ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko2553 コウノトリ
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『コウノトリ』 17KB
虐待 差別・格差 実験 改造 妊娠 番い 虐待人間 うんしー ぺにまむ 思いついたので、出来悪いかも
コウノトリ ポマギあき
「ゆ~ゆゆ~♪」
森の中、番のまりさの隣でれいむは歌っていた。れいむは妊娠していた。
胎生妊娠である。下顎は少しばかり膨らんでいる。歌うのは胎教の一環で、ゆっくりとした赤ゆを産む為だった。
「ゆっくり、うまれてきてね♪」
「…ゆっくりうまれるといいね!」
まりさが、れいむに同調する。れいむは頷いて、それを好意的に取った。
この森には、れいむとまりさ以外は誰もいなかった。ほんの少し薄暗いのは気のせいだろうか。
夜が暗いのは勿論の事だが、昼も何だか薄暗かった。それでも、れいむはこの森から離れようとは思わなかった。
「なんてったって、ここにはごはんさんいっぱいあるからね!」
れいむがふかふかのクッションの上で呟いた。餌は何だか薄味だったが、まりさが常に狩りをして持ってきてくれる。
れいむには何の不満もなかった。ただ、産まれてくる赤ゆが、ゆっくりとしていればいい。それだけだ。
「むーしゃむーしゃ…しあわせー!」
「ゆ…れいむ、うんうんはだいじょうぶ…?」
「ゆゆ! そういわれると、なんだかうんうんしてきたくなったよ! ついでに、しーしーもするよ!」
「…いってらっしゃい」
「ゆん!」
れいむは自身に宿った新たな命の為に、跳ねて動く事をせずに這いずった。ベニヤ板でも掛けたような、仕切りがある場所で用を足す。
ここは格子状に地面に穴が開いていた。うんうんも、しーしーも臭いを残さず落ちていった。
「ゆーん…ゆーん…しーしー…すっきりぃ!」
れいむは満足すると、自分の下顎に目をやった。
「ゆゆん…ゆっくり…うまれてきてね…」
我が子が、ゆっくりと産まれてくることを願った。
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それから数週間が経った。まりさとれいむは、沢山の時間が流れたとしか感じる事が出来ない。ゆっくりだから。
しかし、本来ならば赤ゆはとっくに産まれているはず。赤ゆは、未だにれいむの中に潜んでいた。
「ゆぅ…ぜんぜんうまれてこないね…ゆっくりしすぎだよ…おちびちゃん…」
「ゆ…きっと、そのぶんゆっくりしたおちびちゃんがうまれてくるよ…」
「ゆ! そうだね! きっとそうだね!」
れいむは一日に何度も下顎に目をやると、落胆した。それをいつも、まりさが慰めてくれた。
れいむの食欲が増えるにつれて、まりさが狩ってくる餌の量も増えた。総ては生まれ来る子供の為に。
「がーつがーつ…ゆゆぅ…いっぱいたべても、おなかいっぱいにならないよ…」
「だいじょうぶだよ…おちびちゃんが、ほしがってるしょうこだよ…」
「ゆぅ…でも、えっとうはできるの…?」
「だいじょうぶだよ。まりさは、とってもかりがじょうずだからね…ゆっへん!」
「ゆゆ! かりのじょうずなまりさがいうなら、だいじょうぶだね!」
越冬の心配をするれいむに、まりさは強がって見せた。れいむはその姿を見たようで、安心して食事を再開する。
栄養が子供に行き届くのが、れいむ自身でも感じ取れた。如何にゆっくりしているだろうか。産まれる日が楽しみである。
「れいむ、うんうんは…?」
「ゆ…なんだかうんうんするきがないよ…しーしーもでそうにないよ…びょうきかな?」
「だいじょうぶだよ。きっと、おちびちゃんにえいようをすいとられてるからだよ」
「ゆ! それならゆっくりできるよ! おちびちゃんがほしがるものは、れいむ、なんでもあげるつもりだよ!」
「ゆ…きっといいおやになるよ…ゆん…」
「ゆぅ…? どうかしたの…?」
「ゆ! なんでもないよ! ちょっと、つかれちゃっただけだよ!」
「ゆゆ…まりさ、きょうはゆっくりやすんでね…れいむも、もうねちゃうよ…」
「……おやすみなさい」
数週間が過ぎて、れいむはうんうんもしーしーも出なくなっていた。以前は、かなりの量を排出していた。
不安に思ったが、まりさが子供に栄養を吸い取られているせいだという言葉を聞くと安心した。
子供に栄養が吸い取られてしまうならば仕方ない。総ては子供の為に。
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れいむが身籠もってから八ヶ月近くが経とうとしていた。れいむの食欲は増え、下顎は大きく膨らんでいる。もはや、自力では動く事が出来ないほどだ。
「ゆぎぎ…いったいどうなってるの…」
「だいじょうぶだよ! きっと、おおきなおちびちゃんなだけだよ!」
「い、いくらなんでもゆっくりしすぎでしょ…」
でっぷりと肥えた下顎を、血走った目で睨むれいむ。食事は機械的な作業と化し、子供に対する愛情も消え失せかけていた。
「がーつがーつ…ぐ、ぐるじい…」
「ゆ…れいむ、ごはんさんはじかんをかけてゆっくりたべようね…」
