ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4184 捕食者としての人間
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ankoss
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『捕食者としての人間』 45KB
考証 不運 虐殺 番い 群れ 赤ゆ 子ゆ 現代 食ゆ
皆さんはゆっくりについてどのような考えを持っているだろうか。
道行くウザイ饅頭、愛玩動物、虐待対象・・・人によって考え方は違うだろう。
この物語は食品としてのゆっくりについて綴ったお話である。
ただし、物語の舞台はは加工所ではなく、ゆっくり牧場という場所だ。
本日はゆっくり牧場に住まうゆっくりの生き様について紹介したいと思う。
「ゆ!ゆ!」
一匹のまりさが薄暗くなってきた道を跳ねている。
ぼうしの中には餌となる野菜が詰め込まれている。
「れいむ!おちびちゃん!ゆっくりかえったよ!」
「ゆ!おかえりなさい!まりさ!」
「「「「おかえりなちゃい!!!!」」」」
まりさは一家のだいこくばしら(笑)だった。
家族構成は親まりさ、親れいむ、子まりさ、子れいむ、赤れいむ、赤まりさとテンプレのものだ。
「ゆ!きょうはレタスさんととうもろこしさんをとってきたよ!」
「ゆわぁ!れいみゅ、とうもろこししゃんだいしゅきだよ!」
「まりしゃも!」
「おとうしゃん!ゆっくりありがとうなのぜ!」
「れいむは、もうおなかぺこぺこだよ!はやくたべようね!」
「ゆふふ、ありがとう、まりさ」
「どういたしまして。じゃあゆっくりたべようね!」
「「「「「「ゆっくりいただきます!!!!!!」」」」」」
「むーしゃ、むーしゃ!しあわせー!」
「うめっ!うめっ!ぱねえ!」
「おいしいね!」
「とうもろこししゃんは、れいみゅにゆっくりたべらりぇてね!」
「ゆーおちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるね」
「ほんとうだね!まりさ!いつもありがとう!」
「れいむこそ、いつもおちびちゃんのめんどうをみてくれてありがとう!」
「ゆーまりさはおなかいっぱいなんだぜ!」
「いっぱいたべちゃから、うんうんしゅるよ!」
「れいみゅもうんうんしゅるよ!」
モリュ!
「しゅっきりー!ゆぴゃああああ!うんうんくしゃいよ!うんうんしゃんあっちいってね!ぷきゅうーー!」
「ゆーおちびちゃん、うんうんはまりさがかたづけておくよ」
「おちびちゃんたちは、おかあさんすーりすーりしようね!」
「すーりすーり、おかあさんのおはだはきもちいいね」
「しゅーりしゅーり」
「ゆう、まりしゃねむくなってきちゃのぜ・・・」
「すーやすーや」
「ゆう・・・おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよ」
「そうだね・・・れいむ・・・」
寝かしつけたわが子を見てまりさ達は微笑み、昔のことを思い出していた。
まりさは生まれつきの野生ゆっくりだった。少なくてもまりさ自身はそう思っていた。
(つまり、現実には違うということなのだが)
まりさは天涯孤独のゆっくりだった。優しい母親も、頼りになる父親も、可愛い妹たちも全て死んでしまった。
人間の手によってである。・・・皆、食べられてしまった。
人間に襲われた時まりさも死ぬかと思ったが、何故か人間はまりさを殺さなかった。
まりさが元々いた群れはほぼ壊滅してしまったがそれでも数匹の生き残りがいた。
その生き残りとともに旅を始めた。人間の来ない場所を求めて。
旅を続けるうちに多くのゆっくりと合流する。
素早い動きで偵察に行くちぇん。
様々な知識を有し皆を導いてきたぱちゅりー。
落ち込んでいた皆をとかいはなお話で元気づけてきたありす。
そして、れいむ。
れいむもやはりまりさと同じく家族を人間に殺されたゆっくりだった。(他のゆっくりも皆そうなのだが)
お互いのつらい過去を話すうちに二匹は意気投合する。
「ま!まりさは!れいむといっしょにゆっくりしたいよ!!」
「!!!れいむも、れいむもまりさのことがすきだよ!ゆっくりしようね!!」
プロポーズが成功した時、まりさは天にも登る勢いだった。まわりの皆も祝福してくれた。
しかし旅は続けないといけない。食べられる餌が少なすぎたのだ。
途中、目に見えない壁さんにじゃまされたり、おなかのぺこぺこになやまされた。
空腹に耐え切れずに死んでしまったみょんもいた。
長い苦痛の日々の末に、ある日ついに理想のゆっくりぷれいすを見つける。
そこにはゆっくりできそうなほら穴さんや、お野菜が勝手に生えてくるはたけさんもあった。
そして、どうやらゆっくりを襲う人間もいないようだった。
まりさ達はここを皆のゆっくりぷれいすとして、住み始める。
この場所は本当に素晴らしいゆっくりぷれいすだった。
前述のとおり、お野菜さんは勝手に生えてくるので食料には困らない。
雨も全くふらず、気候もゆっくりにとって実に快適だった。
そして、天敵が全くといっていなかった。
(というかゆっくり以外の生き物がいなかった。虫ですらも。)
まりさ達は実にゆっくりとした生活を送っている。
今いるおちびちゃん達は実は最初の子ではなく、巣立ちしている。
その巣立った子も既に番を見つけ、やはり子を成している。
かつての仲間は群れとなり、その数を数十倍に増やしていた。
唯一の懸念は人間であるが、群れのゆっくりは皆、ゆっくりしていない人間なんかに、このゆっくりぷれいすを見つけられるはずがないと考えていた。
ただ一匹を除いては。
夜、どのゆっくりも寝静まる中、数人の人間が群れの中に訪れた。
ゆっくりの浅はかな考えなど裏切るかのように。
一人の男が先ほどのまりさのおうちの前に行く。そして何かを吹きかけた。ラムネスプレーである。
男はまりさをつかみ軽く刺激を与える。
「ゆー、むにゃむにゃ」
起きる気配は無い。
男は消毒用エタノールでまりさ達を念入りに拭き、元に戻した。
他のおうちでも同じようなことが行われていた。
さて、ここで少しネタばらしをしよう。
まりさ達は皆自分のことを野生のゆっくりだと信じて疑わないが、実際はこのゆっくり牧場で飼われているゆっくり達である。
そもそもこの空間は屋外ですら無く、大きめの体育館の様な建物の中であり、人口の木、ほら穴が置かれ、
天井はガラス張り、壁には幼稚園児が見ても分かるような森の絵が書いてある。
地面も緑や茶色のマットであり、ゆっくりの清潔を保つため、定期的に清掃もするし、(その間ゆっくりは眠らされる)
お野菜が勝手に生える畑さんとやらも、職員が定期的に野菜を置いているだけである。
そう、まりさ達は人間が逃れてきたつもりだが、初めからその様なことなど不可能だったのである。
至高にゆっくりした群れに神様が与えてくれた、と思っていたゆっくりぷれいすも結局は全てまがい物、人工物だったのである。
そして、そのゆっくりぷれいすもまりさ達の命も、信じられないような幸運も今日までであった。
「えー皆様、本日はゆっくり牧場にお越しいただきありがとうございます。」
まりさ達の命運が尽きる日、施設の前には数人のスタッフと数十人の客がいた。
「お申し込みいただく際にご確認いただいたかと思いますが、今一度確認させて頂きます。
当施設のゆっくりはあくまで食用ゆっくりです。故に衛生面には細心の注意を払っております。
施設にお入りいただいたらまずは、手を洗って頂き、専用の靴をお履き下さい。
靴のサイズは事前に伺ったものをご用意しておりますが、万が一サイズのあわない方はスタッフまで申し付け下さい。
施設入所後は、スタッフが案内致しますので、指示に従っていただくようお願い致します。
重ね重ねとなってしまいますが、本施設のゆっくりはあくまで食用です。
お持ち帰りいただくことや、"味の調整"の範疇を超えた行為を行わないようお願い致します。
それでは、皆様よいお時間とご体験を。」
「ゆー、ゆっくりおきるよ・・・ゆ!?れいむ!?」
「まりさ・・・ゆっくりおはよ・・・ま!まりさ!?」
「「ゆゆ!!??」」
れいむとまりさを驚いた。
朝目が覚めたら、自分の番がとてつもなく綺麗になっていることに。
元々、栄養状態が最高によくゴミホコリや砂塵のほぼ無いこの群れのゆっくりは皆キレイな方である。
しかし、昨晩の人間による洗浄で汚れは一切無くピカピカであった。
「ゆっくりおきるのじぇ」
「おはよう、おとうさん、おかあさん」
「きょうもゆっくりするのぜ!」
「ゆわ~!れいみゅ、ちーちしちゃいよ!」
「「「「ゆゆゆ!!!」」」」
自分たちだけではなくおちびちゃんもとてもキレイになっている。
「おちびちゃんたち!とってもゆっくりしてるね!」
「さすがまりさのおちびちゃんだね!」
「おとうさんとおかあさんも、きれいだね!」
「まりさはびゆんなのかぜ?うふふふ」
「まりちゃはみんなのあいどるしゃんなんだじぇ!!」
「きれいなれいみゅがちーちーするよ!しゅっきりー!!」
まりさ達はお互いの美貌に喜び、この姿を皆に見せようと群れの広場に向かう。
そこには
「とかいはのありすのおはだをみてね!」
「むきゅ!これがけんじゃのびぼうよ!」
「ちぇんたちはとってもきれいなんだねー!わかるよー!」
「みょーん!うれしいみょん!」
「おとうさん!おとうさん、いもうとたちたちもきれいになったんだね!」
「「「おじいちゃん!おばあちゃん!おびゃしゃんたちもとってもきりぇいだね!!!」」」
ありすが、ぱちゅりーが、ちぇんが、みょんが、独り立ちしたこどもが、まご達が皆かつてない美貌を手に入れ喜んでいた。
「ゆー?でもなんでちぇんたち、みんなきれいになったのー?わからないよー?」
かなり時間がたってからようやく一匹のちぇんが疑問を浮かべた。
「「「「「「ゆー??????」」」」」
答えられるものはいない。
「ゆ!ぱちぇにはわかったわ!このむれのみんなはとてもゆっくりしていたから、かみさまがごほうびをくれたのよ!」
「「「「「ゆ!!!」」」」
「かんがえてみなさい。ぱちぇたちはかってにはえてくる、おやさいをむーしゃむーしゃして、おうたをうたって、
あかちゃんをたくさんそだてたわ!だからかみさまはぱちぇたちをみてとてもゆっくりできたのよ!」
このぱちゅりーは、群れの長の娘である。
長はまりさ達と同様、群れの最古参のゆっくりであり、その知識を飼われて群れを導く立場にいる。
長の娘の話を聞き、最初はポカーンとしていたゆっくりたちも皆はしゃぎだす。
「ゆー!れいむがゆっくりしているとかみさまもゆっくりできるんだね!」
「ありす、これからもすっきりーをたくさんしてあかちゃんをたくさんうむわ!」
「まりさはおやさいを、もっと、もっと、もーっとたくさんたべるのぜ!」
「かわいくちぇぎょめんねー!」
「きゃみしゃま!きゃわいいれいみゅのうんうんでゆっくちちてね!ちゅっきりー!ゆ!きゅさいよ!きゃみしゃまはうんうんをはやくどかしてね!ゆっくりしないでね!」
「むきゅ!だからみんなもこれまでいじょうにゆっくりするのよ!」
「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」
あ・・・れ・・・?
まりさ達、古参のゆっくりは胸に引っかかるものを覚えた。(胸など無いが)
この状況・・・どこかで・・・
思い出せない・・・
でもなんだろう?この不安は?
「ぱちゅりー・・・おさは?どうしているの?」
「むきゅ?おかあさんはおうちでなにかなやみごとをしてたわ!いまはゆっくりしないといけないのに!」
「ありがとう、まりさはおさとあってくるよ!」
まりさはかけだした。やはり長も何かを感じている。ゆっくりできない何かを。
「むきゅ・・・これはやはり二年前の・・・いや、まさか・・・でも、もしぱちぇの仮説が正しかったら?・・・」
「おさ!まりさだよ!」
「ま、まりさ!」
「おさ、ゆっくりおしえてね!むれのゆっくりがきれいになったてよろこんでるよ!でもまりさはなんだかゆっくりできないきがするよ!」
「まりさも・・・まりさもそう思うの!?」
「やっぱりなんかしっているんだね!?おしえてね!」
長ぱちゅりーは思う。群れの皆が朝に突然きれいになった事。これは昔にも一度だけあった。
二年前のあの日、前の群れが壊滅した日のこと。
いかに記憶力の低いゆっくりでも、その場にいたらなばそのことを忘れることなどはできない。
ただ、流石にその前に起きたことと結びつけることができているのは長のぱちゅりーしかいなかったようだ。
「まりさ・・・ゆっくり聞いてね・・・これはかつて・・・ぱちぇたちの昔の群れが・・・」
「た!た!た!た!たいへんなんだよー!」
ぱちゅりーの話はやはり古参のちぇんによって遮られた。ぱちゅりーは思う。どうか自分の悪い勘が外れてくれ。
しかし
「ど、どうしたんだぜ・・・ちぇん」
「に、に、にんげんがきたんだよー!たくさんだよ!わからないよー!」
「ゆ!ゆわんだってーーーー!!!!」
「むぎゅう!!!!!」
長ぱちゅりーはある意味で、真の森の賢者だった。(森じゃないが)
「ちぇん!このことは群れの皆は知っているの!?」
「しらないんだねー、ちぇんはまっさきにここにきたんだよー!」
ちぇんもまた、今回の件に不審を感じた古参の一匹だった。
気を紛らわせるべくいつもより遠い所に散歩に出かけていた。
そこで見つけてしまったのである。これからの宴のため準備をする人間たちを。
正直言って、ちぇんは叫びたかった。しかしかつての凄惨な記憶がちぇんの口を封じた。
震えを止められないまま、ちぇんは長のおうちへと向かってきたのだ。
「ちぇん!まりさ!皆を避難させるのよ!」
「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」
三匹はゆっくりとは思えない速さで広場に向かう。
しかし哀しいかな。気づいた時には全てが手遅れだった。
「みんな!ゆっくりしないできいてね!いまからひなんをはじめるよ!」
「ゆっくりしないでね!わかれよー!」
「ゆ?まりさ、ちぇん、なにをいっているの?」
「りぇいみゅたちはゆっきゅりしゅるんだよ!」
「そんなにあわてるなんていなかもののすることだわ」
若いゆっくりがのんびりとし、対照的に古参のゆっくり達は顔をこわばらせる。
その時だった。
「はい!皆さんお待たせしました!ここが今回の食べ放題のエリアです。今から3時間、食べ放題となります!」
人間の集団が群れに到着したのは。
に
「ほう、これまたおいしそうなゆっくりじゃの!」
に
「パパ!私、ありす好き!カスタード美味しいんだもん!」
に
「パパはれいむのあんこが好きだなー、まりさはなんか違うんだよ」
に
「うーん、見たところ随分ゆっくり育ったゆっくりだけど、本当に美味しいのかしら?」
に
「おっしゃー!この日のために大枚をはたいたんだ!食うぞ!食うぞ!食うぞ~!」
に
「ヒャッハー!クソ饅頭どもは制裁だーー!」
飼いゆっくり以外のゆっくりは野良にせよ野生にせよ、人間をゆっくりできないやつと考えている。
その真意は、一斉駆除だの、お野菜が生えてくるゆっくりぷれいすを独占するだの、よわっちいから奴隷にしてやるだの様々であるが、この群れはそのいずれでもなかった。
「「「「「「「にんげんだーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」
それはまるで、れみりゃやふらんを前にした時のような、捕食種に対する反応と同じものであった。
「ま、まりさはおいしくないんだぜ!たべるならそこのれいむがいいんだぜ!」
「どぼじでぞんなごというのー!」
「おちびちゃん!ままのおくちにはいってね!ゆっくりしないでね!」
「きょわいよー!」
「わからないよー!」
「むぎゅぅむぎゅぅ!遅かった・・・」
長ぱちゅりーは自分の判断が遅かったことを後悔した。
もともと長ぱちゅりーは人間のことを隠して避難を進めるつもりであった。
人間の名前を出した時点で群れがパニックになる事が容易に予測できたためである。
それが最悪の形になってしまった。
人間たちは既に現れ、ゆっくり達はその場から動けないもの、逃げるものも八方に散らばり、既に統制はとれていない。
それでも・・・
それでも・・・それでも、それでも!それでも!!!
