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anko3515 まりさの楽園 中編
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『まりさの楽園 中編』 36KB
いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作
*前回のあらすじ
長ぱちゅりーはまりさたちが新しく作った群れに向かった。
「ゆっくり!ゆっくりー!」
「すーや!すーや!」
「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」
「ゆっくちー!」
ここは山の外れに位置するまりさたちが新しく作った群れの広場。
そこにいるまりさたちは、みな思い思いの方法でとってもゆっくりしている。
あるまりさは、他の家族や他のまりさたちとじゃれあい、またあるまりさは、ひなたぼっこをしながらうたた寝をしている。
そしてまたあるまりさは、自分が採ってきた食料を口一杯にほおばっていた。
それらの行為は、みな元の群れにそのままいたら到底できなかったことだ。
ここではれいぱーにおびえることもなく、でいぶに罵られ四六時中狩りに繰り出されることもなく、
もりけんに顎でこき使われることもない。
食料は自分と連れて来たおちびちゃんたちの取り分だけ狩ってくればそれでこと足りるし、
余った時間は誰に邪魔されることもなくゆっくりし放題だ。
もとよりこの群れのにいるまりさは、皆今までつがいであったでいぶやありす、ぱちゅりーの無茶な要求にも耐えてこれたような優秀な個体が集まっているのだ。
ただ生きて、暮らしていくだけならば何の問題ない。
唯一の不満と言うか不便は、この群れにはまりさ種しかいないため、つがいとおちびちゃんをつくることができないことだ。
だがしかし、それはもういい。
いまさらつがいを持とう、などと考えるまりさはこの群れにはもはや誰もいなかった。
おちびちゃんなら、いまいるだけで十分だ。
今あるゆっくりをただ享受して、ただ生きていければそれでいい。
一度は心を殺したまりさたちの、それはある種の悟りといってもいい心理であった。
この群れに逃れてきたまりさたちは、みな今の現状に満足しており、今あるゆっくりで充分と感じていたのだ。
しかし、そんな穏やかな時間が流れている群れの広場に、突然一匹のまりさが慌てた様子で飛び込んでくる。
「ゆあああああああああああ!みんなたいへんだよおおおおおおお!
まりさいがいの、ほかのゆっくりが、こっちにむかってきてるよおおおおおおおお!
まえのむれの、おさぱちゅりーに、かんぶありす、かんぶれいむもいるよおおおおおおおおお!」
ざわわ!?
広場で各々ゆっくりしていたまりさたちは、そのセリフを聞くや否や一転、騒然となる。
その飛び込んできた見張り役のまりさの話しでは、なんと元いた群れの長ぱちゅりーと幹部れいむ、幹部ありすが、こちらの方向に向かって進んできているというのだ。
そのゆっくり出来ない報告により混乱状態となるまりさたち。
群れの長が?いったい何のために?どうして!せっかく忘れていたのに!何しにきやがった!怖いよ!もう前の生活はゴメンだ!
なんで放っておいてくれないの!顔もみたくない!逃げないと!ゆっくりできない!
様々なゆっくりできない憶測があたりを飛び交い、まりさたちはおろおろと動揺しただ広場を右往左往するばかり。
と、そこへ、
「みんなおちつくんだぜぇ!」
慌てふためくまりさたちに対して鋭い一喝が広場に響いた。
「みんなじたばたするんじゃないんだぜ!なにもおそれるひつようはないんだぜえ!
もとのむれのおさだか、かんぶだかがやってきたところで、どうってことないし、やつらにしたがうひつようもないんだぜえ!
もうまりさたちは、じゆうなんだぜええええええ!」
慌てふためくまりさたちに向かって、この群れのリーダー格のまりさが吼える。
「しんぱいしなくてもだいじょうぶなんだぜえ!
ここはもう、どくりつした、まりさたちのむれなんだぜ!
ぶがいしゃのすきかってにはさせないんだぜええええ!」
「「「ゆっ、ゆおおおおおおおおおおお!」」」
リーダーまりさの言葉により、我に帰る群れのまりさたち。
そうだ、そうだった。
もう自分たちはあの群れを出て行ったのだ。
だからあの群れのルールに従う必要もないし、長ぱちゅりーや幹部れいむ、幹部ありすにへこへこする必要もない。
何の用でこっちに向かってるか知らないが、奴らが来たところで何てことはないんだ!
「そうだね!そうだよ!」
「りーだーのいうとおりだよ!」
「ここはまりさたちのむれだよ!ぱちゅりーたちなんかのすきにはさせないよ!」
互いに団結し、落ち着きを取り戻していくまりさたち。
ここはまりさの楽園、まりさだけの群れ。
他のゆっくりの指図は受けない!
そう群れのまりさたちは、強く意志を固めるのであった。
「むっきゅー!まだつかないのかしら、ぱちぇはもうつかれたわ!」
「ゆーん、うわさにきいたはなしだと、ここらへんのはずなんだけど……」
「まったく、これだからいなかはいやなのよ!」
誰にともなくぶつくさと文句を言いながら、のろのろと森を移動しているゆっくりたちがいる。
それは例の長ぱちゅりー、幹部れいむ、幹部ありすの三匹だ。
三匹は意気揚々と群れを飛び出したのはいいものの、目的地のまりさの群れの位置がよくわからず森をさ迷い歩いていた。
しかも、ただでさえ日々の身の回りの生活の一切をまりさにやらせて身体がなまっている三匹にとって、この道中は非常にしんどいものらしく、
三匹はもうヘトヘトな様子である。
そして疲れ切った長ぱちゅりーは、当然の如く不満だらけだった。
まったく何だって自分たちがこんな辛い目に遭わなければならないのか?
何故まりさの群れのにいる連中は、長や幹部である自分たちがこうしてやってきているのに、迎えの一つもよこさないのか?
まったくふざけてる。
やはりわざわざこのぱちぇ自ら群れに乗り込むなんてことはせず、適当に使いでも寄越して、
向こうからこっちの群れに土下座させにこさせるべきだっか?
とにかく疲れた、何だってこのぱちぇが、本来ならば下等なまりさ種がやるべき肉体労働をしなければならなのか……。
自分から群れに行くと言い出したことを棚に上げ、
そんなことを長ぱちゅりーが考えていると、突然幹部れいむが声を上げた。
「ゆゆ!みてみて!あそこにまりさがいるよ!」
「あら、ほんとだわ!ゆぷぷぷ!いなかものまるだしのつらねぇ!」
幹部れいむの言った方向に視線を向けると、その言葉が示す通り少し進んだ場所に一匹のまりさがいた。
そのまりさは何をするでもなく、じっと長ぱちゅりーたちの様子を窺っているようである。
「むっきゅー!ようやくでむかえがきたの!まったくおそすぎるわね!
ちょっとそこのまりさ!ばかみたいにぼさっとしてないで、ぱちぇたちをさっさとおまえらのむれにあんないしなさい!
これはめいれいよ!はやくしなさい!」
前方にいるまりさにむかって、高圧的に話しかける長ぱちゅりー。
しかし、
「……………」
そこにいたまりさは無言でクルリと踵を返すと、そのままどこかへと跳ねて行ってしまった。
「なっ!」
「ゆええ!」
「ちょっと!」
そんなまりさがとった予想外の行動に驚く三匹。
自分は確かに群れに案内しろと命令したはずだ。
この至近距離で、まさかそれが聞こえなかったなどということはあるまい。
だというのにその命令を無視し、あまつさえ長や幹部である自分たちに背を向けてどこかへ去るなどとは一体何事だろうか!
「なっ、なんなのよ!いまのたいどは!いくらなんでもふざけすぎよ!」
「ゆああああああ!あのまりさ、なまいきだよおおおおおおおおお!まりさのくせにいいい!」
「むぎゅぎゅぎゅ!こっ、このぱちぇをむしするなんて!なんてぶれいなゆっくりなの!」
三匹は呆然とするのもつかの間、すぐに我に返って怒りをあらわにする。
「あのまりさを、おうわよふたりとも!こんなあくは、けっしてみのがしちゃいけないわ!」
「「ゆっくりりかいしたよ!」」
言うが早いか、まりさが去った方角へと跳ね出す三匹。
怒りで疲れが吹き飛んだのか、長ぱちゅりーを先頭にして今までにないスピード(それでもかなり遅い)で突き進んでいく。
そして、その勢いのまま一直線に森を進んだ三匹はやがて木々を抜け、やや開けた場所へと出る。
そこには……。
「「「ゆゆ!?」」」
その場所で三匹は 我が目を疑う光景を目にした。
目の前に広がる広場。
そこにはまりさだ、まりさたちがいる!
いや、そのことはいいのだ。
自分たちは、そもそもまりさの群れを目指してやってきたのだから。
まりさがいること事態は問題ではない。
問題はそのまりさたちの様子だ。
なんと、そこにいるまりさたちは、信じられないことに、誰も彼もがとんでもなくゆっくりしていた。
長ぱちゅりーたちは、こんなにゆっくりしているまりさは、いやそもそもこんなにゆっくりているゆっくりを見るのははじめてだった。
「……これは、どういうことなの」
ポカンとアホみたいに口を開けたまま思わず呟く長ぱちゅりー。
何故これほどまでも、まりさたちはゆっくりできているのであろうか?
『ぼせい』溢れるれいむ種が、『とかいは』なありす種が、そしてなにより『けんっじゃ』であるこの自分、ぱちゅりー種がこの群れにはいないというのに!
一体なぜ?どうしてゆっくりできるというのだ!
と、そこへ、
「いったいこのむれに、なにようなのかぜ?」
困惑している長ぱちゅりーたちへ声がかけられる。
「むっ、むきゅ」
声をかけられた方向へ目を向けると、いつの間にやらそこには他のまりさより一回り大きいリーダーまりさを中心に、
数匹のまりさたちが集まっており、長ぱちゅりーを睨み付けていた。
「もういちど、いうのぜ!
いったい、このむれになんのようできたのかと、きいているんだぜぇ!」
急な事態にやや放心気味の長ぱちゅりーたちに対して、咎める様に言うリーダーまりさ。
リーダーまりさの周りにいるまりさたちも、みな一様に険しい表情をしている。
その口調や態度から、歓迎されてないことは明らかだ。
「ゆーん!なんだかゆっくりできないふんいきだよ!」
「とかいはじゃないわね…」
流石に能天気な幹部れいむと幹部ありすも、その緊迫した雰囲気に気づいたのかやや不安げな様子である。
「ちょっとあなたたち!さっきからなんなのそのたいどは!
おさであるこのぱちぇが、わざわざきてあげたのに!こんなぶれいがゆるされるとおもって!
ふかいだわ!しゃざいしなさい!
それから、ぱちぇたちをかんげいするぱーてぃはどうしたの!」
しかし、そんな中にあっても長ぱちゅりーは、毅然とした態度を崩さなかった。
ただ単に空気が読めてなかっただけとも言うが…。
「はぁああああん!いったいなにをわけのわからないことをいってるんだぜ?
ようがないならさっさとかえるんだぜえ!