「ゆ…ゆ…ぞ、ぞうずるよ…ゆぎぎ…」
れいむは食事を中止した。気持ち悪い。吐きそうになる。
「ま、まじざ…れいぶ、ゔん゙ゔん゙…」
「ゆ! ゆっくりおしてあげるからね! ゆー…! ゆー…!」
「ゆぎぎ…もっど、ぞーっど…」
動けぬれいむの背中を押して、れいむをベニヤ板の仕切りがある場所まで連れて行く。
「ゆ゙ーん…ゆ゙ーん…ずっぎりぃ…」
「ゆ…ゆっくりもどるよ…」
「ゆっぐじ…りがいじだよ…」
用を足し終えると、れいむはまりさに押して戻された。
そもそも、苦しい。苦しいというのに、子供は生まれてこない。一体どういう事なのか。
れいむの頭はグルグルと混乱を始めた。しかし、子供の為と自身に言い聞かせた。総ては子供の為に。
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「う、うばれるうううううううううう!!!」
「ゆ! れいむ、ふかふかさんにむけてうむんだよ! ゆっくりだよ!」
「ゆぎぎ…わ、わがっでる…ゆっぐじじだおぢびぢゃん…」
十ヶ月目を迎えて、ようやく産気づくれいむ。まむまむの辺りが痛い。引き千切られそうだ。
いや、実際に千切れている。黒い餡子に塗れて、肌色のそれが見え隠れしていた。
あと一息。れいむは息を大きく吸うと、大声で言葉を発した。
「ゆっぐじうばれでぎでねええええええええええええええ!!」
「おんぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
れいむから痛みが、すぅーっと引いた。やり遂げた。ついにやり遂げたという達成感。
れいむは目を瞑り、涙を流した。これから、少し大きいけどゆっくりした赤ゆと、ゆっくりした生活をしていく。
歌を歌おう。追いかけっこをしよう。時に喧嘩する時があっても、すぐに仲直りしよう。
「れいぶ…いいおがあざんになるがらね…おぢびぢゃん!」
「おんぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
「……ゆ…?」
れいむが弛んだ下顎を踏みつけて、まむまむの辺りを見た。まむまむは、やはり大きく裂けていた。
餡子を垂れ流している事にも驚愕したが、まむまむより前の方にはもっと驚かされた。
「おぎゃああああああああああああああああ!!」
まず、飾りがなかった。これはまずい。非常にゆっくりしていない。
そして、手足があった。これはおかしい。実にゆっくりしていない。
髪も薄かった。これは危ない。大変ゆっくりしていない。
目も開いていないし、口も小さい気がする。ゆっくりしていない。ゆっくりしていない。ゆっくりしていない。
ゆ っ く り し て い な い 。
「なにごれえええええええええええええええええ!!?」
れいむは驚愕の声を上げた。喉が張り裂けんばかりの大声を上げた。
気が狂ったと云わんばかりの声を上げると、れいむはその赤ん坊に向かって突進していった。
「ゆっぐじでぎないおぢびぢゃんはいら…」
「だめだよ!」
「ぶびっ!」
れいむは、その赤ん坊を殺そうと思った。自分はあれほど、ゆっくりできない思いをしていた。
その苦痛に耐えたのは、ゆっくりした赤ん坊が産まれてくると信じていたから。
だが、今目の前にある赤ん坊は全くゆっくりしていない。時間を返せ。ゆっくりを返せ。
そう思い、発作的に赤ん坊に向かって突進した。しかし、まりさに突き飛ばされた。
弛んだ下顎の皮に身を滑らせ、地面に顔面をぶつけた。地面は、冷たく平らだった。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!! いだいいいいいいいいいいい!! なにずるのおおおおおおおおお!!?」
れいむは狼狽えた。一体、何故邪魔をするんだと。まりさは、れいむの問いかけに対する答えとは、全く違う言葉を発した
「にんげんさん…もうでてきてね!」
「ゆ…だ、だれにいっでるのおおおおおおお!!? にんげんざんっでなんのごどおおおおおおおお!!?」
「おんぎゃあああああああああああああああああああ!!」
赤ん坊の泣き声の中、まりさは森の奥に向かって声を響かせた。森の木々の四方に、すぅーっと光が差し込む。
「ゆ!?」
痛みも忘れて、その光を見たれいむ。まぶしかった。
その光はやがて大きくなり、光を背景に複数の白衣を着た人間達が入ってきた。
「産まれたか…」
「うまれたよ…」
「ゆ…な、なんなのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
狼狽えるれいむを相手にせず、人間は赤ん坊を抱きかかえた。赤ん坊は人間の赤子だった。
「いやいや、有り難いね。十三年ぶりの赤子だよ」
「ええ、何よりです」
「ゆ…もういいでしょ…はやくここからだしてね…」
「い、いっだいなんのごどおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
れいむの問いかけに答えてくれたのは、白衣の集団の内の眼鏡を掛けた男だった。
「れいむ、私が誰だか分かるかね?」
