ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4474 人間とゆっくりが協力して困難に立ち向かう話(前編)
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『人間とゆっくりが協力して困難に立ち向かう話(前編)』 26KB
虐待 観察 家族崩壊 透明な箱 二作目、失礼いたします。
虐待 観察 家族崩壊 透明な箱 二作目、失礼いたします。
幸せに包まれる野良ゆっくり一家を突如襲った凶悪卑劣な拉致監禁事件―
真犯人は誰だ!?
【 人間とゆっくりが協力して困難に立ち向かう話 (前編) 】
…
…
…
目が覚めると、まりさ一家はなぜか人間さんのお家にいた。
「ゆふん!(ぽむんっ) ゆふん!(ぽむんっ)
ゆがああああああ!!
なんなのぜこのみえないかべさんはあああ!?
どーしてさいっきょうっ!のまりさのこうげきがきかないんだぜえええ!?」
なんなのぜこのみえないかべさんはあああ!?
どーしてさいっきょうっ!のまりさのこうげきがきかないんだぜえええ!?」
「まりさのあんよでもこわれないなんて…
なんていじわるなかべさんなの!(ぷんぷん)」
なんていじわるなかべさんなの!(ぷんぷん)」
「かべしゃんおねぎゃいだきゃらいうきょときいちぇよおお!?
とおしぇんぼしゃんはゆっくちできにゃいのじぇえええ!?」
とおしぇんぼしゃんはゆっくちできにゃいのじぇえええ!?」
「ゆっぴあああああああああ!!
はやきゅおしょとにでちゃいよおおおおおおおお!!」
はやきゅおしょとにでちゃいよおおおおおおおお!!」
それもなぜか、水槽の中に入れられていた。
水槽はとても大きいもので、中の広さは実に畳2帖ほどはあろうか。
一家は父まりさ、母れいむ、子まりさ、赤れいむという4匹の野良ゆっくりだ。
一家は父まりさ、母れいむ、子まりさ、赤れいむという4匹の野良ゆっくりだ。
当初は不可解な状況に首をかしげながらも、
「人間さんのお家を手に入れたよ!」と喜々する一家であったが―
「人間さんのお家を手に入れたよ!」と喜々する一家であったが―
不自由な水槽の中、食料も何もない状況ともなれば話は別だ。
早々と嫌気が差し、今では脱出を試みている最中だった。
早々と嫌気が差し、今では脱出を試みている最中だった。
「くそぅ…
駄目だまりさ。
この水槽、どこにも出口はないみたいだ」
駄目だまりさ。
この水槽、どこにも出口はないみたいだ」
「ゆぐぐ…
でぐちがあるならくろうはないのぜ!」
でぐちがあるならくろうはないのぜ!」
まりさと共に脱出に奔走する、ジャージ姿の男。
この男もまた、まりさたちが目覚めた時にこの水槽の中に居た者だ。
この男もまた、まりさたちが目覚めた時にこの水槽の中に居た者だ。
まりさたちが話を聞いてみるに、「自分も目が覚めたらこの水槽の中に居た」と言う。
結局は男もまた、まりさ一家と境遇を同じくする者の一人であった。
結局は男もまた、まりさ一家と境遇を同じくする者の一人であった。
「携帯電話でどこかに助けを…(カチャカチャ)
くそ、圏外か。」
くそ、圏外か。」
アンテナのついた機械で助けを呼ぼうとする男。
まりさ一家はそれが何に使う物か、理解しようもないだろう。
まりさ一家はそれが何に使う物か、理解しようもないだろう。
「ゆぜー…(ぽむんっ)
やくにたたない…(ぽむんっ)
にんげんさんなのぜ…!(ぽむんっ)」
やくにたたない…(ぽむんっ)
にんげんさんなのぜ…!(ぽむんっ)」
ガラスを打ち破ろうと、ひたすらドロップキックを仕掛けるまりさ。
それがいかに不毛な行為かなど、知る由もない。
それがいかに不毛な行為かなど、知る由もない。
「がんばってねだーりんっ!
そろそろかべさんもこうっさんっしてにげだすころだよ!」
そろそろかべさんもこうっさんっしてにげだすころだよ!」
まりさの奮闘は、愛するれいむの期待によるものかもしれない。
れいむはそんな夫の下心を見透かしてか、声は送るが一向に動こうとしない。
なかなかのゲス資質を秘めたるようだ。
れいむはそんな夫の下心を見透かしてか、声は送るが一向に動こうとしない。
なかなかのゲス資質を秘めたるようだ。
「ぷきゅー!
みえないかべしゃん、あやまるにゃならいまのうちなにょじぇー!
はやきゅしにゃいと『せいっしゃい』にゃのじぇ!」
みえないかべしゃん、あやまるにゃならいまのうちなにょじぇー!
はやきゅしにゃいと『せいっしゃい』にゃのじぇ!」
子まりさは両頬を膨らませ、負けじと威嚇行動をとっている。
父親ほどではないにしろ、豪気な姿勢はまりさ種特有の気質といえようか。
父親ほどではないにしろ、豪気な姿勢はまりさ種特有の気質といえようか。
「ゆびいいいいいいいいい!
れいみゅおうちかえりゅううううううううう!
ゆっくちできにゃいかべしゃんはきえちぇにえ!すぎゅでいいよ!
…ゆんやあああああああああ!
どうしちぇどいちぇくれにゃいのおおおおおおおおおおおおお!」
れいみゅおうちかえりゅううううううううう!
ゆっくちできにゃいかべしゃんはきえちぇにえ!すぎゅでいいよ!
…ゆんやあああああああああ!
どうしちぇどいちぇくれにゃいのおおおおおおおおおおおおお!」
赤れいむは、ひたすら水槽との和解を試みている。
時折ガラスに顔をへばり付けては外へ出ようとぷりぷり体を這わせる。
壁面の至るところ、涙とヨダレの乾き跡が目立ち、大変に汚らしい。
時折ガラスに顔をへばり付けては外へ出ようとぷりぷり体を這わせる。
壁面の至るところ、涙とヨダレの乾き跡が目立ち、大変に汚らしい。
「れいむたち、おうち(ダンボール)でおひるねしてたはずなのに…
どうしてこんなとこにいるのお…」
どうしてこんなとこにいるのお…」
「何者かが俺たちをここへ連れて来たとしか…
とにかく、問題はどうやってこの水槽から抜け出すかだ」
とにかく、問題はどうやってこの水槽から抜け出すかだ」
「やい!くそじじい!