「ぱちぇは行くわ!この群れの長として!群れをすく・・・」
長ぱちゅりーの視界が狭くなる。
「む・・・きゅ・・・」
人間さん・・・?
ぱちゅりーの意識はそこでとだえる。
「さあさあ!皆さん!躊躇せず!是非ご賞味下さい!まずは小さな赤ゆから食べることをお勧めしますよ!
自分の普段の好みだけに拘らずにいろんな味を試して下さい!決して他では味わえない味を保証しますよ!」
「じゃあ!私、このありす食べるー!」
「おちょらをとんでるみちゃい!!!」
「ありすのおちびちゃんがー!!」
まだ幼き少女が先陣を切り、近くでフリーズしていた赤ありすを掴む。少女は赤ありすを見回なしながら、
「かわいい!」
と微笑む。ゆっくり達はその笑顔に、そうだ自分達はこんなにもゆっくりしているんだから大丈夫だと僅かな希望を
「いただきまーす!」
「ゆべっ!!」
あっさりと砕かれましたとさ。
「お・・・お・・・おいしい!!!凄いよパパ!こんな美味しいもの初めて食べた!」
赤ありすを食べてご満悦の少女を見て、宴が始めった。
「ま・・・まりしゃ・・・ゆぴ・・・ゆぴ・・・ゆぴゃああああ!!!!!」
「うーん・・・人間見ただけでここまでビビるゆっくりは確かに凄いかもしれないわね、でもまぁこれぐらいなら加工所の技術でも出来ないことないわ!」
赤まりさをつまんで観察するお姉さん。彼女は実は加工所の研究員なのだ。
加工所。もはや説明するまでもないゆっくりにとっての地獄。
お姉さんは日々、より効率的で高品質の甘味を生み出すべく、ゆっくりに与える負荷を研究してきた。
既にこの分野では世界的に名の知れた研究者である。
しかし、ある日このゆっくり牧場のことを知る。
初めは何の理論も無く、自然の味を大事にしただとかの売り込みをしている業者だと思った。
自然の味だと?そんなこと、加工所ではとっくの昔に改名し、機械的に可能にしている。
しかし、実際にサンプル品を食べてみると、確かに加工所ではどうやっても出せない味、香り、コク、その他もろもろがある事を認めざるを得ない。
これはお姉さんの研究者としてのプレイドを傷つけた。
話によると、ゆっくり牧場のゆっくりはお店に並ぶものよりも現地で直接食べるほうがはるかに美味しいという。
いったいどんなカラクリがあるんだ!お姉さんはなんとしてもそれを暴いてやろうと思い今日来たわけだ。
「まぁ、ものは試し!いただきます!」
「ゆぴっ!」
「!!!!」
お姉さんは始め、赤まりさをすぐには噛まずに舌で転がして、次に少しずつ噛みながら食べるつもりだった。
そうすることで肌の状態や味の変化を確かめようとしたのだ。
しかし
(え?え?何!?この感じは!ああ!もう我慢出来ない!)
「ゆびゃあ!」
お姉さんはすぐに噛んでしまった。赤まりさだったものがお姉さんの口に広がる。
その時、お姉さんは草原を見た。風がそよぎ、鳥は歌い、命があふれている!
ああ!そうだ!生きるとはこの事なんだ!食べるとはこの事なんだ!
研究をする中で、ゆっくりを口にしない日は殆ど無い。
いつからだろう?ゆっくりをなんの感慨も無く食べるようになったのは。
いや、ゆっくりだけではない、食事そのものもただ生きるためだけの作業になっていた。
でも確かに、今私は思い出している!喜びを!食べることの感動を!生きることの素晴らしさを!
「私は・・・!浅はかだった・・・!!」
誰に言うでもなくお姉さんはブツブツと話しだす。その目から溢れる涙はとどまることを知らない。
「ちょっと・・・周りから評価されたからといって、自分がゆっくりについて絶対の知識を持っていると思い込んでいた・・・
ふふふ・・・これじゃあ、もりけんと変わらないじゃない・・・」
気の済むまで泣いた。周りでは多くのゆっくりもお姉さんと同じく泣き叫んでいる。しーしーももらしている。
実はお姉さんももらす寸前まで行ったが、そこはかろうじて残った理性で耐えた。危なかった。
「おねえざああん!!がわいいれいむはみのがしてね!!!」
「・・・」
「むじじないでね!!れいむにはがわいいおじびちゃんも・・・ゆぎゃあああ!れいむのあんござんずわないでーーー!!」
とりあえず、今は任せそう、この生きるための最も基本的な欲求に。
「や、やめでね!おちびちゃんをはなしてね!」
「た、たちゅけて!おきゃあさん!!」
「はやくおちびちゃんをはなしてねー!」
「ははは!さあ!どうする、れいむ、ちぇん?残されたおちびちゃんはこいつだけだぞ?」
「やめちぇね!れいみゅのおかざりしゃんとらりゃいでね!」
「おちびちゃんのおかざりかえしてあげてよ!ゆわーん!」
「わからないよー!」
「わははは!おかざりを取ってもちゃんと認識できるのか、なかなか賢いゆっくりだね!お兄さん気に入ったよ!」
周りの客から少し離れたところで、一人の男がれいむとちぇんの一家をなぶり殺していた。
男の足元には二匹の子どもの変わり果てた姿があった。
そう、男は正真正銘の虐待お兄さんだった。
ありとあらゆる虐待、シチュエーションを試し、虐待に少しマンネリを感じ始めた時、このゆっくり牧場について知った。
曰く、牧場のゆっくり共は人間を見ただけで、まるで捕食種を対面したかのような顔をするらしい。
確かに、いじめ抜いたゆっくりは自分を見ただけで怯えきっていたし、つまらない命乞いもした。
本物の捕食種をけしかけた虐待もしたこともあるし、ゆっくりの目の前で家族を食べたことだってある。
しかしそれはどこまでいっても虐待の延長線上であり、経験者曰くここのゆっくりの反応は前述のどれとも違うらしい。
男は満足していた。聞いていた話し通りだったのだ。
ほとんどのゆっくりは出会った瞬間は自分の優位を信じて、人間にとって高慢な態度をとる。
あまあまをよこせだの、奴隷にしてやるだの、おうちをよこせだの。
人間の恐怖を理解している個体ならば、すぐ逃げたり、何も悪いことをしていないだのいきなり謝ってくることなどの行動を示す。
しかし、今回のゆっくり達はどうだ。まるで人間をれみりゃやふらんの如く見てくれるではないか。
長い虐待歴でも、このようなシチュエーションは初めてであった。故に燃えた。
「ゆ!ゆ!おちびちゃん!いそいでね!はやくにげるよ!」
「ゆえーん!れいみゅはもうあるけにゃいよー!」
「にゃ!ちぇんのいもうちょはぎゃんばってね!」
「ゆっくりしているとたべられちゃうんだねー!わかってねー!」
この一家はもともとれいむ、ちぇん、子れいむ2匹、子ちぇん2匹、赤れいむ2匹、赤ちぇん2匹のなかなか大所帯の家族だった。
元々、動きのはやいちぇん種がれいむ種を助ける形で逃げていたため、比較的早い段階で広場から抜け出すことができたが
ゆっくりの悲しき性かな、かえって虐待お兄さんに目を付けられてしまったわけだ。
「ゆ!ゆ!どぼじでにんげんがごごにもいるのー!!!」
「わからないよー!!!」
「ゆえーん!れいみゅきょわいよー!」
「い!いもうとたちはちぇんがまもりゅんだよ・・・わかってね・・・」
あっさりとお兄さんに回りこまれた一家。お兄さんはまず強がりながらも恐れを隠せない一家の長女であろう子ちぇんを掴んだ。
「は!はなしてねー!ちぇんはしにたくないよー!」
「おねえちゃんーーー!」
「れいむのおちびちゃんがー!!」
「わぎゃらないよー!」
「ゆびゃああ!」
お兄さんは野生ゆっくり一家を虐待するとき、まずは一匹を瞬殺することにしている。力の差を分からせるためだ。
今回のゆっくりは野生ではないし、力の差も理解しているようだが、まあそこらへんはお決まりってやつだ。
殺し方はいたって簡単。地面に全力で叩きつける。以上。
「「「「「「「「ゆ?なにこれ?」」」」」」」」
一家の目の前にチョコレートの花が咲いていた。
「「ゆ・・・?ゆ?ゆ!ゆぎゃあああ!おちびちゃん!!!!」」
親の二匹がまっさきに花の正体に気がついた。子ゆっくり以下はまだフリーズしている!
「ゆべえぇ!」
「ゆぎゅ!ゆぎょぎょぎょ!」
「ゆぴしゃあああ!」
「おちびちゃんあんこはいちゃだめー!!」
一家が恐怖に包まれるのに大した時間はかからなかった。
「おちびちゃんはちぇんのおくちにはいってね!」
「ゆ・・・ゆっくりはいるよ!」
「おきゃあさんのおくちなら・・・あんしんだよねー?わかるよー・・・・」
「ゆえええん!れいみゅをおいていかないでにぇ!」
「お!おにいさん!たべるなられいむをたべてね!おちびちゃんはまずいんだよ!ほんとうだよ!」
先程家族が惨殺されたにも関わらず、ゆっくり達は未だにんげんとはゆっくりを食べるものという思い込みがあるらしい。
しかし、それ以外は足の速いちぇんがおちびちゃんを連れて逃げ、おそいれいむが囮になるというなかなか賢い選択をするなとお兄さんは思った。
他のゆっくりどもなら十中八九、その役目は逆だ。ちぇんお口に入った子ゆっくりの会話からもその賢さは読み取れた。
「きょわいよー!」
「わきゃらないよー!」
「ゆえ!ゆえ!おきゃあさん!」
「なかないでね!いもうと!おかあさんはれいむたちのためにじかんをかせいでくれているんだよ!れいむたちはおかあさんのぶんまでいきるんだよ」
普通のゆっくりならば親の口に入った時点で勝利を確信するものなのに、このゆっくり達は皆それが気休めにしかならないと気づいていた。
そして母親のれいむが身をていして時間を稼いでいることも。
(れいむ・・・ごめんね!)
ちぇんは横目でちらってれいむを見て全速力でかけ出した。泣いては駄目だ。れいむがいなくなった分自分がおちびちゃんをゆっくりさせなくては。
「どうしたの!にんげんさん!れいむとってもおいしんだよ!はやくしないとにげちゃうよ!」
れいむとしては人間がれいむを食べることで腹を満たし、ちぇん達を追わなくなるのではないかと考えていた。
そうでなくても、れいむのダーリンのちぇんならきっと隠れてやりすごせると、そう希望を持っていた。
「ゆごぎゃべ!」
「んにゃ!」
「「「「「「お、おとうしゃん!?」」」」」」
しかしお兄さんの行動はれいむ達には予測できないものであった。れいむを蹴っ飛ばしたのである。そしてちぇんにクリーンヒット。
「れ、れいむのはが!」
「な、なんでにんげんがめのまえにいるのー!わからないよー!」
予測できない出来事に困惑する二匹。お兄さんはそのスキをみのがさない。
「ゆにゃ!」
「ゆ・・・もうれいみゅたちたしゅかったの?」
「ゆ!おきゃあさんもいるんだね!わきゃるよー!」
「おかあさん!おとうさん!だいじょうぶ!?」
「ゆにゃあ!!」
「ゆ!?」
「なんでーにんげんがいるのー!わからないよー!」
ちぇんの口を強引に開き中の子ゆっくり達を引きずり出す。
外に出て一難去ったと思っていた子ゆっくり達は目の前の状況に理解が追いついていなかった。
あとはもう、一家にとっては地獄の一時だった。
「ゆにゃ!もうぷすぷすはやめてほしんだよー!」
全身を爪楊枝で刺される子ちぇん。
「やみぇてー!!れいみゅちゅっきりしたきゅないー!」
「にゃ!れいみゅはちゅんでねなんだにぇ!わきゃるよー!」
「「ちゅっきりー!!」」
強制発情され、生殖行為を行い黒ずんでゆく赤れいむと赤ちぇん
「ぎゃらいよー!わぎゃ!」
唐辛子を無理やり食べさせられ中身を全てぶちまけた赤ちぇん。
「ゆが!ごぼぼぼ!おみずさん!はやくどこかにいってね!れいむおぼれちゃうよ!」
水に沈められ、すこしずつ溶けてゆく子れいむ。
「にゃー!にやんにもみえにゃいー!わかりゃないよー!!」
生きたまま目をくり抜かれる赤ちぇん。
そんな感じでついに先ほどの状態となった。残されるは赤れいむのみ。
さて、この赤れいむにはどんなことをしようか・・・お兄さんが考えている時思わぬ横槍が入った。
「すみませんが、何をなされているのでしょうか?」
ゆっくり牧場のスタッフ、しかも管理人である。
「え!?いや!あ!その!」
「・・・とりあえず、ちぇんに乗せている足をどけて頂けないでしょうか。とう施設のゆっくりはあくまでお客様のお口に入ること前提ですので」
「は・・・はい、わかりました」
蹴られたダメージで動けないれいむはともかくとして、ちぇんは一刻も早くおちびちゃん達を助けてあげたかった。
しかしこの虐待お兄さんに踏まれて身動きの取れないまま、これまでの悲劇をただ見ることしか出来なかった。
そこにこの管理人の男が現れ、虐待お兄さんは言われるがままちぇんの束縛をといた。
「にゃ!あたまがかるくなったんだよ!」
ちぇんは駆け出しだ。変わり果てた子供たちの元へ。
「ぺーろぺーろ・・・おちびちゃん・・・げんきだしてよ・・・」
しかしちぇんはゆっくりとしてはかしこかった。故にすぐに気づいてしまった。もうどうしようもないことを。
「ゆにゃー!みんなしんぢゃったんだよー!ゆっくりしていたおとびちゃんだったのにー!!」
泣き叫ぶちぇん、しかし・・・
「おちょうしゃーん!!れいみゅをたしゅけてねー!」
「にゃ!」
そうだ自分にはまだ守るべき家族がいる。他のおちびちゃんは皆死んだけど、番のれいむと赤れいむこそはゆっくりさせてみせる!