「じるわげないでじょぐぞじじいいいいいいいいい!!」
「ふむ、クソジジイというのは当たってるね。少なくとも、君からしてみれば」
「な、なにいっでるのおおおおおおおおおおおおお!!?」
「れいむ…なにもしらないほうがいいよ…ぜったいそうだよ…」
「じゃまじないでねええええええええええ!!」
れいむを咎めるまりさ。しかし、れいむはまりさを冷たく突き放した。まりさはそのまま黙りこんだ。
「おやおや、喧嘩は良くないな。我々の様になってしまうよ」
「いっだい…いっだいどういうごどなのがぜづめいじでね!」
「説明か…いいだろう。冥土の土産がてらにな…」
「ゆ゙…?」
白衣を着た眼鏡の男が、泣き喚く赤ん坊をもう一人に引き渡した。赤ん坊を抱えた男は、光の中へと消えていった。
眼鏡の男は、眼鏡の位置を手で直す。そして語り始める。
「我々は…核戦争を迎えた。金、権力…いずれも欲望が原因だった。そして、人類は罰を与えられた」
「がぐ…? よぐぼう…? ばづ…? なにいっでるのおおおおおおおお!!?」
眼鏡の男は、れいむの問いかけに答える事はなく一方的に話し始める。
「罰とは、遺伝子の欠損だった。人類は不妊体質となっていった。遺伝子の欠損が原因だった。
それらは核の影響によって、もたらされたものと私は考える。
我々は十三年前、シエラレオネで生まれた赤子を最期に赤ん坊を見る事は無かった。今し方まではな…!」
「わがらないいいいいいいい!! なにいっでるがわがらないいいいいいいいいい!!」
眼鏡の男が、再び眼鏡の位置を直すと言葉を続ける。
「すまんね。分かり易く云うと、君は人間の赤子を産む為に作られたゆっくりなんだよ」
「ぞ、ぞんなわげないでじょおおおおおおおおお!!?」
「いや、そうなんだよ。この森が不自然とは思わなかったかい?」
「ゆ゙…」
れいむは改めて周囲を見渡す。森林は薄っぺらく、空があるはずのそれは真っ白な天井だった。
「ど、どういうごどなのおおおおおおおおお!!?」
「どうもこうも、さっき言った通りだよ。君は人間の赤子を産む為に作られた、ある意味コウノトリな訳だ」
「ごうのどりじゃないいいいいいいい!! れいぶはぞんなんじゃないいいいいいいいい!!」
「そうかね…? では、案内してやろう」
「ゆぎいいいいいいいいい!! い、いだいいいいいいいいいいいい!!」
眼鏡の男はれいむの髪を掴むと、光の中へと連れて行った。まりさも後を追う。
真っ白にペイントされた廊下。廊下を進むと、やがてコウノトリ計画と書かれた大きな扉が目に入る。
眼鏡の男が扉の前に立ちはだかると、扉はあっけなく開いた。扉はシャッターの様に、横にスライドしていった。
「ゆ゙…な、なにごれええええええええええええ!!?」
「ゆ…」
壮観だった。アクリルケースが何階建てにも匹敵する高さに詰まれている。
その中にはゆっくりが、総てに詰まっていた。
「ゆぎいいいいいいいいい!! う、うばれるううううううううううう!!」
「やだああああああああああああ!! うびだぐないいいいいいいいいいい!!」
「ゆっぐじいいいいいいいいいいいいい!! ゆっぐじいいいいいいいいいいいい!!」
「あじずがわるがっだでずうううううううううううううううううう!!」
「わぎゃらないよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「むぎょおおおおおおおおおおお!! やべでええええええええええええええ!!」
「ゆんやああああああああああああああああああああああああああ!!」
いずれのゆっくりも下顎が膨れていた。れいむの様に。
やがて、その内の二匹のまむまむから赤子が産まれてきた。へその緒も付いていないそれは、産まれると同時に産声をあげる。
「おぎゃああああああああああああああああああああ!!」
「おんぎゃあああああああああああああああ!!」
「むぎょおおおおおおおおおお!! なにごれええええええええええ!!?」
「わぎゃあああああああああああああ!! わぎゃらないよおおおおおおおおおお!!」
眼鏡の男は満足気に言葉を発した。
「れいむ、分かったかい?」
「ゆ゙…ど、どぼぢで…どぼぢでごんなご」
「人類の為だよ」
「ゆ゙…」
どうしてこんな事をするのか、眼鏡の男を問い詰めようと思った。しかし、男は既に回答済みと云わんばかりに素っ気ない返事をする。
れいむは何だか悔しかった。やがて、まりさの事を思い出す。髪を掴まれたまま、反転するとまりさに向き直った。
「まじざあああああああああああああ!! おばえ、じっでだなあああああああああああああ!!」
「ゆぅ…れいむ、ごめんね。まりさにもせいかつが、かかってるんだよ…」
「ぜいがづっでなんだああああああああああああああ!!?」
「れいむ…れいむは、まりさのおよめさんじゃないんだよ」
「ゆ゙ぅ!? な、なにいっで…」
「あのもりでゆっくりしてきたけどね、それよりまえのゆっくりしたおもいでは、ぜんぶうそなんだよ」
「ぞ、ぞんなわげ」
「そんなわけあるんだよ…れいむはね、まりさとあのばしょで、ゆっくりするまではねむっていたんだよ」
そんなはずはない。れいむは確かに、まりさとゆっくりしていた。幼なじみのまりさと、結婚したのだ。