くそじじいはそれでもにんげんなのぜ!?
にんげんさんならさっさとこんなかべさんこわしてみるのぜ!」
くそじじいはそれでもにんげんなのぜ!?
にんげんさんならさっさとこんなかべさんこわしてみるのぜ!」
「お、おいおい、無茶言わないでくれ
最強のまりさでも壊せない壁を俺が壊せるわけないだろ…」
最強のまりさでも壊せない壁を俺が壊せるわけないだろ…」
「ゆぎぎ… それもそうなのぜ…」
脱出に奔走すること数時間。
苛立ちが募り、半ばやつあたり気味に男を責め立てたまりさだったが、
返された男の正論には押し黙るしかなかった。
苛立ちが募り、半ばやつあたり気味に男を責め立てたまりさだったが、
返された男の正論には押し黙るしかなかった。
「いや、待てよ…
この水槽、天井部分にはガラスがない。
壁面を飛び越せられさえすれば、脱出は可能なんじゃないか?」
この水槽、天井部分にはガラスがない。
壁面を飛び越せられさえすれば、脱出は可能なんじゃないか?」
「ゆゆー!ほんちょだよ!
うえのほうはピカピカしゃんがないようにみえりゅよ!」
うえのほうはピカピカしゃんがないようにみえりゅよ!」
「でかしたよにんげんさん!
にんげんさんはなかなかゆうっしゅうみたいだね!」
にんげんさんはなかなかゆうっしゅうみたいだね!」
「ゆ…
ゆふん!ま、まりさもちょうどいまそれにきづいたところだったんだぜ!
さっそくとびこしてやるんだぜ!」
ゆふん!ま、まりさもちょうどいまそれにきづいたところだったんだぜ!
さっそくとびこしてやるんだぜ!」
「ゆふふ。
やまさんもひとっとびーのおちょーしゃんのあんよなら、らくっしょうなのじぇ!」
やまさんもひとっとびーのおちょーしゃんのあんよなら、らくっしょうなのじぇ!」
「おちょーしゃん、ぎゃんびゃりえー!」
ついに、最大にして唯一の脱出口に気づいた一同。
確かに男たちのいる水槽は上の1面のみが開けている仕様のものだった。
確かに男たちのいる水槽は上の1面のみが開けている仕様のものだった。
(ぐぐぐ…)
(ぴょんっ)
(べちん)
「ゆべえ"!?」
精一杯あんよに力を込めて跳躍してみせたまりさであったが、
壁を越すには一歩及ばず、顔からガラスに激突した。
壁を越すには一歩及ばず、顔からガラスに激突した。
「ゆんやああああああああああああ!!
いだいのぜえええええええええええええええ!!」(ごろごろごろ)
いだいのぜえええええええええええええええ!!」(ごろごろごろ)
「ま、まりさぁ!
ゆっくり!ゆっくりしてええええっ!」
ゆっくり!ゆっくりしてええええっ!」
痛みに耐えかね、涙としーしーを散水する。
一家の主と思えぬ醜態だ。
一家の主と思えぬ醜態だ。
「ぺーりょぺーりょ!
おちょーしゃんにょいちゃいの、とんぢぇけえええ!」
おちょーしゃんにょいちゃいの、とんぢぇけえええ!」
「ゆぐぐ… ありがとうなのぜおチビ…」
「まりさのあんよでもとびこせないなんて…
なんてたかいかべさんなの!」
なんてたかいかべさんなの!」
「いや、結構いいセンいってたよ。
もう少しチャレンジしてみる価値はあるんじゃないか?」
もう少しチャレンジしてみる価値はあるんじゃないか?」
「じょ!じょうだんじゃないんだぜえ!
いまのでもじゅうぶんせいいっぱいだったのぜ!
あんなイタイイタイはもうごめんなのぜぇ!
じじいもにんげんなら、こんなかべさんこえられるんじゃないのかぜえええ!?」
いまのでもじゅうぶんせいいっぱいだったのぜ!
あんなイタイイタイはもうごめんなのぜぇ!
じじいもにんげんなら、こんなかべさんこえられるんじゃないのかぜえええ!?」
「おいおい、山をも飛び越すまりさの跳躍ですら無理だったんだ
俺なんか試す価値もないに決まってるだろ…」
俺なんか試す価値もないに決まってるだろ…」
「ゆぐ… そ、それもそうなのぜ…?」
実際まりさに水槽を脱出できないのも無理はない。
ガラスの厚さは5mmほどもあり、高さは優に50cmを超えるのだ。
いくら群れ一番の攻撃力と跳躍力を誇るまりさのあんよをもってしても、
所詮ゆっくりのレベルでは物理的に突破不能な代物だった。
ガラスの厚さは5mmほどもあり、高さは優に50cmを超えるのだ。
いくら群れ一番の攻撃力と跳躍力を誇るまりさのあんよをもってしても、
所詮ゆっくりのレベルでは物理的に突破不能な代物だった。
「しかし悔しいなぁ
この水槽さえ脱出できれば、あとはあの扉から簡単に出られそうなのに…」
この水槽さえ脱出できれば、あとはあの扉から簡単に出られそうなのに…」
「ゆぅ…」
一家と男の監禁されている部屋には、扉ひとつだけが存在していた。
ご丁寧にも扉は開いた状態で、その向こうには外の景色が広がって見える。
ご丁寧にも扉は開いた状態で、その向こうには外の景色が広がって見える。
事実上、一家と男を拘束する障害は、この大きな水槽だけといえる状況だった。
…
…
…
(*1))))
「腹… 減ったなあ…」
「ゆうぅ…」
深沈としていた部屋に5つの腹鳴りが響く。
監禁状態となり半日は経っただろうか。
監禁状態となり半日は経っただろうか。
「はぁ… 携帯は相変わらず圏外か…」(カチャカチャ)
「ゆうううう!
はやくまりさたちをここからだしてね!