ちぇんは虐待お兄さんに囚われている赤れいむを見上げて決意を固めた。
「・・・お客様の趣味自体を特にどうこう言うつもりはありません。ただし、当施設はその様なことをする場では無いことは事前の確認をとり、
お客様も同意されていたはずです。特に爪楊枝や水・・・オレンジジュースも百歩譲るとして、唐辛子等を予めご持参いただいたということは、
誠に失礼ながら、我々もお客様が当施設の目的以外の件でいらしたと判断せざるを得ません。」
「え?いや、その、申し訳ありません・・・」
虐待お兄さんは内心あせりまくっていた。
この施設を教えてくれたお兄さんの友人もやはり虐待を趣味としており、一度来た時に規約も忘れてゆっくりを惨殺しまくりゆっくり牧場から出入り禁止処分にされた。
お兄さんはこれまでそれなりに良識ある虐待をしているつもりであった。
少なくても、人のつく場所で堂々と虐待しないし、野外で殺した饅頭はしっかりと持ち帰る。自宅でも周囲の騒音には気を使ってきたつもりだ。
今日も多少はハードな虐めはしても、ほどほどにしてしっかりと食べようと考えていたのだ。
しかしである。
実際に見てしまったここのゆっくり達は今まで見たこともない反応だった。
そう、まるで自分の事を捕食種とでも思っているかのような。
この反応にすっかり我を忘れたお兄さんは、ついつい夢中になってしまったのである。
そしてこのザマである。
お兄さんは思う。このゆっくりの反応を今回しか見れないのはあまりにキツイ。
出入り禁止になったあいつも心底嘆いていた。
では何故お兄さんは唐辛子等、都合よく持っていたのか。
これはもうお兄さんが虐待お兄さんだからである。つまりはいつ何時も虐待道具を持ち歩いていた、それだけである。
そして、いまのお兄さんの所持品の中には、どう考えても虐待用や駆除用の道具がいくつもある。
荷物検査を求められたら絶対に言い訳できない状況なのである。
虐待道具を持ち歩くなど、いくらなんでも世間の感覚とは大いに外れている。
ゆっくりの常識が人間に通じないのと一緒で、自分たちの常識が世間一般とやはり合わないことぐらいはお兄さんだって重々承知していた。
(ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・)
お兄さんは心の中でつぶやき、手のひらの赤れいむを見つめる。
赤れいむは恐怖で何も喋らない。
(ははは・・・これじゃあ俺もあんこ脳と言われても文句言えないな。まぁとりあえず食べる分には問題ないんだろ)
お兄さんは半分呆然としながらに赤れいむを口の中に運んだ。
「にゃ!にゃ!おちびちゃんをゆっくりはなしてね!」
「ゆ!ゆ!ゆっくりしないでね!すぐでいいよ!」
お兄さんの足に向かってちぇんが体当たりを続ける。
少しながら回復したれいむもあんこを削りながら攻撃をしていた。
「ゆ!にんげん!いたいんだね!むりしなくていいよ!」
「いま!おちびちゃんをはなしたら、ころすのはおにいさんひとりでゆるしてあげるよ!」
ちぇん達は勝利を確信していた。
ゆっくりは人間には絶対に勝てない。そう思っていた。
しかし、今のお兄さんの顔はどうだ、目からあふれているもの、あれは間違いなく涙だ!
つまり自分たちの攻撃は人間に通用するんだ。ちくしょう、なんでもっと速く気づかなかったんだ、速く気づけば他のおちびちゃんも・・・
ゆ・・・そういえば、れいむのおちびちゃんはどこにいったんだ?
ゆゆ・・・!?にんげんの口のなかにあるりぼんさん、あれは確かおちびちゃんの・・・?
お兄さんは夢を見ていた。自分がまだ子供のころ、大好きだったおばあちゃん家がある田舎に行った時のこと。
そうだ!おばあちゃんは言ってくれた、好き嫌いせずどんなものでもしっかりと食え。
それはお百姓さんが精一杯作ったもの、それは他の生命を犠牲にしてのみ自らの生命が続くこと。
そうだ、俺は牛や豚や野菜を食べている。それらは皆俺に、人類に食べられるために命を失っている。
ゆっくりは・・・?
同じ事だ・・・俺がこうして食べることで俺の血肉となる・・・
生き物とは常に犠牲になって他の生き物を支え得ている。
だが・・・おれがいままで・・・いままで殺してきたゆっくりは?
ただ燃えるゴミとして燃やされて地球の二酸化炭素増加に貢献しただけだ。
ああ!そうだ!ゆっくりだって生きているんだ!かけがえのない命なんだ!そして何か他の生命のために存在しているんだ!!
「「どぼじでおちびちゃんがたべられてるのー!!!」」
「すまない・・・すまない・・・!」
お兄さんは泣いていた。今までどれだけ多くの食物を粗末に扱ってきたかを痛感したためだ。
口に入っている赤れいむだったものを咀嚼する。
美味い・・・なんて深みのある味だ・・・虐待ではとても味わえない味だ・・・
「お・・・お客様!?」
管理人は驚く。お兄さんが先ほどまで凄惨な方法で殺した子ゆっくり達を食べ始めたのである。
「しっかりと衛生には気を使っているのでしょう?いや例えそうでなくても私にはこいつらを食べる義務がある、そう思ったのです。」
お兄さんは泣きながら今の心境を語った。管理人はお兄さんの気が済むまで話を聴き続けた。
あたりにはお兄さんの泣きしゃっくりまじりの話し声と管理人の相槌、あとはゆっくりの絶叫とポヨンポヨンとした音のみが聞こえた。
「・・・で、どうだい?うちのゆっくりのお味は?」
「はい!とても美味かったです!」
「ははは!そりゃあ良かった!あんたはもう大丈夫だ!続けて楽しんでくれ!」
「いいんですか?」
「もちろんだ!残り2時間を切っているからな!おっとお客さん相手にとんだ対応だ!」
「ありがとうございます!」
ゆっくりの虐待を完全にやめる自信など無い。
しかし今度からはせめて遺体は食べるなり埋めるなりして供養してやろうとお兄さんは考えていたのだった。
れいむとちぇんはどうしたかって?
お兄さんとスタッフが美味しくいただきました。
「ゆわーん!かべしゃんはゆっきゅりどいちぇね!」
「まりしゃ、おきょりゅよ!ぷきゅう!」
「ゆー!おとうさん!どうしよう!このかべさん!どいてくれないよ!」
「やじゃ、やじゃ!れいみゅまだちにたくにゃい!」
「ゆうぅぅ・・・」
冒頭にもでてきたまりさ達は困っていた。
秘密の隠れ家に通じる道が壁で通れなくなっていたのだ。
他の場所から抜けようとも考えたが、壁はどこまでも続いていた。
当然壁は人間がおいた柵で、ゆっくりが逃げ出さないように設置したのだがまりさには知りようのない事だ。
「おじいちゃーん!なんとかしてみょん!」
「おばあちゃん・・・ありすこわいわ・・・」
「むきゅ・・・なにもいいあいでぃあしゃんがおもいうかびゃないわ・・・」
「どうすればいいのー!わからないよー!」
周囲には50近くのゆっくりがいたが、なんとこれ全部まりさとれいむの家族である。
最初に出てきた小さい家族の他に、既に独り立ちした二匹のれいむと同じく二匹のまりさにそれぞれちぇん、みょん、ありす、ぱちゅりーの番にその子ども達。
そう、まりさとれいむはゆっくりがそうそう見ることの出来ない孫とも一緒にゆっくりしていた稀有なゆっくりだったのである。
しかし、ここにも幸せの終わりを告げる神々が現れた。
「おーい!こっちにいたぞー!」
「ははは!探しながら食べるってのも悪くねーな!」
「まだまだ食い足りねえぞ!」
「おまえら・・・頼むからルールとマナーはしっかり守れよ・・・」
「分かってますよ先生」
「ここのルール破ったら、出入り禁止になるのは有名ですからね。」
「こんな美味いゆっくり食べる権利を自ら放棄するとか、マジ一部の虐待好きの思考ルーチン理解できねー」
「なー!」
見るからに飢えた中高生の集団である。一人引率なのか、彼らの教師もいる。
彼らはとある体育会系の部員であり、その競技のなかでは強豪チームとされる。
そして、今年は全国優勝も夢ではないと言われている中、顧問の先生が鼓舞するため言ってしまったのである。
「優勝したら、お前らなんでもうまいもん食わせてやるぞ!」
元から部員たちの力量も意識も高かったので、顧問の一言にどれくらい価値があったかは分からないが、
とにかく部員たちは無事優勝し、このご褒美にあやかっているわけである。
顧問はその出費に心で泣いていたが。
中高生の体育会系ともなればその食欲はとどまることを知らない。そりゃ、もうでいぶも真っ青になるほどに。
既に彼らは数家族をその胃袋に収めていたが、まだまだ足りないようである。要するにまりさ達家族の命はジ・エンドである。
まりさは三十近くの眼と目があってしまった。まるで肉食動物が獲物を狙うそれと同じような。
「「「「「「いっただきまーーす!!」」」」」」
「「「「「「「「「「「「にんげんだーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」
「まりしゃおいしく!」
「うめよー!マジうめーよ!」
「おちびちゃん!ままのおくちにはいってね!」
「おー口のなかに赤ゆっくりいれたまま食べるのもいいな!」
「おばあーちゃーん!!だずげでねぇー!!」
「ま!まごのいのちはれいむがまもるよ!おちびちゃんのいのちもまもるよ!」
「おい!いいこと思いついたぜ!まずこのれいむの口をめいいっぱい開けてと・・・」
「むーむー!(やめてね!れいむのおくちをつかまないでね!)」
「おい、食いもんで遊ぶんじゃねえぞ!」
「大丈夫ですって!で、そうだな!赤ぱちゅりー2匹に赤ありす1匹にみょん1匹いれてっと、はっはっは!ゆっくりバーガーだ!」
「きょわいよー!」
「おばあちゃん、ぱちぇをたべないでー!」
「ゆぇ!え!(どぼじでまごがれいむのおくちにいるのー!)