ここは、おまえらがくるようなばしょじゃないんだぜぇ!」
長ぱちゅりーの態度に対し、小バカにしたように言い返すリーダーまりさ。
そしてさらに、
「ゆゆ!ぱちゅりーだ!もりけんのぱちゅりーがいるよ!」
「でいぶだ!となりにでいぶもいるよ!」
「れいぱーありすもいっしょみたいだね!
ゆぷぷぷ!もといたむれの、くずしゅさんびきが、みはりのほうこくどおり、がんくびそろえてあつまってきてるよ!」
ざわ…ざわ…。
長ぱちゅりーとリーダーまりさの会話により注目を浴びたのか、今まで広場で思い思いにゆっくりしていたまりさたちまで
わらわらと長ぱちゅりーたちの側に集まってくる。
そして、そうこうしているうちに、いつの間にか長ぱちゅりーたち三匹はこの群れにいる沢山のまりさたちに周囲をすっかり囲まれてしまっていた。
「ゆぴいいい!きょわいよおおおおおおお!」
「とっ、とかいはじゃないわああああああ!」
「……………くっ!」
周囲をまりさたちに囲まれ、その恐怖からみっともなく震えだす幹部れいむと幹部ありす。
それは今にも泣き出し、恐ろしーしを辺りにぶちまけんばかりの有様である。
そして長ぱちゅりーもまた、一見かろうじて平静を保っているように見えたがその顔面は真っ青だった。
「ゆふん、いったいなんのようで、このむれまでやってきたんだかしらないけど、
みてのとおり、おまえらはまねかれざるきゃくなんだぜえ!
さっさとおかえりねがうんだぜ!いまならみのがしてやるんだぜえ!」
汚物でも見るかのような目で、吐き捨てるように言うリーダーまりさ。
また取り巻きのまりさたちも敵意をむき出しにしており、まさに一触即発の状態である。
うかつな言動をすれば、そのままふくろ叩きにされかねない状況だ。
長ぱちゅりーたちにとってはここはまさにアウェー。敵地なのである。
そもそもそんな場所に、幹部三匹で乗り込むこと事態が愚行であるといえるのだが、
能天気な長ぱちゅりーたちはこんなことになるなんて全く予見してなかったし、今さら何を騒いだところで後の祭りだ。
もうこういう状況になってしまった以上、最善の行動は変にまりさたちを刺激せずに大人しく帰るのが正解だろう。
というかそれ以外に手はない。
「ゆゆ、ぱちゅりー、ここはいったんひきあげたほうが……」
「そっ、そうよぱちゅりー!こんないなかにいつまでもいることないわ!」
「…………むきゅ」
危険なレベルでゆっくり出来ない気配を感じ取ったのか、長ぱちゅりーにそれとなく退却を進める幹部れいむと幹部ありす。
当初の予想だった、まりさたちが進んで群れに戻ってくるという希望的予測はもう完全に否定されている。
となれば、こんなところに長居は無用で、さっさと撤退するのが吉だ。
幹部れいむと幹部ありすには既に群れを出た当初の陽気さ楽観さはなく、その心を占めるのはこの場をさっさと離れたい一心だけだった。
そして、今この場はゆっくり出来ないという意見は長ぱちゅりーとてまた同様であった。
確かに幹部れいむたちが言うように、こんなふざけた場所からは一刻も早くおさらばしたい。
が、しかしである。
長ぱちゅりーは思う。
このままここでなにもせず、すごすごと引き下がる、などということがあってよいのだろうか?
長たる自分がまりさごときの言う事に従い、屈することが許されてよいのだろうか?
いいや、それは断じて認められない!
そんなのけんっじゃとしてのプライドが許さない!
大体悪いのはこいつらの方じゃないか、自分という正義がここで崩れる道理があろうはずがないのだ!
長ぱちゅりーの心の内から何か得体の知れないものがむずむずと這い上がってくる。
それはまりさたちによってもたらされた、おそらく生まれてこのかた初めて体験するゆっくり出来ないストレスが、
捌け口を求めて長ぱちゅりーの身体の中で暴れまわっているのだ。
人生において他人にムカつくことを言われ、何か言い返したいが、言い返してはいけない場面というのは存在する。
例えば今がその時だ。
こちらは三匹しかいないのに対して、あちらは多数のまりさ、それもこちらに明らかに敵意を持っている状況。
こんなときは、例え不本意でも口を噤んでおくべきである。
だがしかし、我慢などと言うものとは無縁の生活を送ってきた長ぱちゅりーは、それを耐える術をしらない。
そしてとうとう堪えきれなくなった長ぱちゅりーは、口火を切ったのであった。
「いっ、いいかげんにしなさい!
かえれですって、よくもそんなくちがきけたものね!
あなたたち、いったいだれにたいして、ものをいっているのかわかってるの!
ぱちぇは、むれのおさなのよ!えらいのよ!けんっじゃなのよ!
それをおまえら、まりさごときがこのぱちぇにいけんなんて、みのほどをしりなさい!」
あくまで見下した態度で、どこまでも不遜に長ぱちゅりーは喋り続ける。
「なんのようできたかですって?あなたたちばかまりさは、いちいちいわれないとそんなこともわからないの!
おまえらくずどもを、むれにつれもどしにきたのよ!
おまえらが、すきかってして、むれをでたおかげでめいわくしているゆっくりがたくさんいるの!
こんなあくじを、むれのおさとして、ほうっておけるはずないでしょう!
いい、いちどしかいわないわよ!ここにいるまりさたちは、そっこくむれにもどって、ぱちぇのどれいになりさい!
これは、おさとしてのめいれいよ!わかったら、さっさとこうどうしなさい、このくずども!」
体内に溜まったものを吐き出すように、一気にまくし立てる長ぱちゅりー。
自分は何ら間違ってなどいない。
そうとも、間違ってるのはこいつらなのだ。
自分は正しいことをしている!
従え!このゲスども!ぱちぇは群れの長なんだぞ!
「……………はぁ?」
長ぱちゅりーの物言いに、リーダーまりさはただただ困惑気味に顔をしかめた。
また、周囲を囲んでいるまりさたちも同様に、呆けたような表情をしている。
言ってる事が分からない…イカれてるのか?この状況で。
ひょっとしてこいつらは、なぜ自分たちが群れを出て行ったのかまるで理解していないのではないだろうか?
今の長ぱちゅりーの言動から推測するには、そうとしか考えられないのだ。
仮にもしそうだったとしたら、コイツは一体どれ程愚かで無能なのだろうか。
そしてそんなヤツに今までこき使われてきた自分たちは……。
「むっきいいいい!なにぼさっとしてるの!
さっさとこうどうしろといったでしょこのぐ……」
「だまるんだぜええぇぇえ!!!」
「ひっ!」
まだ何か言おうとした長ぱちゅりーの言葉を、リーダーまりさの咆哮が遮る。
リーダーまりさは悟ったのだ、長ぱちゅりーとまともに会話をするのが時間の無駄だということに。
「いいかげんにするのはおまえらのほうなのぜ!
だいたい、いつまでおさきどりでいるんだぜえ!わらわせるんじゃないのぜ!
ここはまりさたちのむれなんだぜ!ここではおまえらなんか、ただのむのうな、もりけんなんだぜぇ!
ごちゃごちゃいうようなら、ちからずくでおいかえすまでだぜぇ!」
ドン!
「むっきょろばああああああああ!」
リーダーまりさが軽く長ぱちゅりーに体当たりすると、長ぱちゅりーは悲鳴を上げながらコロコロと転がっていく。
「ここからでていけ!そしてにどとこのばしょにくるんじゃないんだぜ!」
「そうだ!そうだ!」
「でていけ!このむれからでていけ、このげすども!」
「かえれ!かえれぇ!」
「しんでね!しんでね!はやくしてね!」
「くずが!にどとそのきたないつらを、まりさにみせにこないでね!」
リーダーまりさが手を出したことをきっかけとして、四方八方から感情を押さえきれなくまりさたちのヤジが飛ぶ。
いや違う、これはヤジなどという生易しい代物ではない。
長ぱちゅりーたちをはじめとした、過去に自分たちをこき使った群れのゆっくりたちに対する、
明確な敵意、殺気をこめた憎悪の言葉の数々であった。
「ゆぴいいい!もうやだああああ!おうじがえるううううう!」
「ひいいいい!どがいはあああああ!どがいばあああああ!」
ジョロジョロジョロ~。
そんなあまりにもゆっくりできない状態についに耐えられなくなったのか、
とうとう泣き出し、おそろしーしを漏らす幹部れいむと幹部ありす。
「うわ!きたなっ!もらしたよ!でいぶとれいぱーが、しーしをもらしたよおおおお!」
「あっちいってね、けがわらしい!」
「ゆゆ!これでもくらえ!」
ピュッ!
周りを囲んでいたまりさのうち一匹が、口に小さな石を咥え噴き出した。
そしてその石ころは放物線をえがき、見事れいむの頬に命中した。
「ゆびいいいいい!いだいいいいいい!どうしてこんなことするのおおおお!
でいぶなにもわるいことしてないのにいいいい!」
「うるさい!このげすども!みんなやっちゃえ!」
「ゆゆ!くちでいってわからないげすを、むれからおいだすよ!」
はじめに石を拾ったまりさに倣って、次々に小石を口に咥え、撃ちだすまりさたち。
それは石つぶてとなり、幹部れいむと幹部ありす、そしてやや離れたところに転がっている長ぱちゅりーを襲った。
「ゆっぴぎゃああああああ!やべでえええええええええ!」
「ぎょへえええ!ちょかいは~!ちょかいはなのおおおおおおお!」
「むっげっへぼ!えれえれえれ!」
幹部れいむと幹部ありすは自分で漏らしたしーしにまみれながら、長ぱちゅりーは自身の中身を少し吐き出しながら、
たまらず群れの出口へ向かって逃げ出す。
もう長のプライドとかそんなこと言ってる場合じゃない。
このままここにいたら命が危ない!流石にそのぐらいのことはもりけんでも理解できたようだ。
「ゆふん!こんかいはこれぐらいにしておいてやるんだぜ!
ただし、つぎまたやってきたら、そのときはいのちはないとおもうんだぜぇ!」
必死の形相で逃げ出す長ぱちゅりーたちに、そんなリーダーまりさの最後の声が届いた。
そして数日後。
ここは長ぱちゅりーが所属する群れ内。
「なんなの、あのいなかものまるだしのたいどは!ふざけるのもいいかげんにしてほしいわ!」
「ゆうううう!れいむにひどいことするなんて、とんでもないげすなまりさだよおおおおお!
「むっきゅううううう!よくも!よくもぱちぇをばかにしてえええええ!