それといしゃりょうとしてあまあまもようっきゅうするのぜ!」
はやくまりさたちをここからだしてね!
それといしゃりょうとしてあまあまもようっきゅうするのぜ!」
「れいむのまりさをおこらせないほうがみのためだよ?
はやくしないとれいむたちのせいっさいっがくだるよ!」
はやくしないとれいむたちのせいっさいっがくだるよ!」
「あみゃあみゃ!あみゃあみゃ!
はやきゅもっちぇきゅるのじぇえ!」
はやきゅもっちぇきゅるのじぇえ!」
「…? おいお前ら。
お前ら一体誰に怒ってるんだ?」
お前ら一体誰に怒ってるんだ?」
「ゆ!だれって…!
ゆうぅ…」
ゆうぅ…」
自分たちが何者かによって拉致されたのは明らかだ。
抑えきれぬ怒りを爆発させる一家であったが、肝心の犯人は今この場にいないのである。
怒りのやり場すらないこの状況を、やはりただ耐え忍ぶ以外なかった。
抑えきれぬ怒りを爆発させる一家であったが、肝心の犯人は今この場にいないのである。
怒りのやり場すらないこの状況を、やはりただ耐え忍ぶ以外なかった。
「ゆうー れいむはもうおなかぺーこぺーこだよ
おなかさんとせなかさんのかわがくっつきそうだよ…」
おなかさんとせなかさんのかわがくっつきそうだよ…」
「げんきだすんだぜれいむ…
きっとそのうちだれかたすけにきてくれるんだぜ」
きっとそのうちだれかたすけにきてくれるんだぜ」
番を気遣い、なんとか気持ちを前向きに保とうとするまりさ。
しかし、空腹で心中穏やかでないこの時のれいむに、それは逆効果となった。
しかし、空腹で心中穏やかでないこの時のれいむに、それは逆効果となった。
「ゆ…!
まりさはどーしてそんなにらっかんてきなの?
まりさがかべさんをこわせないからこんなことになってるんだよ!?」
まりさはどーしてそんなにらっかんてきなの?
まりさがかべさんをこわせないからこんなことになってるんだよ!?」
「ゆぐ!? そ、それは…」
「しょーなのじぇ!
まりちゃたちをゆっくちさしぇるのはちちおやのぎむにゃのじぇえ?
“たすけ”にゃんてねむちゃいこちょいわずじぶんでにゃんとかしりょこのクジュ!」
まりちゃたちをゆっくちさしぇるのはちちおやのぎむにゃのじぇえ?
“たすけ”にゃんてねむちゃいこちょいわずじぶんでにゃんとかしりょこのクジュ!」
「どぼぢでぞんなごというのおおおおおおおお!??
おどーざんだっでいっじょうげんめいがんばっでるんだよおおおおおおお!??」
おどーざんだっでいっじょうげんめいがんばっでるんだよおおおおおおお!??」
家族の鬱憤は、家長であるまりさに向けられた。
不遇な状況に陥ったゆっくりというものは、
他者を批判し、どうにか自己を正当化してゆっくりしようとするものだ。
他者を批判し、どうにか自己を正当化してゆっくりしようとするものだ。
拉致した犯人の現れないこの場合、
一家の大黒柱たるまりさが次点での非難の矛先となるは自然といえた。
一家の大黒柱たるまりさが次点での非難の矛先となるは自然といえた。
「おいおい、お前ら。
あんまり父さんイジメてやるなよ。
まりさだってそれなりに頑張ってるはずなんだしさ」
あんまり父さんイジメてやるなよ。
まりさだってそれなりに頑張ってるはずなんだしさ」
「ゆ、ゆ~ん!
そうなのぜえ!にんげんさんはなかなかみどころがあるのぜ!」
そうなのぜえ!にんげんさんはなかなかみどころがあるのぜ!」
「ゆ~… にんげんさんはまりさにあまいよぉ…」
「そんなことより、
さっきから赤れいむの元気がないみたいだが、大丈夫か?」
さっきから赤れいむの元気がないみたいだが、大丈夫か?」
「ゆ…?
お、おチビちゃあああああん!?」
お、おチビちゃあああああん!?」
「ゅ… ゅ…」
監禁から半日。
育ち盛りの赤れいむの空腹が限界を迎えていたのだ。
愛する我が子の危篤に(ようやく)気づき、慌てふためく一家。
育ち盛りの赤れいむの空腹が限界を迎えていたのだ。
愛する我が子の危篤に(ようやく)気づき、慌てふためく一家。
「おチビぃいいいい!!
しっかりするんだぜええええええ!!」
しっかりするんだぜええええええ!!」
「いもーちょお!
しっかりしゅりゅのじぇええええ!」
しっかりしゅりゅのじぇええええ!」
「ゅ… ゅ…」
家族の必死の呼び掛けにも、力なく呻き返すだけである。
早く栄養のある物を摂らせなければ、一刻と持たず餓死してしまうだろう。
早く栄養のある物を摂らせなければ、一刻と持たず餓死してしまうだろう。
「どこかに!どこかにごはんさんはないのおおおおお!?」
「あまあまさんでなくてもいいんだぜええええ!
どこか!どこかにたべものさんはないのかぜえええええ!?」
どこか!どこかにたべものさんはないのかぜえええええ!?」
水槽内を必死に探し回る一家。
大きな水槽とはいえ、所詮畳2帖程度の広さである。
今さら食料など見つけようもないことは、誰の目にも明らかだった。
大きな水槽とはいえ、所詮畳2帖程度の広さである。
今さら食料など見つけようもないことは、誰の目にも明らかだった。
「食べ物か…
まあ、無いこともない…かな」
まあ、無いこともない…かな」
「「「ゆ!!?」」」
絶望に歪む一家を、男のひと言が惹きつける。
「じ、じじい!
それはどういういみなのぜえ!?」
それはどういういみなのぜえ!?」
「あ、いや。
実はここに監禁される直前、弁当を持って日課のウォーキング中だったわけだが…
どうやらカバンごと拉致されたおかげで、中の弁当もそのままみたいなんだ」(ごそごそ)
実はここに監禁される直前、弁当を持って日課のウォーキング中だったわけだが…
どうやらカバンごと拉致されたおかげで、中の弁当もそのままみたいなんだ」(ごそごそ)
「ゆ… ゆわぁぁああああ!?