「あんまりいい組み合わせに思えねえけど・・・」
「まあ物は試しってことで」パク・・・
「どうだ・・・?」
「キター!!ヘブン状態っ!!」
「まじかよ・・・」
「いや、たぶんの普通のゆっくりじゃ、味がごちゃごちゃになるだけだったと思う。すげーよ、ここのゆっくりは!」
瞬く間に自分の子、孫が減っていく様を見て、まりさはもう呆然とするしかなかった。
ある子ゆっくりが叫んだ。
「どうしてこんなことをするのー!?わからないよー!?」
まりさも叫びたかった。
でも分かっしまった。分かっていた。
まりさはかつての群れが人間に襲われたあと、食料が見つからず永遠にゆっくりしてしまった友人を食べたことを思い出した。
あの子だけじゃない。このゆっくりぷれいすで食べてきたお野菜さんだってまりさのあんこさんになっている。
人間とゆっくりは言葉は通じるのに意思疎通は難しい。価値観が違いすぎるのだ。ゆっくりが野生、野良ならなおさらだ。
しかしながら、今のまりさには人間の行動原理が容易く分かってしまうのであった。
それは
「みょん・・・まりさたちはみょんの分までゆっくりするよ」
「むきゅ・・・みんな、辛いけどしっかりと食べるのよ!みょんの命を犠牲にしてはいけないわ!」
「「「「むーしゃ、むーしゃ・・・ゆうううう・・・・」
あまりにも単純で
「ゆわあ!ここはおやさいさんがたくさんあるよ!すごいばしょだね!」
「むきゅ・・・畑さんがあるなら人間さんが近くにいるかもしれないから気をつけないと・・・」
「もうれいむがまんできない!むーしゃむーしゃ!し!しあわせええええええええ!」
「「「「むーしゃ、むーしゃ!しあわせーーー!」」」」
あまりにも純粋で
「むーちゃむーちゃ!おやさいさんはゆっくりできるね!」
「おとうしゃんはかりのてんしゃいだね!」
「まりしゃもおとうしゃんみたいになりたいよ!」
「ありがとう、おちびちゃん」
あまりにも残酷で
「きゃわいいれいみゅがうまれりゅよ!ゆっくちしていってね!」
「ゆーん!とってもかわいいおちびちゃんだね!れいむがおかあさんだよ!」
「ちぇんがおとうさんなんだね!わかってねー!」
「にゃ!いもうちょ!いもうちょ!」
「ゆふふ!まりさがおじいちゃんで」
「れいむはおばあちゃんだよ!れいむ!おちびちゃんにくきさんをたべさせてあげようね!」
「わかったよ!おかあさん!おちびちゃん!さいしょのごはんさんだよ!ゆっくりたべてね!」
「「「「「「むーちゃむーちゃ!ちあわせーーー!!!!」」」」」
あまりにも美しい自然の摂理なのだから。
まりさ達もずっとしてきたことなのだから。
生き物にとって当然のことなのだから。
それどころかまりさはこの時のために生まれてきたかのような気がした。
だから、まりさはもう怖くなかった。悲しくもなかった。自分のあんこが食べられていっても不思議と痛くなかった。
唯一の心残りはまだ幼いおちびちゃんや孫を救えなかったことだった。
長く生きた自分はもういい。でもせめて彼らにはもっと長く生きて欲しかったな。
でもきっと、その思いもきっと、受け継がれるはずだ、まりさ達の命の犠牲の上にまた他の生命が・・・
(にんげんさん・・・)
(にんげんさん・・・)
(にんげんさん・・・まりさたちを・・・ゆっくりたべてね・・・)
まりさの命の灯火は・・・ゆっくりと消えた。
「たった・・・これだけなの?あんなにゆっくりがたくさんいたのに・・・のこったのはこれだけ?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「なんでなの・・・れいむたちはかみさまにえらばれたゆっくりじゃないの・・・?」
「ゆぴ!ゆぴ!ゆぴぴぴ!!!!」
「おかあさん、おちびちゃん、ぱちゅりー・・・みんなしんじゃったみょん・・・」
「もう・・・これから、どうすれば・・・」
「・・・ゆぐっ!・・・ゆぐっ!」
余りにも多くの友が家族が逝ってしまった。残されたものもまた地獄である。
そして、この残されたものは決して偶然ではない。
善良で、賢く、人間を純粋に恐れる個体が予め牧場のスタッフに保護される。
次なる商材の生産のために。
「いきましょう・・・ここはゆっくりできない・・・」
「「「「「ゆっくり・・・りかいしたよ・・・」」」」」
彼女らは住み慣れた土地を去る。本当の自然ならばこのまま全滅も起こりうるが、ここは所詮まがい物の自然である。
半数以上は生き残り、新たなゆっくりを得るだろう。与えられた、偽りの、しかし多くのゆっくりが叶えられぬゆっくりを。
おわり
「むきゅ・・・?・・・!!!!!!!!・・・・・やっぱり・・・」
「あ、しまった目が覚めたか!」
場所は変わってゆっくり牧場に併設されたオフィスの中。
滅びてしまった群れの長、ぱちゅりーが目を覚まし、管理人の男と目があった。
もともとぱちゅりーはこの男のラムネスプレーによって眠らされていたのだ。
ぱちゅりーはかなりの老ゆっくりである。そのクリームの品質は落ちている。故に客に食べさせる訳にはいかない。
しかしながら男は、またこの群れの監視及び調整を担当していたスタッフはこのぱちゅりーを多く評価していた。
食料に全く困らないといえど、群れの時点でどうしてもトラブルは起きてしまうものである。
その問題ひとつひとつに対して人間の目から見ても最善ともいえる対処をしてきたぱちゅりーである。
このぱちゅりーのおかげで群れは良い状態を保ち、結果的には今回の成功につながったといえる。
故にゆっくり牧場としてもそれなに誠意を尽くすつもりであった。
せめて、自分の群れが崩壊する場は見せずに、自責の念に駆られないように、後で安楽死させて上げようと考えていた。
しかし今日は予想以上に手間取った。イベント終了後に例のお兄さんやお姉さんに質問攻めにあったためであるが、
管理人がオフィスに戻ってきた時と同時にラムネスプレーが切れてしまったのだ。
とにかく、再び眠らせつるかとラムネスプレーを探す男にぱちゅりーが口を開いた。
「人間さん・・・ぱちぇは、真実が知りたいわ・・・」
「・・・真実だと?」
「ぱちぇの群れは、もう滅びたんでしょ?」
「な!!」
「人間さん・・・、あの群れのあった場所は全部、人間さんがつくったのでしょう?」
「・・・なぜ、そう思う」
「あの場所はあまりにもゆっくりに優しすぎるわ・・・怪我をしそうな枝も、溺れてしまいそうな川もない・・・
お野菜さんは・・・お野菜さんは少なくてもいきなりお野菜さんにならないはずだわ・・・
だってぱちぇたちもいきなり大きくならないから・・・人間さんがお野菜さんのおちびちゃんを育ててからおいてくれたんでしょ?」
このぱちゅりーはただ者ではない、男は元々そう思っていた。しかも現実は男の予想をはるかに上回っていた。
男には言わなかったが、ぱちゅりーはこれまでの生きてきたこの世界の様々なことに疑問を感じていた。
初めは、前の群れが壊滅した日のことだった。あっさり人間に捕まったぱちゅりーはゆん生を諦めた。
しかし生かされた。ガラスケースに入れられて群れの惨状を目の当たりにしながら。
ぱちゅりーには到底解決できないと思ったこと。それらは不思議な事に朝が来るとすっきり解決していることが多々あった。
ぱちゅりーは群れに問題があるとたいてい夜中、何度も起きてしまうが、解決するときに限ってぐっすり寝てしまうのだった。
例えば、ぱちゅりーではどうしようもない風邪が群れに蔓延した時等。
群れの皆はゆっくりしているから神様がご褒美をくれたというけど本当だろうか。
ぱちゅりーたちは他ゆんに尽くすとき何かしらの対価を求める。
もし神様がゆっくりに対価を求めてご褒美をくれたとしたら、何を要求するのだろう?
ぱちゅりーは一つの解を見つけてしまった。神様は人間で、対価とはぱちゅりー達の命ではないのだろうか?
根拠はない。でもそうだとするといろいろなことに矛盾がなくなるのだ。
では、なぜぱちゅりーは人間の脅威があるかもしれないあの場にとどまり続けたのか。
それはどこにも行き用がなかったからである。
他のゆっくりが見えない壁と言っていたが、ぱちゅりーには壁の向こうにある森がおちびちゃんが書いた絵がうーんと上手くなった物にしか見えなかった。
皆はゆっくりぷれいすの外にも果てしなく広い世界が無限に広がっていると考えていたが、ぱちゅりーにとって世界とはあまりに狭かった。
(現実的にはこれはぱちゅりーより他のゆっくりの考えのほうが近いのだが)
もしこの世界が人間により作られたものならば逃げ用がないではないか。
それは諦めの感情でもあった。
しかしぱちゅりーは同時に他のもっと違うことも感じていた。
ここは暖かくのどやかだ。環境ではなく、とりまく気のようなものが。上手く言葉に説明することはできないけど。
だけど自分たちは必要とされている。だからここにいていいんだと・・・
「話すよ・・・最初から・・・」
男は観念した。ゆっくり相手だが無下にはできないと思わざるを得なかった。
最初は単にれみりゃが食べていたゆっくりを奪って食べてみた事から始まった。
そこにあったのは好奇心だけであった。
しかし、そのゆっくりの味はそれまで味わったことのないものだった。
これはなんだろう。ゆっくりはゆっくりさせないと甘くなるという。
そしてその方法によって味の微調整がきくと。
加工所ではゆっくりに苦痛を与えることでその調整を行うらしい。
だが、人間が与える人工の苦痛と捕食種が与える天然の苦痛では違うのではないかと。
余談だが、加工所でも捕食種を使ってゆっくりにストレスを与えて味の調整を行うことはあるらしい。
しかしその場合に使われる捕食種は人間によって調教されたもの、天然のものとは違うらしい。
もちろん、人間だって最終的には食べるためにそれらの処理をしているのだが
そうではなく、もっと直接的に食う食われるの恐怖を与えれば良いのではないかと男は思うようになった。
そのうち男はわざわざ捕食種を使うのではなく、ゆっくりにとって人間が捕食者だと思わせればいいのではないかと考えるようになった。
ゆっくりは僅かながら親のあんこから記憶を引き継ぐという。
ならばと、子ゆっくりの前で親ゆっくりを食べ、その子が親になったころにまた食す。
といった事を繰り返すうちに、男に対するゆっくりの反応は
「ゆあーん!じじいはまりさにあまあまをもってくるのぜ!」
から
「れ・・・れいむはいきているんだよ!かけがえのないいのちなんだよ!」
となり
「やめてね・・・ありすにひどいことをしないでね」
さらには
「ちぇ・・・ちぇんをたべるなんてことしないよね、わかるよー!」
ついに
「に・・・にんげんだー!!!」
と変わっていった。
この頃まで男は趣味でゆっくりの品種改良に取り組んでいたが、出来上がったゆっくりを知り合いに配った所大好評で、
やがて男はこの趣味を仕事として生計を立てていくこととなる。
「というわけさ、お前たちは俺に人間が恐ろしくなるように変えられ、人間に食べられるために生み出されたゆっくりなのさ。ははは、なんともいっていいぜ。・・・すまん」
男は自嘲気味に話したが、ぱちゅりーは男の仕草に疑問を感じた。なぜ、謝る必要があるのだろうか。男は何に謝っているのだろうか。
「でもな・・・」
男は話を続けだした。
「野生だろうが飼いだろうが野良だろうが、お前らの群れのような生き方は絶対できない。
生まれたばっかりのちびには気の毒だが、他のゆっくりが平均的に生きる時間は野生や野良よりはるかに良い。
ましてゆっくりが孫といっしょにゆっくりすることなんて奇跡的なんだ。
それはよほど恵まれた飼いゆっくりですら難しい。
好きなだけ食べて、子どもを増やせて、人間の指図もいっさい受けないなんて!
そうだ!今日も一人の虐待野郎が泣いてた!今まで自分が食べ物をいかに粗末にしてきたかって!命についてしっかり考えていなかったって!
虐待野郎がゆっくりをちゃんと生き物として認めたんだぞ!?こんなことが簡単にできるか!?」
男は頼まれてもいないのに話しだした。支離滅裂だった。自分でも何を行っているのかよくわからない。しかし言わずにはいられなかった。
そして、ぱちゅりーは気づいてしまった。今までの違和感の正体が、男のいらつきの源が。
「人間さん・・・」
「な・・・なんだ・・・?」
「人間さんは・・・ぱちゅりーたちのことを愛してくれたのね。食べるつもりだったけど、それでも愛してくれたのね。」
「!!!!!!!!!!」
男はもともとゆっくりの愛護派ではない。こんな商売をしているのだからありえないが。
しかし、虐待派というわけでもない。
男のてがけたゆっくりの評判はすこぶる高く、男はある意味で自分の商材であるゆっくりに誇りを持つようになっていた。
やがて男は自分のゆっくり達は新鮮なうちに、すなわち生きているのを捕まえてすぐ食べることが最も良いと考える。
そこで今のゆっくり牧場が出来上がったのだ。
牧場の評価は著しく高かった。自慢のゆっくりに舌鼓をうつ客を見て男もやりがいを感じる。
しかし、男は思わぬことにでくわす。虐待お兄さんだ(お姉さんも含む)。
人間を見ただけで、それが捕食者と思い恐れおののくゆっくりの反応は虐待お兄さんたちの琴線に触れた。
あるとき虐待お兄さん達の団体申込があった。男はすこし渋ったが、通常の3割増しの料金を払うということで折れた。
しかし、イベント終了時に男は驚愕する。
一匹のゆっくりたりとも食べられずに惨殺されているのである。
男は嘆いた。虐待されるためのゆっくりを育てた覚えはない。
確かにお金を払った時点で、ゆっくりをどうするかなんてお兄さんの自由だ、と言われると反論できないかもしれない。
いや、別にゆっくりでなくても、例えば百姓が育てた野菜を目の前で全て踏みにじられた、例え金を多めに払われてもゆるせるのか?
だが、ゆっくりという生き物は食われることを望んでいない。お前が言えた立場か、お前こそゆっくりを最もゆっくりさせていないくせに。
男は激しく自責自問した。
幸いにも男には仲間がいた。一緒に牧場を支えてくれる仲間が、男が育てるゆっくりの味が大好きなファンが。
男は自分の信念を貫くことにした。あくまでゆっくりを食べたい人に向けて商売をしようと。
虐待目的の申し込みは全て断った。
様々な困難はあったが、なんとか固定層を掴み、スタッフと自分の給料も払えている。
施設の数も順調に増えていっている。
ゆっくりの育成には思わぬアクシデントが多くあった。
風邪を見落として、ある施設のゆっくりが壊滅状態になったこともある。
食べられること無くしにゆくゆっくりを見てなんとも言えない気持ちになった。
もっと自分がしっかりとしていればこいつらも死ななかったのに。
男の育てたゆっくりは直接は接触できないが、それでもカメラ越しに成長を祈った。
出来上がったゆっくりの味に微笑む客の顔を見て、この仕事を頑張ってよかったと心から思える。
しかし、だ。
イベント後の殆どのゆっくりがいなくなった、群れのあった場所を見て男はなんとも言えぬ虚無感を感じるのだ。
その虚無感の源、男はそれに気づきながらも、必死に抑えていた。
男はゆっくりの命を奪う仕事をしながらもあまりにもゆっくりと深くつきあってしまった。
俺が言えた立場なのか?ゆっくりを愛しているなどと?