家族は揃って反対した。まりさより、恋敵のちぇんの方が良いと反対されたのだ。れいむとまりさは、駆け落ちした。
それからは、ずっとあの森で暮らしていたはず。いや、待て。れいむの親は誰だっただろうか。姉妹はいただろうか。
思い出せない。何度、頭を捻っても思い出せない。いや、これは単純だった。
知 ら な い の だ 。
「ぞ、ぞんなあああああああああああああああああああああ!!!」
「そういう事だ。お前はゆっくりであって、ゆっくりじゃない。あの連中と同じく、使い捨ての子を産む機械さ」
「ぢがううううううううううう!! れいぶはどくべづで、どっでもゆっぐじ…ゆ!? づ、づがいずで!?」
「そうさ。お前らは一匹につき一人しか産めない。役立たずのお前は、これから焼却処分だ」
「ど、どぼぢでぞんなごどずるのおおおおおおおおお!!? やべでねええええええええ!!」
「ゆぅ…いいかげんにしてね、れいむ。まりさはれいむみたいな、うんうんをあいてするのは、ほんとうにいやなんだよ」
「ゆううううううううううううううううう!!?」
「さいしょはにんげんのおちびちゃんなんて、とってもいやだったよ…でも、いまはにんげんのおちびちゃんのほうが、ずっといいよ」
「お、おばえはあああああああああああああ!! どぼぢでぞんなごどおおおおおおおおおお!!」
「にんげんのおちびちゃんはね、ゆっくりしてるんだよ。
いうこときかないし、うるさいよ…でも、くそまんじゅうじゃないってところが、すっごくゆっくりしてるんだよ」
「ゆぎいいいいいいいいいいいい!! おばえだっで…おばえだっでええええええええええ!!!」
「そうだよ。まりさだって、くそまんじゅうだよ。でもね、ほかのゆっくりとちがうんだよ。
にんげんのおちびちゃんは、じぶんですこしずつだけど、すごいはっけんをするんだよ!
それはとってもゆっくりしてるんだよ! …なのに、ゆっくりはいつもおなじことばかりだよ…」
「ぢがう! ぢがうううううううううううう!!」
「どうちがうの…? れいむ、あのばしょでまりさとくらしてたとき、れいむはなにかはっけんをした…?
あそこがにせものだって、きづいてた…? きづいたのは、ぜんぶがおわったときでしょ…」
「ゆ゙…」
「にんげんさんの"きかい"みたいに、せいかつをするゆっくりは、いらないんだよ…
まりさは、それをよくりかいしてるから、こうやってにんげんさんにいかされてるんだよ…まだわからないの…」
「わがらない…わがらない…ぐぞにんげんがあああああああああ!! じねえええええええええええ!! じねえええええええ!!」
「おっと、そこまでだ。そろそろ焼け死んで貰う時間だからな」
「ゆっぎゃあああああああああああああああああ!!」
れいむとまりさの会話が終わると、眼鏡の男はまりさと共に焼却炉まで向かった。
ぶら下がったれいむの目の前に映し出される光景。炉の中で、ゆっくりの怒りと悲しみが火と共に燃え盛っていた。
「や…やべでええええええええええええええ!! やべでえええええええええええ!!」
れいむの言葉虚しく、眼鏡の男はれいむを焼却炉に放り込んだ。
「ゆぎゃああああああああああああああ!! あづいいいいいいいいいいいい!! やべろおおおおおおおおお!!
だずげろおおおおおおおおおおおおおおおおお!! あづ、あづ…ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!…」
断末魔を残す事もなく、れいむは燃え滓となった。眼鏡の男は、まりさに問いかける。
「お前はいつもここに来るが、辛くないのか?」
「ゆぅ…むしろ、あいつらがくるしむすがたをみないと、ゆっくりできないよ…」
「ゆっくり出来ないと、仕事も難しいか?」
「ゆん…もちべーしょんさんが、もたないよ…」
「ははは、まあ、次はもっと上手くやる事だな」
「ゆぅ……ねぇ、どうしてゆっくりから、にんげんさんをうませるの…?」
「ん? ああ、yPS細胞ってのがゆっくりにはあってな。それをiPS細胞と掛け合わせると、産む機械が出来る訳だ。
それにはゆっくり自身が必要不可欠でな。人類が積み重ねた知識を出来るだけ多く子孫に、残したい。
だから、同時生産が可能なゆっくりで赤子達を産んでいくのだ。人数の分だけ、多くを伝えられるだろう?」
「ゆ? なんか、むずかしいよ?」
「はは…まあ、ゆっくりでなくとも難しい話しだ。気に留める必要はない」
「ゆん…」
「あの子の名前はどうしようか…レイム…いや、レイコとでもしておくか」
「…あのおちびちゃんに、なにかおもいいれがあるの…?」
「ああ…あれは私の亡くなった娘の細胞を利用してるんだ…」
「ゆ…ごめんね、じょーんずはかせ…」
「気にするな」
一人と一匹は焼却炉を後にした。
神は人類に手足を与えた。アダムとイブは、林檎を手にした。
知恵の実を口にした二人に、神は激怒した。二人が去った後の楽園は、神にとっては寂しかった。
神は寂しさを紛らわせる為に、知恵と手足を奪った命を創られた。ゆっくりである。
――2048年 ユークライスト・ジョーンズ・ホーリーバイブル 第一章より。