“こんびにべんとう”さんなのぜぇえええええ!!」
“こんびにべんとう”さんなのぜぇえええええ!!」
ジャージ姿の男がカバンから取り出したのは、一食分のコンビニ弁当だった。
透明のフタ越しに鮭や唐揚げなど、実に滋養のありそうなおかずが見れる。
透明のフタ越しに鮭や唐揚げなど、実に滋養のありそうなおかずが見れる。
草や生ゴミを主食にする野良ゆっくりにしてみれば、宮廷料理にも等しい輝きだ。
これを食べれば赤れいむの栄養失調など、立ち所に回復するだろう。
これを食べれば赤れいむの栄養失調など、立ち所に回復するだろう。
「は、はやくそれをこっちによこすのぜえええええ!!」
なぜ男は食料を今まで隠し持っていたのか?
男への不満と怒りを感じつつも、今はそれどころではない。
一刻も早く娘にそれを与えなければならないのだ。
男への不満と怒りを感じつつも、今はそれどころではない。
一刻も早く娘にそれを与えなければならないのだ。
「いや… でもなあ…」
「な、なにをしぶっているのぜえ!?
そんなにごはんさんをひとりじめしたいのかぜええ!?」
そんなにごはんさんをひとりじめしたいのかぜええ!?」
「いやー 独り占めとかじゃなくてさぁ
この弁当、毒が入ってる気がして」
この弁当、毒が入ってる気がして」
まりさは激怒した。
この後に及んで、そんな見え透いた嘘をついてまで食料を独り占めしたいのか。
この後に及んで、そんな見え透いた嘘をついてまで食料を独り占めしたいのか。
「そんなのうそにきまってるんだぜええええええええ!!
いいからはやくそいつをこっちによこすのぜええええええ!!」
いいからはやくそいつをこっちによこすのぜええええええ!!」
「え? いや、嘘とかじゃなくて…」
「ゆっがああああああああ!!
いいがらざっざとよごぜええええええええ!!」(ドカッ)
いいがらざっざとよごぜええええええええ!!」(ドカッ)
「うわ!」
煮え切らない男の態度に痺れを切らし、ついには実力行使で弁当を奪ってしまう。
「ゆふん!
ひとりじめしようなんてとんでもないゲスだね!
おまえはあとでゆっくりせいっさいしてやるのぜ!
ひとりじめしようなんてとんでもないゲスだね!
おまえはあとでゆっくりせいっさいしてやるのぜ!
さぁおチビ!
いまおとうさんがおいしいごはんさんをたべさせてやるんだぜ~!」
いまおとうさんがおいしいごはんさんをたべさせてやるんだぜ~!」
「ゅ… ゅ…」
奪い取った弁当を娘の傍に持ち寄り、いそいそとフタを開けるまりさ。
しかし―
しかし―
「「!!!!!! ?!?!」」
「ゆっ ゆげえッ?! ゆげっ!!?」
「きょ、きょりぇどきゅはいっちぇりゅうううううう!?!?」(エレエレエレエレ…)
「お、おチビいいいい!?ゆげっ!ゆげえええええ!!」
「おチビちゃああああああああん!!?
まりさああああああ!!
なんなのこのゆっくりできないにおいはああああ!?ゆげえ!!」
まりさああああああ!!
なんなのこのゆっくりできないにおいはああああ!?ゆげえ!!」
フタを開けるやいなや水槽内を覆う、強烈な悪臭。
もはやまともに言葉も発せないほど弱っていた赤れいむは、
最後にとびきり元気な断末魔をあげ、絶命した。
もはやまともに言葉も発せないほど弱っていた赤れいむは、
最後にとびきり元気な断末魔をあげ、絶命した。
「ゆぇええ!くしゃいい!!
くしゃいのじぇええええええええ!!ゆげっ!!」
くしゃいのじぇええええええええ!!ゆげっ!!」
「や、やはり細工されていたか…
わざわざ食料ごと監禁されるなんて、おかしいと思ったんだ…げほっ!」
わざわざ食料ごと監禁されるなんて、おかしいと思ったんだ…げほっ!」
「まりさああああああああ!!
おチビちゃんがえいえんにゆっくりしちゃったよおおおおお!?
どうしてくれるのよおおおおおおお!?ゆげっゆげぇえ!」
おチビちゃんがえいえんにゆっくりしちゃったよおおおおお!?
どうしてくれるのよおおおおおおお!?ゆげっゆげぇえ!」
「ゆげへっ!そ、そんなこといったって…」
まりさは男の制止を振り切り、弁当を開封した。
周囲からの非難は当然といえよう。
周囲からの非難は当然といえよう。
「も、もっちょゆっきゅりしちゃ…」(エレ…)
「お、おチビちゃああああああああん!?ゆげえ!」
「おチビいいいいい!!しっかりするのぜえええええ!!」
悪臭は一向におさまる気配をみせない。
それどころか赤れいむの次に体力に乏しい、子まりさの命までも奪いかけていた。
それどころか赤れいむの次に体力に乏しい、子まりさの命までも奪いかけていた。
赤れいむを失った悲しみや、悪臭に苦しんでいる場合ではない。
一刻も早く悪臭の元を取り除かなければ、もうひとつの尊い命までも失ってしまうだろう。
一刻も早く悪臭の元を取り除かなければ、もうひとつの尊い命までも失ってしまうだろう。
「まりさああああああああああ!!
はやくなんとかしてよおおおおおお!?ゆげっ!!
れいむのおっとはそんなグズじゃないはずでしょおおおおおおお!?」
はやくなんとかしてよおおおおおお!?ゆげっ!!
れいむのおっとはそんなグズじゃないはずでしょおおおおおおお!?」
「そ、そんなの…!
ど、ど、どうすればいいんだぜええええええ!?」
ど、ど、どうすればいいんだぜええええええ!?」
「ひ… ひとつだけ方法がある…」
「に、にんげんさん!?」
「ど、どんなほうほうなんだぜ!?