そこをぱちゅりにーつかれてしまった。
「ずっと、疑問に思っていたわ・・・ゆっくりが食べられるために生まれてきたとしたら・・・この世界はあまりにも残酷すぎる・・・
でも実際にはあの時までは世界はぱちぇたちにとても優しく・・・暖かった・・・そして、その正体がやっとわかった・・・」
それは、正に男たちの愛情に他ならなかった。決して機械的な作業だけでは伝わらぬ、誠心誠意こめた愛情。
「なあ、ぱちゅりー、この仕事は、この牧場はお前たちにとってどうなんだ?俺は正しい事をしているのか?」
正しいか正しくないかはぱちゅりーには分からない。
それは、男がこれからの人生に常に考え続けること。
この仕事をする上で悩み続けること。
だからぱちゅりーは、ぱちゅりーの言えることだけを言った。
「むきゅ・・・にんげんさん・・・ぱちぇ・・・しあわせだったのよ・・・しあわせ・・・だったんだから・・・」
ぱちゅりーはそれっきり何も言わなくなった。寿命がつきたのである。
周りの電気が消える中、男のいるオフィスはいつまでも明るいままだった。
考証 不運 虐殺 番い 群れ 赤ゆ 子ゆ 現代 食ゆ
皆さんはゆっくりについてどのような考えを持っているだろうか。
道行くウザイ饅頭、愛玩動物、虐待対象・・・人によって考え方は違うだろう。
この物語は食品としてのゆっくりについて綴ったお話である。
ただし、物語の舞台はは加工所ではなく、ゆっくり牧場という場所だ。
本日はゆっくり牧場に住まうゆっくりの生き様について紹介したいと思う。
「ゆ!ゆ!」
一匹のまりさが薄暗くなってきた道を跳ねている。
ぼうしの中には餌となる野菜が詰め込まれている。
「れいむ!おちびちゃん!ゆっくりかえったよ!」
「ゆ!おかえりなさい!まりさ!」
「「「「おかえりなちゃい!!!!」」」」
まりさは一家のだいこくばしら(笑)だった。
家族構成は親まりさ、親れいむ、子まりさ、子れいむ、赤れいむ、赤まりさとテンプレのものだ。
「ゆ!きょうはレタスさんととうもろこしさんをとってきたよ!」
「ゆわぁ!れいみゅ、とうもろこししゃんだいしゅきだよ!」
「まりしゃも!」
「おとうしゃん!ゆっくりありがとうなのぜ!」
「れいむは、もうおなかぺこぺこだよ!はやくたべようね!」
「ゆふふ、ありがとう、まりさ」
「どういたしまして。じゃあゆっくりたべようね!」
「「「「「「ゆっくりいただきます!!!!!!」」」」」」
「むーしゃ、むーしゃ!しあわせー!」
「うめっ!うめっ!ぱねえ!」
「おいしいね!」
「とうもろこししゃんは、れいみゅにゆっくりたべらりぇてね!」
「ゆーおちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるね」
「ほんとうだね!まりさ!いつもありがとう!」
「れいむこそ、いつもおちびちゃんのめんどうをみてくれてありがとう!」
「ゆーまりさはおなかいっぱいなんだぜ!」
「いっぱいたべちゃから、うんうんしゅるよ!」
「れいみゅもうんうんしゅるよ!」
モリュ!
「しゅっきりー!ゆぴゃああああ!うんうんくしゃいよ!うんうんしゃんあっちいってね!ぷきゅうーー!」
「ゆーおちびちゃん、うんうんはまりさがかたづけておくよ」
「おちびちゃんたちは、おかあさんすーりすーりしようね!」
「すーりすーり、おかあさんのおはだはきもちいいね」
「しゅーりしゅーり」
「ゆう、まりしゃねむくなってきちゃのぜ・・・」
「すーやすーや」
「ゆう・・・おちびちゃんたち、とってもゆっくりしてるよ」
「そうだね・・・れいむ・・・」
寝かしつけたわが子を見てまりさ達は微笑み、昔のことを思い出していた。
まりさは生まれつきの野生ゆっくりだった。少なくてもまりさ自身はそう思っていた。
(つまり、現実には違うということなのだが)
まりさは天涯孤独のゆっくりだった。優しい母親も、頼りになる父親も、可愛い妹たちも全て死んでしまった。
人間の手によってである。・・・皆、食べられてしまった。
人間に襲われた時まりさも死ぬかと思ったが、何故か人間はまりさを殺さなかった。
まりさが元々いた群れはほぼ壊滅してしまったがそれでも数匹の生き残りがいた。
その生き残りとともに旅を始めた。人間の来ない場所を求めて。
旅を続けるうちに多くのゆっくりと合流する。
素早い動きで偵察に行くちぇん。
様々な知識を有し皆を導いてきたぱちゅりー。
落ち込んでいた皆をとかいはなお話で元気づけてきたありす。
そして、れいむ。
れいむもやはりまりさと同じく家族を人間に殺されたゆっくりだった。(他のゆっくりも皆そうなのだが)
お互いのつらい過去を話すうちに二匹は意気投合する。
「ま!まりさは!れいむといっしょにゆっくりしたいよ!!」
「!!!れいむも、れいむもまりさのことがすきだよ!ゆっくりしようね!!」
プロポーズが成功した時、まりさは天にも登る勢いだった。まわりの皆も祝福してくれた。
しかし旅は続けないといけない。食べられる餌が少なすぎたのだ。
途中、目に見えない壁さんにじゃまされたり、おなかのぺこぺこになやまされた。
空腹に耐え切れずに死んでしまったみょんもいた。
長い苦痛の日々の末に、ある日ついに理想のゆっくりぷれいすを見つける。
そこにはゆっくりできそうなほら穴さんや、お野菜が勝手に生えてくるはたけさんもあった。
そして、どうやらゆっくりを襲う人間もいないようだった。
まりさ達はここを皆のゆっくりぷれいすとして、住み始める。
この場所は本当に素晴らしいゆっくりぷれいすだった。
前述のとおり、お野菜さんは勝手に生えてくるので食料には困らない。
雨も全くふらず、気候もゆっくりにとって実に快適だった。
そして、天敵が全くといっていなかった。
(というかゆっくり以外の生き物がいなかった。虫ですらも。)
まりさ達は実にゆっくりとした生活を送っている。
今いるおちびちゃん達は実は最初の子ではなく、巣立ちしている。
その巣立った子も既に番を見つけ、やはり子を成している。
かつての仲間は群れとなり、その数を数十倍に増やしていた。
唯一の懸念は人間であるが、群れのゆっくりは皆、ゆっくりしていない人間なんかに、このゆっくりぷれいすを見つけられるはずがないと考えていた。
ただ一匹を除いては。
夜、どのゆっくりも寝静まる中、数人の人間が群れの中に訪れた。
ゆっくりの浅はかな考えなど裏切るかのように。
一人の男が先ほどのまりさのおうちの前に行く。そして何かを吹きかけた。ラムネスプレーである。
男はまりさをつかみ軽く刺激を与える。
「ゆー、むにゃむにゃ」
起きる気配は無い。
男は消毒用エタノールでまりさ達を念入りに拭き、元に戻した。
他のおうちでも同じようなことが行われていた。
さて、ここで少しネタばらしをしよう。
まりさ達は皆自分のことを野生のゆっくりだと信じて疑わないが、実際はこのゆっくり牧場で飼われているゆっくり達である。
そもそもこの空間は屋外ですら無く、大きめの体育館の様な建物の中であり、人口の木、ほら穴が置かれ、
天井はガラス張り、壁には幼稚園児が見ても分かるような森の絵が書いてある。
地面も緑や茶色のマットであり、ゆっくりの清潔を保つため、定期的に清掃もするし、(その間ゆっくりは眠らされる)
お野菜が勝手に生える畑さんとやらも、職員が定期的に野菜を置いているだけである。
そう、まりさ達は人間が逃れてきたつもりだが、初めからその様なことなど不可能だったのである。
至高にゆっくりした群れに神様が与えてくれた、と思っていたゆっくりぷれいすも結局は全てまがい物、人工物だったのである。
そして、そのゆっくりぷれいすもまりさ達の命も、信じられないような幸運も今日までであった。
「えー皆様、本日はゆっくり牧場にお越しいただきありがとうございます。」
まりさ達の命運が尽きる日、施設の前には数人のスタッフと数十人の客がいた。
「お申し込みいただく際にご確認いただいたかと思いますが、今一度確認させて頂きます。
当施設のゆっくりはあくまで食用ゆっくりです。故に衛生面には細心の注意を払っております。
施設にお入りいただいたらまずは、手を洗って頂き、専用の靴をお履き下さい。
靴のサイズは事前に伺ったものをご用意しておりますが、万が一サイズのあわない方はスタッフまで申し付け下さい。
施設入所後は、スタッフが案内致しますので、指示に従っていただくようお願い致します。
重ね重ねとなってしまいますが、本施設のゆっくりはあくまで食用です。
お持ち帰りいただくことや、"味の調整"の範疇を超えた行為を行わないようお願い致します。
それでは、皆様よいお時間とご体験を。」
「ゆー、ゆっくりおきるよ・・・ゆ!?れいむ!?」
「まりさ・・・ゆっくりおはよ・・・ま!まりさ!?」
「「ゆゆ!!??」」
れいむとまりさを驚いた。
朝目が覚めたら、自分の番がとてつもなく綺麗になっていることに。
元々、栄養状態が最高によくゴミホコリや砂塵のほぼ無いこの群れのゆっくりは皆キレイな方である。
しかし、昨晩の人間による洗浄で汚れは一切無くピカピカであった。
「ゆっくりおきるのじぇ」
「おはよう、おとうさん、おかあさん」
「きょうもゆっくりするのぜ!」
「ゆわ~!れいみゅ、ちーちしちゃいよ!」
「「「「ゆゆゆ!!!」」」」
自分たちだけではなくおちびちゃんもとてもキレイになっている。
「おちびちゃんたち!とってもゆっくりしてるね!」
「さすがまりさのおちびちゃんだね!」
「おとうさんとおかあさんも、きれいだね!」
「まりさはびゆんなのかぜ?うふふふ」
「まりちゃはみんなのあいどるしゃんなんだじぇ!!」
「きれいなれいみゅがちーちーするよ!しゅっきりー!!」
まりさ達はお互いの美貌に喜び、この姿を皆に見せようと群れの広場に向かう。
そこには
「とかいはのありすのおはだをみてね!」
「むきゅ!これがけんじゃのびぼうよ!」
「ちぇんたちはとってもきれいなんだねー!わかるよー!」
「みょーん!うれしいみょん!」
「おとうさん!おとうさん、いもうとたちたちもきれいになったんだね!」
「「「おじいちゃん!おばあちゃん!おびゃしゃんたちもとってもきりぇいだね!!!」」」
ありすが、ぱちゅりーが、ちぇんが、みょんが、独り立ちしたこどもが、まご達が皆かつてない美貌を手に入れ喜んでいた。
「ゆー?でもなんでちぇんたち、みんなきれいになったのー?わからないよー?」
かなり時間がたってからようやく一匹のちぇんが疑問を浮かべた。
「「「「「「ゆー??????」」」」」
答えられるものはいない。
「ゆ!ぱちぇにはわかったわ!このむれのみんなはとてもゆっくりしていたから、かみさまがごほうびをくれたのよ!」
「「「「「ゆ!!!」」」」
「かんがえてみなさい。ぱちぇたちはかってにはえてくる、おやさいをむーしゃむーしゃして、おうたをうたって、
あかちゃんをたくさんそだてたわ!だからかみさまはぱちぇたちをみてとてもゆっくりできたのよ!」
このぱちゅりーは、群れの長の娘である。
長はまりさ達と同様、群れの最古参のゆっくりであり、その知識を飼われて群れを導く立場にいる。
長の娘の話を聞き、最初はポカーンとしていたゆっくりたちも皆はしゃぎだす。
「ゆー!れいむがゆっくりしているとかみさまもゆっくりできるんだね!」
「ありす、これからもすっきりーをたくさんしてあかちゃんをたくさんうむわ!」
「まりさはおやさいを、もっと、もっと、もーっとたくさんたべるのぜ!」
「かわいくちぇぎょめんねー!」
「きゃみしゃま!きゃわいいれいみゅのうんうんでゆっくちちてね!ちゅっきりー!ゆ!きゅさいよ!きゃみしゃまはうんうんをはやくどかしてね!ゆっくりしないでね!」
「むきゅ!だからみんなもこれまでいじょうにゆっくりするのよ!」
「「「「「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」」」」
あ・・・れ・・・?
まりさ達、古参のゆっくりは胸に引っかかるものを覚えた。(胸など無いが)
この状況・・・どこかで・・・
思い出せない・・・
でもなんだろう?この不安は?
「ぱちゅりー・・・おさは?どうしているの?」
「むきゅ?おかあさんはおうちでなにかなやみごとをしてたわ!いまはゆっくりしないといけないのに!」
「ありがとう、まりさはおさとあってくるよ!」
まりさはかけだした。やはり長も何かを感じている。ゆっくりできない何かを。
「むきゅ・・・これはやはり二年前の・・・いや、まさか・・・でも、もしぱちぇの仮説が正しかったら?・・・」
「おさ!まりさだよ!」
「ま、まりさ!」
「おさ、ゆっくりおしえてね!むれのゆっくりがきれいになったてよろこんでるよ!でもまりさはなんだかゆっくりできないきがするよ!」
「まりさも・・・まりさもそう思うの!?」
「やっぱりなんかしっているんだね!?おしえてね!」
長ぱちゅりーは思う。群れの皆が朝に突然きれいになった事。これは昔にも一度だけあった。
二年前のあの日、前の群れが壊滅した日のこと。
いかに記憶力の低いゆっくりでも、その場にいたらなばそのことを忘れることなどはできない。
ただ、流石にその前に起きたことと結びつけることができているのは長のぱちゅりーしかいなかったようだ。
「まりさ・・・ゆっくり聞いてね・・・これはかつて・・・ぱちぇたちの昔の群れが・・・」
「た!た!た!た!たいへんなんだよー!」
ぱちゅりーの話はやはり古参のちぇんによって遮られた。ぱちゅりーは思う。どうか自分の悪い勘が外れてくれ。
しかし
「ど、どうしたんだぜ・・・ちぇん」
「に、に、にんげんがきたんだよー!たくさんだよ!わからないよー!」
「ゆ!ゆわんだってーーーー!!!!」
「むぎゅう!!!!!」
長ぱちゅりーはある意味で、真の森の賢者だった。(森じゃないが)
「ちぇん!このことは群れの皆は知っているの!?」
「しらないんだねー、ちぇんはまっさきにここにきたんだよー!」
ちぇんもまた、今回の件に不審を感じた古参の一匹だった。
気を紛らわせるべくいつもより遠い所に散歩に出かけていた。
そこで見つけてしまったのである。これからの宴のため準備をする人間たちを。
正直言って、ちぇんは叫びたかった。しかしかつての凄惨な記憶がちぇんの口を封じた。
震えを止められないまま、ちぇんは長のおうちへと向かってきたのだ。
「ちぇん!まりさ!皆を避難させるのよ!」
「「ゆっくりりかいしたよ!!!!!」」
三匹はゆっくりとは思えない速さで広場に向かう。
しかし哀しいかな。気づいた時には全てが手遅れだった。
「みんな!ゆっくりしないできいてね!いまからひなんをはじめるよ!」
「ゆっくりしないでね!わかれよー!」
「ゆ?まりさ、ちぇん、なにをいっているの?」
「りぇいみゅたちはゆっきゅりしゅるんだよ!」
「そんなにあわてるなんていなかもののすることだわ」
若いゆっくりがのんびりとし、対照的に古参のゆっくり達は顔をこわばらせる。
その時だった。
「はい!皆さんお待たせしました!ここが今回の食べ放題のエリアです。今から3時間、食べ放題となります!」
人間の集団が群れに到着したのは。
に
「ほう、これまたおいしそうなゆっくりじゃの!」
に
「パパ!私、ありす好き!カスタード美味しいんだもん!」
に
「パパはれいむのあんこが好きだなー、まりさはなんか違うんだよ」
に
「うーん、見たところ随分ゆっくり育ったゆっくりだけど、本当に美味しいのかしら?」
に
「おっしゃー!この日のために大枚をはたいたんだ!食うぞ!食うぞ!食うぞ~!」
に
「ヒャッハー!クソ饅頭どもは制裁だーー!」
飼いゆっくり以外のゆっくりは野良にせよ野生にせよ、人間をゆっくりできないやつと考えている。
その真意は、一斉駆除だの、お野菜が生えてくるゆっくりぷれいすを独占するだの、よわっちいから奴隷にしてやるだの様々であるが、この群れはそのいずれでもなかった。
「「「「「「「にんげんだーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」
それはまるで、れみりゃやふらんを前にした時のような、捕食種に対する反応と同じものであった。
「ま、まりさはおいしくないんだぜ!たべるならそこのれいむがいいんだぜ!」
「どぼじでぞんなごというのー!」
「おちびちゃん!ままのおくちにはいってね!ゆっくりしないでね!」
「きょわいよー!」
「わからないよー!」
「むぎゅぅむぎゅぅ!遅かった・・・」
長ぱちゅりーは自分の判断が遅かったことを後悔した。
もともと長ぱちゅりーは人間のことを隠して避難を進めるつもりであった。
人間の名前を出した時点で群れがパニックになる事が容易に予測できたためである。
それが最悪の形になってしまった。
人間たちは既に現れ、ゆっくり達はその場から動けないもの、逃げるものも八方に散らばり、既に統制はとれていない。
それでも・・・
それでも・・・それでも、それでも!それでも!!!