終
後書き
アイランドっていう、ユアンマクレガーの映画見て思いついた。日曜洋画劇場で、さっきやってたね。
ところで、買った覚えのないカップ焼きそばが、床にぶちまけられてたんだ。身に覚えがないからやばい。
虐待 差別・格差 実験 改造 妊娠 番い 虐待人間 うんしー ぺにまむ 思いついたので、出来悪いかも
コウノトリ ポマギあき
「ゆ~ゆゆ~♪」
森の中、番のまりさの隣でれいむは歌っていた。れいむは妊娠していた。
胎生妊娠である。下顎は少しばかり膨らんでいる。歌うのは胎教の一環で、ゆっくりとした赤ゆを産む為だった。
「ゆっくり、うまれてきてね♪」
「…ゆっくりうまれるといいね!」
まりさが、れいむに同調する。れいむは頷いて、それを好意的に取った。
この森には、れいむとまりさ以外は誰もいなかった。ほんの少し薄暗いのは気のせいだろうか。
夜が暗いのは勿論の事だが、昼も何だか薄暗かった。それでも、れいむはこの森から離れようとは思わなかった。
「なんてったって、ここにはごはんさんいっぱいあるからね!」
れいむがふかふかのクッションの上で呟いた。餌は何だか薄味だったが、まりさが常に狩りをして持ってきてくれる。
れいむには何の不満もなかった。ただ、産まれてくる赤ゆが、ゆっくりとしていればいい。それだけだ。
「むーしゃむーしゃ…しあわせー!」
「ゆ…れいむ、うんうんはだいじょうぶ…?」
「ゆゆ! そういわれると、なんだかうんうんしてきたくなったよ! ついでに、しーしーもするよ!」
「…いってらっしゃい」
「ゆん!」
れいむは自身に宿った新たな命の為に、跳ねて動く事をせずに這いずった。ベニヤ板でも掛けたような、仕切りがある場所で用を足す。
ここは格子状に地面に穴が開いていた。うんうんも、しーしーも臭いを残さず落ちていった。
「ゆーん…ゆーん…しーしー…すっきりぃ!」
れいむは満足すると、自分の下顎に目をやった。
「ゆゆん…ゆっくり…うまれてきてね…」
我が子が、ゆっくりと産まれてくることを願った。
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それから数週間が経った。まりさとれいむは、沢山の時間が流れたとしか感じる事が出来ない。ゆっくりだから。
しかし、本来ならば赤ゆはとっくに産まれているはず。赤ゆは、未だにれいむの中に潜んでいた。
「ゆぅ…ぜんぜんうまれてこないね…ゆっくりしすぎだよ…おちびちゃん…」
「ゆ…きっと、そのぶんゆっくりしたおちびちゃんがうまれてくるよ…」
「ゆ! そうだね! きっとそうだね!」
れいむは一日に何度も下顎に目をやると、落胆した。それをいつも、まりさが慰めてくれた。
れいむの食欲が増えるにつれて、まりさが狩ってくる餌の量も増えた。総ては生まれ来る子供の為に。
「がーつがーつ…ゆゆぅ…いっぱいたべても、おなかいっぱいにならないよ…」
「だいじょうぶだよ…おちびちゃんが、ほしがってるしょうこだよ…」
「ゆぅ…でも、えっとうはできるの…?」
「だいじょうぶだよ。まりさは、とってもかりがじょうずだからね…ゆっへん!」
「ゆゆ! かりのじょうずなまりさがいうなら、だいじょうぶだね!」
越冬の心配をするれいむに、まりさは強がって見せた。れいむはその姿を見たようで、安心して食事を再開する。
栄養が子供に行き届くのが、れいむ自身でも感じ取れた。如何にゆっくりしているだろうか。産まれる日が楽しみである。
「れいむ、うんうんは…?」
「ゆ…なんだかうんうんするきがないよ…しーしーもでそうにないよ…びょうきかな?」
「だいじょうぶだよ。きっと、おちびちゃんにえいようをすいとられてるからだよ」
「ゆ! それならゆっくりできるよ! おちびちゃんがほしがるものは、れいむ、なんでもあげるつもりだよ!」
「ゆ…きっといいおやになるよ…ゆん…」
「ゆぅ…? どうかしたの…?」
「ゆ! なんでもないよ! ちょっと、つかれちゃっただけだよ!」
「ゆゆ…まりさ、きょうはゆっくりやすんでね…れいむも、もうねちゃうよ…」
「……おやすみなさい」
数週間が過ぎて、れいむはうんうんもしーしーも出なくなっていた。以前は、かなりの量を排出していた。
不安に思ったが、まりさが子供に栄養を吸い取られているせいだという言葉を聞くと安心した。
子供に栄養が吸い取られてしまうならば仕方ない。総ては子供の為に。
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「ゆぎぎ…いったいどうなってるの…」
「だいじょうぶだよ! きっと、おおきなおちびちゃんなだけだよ!」
「い、いくらなんでもゆっくりしすぎでしょ…」
でっぷりと肥えた下顎を、血走った目で睨むれいむ。食事は機械的な作業と化し、子供に対する愛情も消え失せかけていた。
「がーつがーつ…ぐ、ぐるじい…」
「ゆ…れいむ、ごはんさんはじかんをかけてゆっくりたべようね…」
「ゆ…ゆ…ぞ、ぞうずるよ…ゆぎぎ…」
れいむは食事を中止した。気持ち悪い。吐きそうになる。
「ま、まじざ…れいぶ、ゔん゙ゔん゙…」
「ゆ! ゆっくりおしてあげるからね! ゆー…! ゆー…!」