もったいぶらずはやくおしえるんだぜええ!ゆげえっ!」
もったいぶらずはやくおしえるんだぜええ!ゆげえっ!」
「…それは…
誰かが弁当を…食うことだ… げほっ!」
誰かが弁当を…食うことだ… げほっ!」
「「?!?!」」
「そ、そんなのできるわけないんだぜえええ!!
こんなくさいものたべたら…!」
こんなくさいものたべたら…!」
「無事では済まないだろうな…
だが、臭いの元は確実に消せる」
だが、臭いの元は確実に消せる」
「たべなさいよまりさあああああああああ!!
もとはといえばまりさがわるいんだよおおおおおおおお!?」
もとはといえばまりさがわるいんだよおおおおおおおお!?」
「そ、そんな…!
まりさはただ…!ゆげほっ!」
まりさはただ…!ゆげほっ!」
「だべろおおおおおおおおおお!!
おヂビぢゃんがじんでもいいのかあああああああああ!!」
おヂビぢゃんがじんでもいいのかあああああああああ!!」
「ゆぐぐ… ゆぐぐがががが」
「…俺が食べるよ」
「「ゆ!?」」
「に、にんげんさん、そんなことしたらにんげんさんが…」
「誰かが犠牲になるしかないんだ…
なぁに、死ぬとは限らないし
子まりさのためにも、もう迷ってる時間なんかない」
なぁに、死ぬとは限らないし
子まりさのためにも、もう迷ってる時間なんかない」
「ゅ… ゅ…」(エレ…)
覚悟を決めた男は箸を手に取り、一気に弁当を口へ運び始めた。
時折むせ返す仕草を見せながらも、徐々に平らげていく。
時折むせ返す仕草を見せながらも、徐々に平らげていく。
まりさ夫婦は男の献身的自己犠牲的な行いに胸を打たれつつも、
あんなに恐ろしい物を自ら食べられるという狂気に、終始震えていた。
あんなに恐ろしい物を自ら食べられるという狂気に、終始震えていた。
男が食事を終えるまでの10分間、狂気のショーは続けられた。
「にんげんさん…だいじょうぶ…?」
「あぁ…なんとかな… けほっ
どうにか臭いもおさまって、子まりさの容態も落ち着いたようだ」
どうにか臭いもおさまって、子まりさの容態も落ち着いたようだ」
「おチビぃいい…
よかったのぜえ…ほんとうによかったのぜえ…」
よかったのぜえ…ほんとうによかったのぜえ…」
「ゆ… ゆぅ… ゆっくち…」
なぜあのような美味しそうなお弁当が悪臭を放ったのか?
決して賞味期限が切れて腐っていたわけではない。
決して賞味期限が切れて腐っていたわけではない。
答えとしては、“ゆっくり忌避剤”を大量に添加された弁当だったからだ。
これはゆっくりの嫌う同族の死臭を参考に調合された薬剤である。
これはゆっくりの嫌う同族の死臭を参考に調合された薬剤である。
本来はゴミ収集場や家の軒先などに使用される物であり、
食料品に用いられることはないが―
食料品に用いられることはないが―
このお弁当の場合、何者かによって意図的に混入されていたようだ。
ちなみに幼児や動物への誤飲対策として、人間に対しては全くの無毒無臭で作られている。
ちなみに幼児や動物への誤飲対策として、人間に対しては全くの無毒無臭で作られている。
「ゆふぅ。
けっきょくごはんさんはたべられなかったけど…
なんとかくさいくさいはおさまったのぜぇ」(ぐぅ~)
けっきょくごはんさんはたべられなかったけど…
なんとかくさいくさいはおさまったのぜぇ」(ぐぅ~)
「にんげんさん!ほんとうにありがとう!」
「いや、どういたしまして」(ゲップ)
…
…
…
「ゆ~。まっちゃく、ひぢょいめにあっちゃのじぇ!」
「ぺーろぺーろ。
ゆふふ!ほんとダメなおとーさんでこまっちゃうね!」
ゆふふ!ほんとダメなおとーさんでこまっちゃうね!」
「ゆぐっ… ゆぅ…」
「子まりさもだいぶ回復できたみたいだな…なによりだ」
「ゆぅ~ん
それもこれもぜんぶにんげんさんのおかげだよ!
ゆっくりかんしゃだよ!」
それもこれもぜんぶにんげんさんのおかげだよ!
ゆっくりかんしゃだよ!」
「ありがちょーにゃのじぇ!」
「でも…れいむににたおチビちゃんはだれかさんのせいで…(ジロリ)」
「ゆ、ゆ、い、いつまでもむかしのはなしをひきずるんじゃないのぜぇえええ!」
「…あぁ、まりさの言う通りだ。
赤れいむは気の毒だったが、いまはまだ悲しむ時じゃない。
彼女の死を無駄にしないためにも、早く脱出しなければ」
赤れいむは気の毒だったが、いまはまだ悲しむ時じゃない。
彼女の死を無駄にしないためにも、早く脱出しなければ」
「ゆぅ~ でもいじわるなかべさんのせいで…」
「いや、脱出方法なら新たに2つほど思いついた」
「「「ゆ!!?」」」
「ほ、ほんとうなのかぜじじい!?」
「あぁ、だが…
どちらも完璧な脱出方法ではない上、そこそこリスクを伴うもので…」
どちらも完璧な脱出方法ではない上、そこそこリスクを伴うもので…」
「のうがきはいいからさっさとおしえるのぜえええええ!!」
「…まず1つ目の方法は、
れいむがまりさを踏み台にして、ガラスの向こうへ飛び越えるというものだ」
れいむがまりさを踏み台にして、ガラスの向こうへ飛び越えるというものだ」
「「!?」」
「この方法ではれいむ1匹しか脱出できないわけだが…
1匹でも脱出ができれば、外へ助けを呼びに行って戻ってこれるわけだ」
1匹でも脱出ができれば、外へ助けを呼びに行って戻ってこれるわけだ」
「で、でもそんなことをしたら!」
「あぁ…このガラスを越えるには、全力で踏み切らなければならない。
踏み台にされた方は結構なダメージを負うだろうな…」
踏み台にされた方は結構なダメージを負うだろうな…」
「ちょ!ちょっとまつのぜえ!!
どーしてまりさがふみだいにならなくちゃいけないのぜえ!?
まりさはむれでいちばんたかくはねられるマサイのせんしなのぜ!!
