27話「異種族コミュニケーション」
「すっげー! これ着ぐるみじゃねーの? 本物なの!?」
「そ、そうだよ……あんま触んなよ」
俺、
石川清憲は困惑していた。
今俺の身体のあちこちを探っているこの小学生ぐらいの人間の少年。確か大沢木小鉄と名乗った。
そんなに竜が珍しいのだろうか。決して希少種族では無いはずだが。
少なくとも街を歩けば普通に見かける程度はいる。
確かに人間や狼獣人と比べるとぐっと数は少ないかもしれないけど。
しかしはしゃぐ小鉄をどうにか落ち着かせて話を聞いてみると、何となく、謎が解けた。
小鉄が言うには、俺のような竜族や獣人といった存在は架空の生物でしかないと言うのだ。
それだけじゃない。住んでいる住所を聞いたら全く知らない国家の名前や地名が出てくる。
俺の方も自分が住む国の名前や街の名前を話しても全く知らないという答えが返ってきた。
これらの事から俺はある結論を出した。
「なあ小鉄、もしかしたらさ」
「何だ? キヨノリ」
「俺が住む世界とお前が住む世界、全く別の、異世界なんじゃないかな」
ああ、やっぱり。小鉄は首を傾げて全く理解出来ていないって感じだ。子供には難し過ぎたか。
いやそれ以前に何だかこいつ、こういう言い方はまずいけど「馬鹿」って感じがするしなあ。
「どう意味だ? わかんねー」
「あーつまりな、うーんと……」
その後、俺は小鉄に異世界の概念などを説明しようとしたが、この子に分かるように説明するのは不可能に近いと悟り、やめた。
当の本人もあまり気にしていない様子だしな。
「あ、そういえば支給品まだ確認していなかったな。小鉄、お前は?」
「え? 何が?」
「支給品だよ支給品。確認したのか? ほら、お前が今背負ってるデイパックの中身見たのかって事」
「あー見てないや」
「一緒に確認しよう」
俺と小鉄は砂浜で支給品の確認を行う事にした。
まず俺。出てきた物はでっかい剣。斬首に使われる処刑道具の一種「エグゼキューショナーズソード」。
見た目程重くは無い。十分武器として使えそうだ。
俺のランダム支給品はこれだけか……小鉄は?
「小鉄はどうだ?」
「えーと地図に名簿にランプみたいなのに……」
「いや基本支給品はいいからランダム支給品の方を言ってくれ」
さっきから思っていたんだけど、こいつ、今自分が置かれている状況分かってんのかな?
全然緊張感が無いっていうか、下手したら自分が殺されるって事、自覚してないっぽい。
いや、してないんだろうな。こいつ多分この
殺し合いのルール何も分かってない。
「出てきたぞキヨノリ。この二つがそうかー?」
「ん。どれどれ……」
小鉄がデイパックから取り出し砂浜の上に置いた二つのランダム支給品。
一つはごく一般的な文化包丁。もう一つは発炎筒三本セットだった。
「成程ね……小鉄、とりあえず包丁は装備しとけ」
「おう、わかった」
文化包丁を小鉄に装備させ、俺は名簿を広げる。
俺と小鉄含めて48人の名前が五十音順で印刷されている。
「
石川清隆」? 俺と名前が似ているな……でも知り合いでもなんでも無い。
どうやら俺の知り合いは誰も呼ばれていないようだ。
「小鉄、この中でお前の知り合いはいるか?」
「え? うーんと……」
小鉄に名簿を見せて知り合いがいるかどうか尋ねる。
しばらく名前を目で追って見ていた小鉄だったが、しばらくして三人の名前を挙げた。
「西川のり子」「春巻龍」「仁ママ」の三人。
小鉄曰く、「西川のり子」は、小鉄のクラスメイトで関西からの転校生。
明るい性格で、小鉄の遊び仲間の一人との事。
「春巻龍」は自分のクラスの担任教師だが、生徒から借金をする、まともな授業をしない、
夏休みや冬休みといった長期休業に入ると高確率で遭難し数日から数週間行方不明になる、
教室を自分の居住空間に仕立て上げ教え子達から大顰蹙を買うなど、
おおよそ教師とは思えない人物らしい。確かに話を聞く限りだと教師以前に人間としてどうかと思うが。
「仁ママ」は遊び友達の一人の母親との事だが、家が極度の貧乏で金や食い物の事になると見境が無くなり、
非常に凶暴になるらしい。しかも逆ギレが得意技とか。見た目は山姥そのものだって?