「ゆぎぎ…もっど、ぞーっど…」
動けぬれいむの背中を押して、れいむをベニヤ板の仕切りがある場所まで連れて行く。
「ゆ゙ーん…ゆ゙ーん…ずっぎりぃ…」
「ゆ…ゆっくりもどるよ…」
「ゆっぐじ…りがいじだよ…」
用を足し終えると、れいむはまりさに押して戻された。
そもそも、苦しい。苦しいというのに、子供は生まれてこない。一体どういう事なのか。
れいむの頭はグルグルと混乱を始めた。しかし、子供の為と自身に言い聞かせた。総ては子供の為に。
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「う、うばれるうううううううううう!!!」
「ゆ! れいむ、ふかふかさんにむけてうむんだよ! ゆっくりだよ!」
「ゆぎぎ…わ、わがっでる…ゆっぐじじだおぢびぢゃん…」
十ヶ月目を迎えて、ようやく産気づくれいむ。まむまむの辺りが痛い。引き千切られそうだ。
いや、実際に千切れている。黒い餡子に塗れて、肌色のそれが見え隠れしていた。
あと一息。れいむは息を大きく吸うと、大声で言葉を発した。
「ゆっぐじうばれでぎでねええええええええええええええ!!」
「おんぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
れいむから痛みが、すぅーっと引いた。やり遂げた。ついにやり遂げたという達成感。
れいむは目を瞑り、涙を流した。これから、少し大きいけどゆっくりした赤ゆと、ゆっくりした生活をしていく。
歌を歌おう。追いかけっこをしよう。時に喧嘩する時があっても、すぐに仲直りしよう。
「れいぶ…いいおがあざんになるがらね…おぢびぢゃん!」
「おんぎゃあああああああああああああああああああああああああ!!!」
「……ゆ…?」
れいむが弛んだ下顎を踏みつけて、まむまむの辺りを見た。まむまむは、やはり大きく裂けていた。
餡子を垂れ流している事にも驚愕したが、まむまむより前の方にはもっと驚かされた。
「おぎゃああああああああああああああああ!!」
まず、飾りがなかった。これはまずい。非常にゆっくりしていない。
そして、手足があった。これはおかしい。実にゆっくりしていない。
髪も薄かった。これは危ない。大変ゆっくりしていない。
目も開いていないし、口も小さい気がする。ゆっくりしていない。ゆっくりしていない。ゆっくりしていない。
ゆ っ く り し て い な い 。
「なにごれえええええええええええええええええ!!?」
れいむは驚愕の声を上げた。喉が張り裂けんばかりの大声を上げた。
気が狂ったと云わんばかりの声を上げると、れいむはその赤ん坊に向かって突進していった。
「ゆっぐじでぎないおぢびぢゃんはいら…」
「だめだよ!」
「ぶびっ!」
れいむは、その赤ん坊を殺そうと思った。自分はあれほど、ゆっくりできない思いをしていた。
その苦痛に耐えたのは、ゆっくりした赤ん坊が産まれてくると信じていたから。
だが、今目の前にある赤ん坊は全くゆっくりしていない。時間を返せ。ゆっくりを返せ。
そう思い、発作的に赤ん坊に向かって突進した。しかし、まりさに突き飛ばされた。
弛んだ下顎の皮に身を滑らせ、地面に顔面をぶつけた。地面は、冷たく平らだった。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいいい!! いだいいいいいいいいいいい!! なにずるのおおおおおおおおお!!?」
れいむは狼狽えた。一体、何故邪魔をするんだと。まりさは、れいむの問いかけに対する答えとは、全く違う言葉を発した
「にんげんさん…もうでてきてね!」
「ゆ…だ、だれにいっでるのおおおおおおお!!? にんげんざんっでなんのごどおおおおおおおお!!?」
「おんぎゃあああああああああああああああああああ!!」
赤ん坊の泣き声の中、まりさは森の奥に向かって声を響かせた。森の木々の四方に、すぅーっと光が差し込む。
「ゆ!?」
痛みも忘れて、その光を見たれいむ。まぶしかった。
その光はやがて大きくなり、光を背景に複数の白衣を着た人間達が入ってきた。
「産まれたか…」
「うまれたよ…」
「ゆ…な、なんなのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
狼狽えるれいむを相手にせず、人間は赤ん坊を抱きかかえた。赤ん坊は人間の赤子だった。
「いやいや、有り難いね。十三年ぶりの赤子だよ」
「ええ、何よりです」
「ゆ…もういいでしょ…はやくここからだしてね…」
「い、いっだいなんのごどおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
れいむの問いかけに答えてくれたのは、白衣の集団の内の眼鏡を掛けた男だった。
「れいむ、私が誰だか分かるかね?」
「じるわげないでじょぐぞじじいいいいいいいいい!!」
「ふむ、クソジジイというのは当たってるね。少なくとも、君からしてみれば」
「な、なにいっでるのおおおおおおおおおおおおお!!?」
「れいむ…なにもしらないほうがいいよ…ぜったいそうだよ…」