かべをとびこすのはまりさのほうがてきっにんっなんだぜえ!!」
どーしてまりさがふみだいにならなくちゃいけないのぜえ!?
まりさはむれでいちばんたかくはねられるマサイのせんしなのぜ!!
かべをとびこすのはまりさのほうがてきっにんっなんだぜえ!!」
「いや、さっきのまりさの跳躍では、ガラスを越すにほんの一歩及ばない程度だった
仲間一匹分の高さと、反動さえ利用できれば、れいむでも十分越えられるはずさ」
仲間一匹分の高さと、反動さえ利用できれば、れいむでも十分越えられるはずさ」
「ゆがーん!
で、でもそれはまりさがやってもおなじことじゃ…」
で、でもそれはまりさがやってもおなじことじゃ…」
「いや、れいむ種とまりさ種では体の丈夫さが違う。
れいむが踏み台になった場合、体が破裂し、反動をうまく利用できないかもしれない」
れいむが踏み台になった場合、体が破裂し、反動をうまく利用できないかもしれない」
「ゆっ…!」
「例えまりさが飛び越せたとしても、れいむ側の致命傷は免れない…
したがってまりさ、体の丈夫なお前が踏み台を務めるのが適任なんだ」
したがってまりさ、体の丈夫なお前が踏み台を務めるのが適任なんだ」
「ゆががーん!」
「ゆっきゃっきゃっきゃっ!!
いいきみだよおおおおお!!おチビちゃんをしなせたばつだねええええ!?
さあ、そうとなればさっそく―」
いいきみだよおおおおお!!おチビちゃんをしなせたばつだねええええ!?
さあ、そうとなればさっそく―」
「ちょ!ちょっとまつのぜええええ!!
まだ2つめのほうほうをきいてないんだぜ!
ほかにどんなほうほうがあるのかぜぇ!?」
まだ2つめのほうほうをきいてないんだぜ!
ほかにどんなほうほうがあるのかぜぇ!?」
「…2つ目の方法は、
子まりさを舌で抱え上げて、ガラスの向こう側へ落とすというものだ」
子まりさを舌で抱え上げて、ガラスの向こう側へ落とすというものだ」
「「「ゆ!?」」」
「お前たちの長い舌なら、ガラスの上まで物を抱え上げることができるだろう?
もっとも、子まりさほどの軽いものに限られるし、
この方法も子まりさ一匹しか脱出できないわけだが…
例によって、助けを呼びに行くことはできるはずだ」
もっとも、子まりさほどの軽いものに限られるし、
この方法も子まりさ一匹しか脱出できないわけだが…
例によって、助けを呼びに行くことはできるはずだ」
「ゆ、ゆ~ん!
そんなかんったんっ!なほうほうがあるんならさきにいってほしかったのぜ~!」
そんなかんったんっ!なほうほうがあるんならさきにいってほしかったのぜ~!」
「ま、まりちゃが…たしゅけをよびに…!」
「ゆ… で、でも…
おチビちゃんのやわらかいからだだと、むこうがわにおちたときにおおけがを…」
おチビちゃんのやわらかいからだだと、むこうがわにおちたときにおおけがを…」
「その心配はない。このスポーツタオルを利用すればな。」
「ゆ? タオルさん?」
「あぁ、これも俺がカバンに入れて持ち歩いていたものだ。
これを予め舌で向こう側に落としておけば、子まりさのクッション代わりになる。
これで子まりさが大ケガすることもないわけだ」
これを予め舌で向こう側に落としておけば、子まりさのクッション代わりになる。
これで子まりさが大ケガすることもないわけだ」
「ぐっ、ぐっどあいっであ!なのぜえ!!
そうときまればさっそくおチビを―」
そうときまればさっそくおチビを―」
「でも… 俺はこの方法をあまり良しとは思わない」
「!? ど、どうしてなのぜ!?
どうみてもかんっぺき!なさくせんなのぜ!?」
どうみてもかんっぺき!なさくせんなのぜ!?」
「子まりさは子供なんだ。外を一人歩きするのはまだまだ危ない。
それが今回のような重要な任務を務めるともなれば尚更だ。
助けを呼びに行くのは、方法2の子まりさより、方法1のれいむの方が適任かと思うんだ」
それが今回のような重要な任務を務めるともなれば尚更だ。
助けを呼びに行くのは、方法2の子まりさより、方法1のれいむの方が適任かと思うんだ」
「ゆ…! いちりあるよ!」
「そ、そんな…」
「(まずい、まずいのぜえ…
このままだとまりさがれいむのふみだいにされてしまうんだぜええ…)」
このままだとまりさがれいむのふみだいにされてしまうんだぜええ…)」
「ゆ~ん! そうとなればさっそくれいむが―」
「おチビいいいいいいいいいいい!!」
「「ゆ!?」」
「おとーさんはかなしいのぜ!!
おまえはじぶんがこどもあつかいされてはずかしくないのかぜえ!??」
おまえはじぶんがこどもあつかいされてはずかしくないのかぜえ!??」
「ゆ…! ゆぅ…」
「まりさはそんなよわむしさんをそだてたおぼえはないのぜ!
おチビならきっとできるはずなのぜ!
おチビはまりさのあんこをひきつぐ“ゆうしゃ”のはずでしょおおおお!?」
おチビならきっとできるはずなのぜ!
おチビはまりさのあんこをひきつぐ“ゆうしゃ”のはずでしょおおおお!?」
「ゆゆう…!
ま、まりちゃ、やっちぇみるのじぇ!」
ま、まりちゃ、やっちぇみるのじぇ!」
「おおおおチビちゃん!?」
「まりちゃがたしゅけをよびにいっちぇ、
まりちゃがゆうしゃであるこちょをしょうっめいっするんだじぇ!」
まりちゃがゆうしゃであるこちょをしょうっめいっするんだじぇ!」
…
…
…
「ゆわわ。まりちゃはちゅばしゃをてにいりぇたのじぇ!」(ぷしゃあ)
「こ、こらおチビ!