ゆるさない!ぜったいにゆるさないわあああああああああ!」
いつもの長ぱちゅりーのおうちで、まりさの群れから命からがら何とか帰還した三匹が、がん首そろって文句を垂れている。
彼女らのまりさたちへの感情は、憤りから明確な怒りへとシフトしていた。
とは言え、実際には口であーだこーだと文句を言うだけで、実際にまりさたちの群れへと報復行動へ移るようなことはしない。
というかできないのだ。
何故ならあれだけの数のまりさたちに対抗するには、こちらにもそれ相応の数のゆっくりがいる。
しかし肝心の群れにいる他のぱちゅりー、れいむ、ありすはたちは、自らまりさの群れに乗り込んで行いき、戦い、
そして、まりさをどうこうすることに積極的ではなかった。
いや、もちろんまりさたちに戻ってきてほしいと思っているのだ、そうでないと自分たちが困るのだから。
しかし、そのために労力を使うのゴメンだったのだ。
要するに彼女らがしたいのはケンカではなくイジメなのである。
殴りつけても文句を言わない生きたサンドバックが、おうちに食料をはこんでくるだけの機械が、
自らの手足となる奴隷が欲しいだけなのである。
それもなるべく自分たちの手は汚さないで。
そんな連中が、わざわざ苦しい思いをしてまでまりさの群れに赴くはずもなく、
ましてや、長たちの個人的復讐のために動くはずもない。
そもそもまりさたちを全員せいっさいしてしまったら、奴隷が手に入らないではないか。
ゆえに、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー全員でまりさの群れの攻め立てるという選択肢は使えないのだった。
「それで、どうするのぱちゅりー!まさかこのままじゃおわらないよねぇ!」
「そうよ!そうよ!このままでいいはずがないわ!というか、むしろありすたちのたちばがあやういわ!」
長ぱちゅりーに迫る幹部れいむと幹部ありす。
出て行ったまりさたちを連れ帰り、奴隷にするという計画は失敗に終わってしまった。
しかし今の長ぱちゅりーたちは、失敗しました残念でした、ではすまされない状態と立場にある。
何故ならばこの群れの運営は、まりさがいなくなってしまったことにより、想像以上の危機的状況に陥っていたからだ。
いままでまりさたちを劣っているとして、奴隷のように扱い、やりたい放題してきた群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー。
しかしいざそのまりさたちがいなくなってしまうと、なにも出来ずに餓死や衰弱死してしまうゆっくりが続出しはじめたのだ。
寄生主のいなくなった寄生虫の末路など、所詮こんなものということだろう。
そんなわけで、長ぱちゅりーたちの所には日々、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりーたちが、この事態を何とかしろと毎日のように苦情を言いにくるのであった。
その様子はかつて離婚禁止法を掟として決めたときに、群れのまりさがこぞってぱちゅりーの下を訪れた現象とそっくりである。
ただし、抗議にくるゆっくりがまりさではなく、れいむ、ありす、ぱちゅりーだという違いはあったが。
そもそも困ってるなら自分たちで何とかしろよ、と思わなくもないが、先ほども言ったように彼女らはなるべく自分たちの労力は使いたくないのだ。
一昔前なら、まりさとつがいになるだけで手頃に奴隷が手に入った。
しかし現在はどうだ、群れにまりさがほとんどいなくなってしまったではないか。
これはゆっくりできない、だからなんとかしろと皆長ぱちゅりーのところに次々と文句を言いにくるのだ。
長ぱちゅりーは、相手がまりさならば偉そうに突っぱねることが出来たが、しかしその対象が、れいむ、ありす、ぱちゅりー、
となるとそうもいかない。
自分ら長や幹部と同じ種族ならば、無下にすることはできないというわけだ。
今までは何とかする、大丈夫だから落ち着いて待っていろと、やってくるゆっくりをなだめてきたがそれもそろそろ限界だろう。
もしこのまま何の打開策もなしに、ズルズルとこの状況が続くようであれば、長ぱちゅりーたちは無能のレッテルを貼られ、
長や幹部を辞めさせられるばかりか、群れを衰退させた責任としてせいっさいの対象になる可能性すらある。
それは長ぱちゅりーたちが最も怖れることであった。
そうならないためには、なんとしてもあのクソまりさたちをこの群れに連れ戻す必要がある。
それも早急にだ。
「むきゅ!だいじょうぶよ!もうつぎのてはかんがえてあるわ!」
不安に駆られ迫ってくる幹部れいむと幹部ありすに、安心するように言う長ぱちゅりー。
「ゆゆ!ほんと!」
「さっすがぱちゅりーはとかいはね!」
「むっきょきょきょきょ!このけんっじゃのぱちぇに、まかせておけばいいのよ!むっきょきょきょきょ!」
不適に笑う長ぱちゅりー。
はたしてけんっじゃの次なる策とは!?
「と、いうわけで、あなたたちに、むらをでていったまりさたちを、どれいとしてつれもどすやくめをあたえるわ!
これはほんらいならば、なまけもののあなたたちには、すぎたしごとよ!ありがたくおもいなさい!」
ニヤニヤと笑いを浮かべながら尊大な態度でそう言い放つ長ぱちゅりーの目の前には、二匹のゆっくりがいた。
ちぇんとみょんだ。
ここは群れ内のやや外れたところにに位置する巣穴。
主にちぇん種とみょん種が固まって生活しているテリトリーである。
今、長ぱちゅりーが話しているみょんとちぇんは、この辺り一体のリーダー格のゆっくりであった。
さて誤解しないように言っておくと、このちぇんとみょんはリーダー格と言ったが、別に群れの幹部とかそういうわけではない。
そもそもこの群れに所属しているみょんとちぇんたちはやや特殊で、群れに属していながらもあまり積極的に他のゆっくりとはかかわろうとはせず、
独自の領域に引きこもっており、群れの一部にあってなお独自の組織体質を持ってるゆっくりたちの集まりだった。
無論だからといって、別に群れの方針や掟に逆らったりしているわけではない。
あくまで群れ内に存在する一派閥のようなものであり、そこにはみょんやちぇんの他にもそのつがいとして、
まりさやれいむなどのゆっくりもきちんと生息している。
何を隠そう今この群れに僅かに残っているまりさ種は全てこのテリトリーにいるまりさたちであった。
そんな連中のまとめ役が、今長ぱちゅりーと話しているこのちぇんとみょんというわけだ。
「いっておくけど、これはじゅうようなやくめよ!しっぱいはゆるされないわ!
もし、しくじるようなことがあれば、もちろんせいっさいよ!
そこのところをよーく、きもにめいじておくことね!」
そして、そんな彼女らに長ぱちゅりーはまりさたちを連れ戻す役目を押し付けたのだ。
群れの、れいむ、ありす、ぱちゅりーが動かないというのならば、かわりにちぇんとみょんたちを動かせばいい。
自分らの手を一切汚すことなく、手に負えないことは他人に丸投げというわけである。
これで成功すればそれでよし、よしんばもし失敗したとしても、失敗の責任の制裁ということでみょんやちぇんたちを、
文句を言ってくる連中に対して奴隷として宛がえば不満が出ることはないだろう。要はまりさたちの身代わりである。
これでめでたく長ぱちゅりーたちの地位は安泰というわけだ。
「むきゅ!おさのめいれいはいじょうよ!もちろんこのやくめ、ひきうけるわよね!」
当然だろ?といった様子でリーダーちぇんとリーダーみょんに同意を求める長ぱちゅりー。
しかし二匹の答えは、
「おことわりだみょん!」
「そんなしごとは、ごめんなんだねー!」
「むぎゃ!なんですって!」
明確な拒否であった。
「どういうつもりなの!ふざけないで!あなたたち、むれのそういに、さからうきなの!
そんなことが、ゆるされるとでもおもっているの!いいかげんにしなさい!」
怒りで顔を真っ赤にし、喰らいつくように二匹に詰め寄る長ぱちゅりー。
「べつにむれのそういにさからうなんて、そんなことだれもいってないみょん!
ただ、むれのそういというのなら、きっちりてじゅんをふんで、きめてほしいってことだみょん!」
「わかるよー!むれのおきてにはしたがうけど、それはぱちゅりーのめいれいにしたがうってことじゃないんだねー!」
怒り心頭の長ぱちゅりーに対し、冷静に正論を返すリーダーちぇんとリーダーみょん。
そもそも長ぱちゅりーはことあるごとに命令だ命令だといっているが、
本来この群れの長には、他ゆんを勝手にどうこうできるような強力な権力など存在しない。
あくまで群れ全体を舵取りするための方針を決める際に、みなの中心となって行動する役割を持つというだけだ。
つまり群れの長のぱちゅりーの命令だからといって、群れのゆっくりは絶対服従しなければならないということではないのだ。
この群れでゆっくりに対して唯一無二の強制力を持つのは群れで定められた掟のみである。
この掟で決められたことだけは、いかなるゆっくりでも逆らうことはできず、逆らえば即制裁の対象となる。
そして、新しく掟を作るためには、群れの集会で賛成の数が反対の数を大きく上回らなければならないのだ。
例えば、以前掟で定められた離婚禁止法。
これは集会に参加していたれいむ、ぱちゅりー、ありすの全員が賛成し、直接当事者ではないみょんとちぇんは角が立つことを警戒して、
全員賛成でも反対でもない棄権をし、まりさたちはほとんどその場にいなかったため、賛成多数となり成立したという経緯があった。
「とにかくそのめいれいはおことわりだみょん!
どうしてもやらせたいなら、きちんとしゅうかいをひらいて、そこできめてほしいみょん!」
「わかるよー!でもどうせしゅうかいをひらいても、ちぇんとみょんたちはみんなはんたいするからむだだけどねー!」
リーダーちぇんの言うように、この命令を実行させるための掟を作るために集会を開いたところで無駄に終わることだろう。
前回の離婚禁止法と違って、今回はちぇんとみょんたち全員が反対に回るであろうことは明らかだからだ。
また、流石に前使った手のように、全てのちぇんとみょんに悟られることなく極秘で集会を開くというのも不可能だろう。
つまりは、またもや長ぱちゅりーの策は失敗したということである。
「そもそもどうして、まりさたちをつれもどすひつようがあるみょん?」
「わかるよー!べつにでていきたいやつはかってにでていかせればいいんだねー!」
こんどは逆に長ぱちゅりーに質問するリーダーちぇんとリーダーみょん。
基本的にはゆっくりの群れのゆん口が増えて困ることがあっても、減って困ることはそうはない。
長ぱちゅりーはさも群れの一大事みたいに言っているが、普通の群れならこの程度のことで群れは崩壊のピンチになったりはしない。
まあ、この群れは普通じゃないので現に大ピンチなわけだが、
キチンと生活しているちぇんやみょんたちからすれば当然の疑問かもしれなかった。
「そ、それはその、ほら、のこされたつがいがかわいそうでしょ!
そんなめちゃくちゃを、ゆるせるわけないじゃない!」
ややしどろもどろになりながら答える長ぱちゅりー。
まさかこのままじゃ自分の立場が危ういから、とは口が裂けても言えない。
みょんとちぇんなんかの前で本音を晒し、恥をかくなどそんなのは長ぱちゅりーのプライドが許さない。
「いちどでていったようなれんちゅうを、むりやりつれもどしたところで、どうせまたでていくだけだみょん!
まりさのつがいたちも、そんなゆっくりとはわかれて、せいかいだったみょん!」
「わかるよー!またあたらしいつがいをみつければいいだけのはなしなんだねー!」
「むぎゅうううう!」
リーダーちぇんとリーダーみょんの正論の数々に唸る長ぱちゅりー。
くそっ!だめだ!だめだ!