「じゃまじないでねええええええええええ!!」
れいむを咎めるまりさ。しかし、れいむはまりさを冷たく突き放した。まりさはそのまま黙りこんだ。
「おやおや、喧嘩は良くないな。我々の様になってしまうよ」
「いっだい…いっだいどういうごどなのがぜづめいじでね!」
「説明か…いいだろう。冥土の土産がてらにな…」
「ゆ゙…?」
白衣を着た眼鏡の男が、泣き喚く赤ん坊をもう一人に引き渡した。赤ん坊を抱えた男は、光の中へと消えていった。
眼鏡の男は、眼鏡の位置を手で直す。そして語り始める。
「我々は…核戦争を迎えた。金、権力…いずれも欲望が原因だった。そして、人類は罰を与えられた」
「がぐ…? よぐぼう…? ばづ…? なにいっでるのおおおおおおおお!!?」
眼鏡の男は、れいむの問いかけに答える事はなく一方的に話し始める。
「罰とは、遺伝子の欠損だった。人類は不妊体質となっていった。遺伝子の欠損が原因だった。
それらは核の影響によって、もたらされたものと私は考える。
我々は十三年前、シエラレオネで生まれた赤子を最期に赤ん坊を見る事は無かった。今し方まではな…!」
「わがらないいいいいいいい!! なにいっでるがわがらないいいいいいいいいい!!」
眼鏡の男が、再び眼鏡の位置を直すと言葉を続ける。
「すまんね。分かり易く云うと、君は人間の赤子を産む為に作られたゆっくりなんだよ」
「ぞ、ぞんなわげないでじょおおおおおおおおお!!?」
「いや、そうなんだよ。この森が不自然とは思わなかったかい?」
「ゆ゙…」
れいむは改めて周囲を見渡す。森林は薄っぺらく、空があるはずのそれは真っ白な天井だった。
「ど、どういうごどなのおおおおおおおおお!!?」
「どうもこうも、さっき言った通りだよ。君は人間の赤子を産む為に作られた、ある意味コウノトリな訳だ」
「ごうのどりじゃないいいいいいいい!! れいぶはぞんなんじゃないいいいいいいいい!!」
「そうかね…? では、案内してやろう」
「ゆぎいいいいいいいいい!! い、いだいいいいいいいいいいいい!!」
眼鏡の男はれいむの髪を掴むと、光の中へと連れて行った。まりさも後を追う。
真っ白にペイントされた廊下。廊下を進むと、やがてコウノトリ計画と書かれた大きな扉が目に入る。
眼鏡の男が扉の前に立ちはだかると、扉はあっけなく開いた。扉はシャッターの様に、横にスライドしていった。
「ゆ゙…な、なにごれええええええええええええ!!?」
「ゆ…」
壮観だった。アクリルケースが何階建てにも匹敵する高さに詰まれている。
その中にはゆっくりが、総てに詰まっていた。
「ゆぎいいいいいいいいい!! う、うばれるううううううううううう!!」
「やだああああああああああああ!! うびだぐないいいいいいいいいいい!!」
「ゆっぐじいいいいいいいいいいいいい!! ゆっぐじいいいいいいいいいいいい!!」
「あじずがわるがっだでずうううううううううううううううううう!!」
「わぎゃらないよおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「むぎょおおおおおおおおおおお!! やべでええええええええええええええ!!」
「ゆんやああああああああああああああああああああああああああ!!」
いずれのゆっくりも下顎が膨れていた。れいむの様に。
やがて、その内の二匹のまむまむから赤子が産まれてきた。へその緒も付いていないそれは、産まれると同時に産声をあげる。
「おぎゃああああああああああああああああああああ!!」
「おんぎゃあああああああああああああああ!!」
「むぎょおおおおおおおおおお!! なにごれええええええええええ!!?」
「わぎゃあああああああああああああ!! わぎゃらないよおおおおおおおおおお!!」
眼鏡の男は満足気に言葉を発した。
「れいむ、分かったかい?」
「ゆ゙…ど、どぼぢで…どぼぢでごんなご」
「人類の為だよ」
「ゆ゙…」
どうしてこんな事をするのか、眼鏡の男を問い詰めようと思った。しかし、男は既に回答済みと云わんばかりに素っ気ない返事をする。
れいむは何だか悔しかった。やがて、まりさの事を思い出す。髪を掴まれたまま、反転するとまりさに向き直った。
「まじざあああああああああああああ!! おばえ、じっでだなあああああああああああああ!!」
「ゆぅ…れいむ、ごめんね。まりさにもせいかつが、かかってるんだよ…」
「ぜいがづっでなんだああああああああああああああ!!?」
「れいむ…れいむは、まりさのおよめさんじゃないんだよ」
「ゆ゙ぅ!? な、なにいっで…」
「あのもりでゆっくりしてきたけどね、それよりまえのゆっくりしたおもいでは、ぜんぶうそなんだよ」
「ぞ、ぞんなわげ」
「そんなわけあるんだよ…れいむはね、まりさとあのばしょで、ゆっくりするまではねむっていたんだよ」
そんなはずはない。れいむは確かに、まりさとゆっくりしていた。幼なじみのまりさと、結婚したのだ。
家族は揃って反対した。まりさより、恋敵のちぇんの方が良いと反対されたのだ。れいむとまりさは、駆け落ちした。
それからは、ずっとあの森で暮らしていたはず。いや、待て。れいむの親は誰だっただろうか。姉妹はいただろうか。