おとーさんのベロにしーしーかけるんじゃないのぜ!」
おとーさんのベロにしーしーかけるんじゃないのぜ!」
まりさの長い舌により、子まりさがガラスの上へと抱え上げられていく。
助けを呼びに行くのは子まりさに決まったようだ。
助けを呼びに行くのは子まりさに決まったようだ。
「まりさぁ、やっぱりやめようよ…
おチビちゃんにもしものことがあったら…」
おチビちゃんにもしものことがあったら…」
「ゆっへっへ!れいむはしんぱいしょうなのぜ!
あのとびらさんをでて、すぐにたすけをよぶだけのことなのぜ?」
あのとびらさんをでて、すぐにたすけをよぶだけのことなのぜ?」
「おきゃーしゃん!まりちゃをしんじるのじぇー!
まりちゃはゆうしゃににゃるのじぇー!」
まりちゃはゆうしゃににゃるのじぇー!」
「ゆぅ~…」
れいむは一抹の不安を払拭できずにいる。
それは娘をまだまだ子供と見ているせいもあるのだが、
なによりあの聡明な男の忠告を、安易に蔑ろにできないせいでもあった。
それは娘をまだまだ子供と見ているせいもあるのだが、
なによりあの聡明な男の忠告を、安易に蔑ろにできないせいでもあった。
「おしょらをとんでりゅみちゃい!
(ポフンッ)ゆぴっ!」
(ポフンッ)ゆぴっ!」
予め水槽の外に落としておいたタオル、そこに子まりさが危なげなく着地する。
ついに一同は、水槽から初の脱出者を出すことに成功した。
ついに一同は、水槽から初の脱出者を出すことに成功した。
「ゆゆーん!ゆうしゃのまりちゃはゆっくちいしょぐよ!
ゆっち、ゆっち、ゆっち、」
ゆっち、ゆっち、ゆっち、」
「おチビいいいいいい!がんばるのぜええええええ!」
「無事に帰ってこれればいいが…」
「ゆぅ…」
外への扉めざし、一目散に床を這う子まりさ。
一同の大きな期待を小さな背に乗せ、俄然あんよに力が入る。
一同の大きな期待を小さな背に乗せ、俄然あんよに力が入る。
(ウィーン…)
しかし、そんな一同の願いを嘲笑うかのように、
どこからともなく不気味なモーター音が響く。
どこからともなく不気味なモーター音が響く。
「ゆ? なんのおとなのぜ?」
(ウィーン)
「な、なんだかいやなよかんがするよ…」
(ウィーーーン)
「ゆっち、ゆっち、ゆっち、
ゆゆ? ありぇは… “すぃー”しゃん?」
突如 子まりさの行く手に現れたのは、赤い小さなラジコンカー。
小さいとはいっても、子まりさよりは一回り大きいほどだ。
小さいとはいっても、子まりさよりは一回り大きいほどだ。
「ゆわああああああああああ!!
すぎょいのじぇー!かっちょいいのじぇー!」
すぎょいのじぇー!かっちょいいのじぇー!」
(ウィーン)
「ゆゆ?
ひょっとしちぇ、すぃーしゃんはまりちゃをむきゃえにきてくりぇちゃのじぇ?
ゆゆーん!かんっしんなどりぇいしゃんだにぇ!
とくべちゅにまりちゃの“あいしゃ”しゃんにしちぇあげりゅのじぇ!」
ひょっとしちぇ、すぃーしゃんはまりちゃをむきゃえにきてくりぇちゃのじぇ?
ゆゆーん!かんっしんなどりぇいしゃんだにぇ!
とくべちゅにまりちゃの“あいしゃ”しゃんにしちぇあげりゅのじぇ!」
相手の意向完全無視の奴隷宣言はテンプレといったところか。
(ウィーン)
子まりさに忠誠を誓い、服従するように歩み寄るラジコン。
しかし―
しかし―
(ドカッ)
「ゆぴぃ!?」
そんな子まりさの幻想をぶち殺すがごとく、
ラジコンカーは子まりさに猛烈な体当たりをお見舞いした。
ラジコンカーは子まりさに猛烈な体当たりをお見舞いした。
「お、おチビちゃん!?」
「ゆ、ゆっぴぃい!!
いちゃいのじぇえええ! どりぇいのくしぇになにをするんだじぇえええ!」
いちゃいのじぇえええ! どりぇいのくしぇになにをするんだじぇえええ!」
(ウィー…ン)
「ゆ、ゆひっ…!?」
「おチビちゃんにげてえええええええええ!!」
(ウィーーーン)
「や、やめちぇにぇ! こっちこにゃいでにぇ!」
(ウィーン)
(ドカッ)
「ゆっぴぁああああ!?
いちゃいいいいいいいいい!!こーりょこーりょ!」
いちゃいいいいいいいいい!!こーりょこーりょ!」
ラジコンカーは子まりさへの執拗な攻撃を始めた。
子まりさは悲痛な叫びをあげ、為すすべもなく床を転げ回る。
なんとか子まりさを助けたい一同だが、水槽の壁に阻まれただ見守ることしかできない。
子まりさは悲痛な叫びをあげ、為すすべもなく床を転げ回る。
なんとか子まりさを助けたい一同だが、水槽の壁に阻まれただ見守ることしかできない。
「くそ…!
やはり罠が仕掛けられていたか…!」(カチャカチャ)
やはり罠が仕掛けられていたか…!」(カチャカチャ)
「すぃーさんやめてね!
おチビちゃんにひどいことしないでね!」
おチビちゃんにひどいことしないでね!」
「ゆがあああああああああ!
おチビにちかづくなあああああああああ!」
おチビにちかづくなあああああああああ!」
「外への扉まであと一歩だっていうのに…」(カチャカチャ)
「ゆ…?
にんげんさんはさっきからなにをいじってるの?」
にんげんさんはさっきからなにをいじってるの?」
「あぁ、これは外部と連絡の取れる携帯電話というんだが…
子まりさのために助けを呼んであげようにも、やはり圏外みたいだ。」(カチャカチャ)
子まりさのために助けを呼んであげようにも、やはり圏外みたいだ。」(カチャカチャ)
アンテナの付いた機械仕掛けのそれを巧みに操作する男。
子まりさのピンチに居ても立ってもいられないようだが、どうやら相変わらず圏外らしい。
子まりさのピンチに居ても立ってもいられないようだが、どうやら相変わらず圏外らしい。
(ドカッ)
「ゆんやああああああ!?
