないちょ~!!」
リュウは泣きじゃくりながらアタシの右足を掴んで離さない。
しかも貧相な身体からは想像出来ないような凄い力だ!
「離せ!」
「嫌ちょおおお!!」
アタシは段々苛々してきた。
そして。
「離せっ……て言ってるんだよ!」
「えっ――」
アタシは足にしがみ付くリュウの顔面に銃口を突き付け、何度も引き金を引いた。
「ハァ、ハァ、やっちまったね……」
アタシの足元には、頭部が弾け中身の赤黒い何かが漏れ出した男の死体が転がっている。
殺すつもりは無かったんだけど、余りにしつこかったから、つい。
しかし、この自動拳銃とやらは中々の威力だねぇ。これは使えるよ。
さて、これからどうしようか。名簿を見る限り、この殺し合いにはアタシの上司である、
アイン・マクドガルや、同僚知り合いは一人も呼ばれていないみたいだ。
それなら――殺し合いに乗るのもいいかもねぇ。
別に死ぬのが怖い訳じゃ無いけど、まだアイン隊長の元で働きたいしね。
アタシはリュウの持っていた鉄パイプを拾い上げ、腰布に差し込んだ。
銃の弾丸が切れた時の予備武器にでもしよう。
デバイスで現在位置を確認すると、ここは地図で言う所のC-5砂浜みたいだね。
ここから西南の方向に向かうと市街地があるらしい。
人が集まりやすい場所と言ったら、やっぱり建物が密集する市街地、だろうね。
「それじゃあ、行くとしようかねぇ」
アタシは市街地がある西南方向に向かって歩き出した。
【春巻龍@浦安鉄筋家族 死亡】
【残り 43人】
【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康、返り血(少)、市街地方面目指して移動中
[装備]:H&K USP(10/15)
[所持品]:基本支給品一式、USPの予備マガジン(5)、鉄パイプ@SIREN
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗り、優勝し、元の世界へ帰還する。
1:市街地へ向かう。
[備考]:
※バド村殲滅作戦以前からの参戦です。
≪支給品紹介≫
【H&K USP】
ドイツのH&K社が1993年に開発したプラスチックフレームの自動拳銃。
USPは「Universal Selfloading Pistol(汎用自動拳銃)」の略。
幾つか口径モデルがあるが、本ロワに登場する物は9㎜×19㎜口径モデル。
【鉄パイプ@SIREN】
何の変哲も無い鉄パイプ。リーチと威力が平均的で使い勝手は良い。
ゲーム中においては竹内多聞が使用する。
最終更新:2010年01月14日 02:02