思い出せない。何度、頭を捻っても思い出せない。いや、これは単純だった。
知 ら な い の だ 。
「ぞ、ぞんなあああああああああああああああああああああ!!!」
「そういう事だ。お前はゆっくりであって、ゆっくりじゃない。あの連中と同じく、使い捨ての子を産む機械さ」
「ぢがううううううううううう!! れいぶはどくべづで、どっでもゆっぐじ…ゆ!? づ、づがいずで!?」
「そうさ。お前らは一匹につき一人しか産めない。役立たずのお前は、これから焼却処分だ」
「ど、どぼぢでぞんなごどずるのおおおおおおおおお!!? やべでねええええええええ!!」
「ゆぅ…いいかげんにしてね、れいむ。まりさはれいむみたいな、うんうんをあいてするのは、ほんとうにいやなんだよ」
「ゆううううううううううううううううう!!?」
「さいしょはにんげんのおちびちゃんなんて、とってもいやだったよ…でも、いまはにんげんのおちびちゃんのほうが、ずっといいよ」
「お、おばえはあああああああああああああ!! どぼぢでぞんなごどおおおおおおおおおお!!」
「にんげんのおちびちゃんはね、ゆっくりしてるんだよ。
いうこときかないし、うるさいよ…でも、くそまんじゅうじゃないってところが、すっごくゆっくりしてるんだよ」
「ゆぎいいいいいいいいいいいい!! おばえだっで…おばえだっでええええええええええ!!!」
「そうだよ。まりさだって、くそまんじゅうだよ。でもね、ほかのゆっくりとちがうんだよ。
にんげんのおちびちゃんは、じぶんですこしずつだけど、すごいはっけんをするんだよ!
それはとってもゆっくりしてるんだよ! …なのに、ゆっくりはいつもおなじことばかりだよ…」
「ぢがう! ぢがうううううううううううう!!」
「どうちがうの…? れいむ、あのばしょでまりさとくらしてたとき、れいむはなにかはっけんをした…?
あそこがにせものだって、きづいてた…? きづいたのは、ぜんぶがおわったときでしょ…」
「ゆ゙…」
「にんげんさんの"きかい"みたいに、せいかつをするゆっくりは、いらないんだよ…
まりさは、それをよくりかいしてるから、こうやってにんげんさんにいかされてるんだよ…まだわからないの…」
「わがらない…わがらない…ぐぞにんげんがあああああああああ!! じねえええええええええええ!! じねえええええええ!!」
「おっと、そこまでだ。そろそろ焼け死んで貰う時間だからな」
「ゆっぎゃあああああああああああああああああ!!」
れいむとまりさの会話が終わると、眼鏡の男はまりさと共に焼却炉まで向かった。
ぶら下がったれいむの目の前に映し出される光景。炉の中で、ゆっくりの怒りと悲しみが火と共に燃え盛っていた。
「や…やべでええええええええええええええ!! やべでえええええええええええ!!」
れいむの言葉虚しく、眼鏡の男はれいむを焼却炉に放り込んだ。
「ゆぎゃああああああああああああああ!! あづいいいいいいいいいいいい!! やべろおおおおおおおおお!!
だずげろおおおおおおおおおおおおおおおおお!! あづ、あづ…ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!ゆ゙っ…!…」
断末魔を残す事もなく、れいむは燃え滓となった。眼鏡の男は、まりさに問いかける。
「お前はいつもここに来るが、辛くないのか?」
「ゆぅ…むしろ、あいつらがくるしむすがたをみないと、ゆっくりできないよ…」
「ゆっくり出来ないと、仕事も難しいか?」
「ゆん…もちべーしょんさんが、もたないよ…」
「ははは、まあ、次はもっと上手くやる事だな」
「ゆぅ……ねぇ、どうしてゆっくりから、にんげんさんをうませるの…?」
「ん? ああ、yPS細胞ってのがゆっくりにはあってな。それをiPS細胞と掛け合わせると、産む機械が出来る訳だ。
それにはゆっくり自身が必要不可欠でな。人類が積み重ねた知識を出来るだけ多く子孫に、残したい。
だから、同時生産が可能なゆっくりで赤子達を産んでいくのだ。人数の分だけ、多くを伝えられるだろう?」
「ゆ? なんか、むずかしいよ?」
「はは…まあ、ゆっくりでなくとも難しい話しだ。気に留める必要はない」
「ゆん…」
「あの子の名前はどうしようか…レイム…いや、レイコとでもしておくか」
「…あのおちびちゃんに、なにかおもいいれがあるの…?」
「ああ…あれは私の亡くなった娘の細胞を利用してるんだ…」
「ゆ…ごめんね、じょーんずはかせ…」
「気にするな」
一人と一匹は焼却炉を後にした。
神は人類に手足を与えた。アダムとイブは、林檎を手にした。
知恵の実を口にした二人に、神は激怒した。二人が去った後の楽園は、神にとっては寂しかった。
神は寂しさを紛らわせる為に、知恵と手足を奪った命を創られた。ゆっくりである。
――2048年 ユークライスト・ジョーンズ・ホーリーバイブル 第一章より。
終
後書き
アイランドっていう、ユアンマクレガーの映画見て思いついた。日曜洋画劇場で、さっきやってたね。
ところで、買った覚えのないカップ焼きそばが、床にぶちまけられてたんだ。身に覚えがないからやばい。