「ぱちぇは行くわ!この群れの長として!群れをすく・・・」
長ぱちゅりーの視界が狭くなる。
「む・・・きゅ・・・」
人間さん・・・?
ぱちゅりーの意識はそこでとだえる。
「さあさあ!皆さん!躊躇せず!是非ご賞味下さい!まずは小さな赤ゆから食べることをお勧めしますよ!
自分の普段の好みだけに拘らずにいろんな味を試して下さい!決して他では味わえない味を保証しますよ!」
「じゃあ!私、このありす食べるー!」
「おちょらをとんでるみちゃい!!!」
「ありすのおちびちゃんがー!!」
まだ幼き少女が先陣を切り、近くでフリーズしていた赤ありすを掴む。少女は赤ありすを見回なしながら、
「かわいい!」
と微笑む。ゆっくり達はその笑顔に、そうだ自分達はこんなにもゆっくりしているんだから大丈夫だと僅かな希望を
「いただきまーす!」
「ゆべっ!!」
あっさりと砕かれましたとさ。
「お・・・お・・・おいしい!!!凄いよパパ!こんな美味しいもの初めて食べた!」
赤ありすを食べてご満悦の少女を見て、宴が始めった。
「ま・・・まりしゃ・・・ゆぴ・・・ゆぴ・・・ゆぴゃああああ!!!!!」
「うーん・・・人間見ただけでここまでビビるゆっくりは確かに凄いかもしれないわね、でもまぁこれぐらいなら加工所の技術でも出来ないことないわ!」
赤まりさをつまんで観察するお姉さん。彼女は実は加工所の研究員なのだ。
加工所。もはや説明するまでもないゆっくりにとっての地獄。
お姉さんは日々、より効率的で高品質の甘味を生み出すべく、ゆっくりに与える負荷を研究してきた。
既にこの分野では世界的に名の知れた研究者である。
しかし、ある日このゆっくり牧場のことを知る。
初めは何の理論も無く、自然の味を大事にしただとかの売り込みをしている業者だと思った。
自然の味だと?そんなこと、加工所ではとっくの昔に改名し、機械的に可能にしている。
しかし、実際にサンプル品を食べてみると、確かに加工所ではどうやっても出せない味、香り、コク、その他もろもろがある事を認めざるを得ない。
これはお姉さんの研究者としてのプレイドを傷つけた。
話によると、ゆっくり牧場のゆっくりはお店に並ぶものよりも現地で直接食べるほうがはるかに美味しいという。
いったいどんなカラクリがあるんだ!お姉さんはなんとしてもそれを暴いてやろうと思い今日来たわけだ。
「まぁ、ものは試し!いただきます!」
「ゆぴっ!」
「!!!!」
お姉さんは始め、赤まりさをすぐには噛まずに舌で転がして、次に少しずつ噛みながら食べるつもりだった。
そうすることで肌の状態や味の変化を確かめようとしたのだ。
しかし
(え?え?何!?この感じは!ああ!もう我慢出来ない!)
「ゆびゃあ!」
お姉さんはすぐに噛んでしまった。赤まりさだったものがお姉さんの口に広がる。
その時、お姉さんは草原を見た。風がそよぎ、鳥は歌い、命があふれている!
ああ!そうだ!生きるとはこの事なんだ!食べるとはこの事なんだ!
研究をする中で、ゆっくりを口にしない日は殆ど無い。
いつからだろう?ゆっくりをなんの感慨も無く食べるようになったのは。
いや、ゆっくりだけではない、食事そのものもただ生きるためだけの作業になっていた。
でも確かに、今私は思い出している!喜びを!食べることの感動を!生きることの素晴らしさを!
「私は・・・!浅はかだった・・・!!」
誰に言うでもなくお姉さんはブツブツと話しだす。その目から溢れる涙はとどまることを知らない。
「ちょっと・・・周りから評価されたからといって、自分がゆっくりについて絶対の知識を持っていると思い込んでいた・・・
ふふふ・・・これじゃあ、もりけんと変わらないじゃない・・・」
気の済むまで泣いた。周りでは多くのゆっくりもお姉さんと同じく泣き叫んでいる。しーしーももらしている。
実はお姉さんももらす寸前まで行ったが、そこはかろうじて残った理性で耐えた。危なかった。
「おねえざああん!!がわいいれいむはみのがしてね!!!」
「・・・」
「むじじないでね!!れいむにはがわいいおじびちゃんも・・・ゆぎゃあああ!れいむのあんござんずわないでーーー!!」
とりあえず、今は任せそう、この生きるための最も基本的な欲求に。
「や、やめでね!おちびちゃんをはなしてね!」
「た、たちゅけて!おきゃあさん!!」
「はやくおちびちゃんをはなしてねー!」
「ははは!さあ!どうする、れいむ、ちぇん?残されたおちびちゃんはこいつだけだぞ?」
「やめちぇね!れいみゅのおかざりしゃんとらりゃいでね!」
「おちびちゃんのおかざりかえしてあげてよ!ゆわーん!」
「わからないよー!」
「わははは!おかざりを取ってもちゃんと認識できるのか、なかなか賢いゆっくりだね!お兄さん気に入ったよ!」
周りの客から少し離れたところで、一人の男がれいむとちぇんの一家をなぶり殺していた。
男の足元には二匹の子どもの変わり果てた姿があった。
そう、男は正真正銘の虐待お兄さんだった。
ありとあらゆる虐待、シチュエーションを試し、虐待に少しマンネリを感じ始めた時、このゆっくり牧場について知った。
曰く、牧場のゆっくり共は人間を見ただけで、まるで捕食種を対面したかのような顔をするらしい。
確かに、いじめ抜いたゆっくりは自分を見ただけで怯えきっていたし、つまらない命乞いもした。
本物の捕食種をけしかけた虐待もしたこともあるし、ゆっくりの目の前で家族を食べたことだってある。
しかしそれはどこまでいっても虐待の延長線上であり、経験者曰くここのゆっくりの反応は前述のどれとも違うらしい。
男は満足していた。聞いていた話し通りだったのだ。
ほとんどのゆっくりは出会った瞬間は自分の優位を信じて、人間にとって高慢な態度をとる。
あまあまをよこせだの、奴隷にしてやるだの、おうちをよこせだの。
人間の恐怖を理解している個体ならば、すぐ逃げたり、何も悪いことをしていないだのいきなり謝ってくることなどの行動を示す。
しかし、今回のゆっくり達はどうだ。まるで人間をれみりゃやふらんの如く見てくれるではないか。
長い虐待歴でも、このようなシチュエーションは初めてであった。故に燃えた。
「ゆ!ゆ!おちびちゃん!いそいでね!はやくにげるよ!」
「ゆえーん!れいみゅはもうあるけにゃいよー!」
「にゃ!ちぇんのいもうちょはぎゃんばってね!」
「ゆっくりしているとたべられちゃうんだねー!わかってねー!」
この一家はもともとれいむ、ちぇん、子れいむ2匹、子ちぇん2匹、赤れいむ2匹、赤ちぇん2匹のなかなか大所帯の家族だった。
元々、動きのはやいちぇん種がれいむ種を助ける形で逃げていたため、比較的早い段階で広場から抜け出すことができたが
ゆっくりの悲しき性かな、かえって虐待お兄さんに目を付けられてしまったわけだ。
「ゆ!ゆ!どぼじでにんげんがごごにもいるのー!!!」
「わからないよー!!!」
「ゆえーん!れいみゅきょわいよー!」
「い!いもうとたちはちぇんがまもりゅんだよ・・・わかってね・・・」
あっさりとお兄さんに回りこまれた一家。お兄さんはまず強がりながらも恐れを隠せない一家の長女であろう子ちぇんを掴んだ。
「は!はなしてねー!ちぇんはしにたくないよー!」
「おねえちゃんーーー!」
「れいむのおちびちゃんがー!!」
「わぎゃらないよー!」
「ゆびゃああ!」
お兄さんは野生ゆっくり一家を虐待するとき、まずは一匹を瞬殺することにしている。力の差を分からせるためだ。
今回のゆっくりは野生ではないし、力の差も理解しているようだが、まあそこらへんはお決まりってやつだ。
殺し方はいたって簡単。地面に全力で叩きつける。以上。
「「「「「「「「ゆ?なにこれ?」」」」」」」」
一家の目の前にチョコレートの花が咲いていた。
「「ゆ・・・?ゆ?ゆ!ゆぎゃあああ!おちびちゃん!!!!」」
親の二匹がまっさきに花の正体に気がついた。子ゆっくり以下はまだフリーズしている!
「ゆべえぇ!」
「ゆぎゅ!ゆぎょぎょぎょ!」
「ゆぴしゃあああ!」
「おちびちゃんあんこはいちゃだめー!!」
一家が恐怖に包まれるのに大した時間はかからなかった。
「おちびちゃんはちぇんのおくちにはいってね!」
「ゆ・・・ゆっくりはいるよ!」
「おきゃあさんのおくちなら・・・あんしんだよねー?わかるよー・・・・」
「ゆえええん!れいみゅをおいていかないでにぇ!」
「お!おにいさん!たべるなられいむをたべてね!おちびちゃんはまずいんだよ!ほんとうだよ!」
先程家族が惨殺されたにも関わらず、ゆっくり達は未だにんげんとはゆっくりを食べるものという思い込みがあるらしい。
しかし、それ以外は足の速いちぇんがおちびちゃんを連れて逃げ、おそいれいむが囮になるというなかなか賢い選択をするなとお兄さんは思った。
他のゆっくりどもなら十中八九、その役目は逆だ。ちぇんお口に入った子ゆっくりの会話からもその賢さは読み取れた。
「きょわいよー!」
「わきゃらないよー!」
「ゆえ!ゆえ!おきゃあさん!」
「なかないでね!いもうと!おかあさんはれいむたちのためにじかんをかせいでくれているんだよ!れいむたちはおかあさんのぶんまでいきるんだよ」
普通のゆっくりならば親の口に入った時点で勝利を確信するものなのに、このゆっくり達は皆それが気休めにしかならないと気づいていた。
そして母親のれいむが身をていして時間を稼いでいることも。
(れいむ・・・ごめんね!)
ちぇんは横目でちらってれいむを見て全速力でかけ出した。泣いては駄目だ。れいむがいなくなった分自分がおちびちゃんをゆっくりさせなくては。
「どうしたの!にんげんさん!れいむとってもおいしんだよ!はやくしないとにげちゃうよ!」
れいむとしては人間がれいむを食べることで腹を満たし、ちぇん達を追わなくなるのではないかと考えていた。
そうでなくても、れいむのダーリンのちぇんならきっと隠れてやりすごせると、そう希望を持っていた。
「ゆごぎゃべ!」
「んにゃ!」
「「「「「「お、おとうしゃん!?」」」」」」
しかしお兄さんの行動はれいむ達には予測できないものであった。れいむを蹴っ飛ばしたのである。そしてちぇんにクリーンヒット。
「れ、れいむのはが!」
「な、なんでにんげんがめのまえにいるのー!わからないよー!」
予測できない出来事に困惑する二匹。お兄さんはそのスキをみのがさない。
「ゆにゃ!」
「ゆ・・・もうれいみゅたちたしゅかったの?」
「ゆ!おきゃあさんもいるんだね!わきゃるよー!」
「おかあさん!おとうさん!だいじょうぶ!?」
「ゆにゃあ!!」
「ゆ!?」
「なんでーにんげんがいるのー!わからないよー!」
ちぇんの口を強引に開き中の子ゆっくり達を引きずり出す。
外に出て一難去ったと思っていた子ゆっくり達は目の前の状況に理解が追いついていなかった。
あとはもう、一家にとっては地獄の一時だった。
「ゆにゃ!もうぷすぷすはやめてほしんだよー!」
全身を爪楊枝で刺される子ちぇん。
「やみぇてー!!れいみゅちゅっきりしたきゅないー!」
「にゃ!れいみゅはちゅんでねなんだにぇ!わきゃるよー!」
「「ちゅっきりー!!」」
強制発情され、生殖行為を行い黒ずんでゆく赤れいむと赤ちぇん
「ぎゃらいよー!わぎゃ!」
唐辛子を無理やり食べさせられ中身を全てぶちまけた赤ちぇん。
「ゆが!ごぼぼぼ!おみずさん!はやくどこかにいってね!れいむおぼれちゃうよ!」
水に沈められ、すこしずつ溶けてゆく子れいむ。
「にゃー!にやんにもみえにゃいー!わかりゃないよー!!」
生きたまま目をくり抜かれる赤ちぇん。
そんな感じでついに先ほどの状態となった。残されるは赤れいむのみ。
さて、この赤れいむにはどんなことをしようか・・・お兄さんが考えている時思わぬ横槍が入った。
「すみませんが、何をなされているのでしょうか?」
ゆっくり牧場のスタッフ、しかも管理人である。
「え!?いや!あ!その!」
「・・・とりあえず、ちぇんに乗せている足をどけて頂けないでしょうか。とう施設のゆっくりはあくまでお客様のお口に入ること前提ですので」
「は・・・はい、わかりました」
蹴られたダメージで動けないれいむはともかくとして、ちぇんは一刻も早くおちびちゃん達を助けてあげたかった。
しかしこの虐待お兄さんに踏まれて身動きの取れないまま、これまでの悲劇をただ見ることしか出来なかった。
そこにこの管理人の男が現れ、虐待お兄さんは言われるがままちぇんの束縛をといた。
「にゃ!あたまがかるくなったんだよ!」
ちぇんは駆け出しだ。変わり果てた子供たちの元へ。
「ぺーろぺーろ・・・おちびちゃん・・・げんきだしてよ・・・」
しかしちぇんはゆっくりとしてはかしこかった。故にすぐに気づいてしまった。もうどうしようもないことを。
「ゆにゃー!みんなしんぢゃったんだよー!ゆっくりしていたおとびちゃんだったのにー!!」
泣き叫ぶちぇん、しかし・・・
「おちょうしゃーん!!れいみゅをたしゅけてねー!」
「にゃ!」
そうだ自分にはまだ守るべき家族がいる。他のおちびちゃんは皆死んだけど、番のれいむと赤れいむこそはゆっくりさせてみせる!