もうやぢゃあ!!おうちかえりゅううううう!!」
もうやぢゃあ!!おうちかえりゅううううう!!」
痛みに耐えかね、ついに子まりさは来た道を戻り始めた。
いつの間にか水槽は子まりさのお家ということになっていたようだ。
いつの間にか水槽は子まりさのお家ということになっていたようだ。
「ゆっち!ゆっち!ゆっち!
…ゆゆ!?
みえないかべしゃん、まりちゃをなきゃにいれちぇええええ!」
…ゆゆ!?
みえないかべしゃん、まりちゃをなきゃにいれちぇええええ!」
水槽まで戻ってこれたはいいが、今度は中に入ることができない。
一度脱出してしまった以上、そう簡単に中へは戻れない。
一度脱出してしまった以上、そう簡単に中へは戻れない。
「かべしゃんおにぇぎゃいだきゃらいうこちょきいちぇよおおお!
まりちゃをたしゅけちぇほしいのじぇええええ!」
まりちゃをたしゅけちぇほしいのじぇええええ!」
(ウィーン)
「や、やめちぇにぇすぃーしゃん!
きゃわいいまりちゃをいじめにゃ(ドカッ)
ぴょげぇえ"え"え"え"!?」
きゃわいいまりちゃをいじめにゃ(ドカッ)
ぴょげぇえ"え"え"え"!?」
「ゆがあああああああ!!やべろおおおおおおお!!」
「くそ!こんなに間近にいるのに、ただ指を咥えて見てるしかできないってのか!」(カチャカチャ)
「ばりざああああああああ!!
おばえがおヂビちゃんをあおりたてたんだろおおおおおお!!
なんどがじろおおおおおおおお!!」
おばえがおヂビちゃんをあおりたてたんだろおおおおおお!!
なんどがじろおおおおおおおお!!」
「そそそそんなこといったって…!」
「そうだ!タオルの中に隠れるんだ!」
「 ! ゆゆーん!そうぢゃよ!
ふかふかしゃんのなきゃにかきゅれればいいんぢゃよ!(ごそごそ)
ふかふかしゃんのなきゃにかきゅれればいいんぢゃよ!(ごそごそ)
…ゆっふっふ、これぢぇだりぇもまりちゃをみつけらりぇにゃいのじぇ!(キリッ)」
「お、おい、尻が全く隠れてないし、声を出すと居場所がバレるぞ」
「おチビちゃん、こえをだしちゃだめええええええ!」
「ゆゆ? まりちゃはこえなんちぇだしちぇ(ドカッ)
ゆびょお"お"お"!? どーしちぇばれちぇるのじぇえええええ!??」
ラジコンカーは助走をつけ、正確に子まりさを打ち据える。
まるで間近で操作している者がいるかのような精度だ。
まるで間近で操作している者がいるかのような精度だ。
「ゆぐぐ、どうしておチビのばしょがわかるんだぜえ…!?」
「いや…
むしろ正確に攻撃されてるおかげで、子まりさは助かってるといえるな…」(カチャカチャ)
むしろ正確に攻撃されてるおかげで、子まりさは助かってるといえるな…」(カチャカチャ)
「ゆ!?」
「そ、それはどういういみなのぜ!?」
「よく見ろ、あの車は常に正面のバンパーで子まりさを弾き飛ばしてるだろ?
もし少しでも狙いが逸れて横のタイヤに巻き込まれれば…」(カチャカチャ)
もし少しでも狙いが逸れて横のタイヤに巻き込まれれば…」(カチャカチャ)
「ま、まきこまれれば…?」
「子まりさの体はバラバラに引き裂かれてしまうだろうな…」(カチャカチャ)
「そ、そんな…!」
「おチビがなぶりごろされるのをだまってみてるしかないのかぜえええ!?」
「いや、助ける方法はまだある」(カチャカチャ)
「「ゆ!?」」
「さっき説明した『踏み台作戦』だ。
おチビと違って体の大きなお前達なら、あの車を倒すことができるはずだ」(カチャカチャ)
おチビと違って体の大きなお前達なら、あの車を倒すことができるはずだ」(カチャカチャ)
「ゆげぇ!?」
「ゆゆーん!
そうとなればさっそく…!」
そうとなればさっそく…!」
「に、にんげんさん、ほかにほうほうはないのかぜえ!?」
「無いな。」(カチャカチャ)
「まりさあ!おチビちゃんのせとぎわなんだよ!?
いつまでためらってるの!?」
いつまでためらってるの!?」
「ゆ、ゆ~ん…
でも…まりさはぁ…」
でも…まりさはぁ…」
(ドカッ)
「ゆぴぃいぃいい!!
いちゃいのじぇえええ!!
もうはしりぇないのじぇええええ!!
どーしちぇだりぇもたしゅけちぇくりぇないにょじぇええええ!??」
いちゃいのじぇえええ!!
もうはしりぇないのじぇええええ!!
どーしちぇだりぇもたしゅけちぇくりぇないにょじぇええええ!??」
(ドゴッ)
「ゆぶっゆぼぉおッ!!?
ちぬっ!ちぬうううう!!
まりちゃえいえんにゆっくちしちちゃうのじぇえええ!!」
ちぬっ!ちぬうううう!!
まりちゃえいえんにゆっくちしちちゃうのじぇえええ!!」
「お、おチビいいいい!」
「ゆっがぁああああ!!
ばりざああああ!!そこをうごくなあああああ!!」
ばりざああああ!!そこをうごくなあああああ!!」
「ゆ? (ばいんっ) ぶべっ!!」
煮え切らないまりさを見限り、踏み台作戦を強行するれいむ。
(ひゅるるる)
「 お そ ら を と ん で る み た い い ぃ ぃ ぃ 」
男の読み通り、れいむは高さ50cmのガラスを難なく飛び越え、美しい放物線を描いた。
「 ゆ ぎ ぎ … 」
まりさの醜くひしゃげた頭頂部を代償にして。
(ぼふんっ)
「ゆっくりちゃくちだよ!
10てんまんてんっでごめんね!」
10てんまんてんっでごめんね!」
「おきゃーしