38話「Doll thrown away」
露出度の高い衣服を身に着けたの狐獣人の女性、ドーラ・システィールは市街地を訪れていた。
スタート地点である海岸の砂浜で縋り付いてきた鬱陶しい人間の男を自分の支給武器であるH&K USPで射殺した後、
周囲を警戒しつつ、獲物を探しながらこの市街地までやって来たのだ。
「何だか見た事無い建物が多いねぇ」
中世ヨーロッパ風の建物しか見た事の無かった彼女にとって、
アスファルトで舗装された道路や路肩に停めてある自動車、ガスでは無く電気で点く街灯に、
洗練された外観を持つコンクリート製の高層ビルなど、見る物全てが新鮮で興味を引かれた。
周囲を見渡しながら道路を歩くドーラだったが、その足が不意に止まった。
前方からかなりのスピードで走ってくる人影が見えたからだ。
よく見れば刀身に何やら風のようなものを纏わせた長剣を持っている。
元々
殺し合いに乗る気で他参加者を探して歩いていたドーラは特に動じる事も無く、
USPを前方の人物に向けて構え、引き金を引いた。
ところが、放たれた銃弾は何やらバリアのようなもので跳ね返されてしまった。
「何っ!?」
予想外の出来事にドーラは一瞬戸惑った。
「はあっ!!」
そしてその人物がドーラに向かって剣を振り下ろす。
風を纏ったその刀身は強力な斬撃となってドーラに襲い掛かる。
しかしドーラも幾多もの死線を潜ってきた歴戦の士、避けるのは難しく無かった。
間一髪刃を回避したドーラが改めて攻撃してきた相手を見る。
裸同然のビキニ鎧の上に白いマントを羽織った、桃髪の美少女。
明らかに自分より遥かに年下の、まだ子供と言っても良いようなその容姿に、ドーラは若干呆れたような口調で言う。
「なんだい、ガキじゃないか」
「ガキ言うな!」
ガキと言われた事に腹を立てたのか、少女が再びドーラに斬り掛かる。
しかし軌道を完全に読まれているのか、あっさりかわされてしまう。
自分の繰り出す攻撃が当たらない事と余裕綽々で相手がかわす事に少女は段々苛立ちを募らせる。
そして自分の魔力を刀身に集中させ、風に代わり烈火の炎を纏わせた。
「へえ……アンタ魔法剣士か何かかい」
「その通りよ。私は魔法剣士、
エイミス・フロリッヒャー。今度こそ仕留めさせて貰うわ。
そんでもってその拳銃頂く」
「悪いけどアンタみたいなガキにやられる程、アタシは甘くない、よ!」
言い終わるのと同時にドーラがエイミスに向かって銃を発砲する。
しかしやはり銃弾はバリアによって弾き返されてしまった。
「ふふっ。無駄よ……そんな物効かないわ」
不敵な笑みを浮かべるエイミスだったが、よく見れば少し息を切らしていた。
何度も剣を振り下ろすなどの激しい動作を続けていたせいもあるだろうが、それだけでは無い。
剣の刀身に炎や風を纏わせて攻撃する、物理攻撃を無効化するバリアを張る。
これらはエイミス自身の魔力によって発動させているのだが、当然それは使用者本人の体力を消費する。
長時間連続で使用していれば疲労がたまり、魔法の効果は薄れ、最後には発動自体出来なくなってしまう。
ドーラはエイミスの攻撃をかわしつつ銃撃を仕掛けていたが、
その間、エイミスの様子を観察していた。
この冷静な分析力は流石歴戦の女スナイパーと言った所か。
(息切れしてる……顔色も少し悪い……どうやら魔法の長時間発動で、
疲れてきてるみたいだねぇ。もう少し遊ばしといてやれば、バリアも弱くなるかもねぇ)
果たしてドーラの予想通り、徐々にエイミスの顔には疲労の色が濃くなってきていた。
そして刀身に纏わせた魔法効果もバリアもかなり弱くなってきていた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……く、くっそおおおおおお!!」
それでもなお斬り掛かってくるエイミス。
数時間前に彼女は別の参加者を襲っていたが、取り逃がしてしまった。
元々プライドの高い彼女にとっては我慢ならない屈辱だった。
だから今相手にしているこの狐獣人の女は何としても殺したかった。
しかし、余りにドーラを倒す事に集中し過ぎていたエイミスは、
いつしか自身の周囲を覆わせていたバリアが消滅している事に気付かなかった。
そしてドーラはエイミスの右太腿目掛けてUSPを発砲した。
「ぎゃあっ!」
すると、今度は銃弾はエイミスの右太腿を掠めた。
掠めたと言ってもそこそこ深く抉れ、赤い血液が流れ出てアスファルトの上にポタポタと垂れた。
激痛に怯み、思わず傷口を押さえようとするエイミス。
だが、次の瞬間、エイミスの何も身に着けていない部分の腹部に突き上げるような衝撃が走る。
「がっ……!」
ドーラがエイミスの腹部を思い切り蹴り上げたのだ。
あっという間に呼吸困難に陥り、口から胃液らしきものを吐き出し、腹を押さえ苦しみ悶えるエイミス。
嘲笑うかのような笑みを浮かべたエイミスの背後に回り込み、両腕でエイミスの首を締め上げた。
女性とは思えないような凄まじい力でエイミスの気道ど頸動脈が圧迫される。
(く………苦しい……こ…殺される……の………?)
もはや声を出す事も出来ない。エイミスは何とかドーラの腕を外そうと試みるも徒労に終わる。
そして段々視界が暗くなり、聞こえる音も遠くなり、妙な心地良さがエイミスを襲ってきた。
(……死に……たく………な…い…………な……あ……………)
格好悪い。自分は誰も殺せないまま、この狐女に殺されるのだ。
エイミスは薄れゆく意識の中、自分自身を嘲った。
そして数秒もしない内に、エイミスの意識は途絶えた。
「ふう……落ちたみたいだね」
足元でぐったりと横たわる桃髪の美少女魔法剣士を見下ろしながらドーラが言う。
桃髪の美少女――エイミスはまだ息があった。締め技で気絶させたのだ。
すぐに撃ち殺す事も出来たが、ドーラには自分にいきなり襲い掛かってきたこの少女に、
何かお仕置きをしてやりたいと思っていた。
周囲を見渡し、適当な路地裏の入口を見付けると、ドーラはニヤリと悪魔的な笑みを浮かべた。
路地裏には少し開けた場所があり、どうやらゴミ捨て場になっているようだった。
生ゴミの入った黒いゴミ袋や、壊れて使えなくなった家電製品、錆付いた廃車などが多く山積みになっている。
「よっ…こい、せっ、と!」
ドーラはこのゴミ捨て場まで気絶しているエイミスとエイミスの所持品を運び、
そしてそれらを汚い地面の上に下ろし、自分のデイパックの中を漁り、ランタンを取り出して明かりを灯す。
薄暗かったゴミ捨て場の様相と、今この場にいる二人の姿が明かりに照らされる。
「よし……いい感じだねぇ。それじゃあ、この小娘にお仕置きと行こうかね」
ドーラは地面に横たわるエイミスのマント、そして全身の必要最低限な部分を覆っているビキニ鎧、
履いている靴を乱暴に剥ぎ取り、エイミスが持っていた長剣でそれらをズタズタにしてしまった。
これでエイミスは現在、一糸纏わぬ、まさに生まれたての姿になってしまった。
同年代の少女と比べてもかなり豊満で魅力的な部類に入る身体が露わになる。
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらドーラは今度は、エイミスを生ゴミ袋が大量に積んである場所まで引き摺り、
そして抱え上げると、ゴミ袋の山へ放り投げた。
「ぷっ…あっはっはっはっはっ! いい眺めだねぇ!」
腹を抱えて大笑いするドーラの目の前には、ゴミ山に無惨に捨てられた全裸の美少女。
それはさながら、飽きて捨てられた人形のようだった。
「起きたらどんな顔するか楽しみだけど……私も別の獲物を探さなきゃね。
じゃあねエイミスとやら。起きたらまず着る物探しな。あ、せめてもの慈悲で剣は残してやるよ」
ドーラはランタンの明かりを消し、自分のデイパックからUSPの予備マガジンを取り出してUSPのマガジンを交換し、
エイミスのデイパックの中から水と食糧を抜き出して自分のデイパックに入れ、
ゴミ山で未だ気を失ったままの真っ裸のエイミス・フロリッヒャーに別れを告げ、ゴミ捨て場を後にした。
ゴミ捨て場の地面にはエイミスが使っていた長剣――ヤマトの剣が突き刺さっていた。
【一日目/黎明/D-4市街地】
【ドーラ・システィール@FEDA】
[状態]:健康、返り血(少)
[装備]:H&K USP(15/15)
[所持品]:基本支給品一式、USPの予備マガジン(4)、鉄パイプ@SIREN
[思考・行動]:
0:殺し合いに乗り、優勝し、元の世界へ帰還する。
1:獲物を探す。
[備考]:
※バド村殲滅作戦以前からの参戦です。
【エイミス・フロリッヒャー@オリキャラ】
[状態]:気絶、肉体的疲労(大)、全裸、腹部にダメージ(中)、右太腿に掠り傷
[装備]:ヤマトの剣@増田こうすけ劇場ギャグマンガ日和
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:(気絶中)
[備考]:
※
朝倉清幸の名前と容姿を把握しました。
※能力には制限が掛かっています。
※あとどれくらいで目覚めるのかは不明です。
※疲労蓄積により魔法効果発動が現在困難です。
※D-4一帯に銃声が響きました。
※エイミス・フロリッヒャーの衣服はドーラ・システィールによってズタズタにされ、
D-4市街地にあるゴミ捨て場に放置されています。
最終更新:2010年02月06日 10:54