「仁ママ」なる人物は本当に人間なのだろうか。
「とまあ、こんな所かな」
「そうか……」
とりあえず、警戒するべきなのは「仁ママ」だろうか。
「ところで、小鉄」
「ん? 何だ?」
俺はさっきから気になっている事を思い切って小鉄に聞いてみた。
「お前さ……今自分がどういう状況に置かれてるか、分かってる?」
「……どういう事?」
……やっぱりだ。ああ、もう、面倒くせぇ……。
「あのな、小鉄……」
俺は今自分達がさせられている殺し合い「バトルロワイアル」について小鉄に説明する事にした。
いや、っていうか何でこんな事しなくちゃいけないの?
~黒竜説明中~
~馬鹿少年難解中~
~黒竜呆れ中~
~馬鹿少年更に難解中~
~黒竜根気良く説明中~
~馬鹿少年徐々に理解し始めた模様~
「ゼェ……ゼェ……ゼェ……分かってくれたか? 小鉄」
「えーと、今俺達は『ばとるろわいある』っていうゲームをさせられてて、最後の一人が決まらないと帰れない……だっけ?」
「……まあいいよ。合格! ……あ゛~~~」
何だか色々不十分な気もするけど、もういいや。疲れたよ~。
「大丈夫かキヨノリ!?」
「あー大丈夫、大丈夫……ハハ」
精根尽き果ててへたりと砂浜に座り込む俺を小鉄が心配する。
全く、自分の命が危ないって時に俺はなんて荷物を抱えてしまったんだろう。
見捨ててどこかへ行くって事も出来るはずなんだけど、こうなったら見捨てる訳にもいかないしなあ。
――ついてないよ。ったく……。
うーん、キヨノリが頑張って説明してくれたみてーだけど、やっぱよく分かんねえなあ。
「ころしあい」「ばとるろわいある」聞き慣れ無い言葉が多過ぎる。
でも「ゲーム」とも言っていたし、最後まで脱落せずに残っていたら家に帰れるって事は何とか分かった。
にしてもこの首にはめられてるの、何なんだ? いくら引っ張っても全然取れないし。
あのせい、何とかって、犬みたいな頭をしたおばさんは何なんだろ。
まあいいや。のり子や馬鹿春巻、仁の母ちゃんもいるみたいだし、早く会いてぇな。
あー、仁の母ちゃんは……出来れば会いたくはねぇなー。
今何やってんだろ。あいつら。
何にしても学校が始まるまでには帰りてぇな。連続登校記録がストップしちまう。
【一日目/深夜/A-5砂浜】
【石川清憲@オリキャラ】
[状態]:精神的疲労(大)
[装備]:エグゼキューショナーズソード
[所持品]:基本支給品一式
[思考・行動]:
0:死にたくない。生き残る。
1:小鉄はどうするか……見捨てる訳にも……。
[備考]:
※「西川のり子」「春巻龍」「仁ママ」のおおよその特徴を把握しました。
※大沢木小鉄が自分とは別世界の人間だと判断しました。
【大沢木小鉄@浦安鉄筋家族】
[状態]:健康
[装備]:文化包丁
[所持品]:基本支給品一式、発炎筒(3)
[思考・行動]:
0:とりあえずキヨノリ(石川清憲)と一緒にいる。
1:ばとるろわいある……?
[備考]:
※本編最終話より後からの参戦です。
※バトルロワイアルのルールと性質について若干理解しました。
≪支給品紹介≫
【エグゼキューショナーズソード】
死刑囚の首を刎ねるのに使う斬首刑用の長剣。「エグゼキューショナー」とは「死刑執行人」という意味。
やや広めの身幅をした刀身を持ち、柄は短めに造られている。
刺突の必要は無いため切っ先は丸く造られているが、刃の切れ味は勿論鋭い。
【文化包丁】
「万能包丁」「三徳包丁」とも呼ばれる、菜切包丁と牛刀包丁の利点を兼ね備えた、
一般家庭でよく使われている包丁。
【発炎筒】
鮮やかな赤い炎を上げる筒状の道具。
本ロワで支給された発炎筒は自動車などに装備されているものと同じ。
本来は緊急時などに車道や路肩に停車した際に後続車に対し前方に危険や障害物がある事を知らせるために使う。
しかしロワ内においてはわざわざ自分の位置を知らせる事になるため使い所が難しいのではないだろうか。
最終更新:2010年01月27日 00:29