ちぇんは虐待お兄さんに囚われている赤れいむを見上げて決意を固めた。
「・・・お客様の趣味自体を特にどうこう言うつもりはありません。ただし、当施設はその様なことをする場では無いことは事前の確認をとり、
お客様も同意されていたはずです。特に爪楊枝や水・・・オレンジジュースも百歩譲るとして、唐辛子等を予めご持参いただいたということは、
誠に失礼ながら、我々もお客様が当施設の目的以外の件でいらしたと判断せざるを得ません。」
「え?いや、その、申し訳ありません・・・」
虐待お兄さんは内心あせりまくっていた。
この施設を教えてくれたお兄さんの友人もやはり虐待を趣味としており、一度来た時に規約も忘れてゆっくりを惨殺しまくりゆっくり牧場から出入り禁止処分にされた。
お兄さんはこれまでそれなりに良識ある虐待をしているつもりであった。
少なくても、人のつく場所で堂々と虐待しないし、野外で殺した饅頭はしっかりと持ち帰る。自宅でも周囲の騒音には気を使ってきたつもりだ。
今日も多少はハードな虐めはしても、ほどほどにしてしっかりと食べようと考えていたのだ。
しかしである。
実際に見てしまったここのゆっくり達は今まで見たこともない反応だった。
そう、まるで自分の事を捕食種とでも思っているかのような。
この反応にすっかり我を忘れたお兄さんは、ついつい夢中になってしまったのである。
そしてこのザマである。
お兄さんは思う。このゆっくりの反応を今回しか見れないのはあまりにキツイ。
出入り禁止になったあいつも心底嘆いていた。
では何故お兄さんは唐辛子等、都合よく持っていたのか。
これはもうお兄さんが虐待お兄さんだからである。つまりはいつ何時も虐待道具を持ち歩いていた、それだけである。
そして、いまのお兄さんの所持品の中には、どう考えても虐待用や駆除用の道具がいくつもある。
荷物検査を求められたら絶対に言い訳できない状況なのである。
虐待道具を持ち歩くなど、いくらなんでも世間の感覚とは大いに外れている。
ゆっくりの常識が人間に通じないのと一緒で、自分たちの常識が世間一般とやはり合わないことぐらいはお兄さんだって重々承知していた。
(ゆっくりしたけっかがこれだよ・・・)
お兄さんは心の中でつぶやき、手のひらの赤れいむを見つめる。
赤れいむは恐怖で何も喋らない。
(ははは・・・これじゃあ俺もあんこ脳と言われても文句言えないな。まぁとりあえず食べる分には問題ないんだろ)
お兄さんは半分呆然としながらに赤れいむを口の中に運んだ。
「にゃ!にゃ!おちびちゃんをゆっくりはなしてね!」
「ゆ!ゆ!ゆっくりしないでね!すぐでいいよ!」
お兄さんの足に向かってちぇんが体当たりを続ける。
少しながら回復したれいむもあんこを削りながら攻撃をしていた。
「ゆ!にんげん!いたいんだね!むりしなくていいよ!」
「いま!おちびちゃんをはなしたら、ころすのはおにいさんひとりでゆるしてあげるよ!」
ちぇん達は勝利を確信していた。
ゆっくりは人間には絶対に勝てない。そう思っていた。
しかし、今のお兄さんの顔はどうだ、目からあふれているもの、あれは間違いなく涙だ!
つまり自分たちの攻撃は人間に通用するんだ。ちくしょう、なんでもっと速く気づかなかったんだ、速く気づけば他のおちびちゃんも・・・
ゆ・・・そういえば、れいむのおちびちゃんはどこにいったんだ?
ゆゆ・・・!?にんげんの口のなかにあるりぼんさん、あれは確かおちびちゃんの・・・?
お兄さんは夢を見ていた。自分がまだ子供のころ、大好きだったおばあちゃん家がある田舎に行った時のこと。
そうだ!おばあちゃんは言ってくれた、好き嫌いせずどんなものでもしっかりと食え。
それはお百姓さんが精一杯作ったもの、それは他の生命を犠牲にしてのみ自らの生命が続くこと。
そうだ、俺は牛や豚や野菜を食べている。それらは皆俺に、人類に食べられるために命を失っている。
ゆっくりは・・・?
同じ事だ・・・俺がこうして食べることで俺の血肉となる・・・
生き物とは常に犠牲になって他の生き物を支え得ている。
だが・・・おれがいままで・・・いままで殺してきたゆっくりは?
ただ燃えるゴミとして燃やされて地球の二酸化炭素増加に貢献しただけだ。
ああ!そうだ!ゆっくりだって生きているんだ!かけがえのない命なんだ!そして何か他の生命のために存在しているんだ!!
「「どぼじでおちびちゃんがたべられてるのー!!!」」
「すまない・・・すまない・・・!」
お兄さんは泣いていた。今までどれだけ多くの食物を粗末に扱ってきたかを痛感したためだ。
口に入っている赤れいむだったものを咀嚼する。
美味い・・・なんて深みのある味だ・・・虐待ではとても味わえない味だ・・・
「お・・・お客様!?」
管理人は驚く。お兄さんが先ほどまで凄惨な方法で殺した子ゆっくり達を食べ始めたのである。
「しっかりと衛生には気を使っているのでしょう?いや例えそうでなくても私にはこいつらを食べる義務がある、そう思ったのです。」
お兄さんは泣きながら今の心境を語った。管理人はお兄さんの気が済むまで話を聴き続けた。
あたりにはお兄さんの泣きしゃっくりまじりの話し声と管理人の相槌、あとはゆっくりの絶叫とポヨンポヨンとした音のみが聞こえた。
「・・・で、どうだい?うちのゆっくりのお味は?」
「はい!とても美味かったです!」
「ははは!そりゃあ良かった!あんたはもう大丈夫だ!続けて楽しんでくれ!」
「いいんですか?」
「もちろんだ!残り2時間を切っているからな!おっとお客さん相手にとんだ対応だ!」
「ありがとうございます!」
ゆっくりの虐待を完全にやめる自信など無い。
しかし今度からはせめて遺体は食べるなり埋めるなりして供養してやろうとお兄さんは考えていたのだった。
れいむとちぇんはどうしたかって?
お兄さんとスタッフが美味しくいただきました。
「ゆわーん!かべしゃんはゆっきゅりどいちぇね!」
「まりしゃ、おきょりゅよ!ぷきゅう!」
「ゆー!おとうさん!どうしよう!このかべさん!どいてくれないよ!」
「やじゃ、やじゃ!れいみゅまだちにたくにゃい!」
「ゆうぅぅ・・・」
冒頭にもでてきたまりさ達は困っていた。
秘密の隠れ家に通じる道が壁で通れなくなっていたのだ。
他の場所から抜けようとも考えたが、壁はどこまでも続いていた。
当然壁は人間がおいた柵で、ゆっくりが逃げ出さないように設置したのだがまりさには知りようのない事だ。
「おじいちゃーん!なんとかしてみょん!」
「おばあちゃん・・・ありすこわいわ・・・」
「むきゅ・・・なにもいいあいでぃあしゃんがおもいうかびゃないわ・・・」
「どうすればいいのー!わからないよー!」
周囲には50近くのゆっくりがいたが、なんとこれ全部まりさとれいむの家族である。
最初に出てきた小さい家族の他に、既に独り立ちした二匹のれいむと同じく二匹のまりさにそれぞれちぇん、みょん、ありす、ぱちゅりーの番にその子ども達。
そう、まりさとれいむはゆっくりがそうそう見ることの出来ない孫とも一緒にゆっくりしていた稀有なゆっくりだったのである。
しかし、ここにも幸せの終わりを告げる神々が現れた。
「おーい!こっちにいたぞー!」
「ははは!探しながら食べるってのも悪くねーな!」
「まだまだ食い足りねえぞ!」
「おまえら・・・頼むからルールとマナーはしっかり守れよ・・・」
「分かってますよ先生」
「ここのルール破ったら、出入り禁止になるのは有名ですからね。」
「こんな美味いゆっくり食べる権利を自ら放棄するとか、マジ一部の虐待好きの思考ルーチン理解できねー」
「なー!」
見るからに飢えた中高生の集団である。一人引率なのか、彼らの教師もいる。
彼らはとある体育会系の部員であり、その競技のなかでは強豪チームとされる。
そして、今年は全国優勝も夢ではないと言われている中、顧問の先生が鼓舞するため言ってしまったのである。
「優勝したら、お前らなんでもうまいもん食わせてやるぞ!」
元から部員たちの力量も意識も高かったので、顧問の一言にどれくらい価値があったかは分からないが、
とにかく部員たちは無事優勝し、このご褒美にあやかっているわけである。
顧問はその出費に心で泣いていたが。
中高生の体育会系ともなればその食欲はとどまることを知らない。そりゃ、もうでいぶも真っ青になるほどに。
既に彼らは数家族をその胃袋に収めていたが、まだまだ足りないようである。要するにまりさ達家族の命はジ・エンドである。
まりさは三十近くの眼と目があってしまった。まるで肉食動物が獲物を狙うそれと同じような。
「「「「「「いっただきまーーす!!」」」」」」
「「「「「「「「「「「「にんげんだーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」」」」」」」」
「まりしゃおいしく!」
「うめよー!マジうめーよ!」
「おちびちゃん!ままのおくちにはいってね!」
「おー口のなかに赤ゆっくりいれたまま食べるのもいいな!」
「おばあーちゃーん!!だずげでねぇー!!」
「ま!まごのいのちはれいむがまもるよ!おちびちゃんのいのちもまもるよ!」
「おい!いいこと思いついたぜ!まずこのれいむの口をめいいっぱい開けてと・・・」
「むーむー!(やめてね!れいむのおくちをつかまないでね!)」
「おい、食いもんで遊ぶんじゃねえぞ!」
「大丈夫ですって!で、そうだな!赤ぱちゅりー2匹に赤ありす1匹にみょん1匹いれてっと、はっはっは!ゆっくりバーガーだ!」
「きょわいよー!」
「おばあちゃん、ぱちぇをたべないでー!」
「ゆぇ!え!(どぼじでまごがれいむのおくちにいるのー!)