このバカどもはなにもわかっちゃいないんだ。
ああ言えばこう言う、ごちゃごちゃと屁理屈ばかりこねやがって。
まったくこの怠け者のちぇんとみょんは、無能のくせに昔っからこんなふうに仕事をサボる言い訳ばかり達者なのだ。
だいたいこいつらは根暗なんだ、こんな群れの端に引きこもっていつもこそこそしてやがる。
これならまだ黙って言う事をきいていたまりさたちのほうが、幾分かましだっていうものだ。
「さて、もうようはすんだみょんか?だったらおかえりねがうみょん!」
「わかるよー!ちぇんたちはこれからおしごとなんだねー!」
もう話しは済んだとばかりにひきあげはじめるリーダーちぇんとリーダーみょん。
すでに長ぱちゅりーのことなど眼中にないかのようだった。
「ぐぐぐぐ!むっきゅー!あなたたち!おぼえてなさい!こんなことして、きっとこうかいするわよ!」
そして長ぱちゅりーは小悪党が放つような最低レベルの捨て台詞を残し、すごすごとその場を退散したのであった。
「……みょん、ついにおそれていたときがきてしまったようだみょん」
長ぱちゅりーが去ったあと、リーダーみょんはやれやれといった様子で呟く。
「わかるよー!あのおさにもこまったものだねー!」
そしてそれに同意するように頷くリーダーちぇん。
「まったくだみょん!せんだいのおさは、たしょうしゅぞくひいきがあったくらいで、ほかはまともなのうりょくだとおもってたけど、
どうやらこそだてのじつりょくは、でいぶいかだったみたいだみょん!
しょうじき、あそこまでこどもがむのうだとはおもわなかったみょん!
こんなことなら、たしょうあれるのをかくごで、おさしゅうにんのしゅうかいのときにはんたいしておけばよかったみょん!」
フゥと溜息をつきながら昔を思い出すリーダーみょん。
かつてこの群れを治めていた長ぱちゅりーは、リーダーみょんの言うとおり長としては無難な実力を持っていた。
だがしかし、親バカだった。
一般に優れた人物が同時に優れた親であるとは限らないように、その先代長ぱちゅりーの子育てはでいぶ以下だったらしい。
その結果、実力はないのにプライドだけはやたら高い増長しきったバカが一匹生まれた。
その他の幹部にしても似たようなものだろう。
そんな長ぱちゅりーが長になれたのは、親である前長の強烈な後押の推薦があったからなのだが、リーダーみょんはその時の集会にて、
反対をしなかったことを今では酷く後悔していた。結局のところ今の問題はそれが全ての原因だからだ。
『むっきゅー!それじゃいまから、つぎのおさをきめるための、けつぎをするわよー!
つぎのおさになるのは、このおさであるぱちぇの、かわいいかわいいおちびちゃんよー!
このおちびちゃんにまかせておけば、むれはあんっしんだわ!
みんな、さんせいよろしくねー!』
『むっきょきょきょ!このぱちぇがおさになったあかつきには、このむれをもっともっとゆっくりできるようにするとやくそくするわ!
そう!えらばれたしんのゆっくりのみが、とってもゆっくりできるむれにね!むっきょきょきょ!』
あの当時、先代の長に紹介され、堂々とした態度で群れの皆の前に姿を現した長ぱちゅりーの自信に満ちた態度は、
群れの多くのゆっくりの目に、とってもゆっくりしていると映ったことだろう。
しかリーダーみょんは、そのときどうにもいやーな予感がしたのだ。
あの無駄に自信に満ちた態度は、今まで何不自由なく育ってきた、わがままゆっくり特有の笑みではないか?
自分以外は全て劣ったものとして認識し、周囲が自分のために働き、その命令を聞くのを当然のことだと思い込んでいる。
そんな典型的なダメゆの気配を、リーダーみょんはあの長ぱちゅりーから感じ取っていた。
そしてその予感は的中し、前長の死後、暴走した長ぱちゅりーは特定の種族だけが異常に優遇される政策を徐々にとっていくことになる。
その挙げ句が現在のようなまりさ種の大量離脱、そしてまりさに依存していたゆっくりの大量死だ。
いち早く危機を察したリーダーみょんは、自分たちとそれに比較的仲がよかったちぇん種と固まることにより、
被害を最小限に抑えたが、その分迫害の標的がまりさ種に集中してしまい現在の状態をはやめたとも言える。
そして、まりさたちが群れを出た影響で行き場をなくした醜い欲求が、ついに隠れていたみょん種とちぇん種に向かい始めることとなった。
このままじっとしていれば、まりさたちの二の舞になることは確実だろう。
さっき長ぱちゅりーが自分たちのところへやって来たのがそのいい証拠だ。
大方こんどは自分たちをまりさたちの変わりにこき使う算段なのだろう。
そうでもしないと、一度贅沢を覚えた今のれいむ、ありす、ぱちゅりーは満足に生きてはいけまい。
長ぱちゅりーはまりさを連れ戻す理由を、つがいが可哀相だからだとか、正義のためだとかゴチャゴチャ言っていたが、
結局のところさっさとこの事態を収めないと、自分の身が危ないから焦っているだけなのだろう。
今回は群れのルールを盾にとって無難にお帰り願ったが、そのうち首がまわらなくなってくれば、きっと無茶苦茶を言い出すに決まっている。
その前に何か対策を考えておかなければ……。
「それでどうするのー!いっそのことまりさたちのみかたをして、むれをのっとっちゃうー?」
考え込むリーダーみょんに、リーダーちぇんが過激な提案をしてくる。
それは、まりさたちと強力しての群れの乗っ取り計画……。
確かに今群れを牛耳ってる連中は弱い。
口だけはやかましいが、自分ひとりではなにも出来ないような連中ばかりだ。
自分たちと、それに群れを出て行ったまりさたちとが上手く連係することができれば、
力づくでこの群れを乗っ取ってしまうことも容易であろう。
しかし、
「いや、それはまだできないみょん!」
「ゆゆ?わからないよー!どうしてなのー!
このままじっとしてたら、またぱちゅりーたちが、むちゃをいってくるかもよー!
そうならないうちに、いっそのこと、こっちからしかけたほうがいいんじゃないかなー!」
「たしかにちぇんのいうとおり、あのぱちゅりーや、かんぶたちはどうってことないそんざいだみょん!
でもそのこととはべつに、もっともっとおおきなちからがそんざいするみょん!
そのちからがどちらにむかうのか、みきわめないうちは、うかつにこうどうをおこすのはきけんだみょん!
いまはまだふほんいでも、まりさのがわと、ぱちゅりーのがわのどちらにでもつけるようにふるまっておくひつようがあるみょん!」
リーダーみょんは思う。
今はまだ行動を起こすべきときではない。
誤った選択肢を選べば、それが即自分たちの全滅に繋がる可能性がある。
今はまだ静観しておかなければ……。
「むっきゅ!むっきゃ!むっぎいいいいいいいい!」
その頃、長ぱちゅりーはおうちでギリギリと歯を食いしばりながら顔を真っ赤にして怒り心頭の様子だった。
度重なるゆっくりできないストレスにより、長ぱちゅりーの怒りは頂点へと達していたのである。
「むぎゃあああああああ!どいつもこいつも、このけんっじゃのめいれいにさからいやがってえええええええええ!
なにさまのつもりだああああああああああ!だれのおかげで、このむれでいきていけるとおもってるんだあああああああ!
ふざけるなああああああああああ!」
大声でのどがはち切れんばかりに絶叫する長ぱちゅりー。
彼女がこんなにゆっくりできないのは生まれてこのかた初めての経験だった。
「だいたいほかのれんちゅうだってそうだよおおおおおお!
そもそも、じぶんたちがうっかりしてたから、まりさににげられたんでしょうがあああああああ!
それをぱちぇたちにおしつけやがってええええええええ!
しねええええ!むのうなゆっくりはみんなしねえええええええ!」
「ゆゆ…その、ぱちゅりー、すこしおちついたほうが…」
「そっ、そうよ!とかいはじゃないわよ……。それに、あんまりなかまをばかにするはつげんは、よしたほうが……」
長ぱちゅりーの尋常ではない様子に、恐る恐るといった感じでたしなめる幹部れいむと幹部ありす。
それは普段長ぱちゅりーと一緒にやりたい放題やっている二匹がフォローに回るという滅多に見れない光景。
つまりはそれ程までに彼女らは追い詰められているということだ。
今、長ぱちゅりーを取り巻くゆっくりたちの関係はかなり悪い。
明確に敵対行動をとっているまりさたちの勢力は言わずもがな、敵ではないものの、決して味方でもないみょんやちぇんたちの勢力。
そして唯一の味方であるはずの群れのぱちゅりー、れいむ、ありすたちの勢力もあまり協力的とは言えない状況だ。
間違ってうかつな発言をして、彼女らの心証を悪くするわけにはいかない。
「ぱちゅりー、ここはやっぱり、その、むれのみんなにおねがいして、
まりさをつれもどすのにきょうりょくしてもらったほうが……」
「そっ、そうよね!ほら、その、ここは、みょんたちにも、めいれいとかじゃなくて、ちゃんとあたまをさげて、
おねがいするべきよね……。うん、そう、これはしかかたないわ……」
興奮状態の長ぱちゅりーに変わり、わりかし現実的な案を提案する二匹。
確かに今ならまだ長ぱちゅりーが下手に出ることによって、この群れ内のゆっくり全てが団結することができれば、
挽回の機会は充分にある。
しかし、
「はあああああああああああああ!ふざけるなああああああああああああああああ
このけんっじゃに、むれのゆっくりたちにあたまをさげろっていうのおおおおおおお!
そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおお!
ばかなの!しぬのおおおおおおおおお!」
そんなみっともない提案(別に他人に頭を下げてお願いして回るのはみっともなくない)を長ぱちゅりーが受け入れるはずもなかった。
「だいたい、おまえらみたいな、むのうにごちゃごちゃいわれなくっても、ちゃんとつぎのてはかんがえてあるんだよおおおおおお!
むっげっげっげ!ぱちぇにはきりふだがあるんだよおおおおおお!
くそにんげんをりようするというきりふだがねえええええええ!」
「「!?」」
その言葉を聞いて、驚愕の表情をする幹部れいむと幹部ありす。
人間を利用するだって?そんなことできるはずが!
いや、しかしまてよ、確かもう人間が群れにやってくる時期だったはず。
そこで、長ぱちゅりーが群れの長という地位を上手く利用すればあるいは……。
「むっきょきょきょ!このむれのばかどもに、くそにんげんをりようして、
おさにさからうとどうなるか、めにものみせてやるわあああああああああ!