「あんまりいい組み合わせに思えねえけど・・・」
「まあ物は試しってことで」パク・・・
「どうだ・・・?」
「キター!!ヘブン状態っ!!」
「まじかよ・・・」
「いや、たぶんの普通のゆっくりじゃ、味がごちゃごちゃになるだけだったと思う。すげーよ、ここのゆっくりは!」
瞬く間に自分の子、孫が減っていく様を見て、まりさはもう呆然とするしかなかった。
ある子ゆっくりが叫んだ。
「どうしてこんなことをするのー!?わからないよー!?」
まりさも叫びたかった。
でも分かっしまった。分かっていた。
まりさはかつての群れが人間に襲われたあと、食料が見つからず永遠にゆっくりしてしまった友人を食べたことを思い出した。
あの子だけじゃない。このゆっくりぷれいすで食べてきたお野菜さんだってまりさのあんこさんになっている。
人間とゆっくりは言葉は通じるのに意思疎通は難しい。価値観が違いすぎるのだ。ゆっくりが野生、野良ならなおさらだ。
しかしながら、今のまりさには人間の行動原理が容易く分かってしまうのであった。
それは
「みょん・・・まりさたちはみょんの分までゆっくりするよ」
「むきゅ・・・みんな、辛いけどしっかりと食べるのよ!みょんの命を犠牲にしてはいけないわ!」
「「「「むーしゃ、むーしゃ・・・ゆうううう・・・・」
あまりにも単純で
「ゆわあ!ここはおやさいさんがたくさんあるよ!すごいばしょだね!」
「むきゅ・・・畑さんがあるなら人間さんが近くにいるかもしれないから気をつけないと・・・」
「もうれいむがまんできない!むーしゃむーしゃ!し!しあわせええええええええ!」
「「「「むーしゃ、むーしゃ!しあわせーーー!」」」」
あまりにも純粋で
「むーちゃむーちゃ!おやさいさんはゆっくりできるね!」
「おとうしゃんはかりのてんしゃいだね!」
「まりしゃもおとうしゃんみたいになりたいよ!」
「ありがとう、おちびちゃん」
あまりにも残酷で
「きゃわいいれいみゅがうまれりゅよ!ゆっくちしていってね!」
「ゆーん!とってもかわいいおちびちゃんだね!れいむがおかあさんだよ!」
「ちぇんがおとうさんなんだね!わかってねー!」
「にゃ!いもうちょ!いもうちょ!」
「ゆふふ!まりさがおじいちゃんで」
「れいむはおばあちゃんだよ!れいむ!おちびちゃんにくきさんをたべさせてあげようね!」
「わかったよ!おかあさん!おちびちゃん!さいしょのごはんさんだよ!ゆっくりたべてね!」
「「「「「「むーちゃむーちゃ!ちあわせーーー!!!!」」」」」
あまりにも美しい自然の摂理なのだから。
まりさ達もずっとしてきたことなのだから。
生き物にとって当然のことなのだから。
それどころかまりさはこの時のために生まれてきたかのような気がした。
だから、まりさはもう怖くなかった。悲しくもなかった。自分のあんこが食べられていっても不思議と痛くなかった。
唯一の心残りはまだ幼いおちびちゃんや孫を救えなかったことだった。
長く生きた自分はもういい。でもせめて彼らにはもっと長く生きて欲しかったな。
でもきっと、その思いもきっと、受け継がれるはずだ、まりさ達の命の犠牲の上にまた他の生命が・・・
(にんげんさん・・・)
(にんげんさん・・・)
(にんげんさん・・・まりさたちを・・・ゆっくりたべてね・・・)
まりさの命の灯火は・・・ゆっくりと消えた。
「たった・・・これだけなの?あんなにゆっくりがたくさんいたのに・・・のこったのはこれだけ?」
「「「「「・・・・・」」」」」
「なんでなの・・・れいむたちはかみさまにえらばれたゆっくりじゃないの・・・?」
「ゆぴ!ゆぴ!ゆぴぴぴ!!!!」
「おかあさん、おちびちゃん、ぱちゅりー・・・みんなしんじゃったみょん・・・」
「もう・・・これから、どうすれば・・・」
「・・・ゆぐっ!・・・ゆぐっ!」
余りにも多くの友が家族が逝ってしまった。残されたものもまた地獄である。
そして、この残されたものは決して偶然ではない。
善良で、賢く、人間を純粋に恐れる個体が予め牧場のスタッフに保護される。
次なる商材の生産のために。
「いきましょう・・・ここはゆっくりできない・・・」
「「「「「ゆっくり・・・りかいしたよ・・・」」」」」
彼女らは住み慣れた土地を去る。本当の自然ならばこのまま全滅も起こりうるが、ここは所詮まがい物の自然である。
半数以上は生き残り、新たなゆっくりを得るだろう。与えられた、偽りの、しかし多くのゆっくりが叶えられぬゆっくりを。
おわり
「むきゅ・・・?・・・!!!!!!!!・・・・・やっぱり・・・」
「あ、しまった目が覚めたか!」
場所は変わってゆっくり牧場に併設されたオフィスの中。
滅びてしまった群れの長、ぱちゅりーが目を覚まし、管理人の男と目があった。
もともとぱちゅりーはこの男のラムネスプレーによって眠らされていたのだ。
ぱちゅりーはかなりの老ゆっくりである。そのクリームの品質は落ちている。故に客に食べさせる訳にはいかない。
しかしながら男は、またこの群れの監視及び調整を担当していたスタッフはこのぱちゅりーを多く評価していた。
食料に全く困らないといえど、群れの時点でどうしてもトラブルは起きてしまうものである。
その問題ひとつひとつに対して人間の目から見ても最善ともいえる対処をしてきたぱちゅりーである。
このぱちゅりーのおかげで群れは良い状態を保ち、結果的には今回の成功につながったといえる。
故にゆっくり牧場としてもそれなに誠意を尽くすつもりであった。
せめて、自分の群れが崩壊する場は見せずに、自責の念に駆られないように、後で安楽死させて上げようと考えていた。
しかし今日は予想以上に手間取った。イベント終了後に例のお兄さんやお姉さんに質問攻めにあったためであるが、
管理人がオフィスに戻ってきた時と同時にラムネスプレーが切れてしまったのだ。
とにかく、再び眠らせつるかとラムネスプレーを探す男にぱちゅりーが口を開いた。
「人間さん・・・ぱちぇは、真実が知りたいわ・・・」
「・・・真実だと?」
「ぱちぇの群れは、もう滅びたんでしょ?」
「な!!」
「人間さん・・・、あの群れのあった場所は全部、人間さんがつくったのでしょう?」
「・・・なぜ、そう思う」
「あの場所はあまりにもゆっくりに優しすぎるわ・・・怪我をしそうな枝も、溺れてしまいそうな川もない・・・
お野菜さんは・・・お野菜さんは少なくてもいきなりお野菜さんにならないはずだわ・・・
だってぱちぇたちもいきなり大きくならないから・・・人間さんがお野菜さんのおちびちゃんを育ててからおいてくれたんでしょ?」
このぱちゅりーはただ者ではない、男は元々そう思っていた。しかも現実は男の予想をはるかに上回っていた。
男には言わなかったが、ぱちゅりーはこれまでの生きてきたこの世界の様々なことに疑問を感じていた。
初めは、前の群れが壊滅した日のことだった。あっさり人間に捕まったぱちゅりーはゆん生を諦めた。
しかし生かされた。ガラスケースに入れられて群れの惨状を目の当たりにしながら。
ぱちゅりーには到底解決できないと思ったこと。それらは不思議な事に朝が来るとすっきり解決していることが多々あった。
ぱちゅりーは群れに問題があるとたいてい夜中、何度も起きてしまうが、解決するときに限ってぐっすり寝てしまうのだった。
例えば、ぱちゅりーではどうしようもない風邪が群れに蔓延した時等。
群れの皆はゆっくりしているから神様がご褒美をくれたというけど本当だろうか。
ぱちゅりーたちは他ゆんに尽くすとき何かしらの対価を求める。
もし神様がゆっくりに対価を求めてご褒美をくれたとしたら、何を要求するのだろう?
ぱちゅりーは一つの解を見つけてしまった。神様は人間で、対価とはぱちゅりー達の命ではないのだろうか?
根拠はない。でもそうだとするといろいろなことに矛盾がなくなるのだ。
では、なぜぱちゅりーは人間の脅威があるかもしれないあの場にとどまり続けたのか。
それはどこにも行き用がなかったからである。
他のゆっくりが見えない壁と言っていたが、ぱちゅりーには壁の向こうにある森がおちびちゃんが書いた絵がうーんと上手くなった物にしか見えなかった。
皆はゆっくりぷれいすの外にも果てしなく広い世界が無限に広がっていると考えていたが、ぱちゅりーにとって世界とはあまりに狭かった。
(現実的にはこれはぱちゅりーより他のゆっくりの考えのほうが近いのだが)
もしこの世界が人間により作られたものならば逃げ用がないではないか。
それは諦めの感情でもあった。
しかしぱちゅりーは同時に他のもっと違うことも感じていた。
ここは暖かくのどやかだ。環境ではなく、とりまく気のようなものが。上手く言葉に説明することはできないけど。
だけど自分たちは必要とされている。だからここにいていいんだと・・・
「話すよ・・・最初から・・・」
男は観念した。ゆっくり相手だが無下にはできないと思わざるを得なかった。
最初は単にれみりゃが食べていたゆっくりを奪って食べてみた事から始まった。
そこにあったのは好奇心だけであった。
しかし、そのゆっくりの味はそれまで味わったことのないものだった。
これはなんだろう。ゆっくりはゆっくりさせないと甘くなるという。
そしてその方法によって味の微調整がきくと。
加工所ではゆっくりに苦痛を与えることでその調整を行うらしい。
だが、人間が与える人工の苦痛と捕食種が与える天然の苦痛では違うのではないかと。
余談だが、加工所でも捕食種を使ってゆっくりにストレスを与えて味の調整を行うことはあるらしい。
しかしその場合に使われる捕食種は人間によって調教されたもの、天然のものとは違うらしい。
もちろん、人間だって最終的には食べるためにそれらの処理をしているのだが
そうではなく、もっと直接的に食う食われるの恐怖を与えれば良いのではないかと男は思うようになった。
そのうち男はわざわざ捕食種を使うのではなく、ゆっくりにとって人間が捕食者だと思わせればいいのではないかと考えるようになった。
ゆっくりは僅かながら親のあんこから記憶を引き継ぐという。
ならばと、子ゆっくりの前で親ゆっくりを食べ、その子が親になったころにまた食す。
といった事を繰り返すうちに、男に対するゆっくりの反応は
「ゆあーん!じじいはまりさにあまあまをもってくるのぜ!」
から
「れ・・・れいむはいきているんだよ!かけがえのないいのちなんだよ!」
となり
「やめてね・・・ありすにひどいことをしないでね」
さらには
「ちぇ・・・ちぇんをたべるなんてことしないよね、わかるよー!」
ついに
「に・・・にんげんだー!!!」
と変わっていった。
この頃まで男は趣味でゆっくりの品種改良に取り組んでいたが、出来上がったゆっくりを知り合いに配った所大好評で、
やがて男はこの趣味を仕事として生計を立てていくこととなる。
「というわけさ、お前たちは俺に人間が恐ろしくなるように変えられ、人間に食べられるために生み出されたゆっくりなのさ。ははは、なんともいっていいぜ。・・・すまん」
男は自嘲気味に話したが、ぱちゅりーは男の仕草に疑問を感じた。なぜ、謝る必要があるのだろうか。男は何に謝っているのだろうか。
「でもな・・・」
男は話を続けだした。
「野生だろうが飼いだろうが野良だろうが、お前らの群れのような生き方は絶対できない。
生まれたばっかりのちびには気の毒だが、他のゆっくりが平均的に生きる時間は野生や野良よりはるかに良い。
ましてゆっくりが孫といっしょにゆっくりすることなんて奇跡的なんだ。
それはよほど恵まれた飼いゆっくりですら難しい。
好きなだけ食べて、子どもを増やせて、人間の指図もいっさい受けないなんて!
そうだ!今日も一人の虐待野郎が泣いてた!今まで自分が食べ物をいかに粗末にしてきたかって!命についてしっかり考えていなかったって!
虐待野郎がゆっくりをちゃんと生き物として認めたんだぞ!?こんなことが簡単にできるか!?」
男は頼まれてもいないのに話しだした。支離滅裂だった。自分でも何を行っているのかよくわからない。しかし言わずにはいられなかった。
そして、ぱちゅりーは気づいてしまった。今までの違和感の正体が、男のいらつきの源が。
「人間さん・・・」
「な・・・なんだ・・・?」
「人間さんは・・・ぱちゅりーたちのことを愛してくれたのね。食べるつもりだったけど、それでも愛してくれたのね。」
「!!!!!!!!!!」
男はもともとゆっくりの愛護派ではない。こんな商売をしているのだからありえないが。
しかし、虐待派というわけでもない。
男のてがけたゆっくりの評判はすこぶる高く、男はある意味で自分の商材であるゆっくりに誇りを持つようになっていた。
やがて男は自分のゆっくり達は新鮮なうちに、すなわち生きているのを捕まえてすぐ食べることが最も良いと考える。
そこで今のゆっくり牧場が出来上がったのだ。
牧場の評価は著しく高かった。自慢のゆっくりに舌鼓をうつ客を見て男もやりがいを感じる。
しかし、男は思わぬことにでくわす。虐待お兄さんだ(お姉さんも含む)。
人間を見ただけで、それが捕食者と思い恐れおののくゆっくりの反応は虐待お兄さんたちの琴線に触れた。
あるとき虐待お兄さん達の団体申込があった。男はすこし渋ったが、通常の3割増しの料金を払うということで折れた。
しかし、イベント終了時に男は驚愕する。
一匹のゆっくりたりとも食べられずに惨殺されているのである。
男は嘆いた。虐待されるためのゆっくりを育てた覚えはない。
確かにお金を払った時点で、ゆっくりをどうするかなんてお兄さんの自由だ、と言われると反論できないかもしれない。
いや、別にゆっくりでなくても、例えば百姓が育てた野菜を目の前で全て踏みにじられた、例え金を多めに払われてもゆるせるのか?
だが、ゆっくりという生き物は食われることを望んでいない。お前が言えた立場か、お前こそゆっくりを最もゆっくりさせていないくせに。
男は激しく自責自問した。
幸いにも男には仲間がいた。一緒に牧場を支えてくれる仲間が、男が育てるゆっくりの味が大好きなファンが。
男は自分の信念を貫くことにした。あくまでゆっくりを食べたい人に向けて商売をしようと。
虐待目的の申し込みは全て断った。
様々な困難はあったが、なんとか固定層を掴み、スタッフと自分の給料も払えている。
施設の数も順調に増えていっている。
ゆっくりの育成には思わぬアクシデントが多くあった。
風邪を見落として、ある施設のゆっくりが壊滅状態になったこともある。
食べられること無くしにゆくゆっくりを見てなんとも言えない気持ちになった。
もっと自分がしっかりとしていればこいつらも死ななかったのに。
男の育てたゆっくりは直接は接触できないが、それでもカメラ越しに成長を祈った。
出来上がったゆっくりの味に微笑む客の顔を見て、この仕事を頑張ってよかったと心から思える。
しかし、だ。
イベント後の殆どのゆっくりがいなくなった、群れのあった場所を見て男はなんとも言えぬ虚無感を感じるのだ。
その虚無感の源、男はそれに気づきながらも、必死に抑えていた。
男はゆっくりの命を奪う仕事をしながらもあまりにもゆっくりと深くつきあってしまった。
俺が言えた立場なのか?ゆっくりを愛しているなどと?
そこをぱちゅりにーつかれてしまった。
「ずっと、疑問に思っていたわ・・・ゆっくりが食べられるために生まれてきたとしたら・・・この世界はあまりにも残酷すぎる・・・
でも実際にはあの時までは世界はぱちぇたちにとても優しく・・・暖かった・・・そして、その正体がやっとわかった・・・」
それは、正に男たちの愛情に他ならなかった。決して機械的な作業だけでは伝わらぬ、誠心誠意こめた愛情。
「なあ、ぱちゅりー、この仕事は、この牧場はお前たちにとってどうなんだ?俺は正しい事をしているのか?」
正しいか正しくないかはぱちゅりーには分からない。
それは、男がこれからの人生に常に考え続けること。
この仕事をする上で悩み続けること。
だからぱちゅりーは、ぱちゅりーの言えることだけを言った。
「むきゅ・・・にんげんさん・・・ぱちぇ・・・しあわせだったのよ・・・しあわせ・・・だったんだから・・・」
ぱちゅりーはそれっきり何も言わなくなった。寿命がつきたのである。
周りの電気が消える中、男のいるオフィスはいつまでも明るいままだった。