ゆぎゃっはっはっはっはっはっはっ!むぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょおおおお!」
長ぱちゅりーのおうち内にて、狂ったような笑い声がいつまでも響いていた。
つづく
いじめ 制裁 自業自得 引越し 群れ ゲス 希少種 自然界 独自設定 ナナシ作
*前回のあらすじ
長ぱちゅりーはまりさたちが新しく作った群れに向かった。
「ゆっくり!ゆっくりー!」
「すーや!すーや!」
「むーしゃ!むーしゃ!しあわせー!」
「ゆっくちー!」
ここは山の外れに位置するまりさたちが新しく作った群れの広場。
そこにいるまりさたちは、みな思い思いの方法でとってもゆっくりしている。
あるまりさは、他の家族や他のまりさたちとじゃれあい、またあるまりさは、ひなたぼっこをしながらうたた寝をしている。
そしてまたあるまりさは、自分が採ってきた食料を口一杯にほおばっていた。
それらの行為は、みな元の群れにそのままいたら到底できなかったことだ。
ここではれいぱーにおびえることもなく、でいぶに罵られ四六時中狩りに繰り出されることもなく、
もりけんに顎でこき使われることもない。
食料は自分と連れて来たおちびちゃんたちの取り分だけ狩ってくればそれでこと足りるし、
余った時間は誰に邪魔されることもなくゆっくりし放題だ。
もとよりこの群れのにいるまりさは、皆今までつがいであったでいぶやありす、ぱちゅりーの無茶な要求にも耐えてこれたような優秀な個体が集まっているのだ。
ただ生きて、暮らしていくだけならば何の問題ない。
唯一の不満と言うか不便は、この群れにはまりさ種しかいないため、つがいとおちびちゃんをつくることができないことだ。
だがしかし、それはもういい。
いまさらつがいを持とう、などと考えるまりさはこの群れにはもはや誰もいなかった。
おちびちゃんなら、いまいるだけで十分だ。
今あるゆっくりをただ享受して、ただ生きていければそれでいい。
一度は心を殺したまりさたちの、それはある種の悟りといってもいい心理であった。
この群れに逃れてきたまりさたちは、みな今の現状に満足しており、今あるゆっくりで充分と感じていたのだ。
しかし、そんな穏やかな時間が流れている群れの広場に、突然一匹のまりさが慌てた様子で飛び込んでくる。
「ゆあああああああああああ!みんなたいへんだよおおおおおおお!
まりさいがいの、ほかのゆっくりが、こっちにむかってきてるよおおおおおおおお!
まえのむれの、おさぱちゅりーに、かんぶありす、かんぶれいむもいるよおおおおおおおおお!」
ざわわ!?
広場で各々ゆっくりしていたまりさたちは、そのセリフを聞くや否や一転、騒然となる。
その飛び込んできた見張り役のまりさの話しでは、なんと元いた群れの長ぱちゅりーと幹部れいむ、幹部ありすが、こちらの方向に向かって進んできているというのだ。
そのゆっくり出来ない報告により混乱状態となるまりさたち。
群れの長が?いったい何のために?どうして!せっかく忘れていたのに!何しにきやがった!怖いよ!もう前の生活はゴメンだ!
なんで放っておいてくれないの!顔もみたくない!逃げないと!ゆっくりできない!
様々なゆっくりできない憶測があたりを飛び交い、まりさたちはおろおろと動揺しただ広場を右往左往するばかり。
と、そこへ、
「みんなおちつくんだぜぇ!」
慌てふためくまりさたちに対して鋭い一喝が広場に響いた。
「みんなじたばたするんじゃないんだぜ!なにもおそれるひつようはないんだぜえ!
もとのむれのおさだか、かんぶだかがやってきたところで、どうってことないし、やつらにしたがうひつようもないんだぜえ!
もうまりさたちは、じゆうなんだぜええええええ!」
慌てふためくまりさたちに向かって、この群れのリーダー格のまりさが吼える。
「しんぱいしなくてもだいじょうぶなんだぜえ!
ここはもう、どくりつした、まりさたちのむれなんだぜ!
ぶがいしゃのすきかってにはさせないんだぜええええ!」
「「「ゆっ、ゆおおおおおおおおおおお!」」」
リーダーまりさの言葉により、我に帰る群れのまりさたち。
そうだ、そうだった。
もう自分たちはあの群れを出て行ったのだ。
だからあの群れのルールに従う必要もないし、長ぱちゅりーや幹部れいむ、幹部ありすにへこへこする必要もない。
何の用でこっちに向かってるか知らないが、奴らが来たところで何てことはないんだ!
「そうだね!そうだよ!」
「りーだーのいうとおりだよ!」
「ここはまりさたちのむれだよ!ぱちゅりーたちなんかのすきにはさせないよ!」
互いに団結し、落ち着きを取り戻していくまりさたち。
ここはまりさの楽園、まりさだけの群れ。
他のゆっくりの指図は受けない!
そう群れのまりさたちは、強く意志を固めるのであった。
「むっきゅー!まだつかないのかしら、ぱちぇはもうつかれたわ!」
「ゆーん、うわさにきいたはなしだと、ここらへんのはずなんだけど……」
「まったく、これだからいなかはいやなのよ!」
誰にともなくぶつくさと文句を言いながら、のろのろと森を移動しているゆっくりたちがいる。
それは例の長ぱちゅりー、幹部れいむ、幹部ありすの三匹だ。
三匹は意気揚々と群れを飛び出したのはいいものの、目的地のまりさの群れの位置がよくわからず森をさ迷い歩いていた。
しかも、ただでさえ日々の身の回りの生活の一切をまりさにやらせて身体がなまっている三匹にとって、この道中は非常にしんどいものらしく、
三匹はもうヘトヘトな様子である。
そして疲れ切った長ぱちゅりーは、当然の如く不満だらけだった。
まったく何だって自分たちがこんな辛い目に遭わなければならないのか?
何故まりさの群れのにいる連中は、長や幹部である自分たちがこうしてやってきているのに、迎えの一つもよこさないのか?
まったくふざけてる。
やはりわざわざこのぱちぇ自ら群れに乗り込むなんてことはせず、適当に使いでも寄越して、
向こうからこっちの群れに土下座させにこさせるべきだっか?
とにかく疲れた、何だってこのぱちぇが、本来ならば下等なまりさ種がやるべき肉体労働をしなければならなのか……。
自分から群れに行くと言い出したことを棚に上げ、
そんなことを長ぱちゅりーが考えていると、突然幹部れいむが声を上げた。
「ゆゆ!みてみて!あそこにまりさがいるよ!」
「あら、ほんとだわ!ゆぷぷぷ!いなかものまるだしのつらねぇ!」
幹部れいむの言った方向に視線を向けると、その言葉が示す通り少し進んだ場所に一匹のまりさがいた。
そのまりさは何をするでもなく、じっと長ぱちゅりーたちの様子を窺っているようである。
「むっきゅー!ようやくでむかえがきたの!まったくおそすぎるわね!
ちょっとそこのまりさ!ばかみたいにぼさっとしてないで、ぱちぇたちをさっさとおまえらのむれにあんないしなさい!
これはめいれいよ!はやくしなさい!」
前方にいるまりさにむかって、高圧的に話しかける長ぱちゅりー。
しかし、
「……………」
そこにいたまりさは無言でクルリと踵を返すと、そのままどこかへと跳ねて行ってしまった。
「なっ!」
「ゆええ!」
「ちょっと!」
そんなまりさがとった予想外の行動に驚く三匹。
自分は確かに群れに案内しろと命令したはずだ。
この至近距離で、まさかそれが聞こえなかったなどということはあるまい。
だというのにその命令を無視し、あまつさえ長や幹部である自分たちに背を向けてどこかへ去るなどとは一体何事だろうか!
「なっ、なんなのよ!いまのたいどは!いくらなんでもふざけすぎよ!」
「ゆああああああ!あのまりさ、なまいきだよおおおおおおおおお!まりさのくせにいいい!」
「むぎゅぎゅぎゅ!こっ、このぱちぇをむしするなんて!なんてぶれいなゆっくりなの!」
三匹は呆然とするのもつかの間、すぐに我に返って怒りをあらわにする。
「あのまりさを、おうわよふたりとも!こんなあくは、けっしてみのがしちゃいけないわ!」
「「ゆっくりりかいしたよ!」」
言うが早いか、まりさが去った方角へと跳ね出す三匹。
怒りで疲れが吹き飛んだのか、長ぱちゅりーを先頭にして今までにないスピード(それでもかなり遅い)で突き進んでいく。
そして、その勢いのまま一直線に森を進んだ三匹はやがて木々を抜け、やや開けた場所へと出る。
そこには……。
「「「ゆゆ!?」」」
その場所で三匹は 我が目を疑う光景を目にした。
目の前に広がる広場。
そこにはまりさだ、まりさたちがいる!
いや、そのことはいいのだ。
自分たちは、そもそもまりさの群れを目指してやってきたのだから。
まりさがいること事態は問題ではない。
問題はそのまりさたちの様子だ。
なんと、そこにいるまりさたちは、信じられないことに、誰も彼もがとんでもなくゆっくりしていた。
長ぱちゅりーたちは、こんなにゆっくりしているまりさは、いやそもそもこんなにゆっくりているゆっくりを見るのははじめてだった。
「……これは、どういうことなの」
ポカンとアホみたいに口を開けたまま思わず呟く長ぱちゅりー。
何故これほどまでも、まりさたちはゆっくりできているのであろうか?
『ぼせい』溢れるれいむ種が、『とかいは』なありす種が、そしてなにより『けんっじゃ』であるこの自分、ぱちゅりー種がこの群れにはいないというのに!
一体なぜ?どうしてゆっくりできるというのだ!
と、そこへ、
「いったいこのむれに、なにようなのかぜ?」
困惑している長ぱちゅりーたちへ声がかけられる。
「むっ、むきゅ」
声をかけられた方向へ目を向けると、いつの間にやらそこには他のまりさより一回り大きいリーダーまりさを中心に、
数匹のまりさたちが集まっており、長ぱちゅりーを睨み付けていた。
「もういちど、いうのぜ!
いったい、このむれになんのようできたのかと、きいているんだぜぇ!」
急な事態にやや放心気味の長ぱちゅりーたちに対して、咎める様に言うリーダーまりさ。
リーダーまりさの周りにいるまりさたちも、みな一様に険しい表情をしている。
その口調や態度から、歓迎されてないことは明らかだ。
「ゆーん!なんだかゆっくりできないふんいきだよ!」
「とかいはじゃないわね…」
流石に能天気な幹部れいむと幹部ありすも、その緊迫した雰囲気に気づいたのかやや不安げな様子である。
「ちょっとあなたたち!さっきからなんなのそのたいどは!
おさであるこのぱちぇが、わざわざきてあげたのに!こんなぶれいがゆるされるとおもって!
ふかいだわ!しゃざいしなさい!
それから、ぱちぇたちをかんげいするぱーてぃはどうしたの!」
しかし、そんな中にあっても長ぱちゅりーは、毅然とした態度を崩さなかった。
ただ単に空気が読めてなかっただけとも言うが…。
「はぁああああん!いったいなにをわけのわからないことをいってるんだぜ?
ようがないならさっさとかえるんだぜえ!
ここは、おまえらがくるようなばしょじゃないんだぜぇ!」
長ぱちゅりーの態度に対し、小バカにしたように言い返すリーダーまりさ。
そしてさらに、
「ゆゆ!ぱちゅりーだ!もりけんのぱちゅりーがいるよ!」
「でいぶだ!となりにでいぶもいるよ!」
「れいぱーありすもいっしょみたいだね!
ゆぷぷぷ!もといたむれの、くずしゅさんびきが、みはりのほうこくどおり、がんくびそろえてあつまってきてるよ!」
ざわ…ざわ…。
長ぱちゅりーとリーダーまりさの会話により注目を浴びたのか、今まで広場で思い思いにゆっくりしていたまりさたちまで
わらわらと長ぱちゅりーたちの側に集まってくる。
そして、そうこうしているうちに、いつの間にか長ぱちゅりーたち三匹はこの群れにいる沢山のまりさたちに周囲をすっかり囲まれてしまっていた。
「ゆぴいいい!きょわいよおおおおおおお!」
「とっ、とかいはじゃないわああああああ!」
「……………くっ!」
周囲をまりさたちに囲まれ、その恐怖からみっともなく震えだす幹部れいむと幹部ありす。
それは今にも泣き出し、恐ろしーしを辺りにぶちまけんばかりの有様である。
そして長ぱちゅりーもまた、一見かろうじて平静を保っているように見えたがその顔面は真っ青だった。
「ゆふん、いったいなんのようで、このむれまでやってきたんだかしらないけど、
みてのとおり、おまえらはまねかれざるきゃくなんだぜえ!
さっさとおかえりねがうんだぜ!いまならみのがしてやるんだぜえ!」
汚物でも見るかのような目で、吐き捨てるように言うリーダーまりさ。
また取り巻きのまりさたちも敵意をむき出しにしており、まさに一触即発の状態である。
うかつな言動をすれば、そのままふくろ叩きにされかねない状況だ。
長ぱちゅりーたちにとってはここはまさにアウェー。敵地なのである。
そもそもそんな場所に、幹部三匹で乗り込むこと事態が愚行であるといえるのだが、
能天気な長ぱちゅりーたちはこんなことになるなんて全く予見してなかったし、今さら何を騒いだところで後の祭りだ。
もうこういう状況になってしまった以上、最善の行動は変にまりさたちを刺激せずに大人しく帰るのが正解だろう。
というかそれ以外に手はない。
「ゆゆ、ぱちゅりー、ここはいったんひきあげたほうが……」
「そっ、そうよぱちゅりー!こんないなかにいつまでもいることないわ!」
「…………むきゅ」
危険なレベルでゆっくり出来ない気配を感じ取ったのか、長ぱちゅりーにそれとなく退却を進める幹部れいむと幹部ありす。
当初の予想だった、まりさたちが進んで群れに戻ってくるという希望的予測はもう完全に否定されている。
となれば、こんなところに長居は無用で、さっさと撤退するのが吉だ。
幹部れいむと幹部ありすには既に群れを出た当初の陽気さ楽観さはなく、その心を占めるのはこの場をさっさと離れたい一心だけだった。
そして、今この場はゆっくり出来ないという意見は長ぱちゅりーとてまた同様であった。
確かに幹部れいむたちが言うように、こんなふざけた場所からは一刻も早くおさらばしたい。
が、しかしである。
長ぱちゅりーは思う。
このままここでなにもせず、すごすごと引き下がる、などということがあってよいのだろうか?
長たる自分がまりさごときの言う事に従い、屈することが許されてよいのだろうか?
いいや、それは断じて認められない!
そんなのけんっじゃとしてのプライドが許さない!
大体悪いのはこいつらの方じゃないか、自分という正義がここで崩れる道理があろうはずがないのだ!
長ぱちゅりーの心の内から何か得体の知れないものがむずむずと這い上がってくる。
それはまりさたちによってもたらされた、おそらく生まれてこのかた初めて体験するゆっくり出来ないストレスが、
捌け口を求めて長ぱちゅりーの身体の中で暴れまわっているのだ。
人生において他人にムカつくことを言われ、何か言い返したいが、言い返してはいけない場面というのは存在する。
例えば今がその時だ。
こちらは三匹しかいないのに対して、あちらは多数のまりさ、それもこちらに明らかに敵意を持っている状況。
こんなときは、例え不本意でも口を噤んでおくべきである。
だがしかし、我慢などと言うものとは無縁の生活を送ってきた長ぱちゅりーは、それを耐える術をしらない。
そしてとうとう堪えきれなくなった長ぱちゅりーは、口火を切ったのであった。
「いっ、いいかげんにしなさい!
かえれですって、よくもそんなくちがきけたものね!
あなたたち、いったいだれにたいして、ものをいっているのかわかってるの!
ぱちぇは、むれのおさなのよ!えらいのよ!けんっじゃなのよ!
それをおまえら、まりさごときがこのぱちぇにいけんなんて、みのほどをしりなさい!」
あくまで見下した態度で、どこまでも不遜に長ぱちゅりーは喋り続ける。
「なんのようできたかですって?あなたたちばかまりさは、いちいちいわれないとそんなこともわからないの!
おまえらくずどもを、むれにつれもどしにきたのよ!
おまえらが、すきかってして、むれをでたおかげでめいわくしているゆっくりがたくさんいるの!
こんなあくじを、むれのおさとして、ほうっておけるはずないでしょう!
いい、いちどしかいわないわよ!ここにいるまりさたちは、そっこくむれにもどって、ぱちぇのどれいになりさい!
これは、おさとしてのめいれいよ!わかったら、さっさとこうどうしなさい、このくずども!」
体内に溜まったものを吐き出すように、一気にまくし立てる長ぱちゅりー。
自分は何ら間違ってなどいない。
そうとも、間違ってるのはこいつらなのだ。
自分は正しいことをしている!
従え!このゲスども!ぱちぇは群れの長なんだぞ!
「……………はぁ?」
長ぱちゅりーの物言いに、リーダーまりさはただただ困惑気味に顔をしかめた。
また、周囲を囲んでいるまりさたちも同様に、呆けたような表情をしている。
言ってる事が分からない…イカれてるのか?この状況で。
ひょっとしてこいつらは、なぜ自分たちが群れを出て行ったのかまるで理解していないのではないだろうか?
今の長ぱちゅりーの言動から推測するには、そうとしか考えられないのだ。
仮にもしそうだったとしたら、コイツは一体どれ程愚かで無能なのだろうか。
そしてそんなヤツに今までこき使われてきた自分たちは……。
「むっきいいいい!なにぼさっとしてるの!
さっさとこうどうしろといったでしょこのぐ……」
「だまるんだぜええぇぇえ!!!」
「ひっ!」
まだ何か言おうとした長ぱちゅりーの言葉を、リーダーまりさの咆哮が遮る。
リーダーまりさは悟ったのだ、長ぱちゅりーとまともに会話をするのが時間の無駄だということに。
「いいかげんにするのはおまえらのほうなのぜ!
だいたい、いつまでおさきどりでいるんだぜえ!わらわせるんじゃないのぜ!
ここはまりさたちのむれなんだぜ!ここではおまえらなんか、ただのむのうな、もりけんなんだぜぇ!
ごちゃごちゃいうようなら、ちからずくでおいかえすまでだぜぇ!」
ドン!
「むっきょろばああああああああ!」
リーダーまりさが軽く長ぱちゅりーに体当たりすると、長ぱちゅりーは悲鳴を上げながらコロコロと転がっていく。
「ここからでていけ!そしてにどとこのばしょにくるんじゃないんだぜ!」
「そうだ!そうだ!」
「でていけ!このむれからでていけ、このげすども!」
「かえれ!かえれぇ!」
「しんでね!しんでね!はやくしてね!」
「くずが!にどとそのきたないつらを、まりさにみせにこないでね!」
リーダーまりさが手を出したことをきっかけとして、四方八方から感情を押さえきれなくまりさたちのヤジが飛ぶ。
いや違う、これはヤジなどという生易しい代物ではない。
長ぱちゅりーたちをはじめとした、過去に自分たちをこき使った群れのゆっくりたちに対する、
明確な敵意、殺気をこめた憎悪の言葉の数々であった。
「ゆぴいいい!もうやだああああ!おうじがえるううううう!」
「ひいいいい!どがいはあああああ!どがいばあああああ!」
ジョロジョロジョロ~。
そんなあまりにもゆっくりできない状態についに耐えられなくなったのか、
とうとう泣き出し、おそろしーしを漏らす幹部れいむと幹部ありす。
「うわ!きたなっ!もらしたよ!でいぶとれいぱーが、しーしをもらしたよおおおお!」
「あっちいってね、けがわらしい!」
「ゆゆ!これでもくらえ!」
ピュッ!
周りを囲んでいたまりさのうち一匹が、口に小さな石を咥え噴き出した。
そしてその石ころは放物線をえがき、見事れいむの頬に命中した。
「ゆびいいいいい!いだいいいいいい!どうしてこんなことするのおおおお!
でいぶなにもわるいことしてないのにいいいい!」
「うるさい!このげすども!みんなやっちゃえ!」
「ゆゆ!くちでいってわからないげすを、むれからおいだすよ!」
はじめに石を拾ったまりさに倣って、次々に小石を口に咥え、撃ちだすまりさたち。
それは石つぶてとなり、幹部れいむと幹部ありす、そしてやや離れたところに転がっている長ぱちゅりーを襲った。
「ゆっぴぎゃああああああ!やべでえええええええええ!」
「ぎょへえええ!ちょかいは~!ちょかいはなのおおおおおおお!」
「むっげっへぼ!えれえれえれ!」
幹部れいむと幹部ありすは自分で漏らしたしーしにまみれながら、長ぱちゅりーは自身の中身を少し吐き出しながら、
たまらず群れの出口へ向かって逃げ出す。
もう長のプライドとかそんなこと言ってる場合じゃない。
このままここにいたら命が危ない!流石にそのぐらいのことはもりけんでも理解できたようだ。
「ゆふん!こんかいはこれぐらいにしておいてやるんだぜ!
ただし、つぎまたやってきたら、そのときはいのちはないとおもうんだぜぇ!」
必死の形相で逃げ出す長ぱちゅりーたちに、そんなリーダーまりさの最後の声が届いた。
そして数日後。
ここは長ぱちゅりーが所属する群れ内。
「なんなの、あのいなかものまるだしのたいどは!ふざけるのもいいかげんにしてほしいわ!」
「ゆうううう!れいむにひどいことするなんて、とんでもないげすなまりさだよおおおおお!
「むっきゅううううう!よくも!よくもぱちぇをばかにしてえええええ!
ゆるさない!ぜったいにゆるさないわあああああああああ!」
いつもの長ぱちゅりーのおうちで、まりさの群れから命からがら何とか帰還した三匹が、がん首そろって文句を垂れている。
彼女らのまりさたちへの感情は、憤りから明確な怒りへとシフトしていた。
とは言え、実際には口であーだこーだと文句を言うだけで、実際にまりさたちの群れへと報復行動へ移るようなことはしない。
というかできないのだ。
何故ならあれだけの数のまりさたちに対抗するには、こちらにもそれ相応の数のゆっくりがいる。
しかし肝心の群れにいる他のぱちゅりー、れいむ、ありすはたちは、自らまりさの群れに乗り込んで行いき、戦い、
そして、まりさをどうこうすることに積極的ではなかった。
いや、もちろんまりさたちに戻ってきてほしいと思っているのだ、そうでないと自分たちが困るのだから。
しかし、そのために労力を使うのゴメンだったのだ。
要するに彼女らがしたいのはケンカではなくイジメなのである。
殴りつけても文句を言わない生きたサンドバックが、おうちに食料をはこんでくるだけの機械が、
自らの手足となる奴隷が欲しいだけなのである。
それもなるべく自分たちの手は汚さないで。
そんな連中が、わざわざ苦しい思いをしてまでまりさの群れに赴くはずもなく、
ましてや、長たちの個人的復讐のために動くはずもない。
そもそもまりさたちを全員せいっさいしてしまったら、奴隷が手に入らないではないか。
ゆえに、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー全員でまりさの群れの攻め立てるという選択肢は使えないのだった。
「それで、どうするのぱちゅりー!まさかこのままじゃおわらないよねぇ!」
「そうよ!そうよ!このままでいいはずがないわ!というか、むしろありすたちのたちばがあやういわ!」
長ぱちゅりーに迫る幹部れいむと幹部ありす。
出て行ったまりさたちを連れ帰り、奴隷にするという計画は失敗に終わってしまった。
しかし今の長ぱちゅりーたちは、失敗しました残念でした、ではすまされない状態と立場にある。
何故ならばこの群れの運営は、まりさがいなくなってしまったことにより、想像以上の危機的状況に陥っていたからだ。
いままでまりさたちを劣っているとして、奴隷のように扱い、やりたい放題してきた群れのれいむ、ありす、ぱちゅりー。
しかしいざそのまりさたちがいなくなってしまうと、なにも出来ずに餓死や衰弱死してしまうゆっくりが続出しはじめたのだ。
寄生主のいなくなった寄生虫の末路など、所詮こんなものということだろう。
そんなわけで、長ぱちゅりーたちの所には日々、群れのれいむ、ありす、ぱちゅりーたちが、この事態を何とかしろと毎日のように苦情を言いにくるのであった。
その様子はかつて離婚禁止法を掟として決めたときに、群れのまりさがこぞってぱちゅりーの下を訪れた現象とそっくりである。
ただし、抗議にくるゆっくりがまりさではなく、れいむ、ありす、ぱちゅりーだという違いはあったが。
そもそも困ってるなら自分たちで何とかしろよ、と思わなくもないが、先ほども言ったように彼女らはなるべく自分たちの労力は使いたくないのだ。
一昔前なら、まりさとつがいになるだけで手頃に奴隷が手に入った。
しかし現在はどうだ、群れにまりさがほとんどいなくなってしまったではないか。
これはゆっくりできない、だからなんとかしろと皆長ぱちゅりーのところに次々と文句を言いにくるのだ。
長ぱちゅりーは、相手がまりさならば偉そうに突っぱねることが出来たが、しかしその対象が、れいむ、ありす、ぱちゅりー、
となるとそうもいかない。
自分ら長や幹部と同じ種族ならば、無下にすることはできないというわけだ。
今までは何とかする、大丈夫だから落ち着いて待っていろと、やってくるゆっくりをなだめてきたがそれもそろそろ限界だろう。
もしこのまま何の打開策もなしに、ズルズルとこの状況が続くようであれば、長ぱちゅりーたちは無能のレッテルを貼られ、
長や幹部を辞めさせられるばかりか、群れを衰退させた責任としてせいっさいの対象になる可能性すらある。
それは長ぱちゅりーたちが最も怖れることであった。
そうならないためには、なんとしてもあのクソまりさたちをこの群れに連れ戻す必要がある。
それも早急にだ。
「むきゅ!だいじょうぶよ!もうつぎのてはかんがえてあるわ!」
不安に駆られ迫ってくる幹部れいむと幹部ありすに、安心するように言う長ぱちゅりー。
「ゆゆ!ほんと!」
「さっすがぱちゅりーはとかいはね!」
「むっきょきょきょきょ!このけんっじゃのぱちぇに、まかせておけばいいのよ!むっきょきょきょきょ!」
不適に笑う長ぱちゅりー。
はたしてけんっじゃの次なる策とは!?
「と、いうわけで、あなたたちに、むらをでていったまりさたちを、どれいとしてつれもどすやくめをあたえるわ!
これはほんらいならば、なまけもののあなたたちには、すぎたしごとよ!ありがたくおもいなさい!」
ニヤニヤと笑いを浮かべながら尊大な態度でそう言い放つ長ぱちゅりーの目の前には、二匹のゆっくりがいた。
ちぇんとみょんだ。
ここは群れ内のやや外れたところにに位置する巣穴。
主にちぇん種とみょん種が固まって生活しているテリトリーである。
今、長ぱちゅりーが話しているみょんとちぇんは、この辺り一体のリーダー格のゆっくりであった。
さて誤解しないように言っておくと、このちぇんとみょんはリーダー格と言ったが、別に群れの幹部とかそういうわけではない。
そもそもこの群れに所属しているみょんとちぇんたちはやや特殊で、群れに属していながらもあまり積極的に他のゆっくりとはかかわろうとはせず、
独自の領域に引きこもっており、群れの一部にあってなお独自の組織体質を持ってるゆっくりたちの集まりだった。
無論だからといって、別に群れの方針や掟に逆らったりしているわけではない。
あくまで群れ内に存在する一派閥のようなものであり、そこにはみょんやちぇんの他にもそのつがいとして、
まりさやれいむなどのゆっくりもきちんと生息している。
何を隠そう今この群れに僅かに残っているまりさ種は全てこのテリトリーにいるまりさたちであった。
そんな連中のまとめ役が、今長ぱちゅりーと話しているこのちぇんとみょんというわけだ。
「いっておくけど、これはじゅうようなやくめよ!しっぱいはゆるされないわ!
もし、しくじるようなことがあれば、もちろんせいっさいよ!
そこのところをよーく、きもにめいじておくことね!」
そして、そんな彼女らに長ぱちゅりーはまりさたちを連れ戻す役目を押し付けたのだ。
群れの、れいむ、ありす、ぱちゅりーが動かないというのならば、かわりにちぇんとみょんたちを動かせばいい。
自分らの手を一切汚すことなく、手に負えないことは他人に丸投げというわけである。
これで成功すればそれでよし、よしんばもし失敗したとしても、失敗の責任の制裁ということでみょんやちぇんたちを、
文句を言ってくる連中に対して奴隷として宛がえば不満が出ることはないだろう。要はまりさたちの身代わりである。
これでめでたく長ぱちゅりーたちの地位は安泰というわけだ。
「むきゅ!おさのめいれいはいじょうよ!もちろんこのやくめ、ひきうけるわよね!」
当然だろ?といった様子でリーダーちぇんとリーダーみょんに同意を求める長ぱちゅりー。
しかし二匹の答えは、
「おことわりだみょん!」
「そんなしごとは、ごめんなんだねー!」
「むぎゃ!なんですって!」
明確な拒否であった。
「どういうつもりなの!ふざけないで!あなたたち、むれのそういに、さからうきなの!
そんなことが、ゆるされるとでもおもっているの!いいかげんにしなさい!」
怒りで顔を真っ赤にし、喰らいつくように二匹に詰め寄る長ぱちゅりー。
「べつにむれのそういにさからうなんて、そんなことだれもいってないみょん!
ただ、むれのそういというのなら、きっちりてじゅんをふんで、きめてほしいってことだみょん!」
「わかるよー!むれのおきてにはしたがうけど、それはぱちゅりーのめいれいにしたがうってことじゃないんだねー!」
怒り心頭の長ぱちゅりーに対し、冷静に正論を返すリーダーちぇんとリーダーみょん。
そもそも長ぱちゅりーはことあるごとに命令だ命令だといっているが、
本来この群れの長には、他ゆんを勝手にどうこうできるような強力な権力など存在しない。
あくまで群れ全体を舵取りするための方針を決める際に、みなの中心となって行動する役割を持つというだけだ。
つまり群れの長のぱちゅりーの命令だからといって、群れのゆっくりは絶対服従しなければならないということではないのだ。
この群れでゆっくりに対して唯一無二の強制力を持つのは群れで定められた掟のみである。
この掟で決められたことだけは、いかなるゆっくりでも逆らうことはできず、逆らえば即制裁の対象となる。
そして、新しく掟を作るためには、群れの集会で賛成の数が反対の数を大きく上回らなければならないのだ。
例えば、以前掟で定められた離婚禁止法。
これは集会に参加していたれいむ、ぱちゅりー、ありすの全員が賛成し、直接当事者ではないみょんとちぇんは角が立つことを警戒して、
全員賛成でも反対でもない棄権をし、まりさたちはほとんどその場にいなかったため、賛成多数となり成立したという経緯があった。
「とにかくそのめいれいはおことわりだみょん!
どうしてもやらせたいなら、きちんとしゅうかいをひらいて、そこできめてほしいみょん!」
「わかるよー!でもどうせしゅうかいをひらいても、ちぇんとみょんたちはみんなはんたいするからむだだけどねー!」
リーダーちぇんの言うように、この命令を実行させるための掟を作るために集会を開いたところで無駄に終わることだろう。
前回の離婚禁止法と違って、今回はちぇんとみょんたち全員が反対に回るであろうことは明らかだからだ。
また、流石に前使った手のように、全てのちぇんとみょんに悟られることなく極秘で集会を開くというのも不可能だろう。
つまりは、またもや長ぱちゅりーの策は失敗したということである。
「そもそもどうして、まりさたちをつれもどすひつようがあるみょん?」
「わかるよー!べつにでていきたいやつはかってにでていかせればいいんだねー!」
こんどは逆に長ぱちゅりーに質問するリーダーちぇんとリーダーみょん。
基本的にはゆっくりの群れのゆん口が増えて困ることがあっても、減って困ることはそうはない。
長ぱちゅりーはさも群れの一大事みたいに言っているが、普通の群れならこの程度のことで群れは崩壊のピンチになったりはしない。
まあ、この群れは普通じゃないので現に大ピンチなわけだが、
キチンと生活しているちぇんやみょんたちからすれば当然の疑問かもしれなかった。
「そ、それはその、ほら、のこされたつがいがかわいそうでしょ!
そんなめちゃくちゃを、ゆるせるわけないじゃない!」
ややしどろもどろになりながら答える長ぱちゅりー。
まさかこのままじゃ自分の立場が危ういから、とは口が裂けても言えない。
みょんとちぇんなんかの前で本音を晒し、恥をかくなどそんなのは長ぱちゅりーのプライドが許さない。
「いちどでていったようなれんちゅうを、むりやりつれもどしたところで、どうせまたでていくだけだみょん!
まりさのつがいたちも、そんなゆっくりとはわかれて、せいかいだったみょん!」
「わかるよー!またあたらしいつがいをみつければいいだけのはなしなんだねー!」
「むぎゅうううう!」
リーダーちぇんとリーダーみょんの正論の数々に唸る長ぱちゅりー。
くそっ!だめだ!だめだ!
このバカどもはなにもわかっちゃいないんだ。
ああ言えばこう言う、ごちゃごちゃと屁理屈ばかりこねやがって。
まったくこの怠け者のちぇんとみょんは、無能のくせに昔っからこんなふうに仕事をサボる言い訳ばかり達者なのだ。
だいたいこいつらは根暗なんだ、こんな群れの端に引きこもっていつもこそこそしてやがる。
これならまだ黙って言う事をきいていたまりさたちのほうが、幾分かましだっていうものだ。
「さて、もうようはすんだみょんか?だったらおかえりねがうみょん!」
「わかるよー!ちぇんたちはこれからおしごとなんだねー!」
もう話しは済んだとばかりにひきあげはじめるリーダーちぇんとリーダーみょん。
すでに長ぱちゅりーのことなど眼中にないかのようだった。
「ぐぐぐぐ!むっきゅー!あなたたち!おぼえてなさい!こんなことして、きっとこうかいするわよ!」
そして長ぱちゅりーは小悪党が放つような最低レベルの捨て台詞を残し、すごすごとその場を退散したのであった。
「……みょん、ついにおそれていたときがきてしまったようだみょん」
長ぱちゅりーが去ったあと、リーダーみょんはやれやれといった様子で呟く。
「わかるよー!あのおさにもこまったものだねー!」
そしてそれに同意するように頷くリーダーちぇん。
「まったくだみょん!せんだいのおさは、たしょうしゅぞくひいきがあったくらいで、ほかはまともなのうりょくだとおもってたけど、
どうやらこそだてのじつりょくは、でいぶいかだったみたいだみょん!
しょうじき、あそこまでこどもがむのうだとはおもわなかったみょん!
こんなことなら、たしょうあれるのをかくごで、おさしゅうにんのしゅうかいのときにはんたいしておけばよかったみょん!」
フゥと溜息をつきながら昔を思い出すリーダーみょん。
かつてこの群れを治めていた長ぱちゅりーは、リーダーみょんの言うとおり長としては無難な実力を持っていた。
だがしかし、親バカだった。
一般に優れた人物が同時に優れた親であるとは限らないように、その先代長ぱちゅりーの子育てはでいぶ以下だったらしい。
その結果、実力はないのにプライドだけはやたら高い増長しきったバカが一匹生まれた。
その他の幹部にしても似たようなものだろう。
そんな長ぱちゅりーが長になれたのは、親である前長の強烈な後押の推薦があったからなのだが、リーダーみょんはその時の集会にて、
反対をしなかったことを今では酷く後悔していた。結局のところ今の問題はそれが全ての原因だからだ。
『むっきゅー!それじゃいまから、つぎのおさをきめるための、けつぎをするわよー!
つぎのおさになるのは、このおさであるぱちぇの、かわいいかわいいおちびちゃんよー!
このおちびちゃんにまかせておけば、むれはあんっしんだわ!
みんな、さんせいよろしくねー!』
『むっきょきょきょ!このぱちぇがおさになったあかつきには、このむれをもっともっとゆっくりできるようにするとやくそくするわ!
そう!えらばれたしんのゆっくりのみが、とってもゆっくりできるむれにね!むっきょきょきょ!』
あの当時、先代の長に紹介され、堂々とした態度で群れの皆の前に姿を現した長ぱちゅりーの自信に満ちた態度は、
群れの多くのゆっくりの目に、とってもゆっくりしていると映ったことだろう。
しかリーダーみょんは、そのときどうにもいやーな予感がしたのだ。
あの無駄に自信に満ちた態度は、今まで何不自由なく育ってきた、わがままゆっくり特有の笑みではないか?
自分以外は全て劣ったものとして認識し、周囲が自分のために働き、その命令を聞くのを当然のことだと思い込んでいる。
そんな典型的なダメゆの気配を、リーダーみょんはあの長ぱちゅりーから感じ取っていた。
そしてその予感は的中し、前長の死後、暴走した長ぱちゅりーは特定の種族だけが異常に優遇される政策を徐々にとっていくことになる。
その挙げ句が現在のようなまりさ種の大量離脱、そしてまりさに依存していたゆっくりの大量死だ。
いち早く危機を察したリーダーみょんは、自分たちとそれに比較的仲がよかったちぇん種と固まることにより、
被害を最小限に抑えたが、その分迫害の標的がまりさ種に集中してしまい現在の状態をはやめたとも言える。
そして、まりさたちが群れを出た影響で行き場をなくした醜い欲求が、ついに隠れていたみょん種とちぇん種に向かい始めることとなった。
このままじっとしていれば、まりさたちの二の舞になることは確実だろう。
さっき長ぱちゅりーが自分たちのところへやって来たのがそのいい証拠だ。
大方こんどは自分たちをまりさたちの変わりにこき使う算段なのだろう。
そうでもしないと、一度贅沢を覚えた今のれいむ、ありす、ぱちゅりーは満足に生きてはいけまい。
長ぱちゅりーはまりさを連れ戻す理由を、つがいが可哀相だからだとか、正義のためだとかゴチャゴチャ言っていたが、
結局のところさっさとこの事態を収めないと、自分の身が危ないから焦っているだけなのだろう。
今回は群れのルールを盾にとって無難にお帰り願ったが、そのうち首がまわらなくなってくれば、きっと無茶苦茶を言い出すに決まっている。
その前に何か対策を考えておかなければ……。
「それでどうするのー!いっそのことまりさたちのみかたをして、むれをのっとっちゃうー?」
考え込むリーダーみょんに、リーダーちぇんが過激な提案をしてくる。
それは、まりさたちと強力しての群れの乗っ取り計画……。
確かに今群れを牛耳ってる連中は弱い。
口だけはやかましいが、自分ひとりではなにも出来ないような連中ばかりだ。
自分たちと、それに群れを出て行ったまりさたちとが上手く連係することができれば、
力づくでこの群れを乗っ取ってしまうことも容易であろう。
しかし、
「いや、それはまだできないみょん!」
「ゆゆ?わからないよー!どうしてなのー!
このままじっとしてたら、またぱちゅりーたちが、むちゃをいってくるかもよー!
そうならないうちに、いっそのこと、こっちからしかけたほうがいいんじゃないかなー!」
「たしかにちぇんのいうとおり、あのぱちゅりーや、かんぶたちはどうってことないそんざいだみょん!
でもそのこととはべつに、もっともっとおおきなちからがそんざいするみょん!
そのちからがどちらにむかうのか、みきわめないうちは、うかつにこうどうをおこすのはきけんだみょん!
いまはまだふほんいでも、まりさのがわと、ぱちゅりーのがわのどちらにでもつけるようにふるまっておくひつようがあるみょん!」
リーダーみょんは思う。
今はまだ行動を起こすべきときではない。
誤った選択肢を選べば、それが即自分たちの全滅に繋がる可能性がある。
今はまだ静観しておかなければ……。
「むっきゅ!むっきゃ!むっぎいいいいいいいい!」
その頃、長ぱちゅりーはおうちでギリギリと歯を食いしばりながら顔を真っ赤にして怒り心頭の様子だった。
度重なるゆっくりできないストレスにより、長ぱちゅりーの怒りは頂点へと達していたのである。
「むぎゃあああああああ!どいつもこいつも、このけんっじゃのめいれいにさからいやがってえええええええええ!
なにさまのつもりだああああああああああ!だれのおかげで、このむれでいきていけるとおもってるんだあああああああ!
ふざけるなああああああああああ!」
大声でのどがはち切れんばかりに絶叫する長ぱちゅりー。
彼女がこんなにゆっくりできないのは生まれてこのかた初めての経験だった。
「だいたいほかのれんちゅうだってそうだよおおおおおお!
そもそも、じぶんたちがうっかりしてたから、まりさににげられたんでしょうがあああああああ!
それをぱちぇたちにおしつけやがってええええええええ!
しねええええ!むのうなゆっくりはみんなしねえええええええ!」
「ゆゆ…その、ぱちゅりー、すこしおちついたほうが…」
「そっ、そうよ!とかいはじゃないわよ……。それに、あんまりなかまをばかにするはつげんは、よしたほうが……」
長ぱちゅりーの尋常ではない様子に、恐る恐るといった感じでたしなめる幹部れいむと幹部ありす。
それは普段長ぱちゅりーと一緒にやりたい放題やっている二匹がフォローに回るという滅多に見れない光景。
つまりはそれ程までに彼女らは追い詰められているということだ。
今、長ぱちゅりーを取り巻くゆっくりたちの関係はかなり悪い。
明確に敵対行動をとっているまりさたちの勢力は言わずもがな、敵ではないものの、決して味方でもないみょんやちぇんたちの勢力。
そして唯一の味方であるはずの群れのぱちゅりー、れいむ、ありすたちの勢力もあまり協力的とは言えない状況だ。
間違ってうかつな発言をして、彼女らの心証を悪くするわけにはいかない。
「ぱちゅりー、ここはやっぱり、その、むれのみんなにおねがいして、
まりさをつれもどすのにきょうりょくしてもらったほうが……」
「そっ、そうよね!ほら、その、ここは、みょんたちにも、めいれいとかじゃなくて、ちゃんとあたまをさげて、
おねがいするべきよね……。うん、そう、これはしかかたないわ……」
興奮状態の長ぱちゅりーに変わり、わりかし現実的な案を提案する二匹。
確かに今ならまだ長ぱちゅりーが下手に出ることによって、この群れ内のゆっくり全てが団結することができれば、
挽回の機会は充分にある。
しかし、
「はあああああああああああああ!ふざけるなああああああああああああああああ
このけんっじゃに、むれのゆっくりたちにあたまをさげろっていうのおおおおおおお!
そんなことできるわけないでしょおおおおおおおおおおお!
ばかなの!しぬのおおおおおおおおお!」
そんなみっともない提案(別に他人に頭を下げてお願いして回るのはみっともなくない)を長ぱちゅりーが受け入れるはずもなかった。
「だいたい、おまえらみたいな、むのうにごちゃごちゃいわれなくっても、ちゃんとつぎのてはかんがえてあるんだよおおおおおお!
むっげっげっげ!ぱちぇにはきりふだがあるんだよおおおおおお!
くそにんげんをりようするというきりふだがねえええええええ!」
「「!?」」
その言葉を聞いて、驚愕の表情をする幹部れいむと幹部ありす。
人間を利用するだって?そんなことできるはずが!
いや、しかしまてよ、確かもう人間が群れにやってくる時期だったはず。
そこで、長ぱちゅりーが群れの長という地位を上手く利用すればあるいは……。
「むっきょきょきょ!このむれのばかどもに、くそにんげんをりようして、
おさにさからうとどうなるか、めにものみせてやるわあああああああああ!
ゆぎゃっはっはっはっはっはっはっ!むぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょぎょおおおお!」
長ぱちゅりーのおうち内にて、狂ったような笑い声がいつまでも響いていた。
つづく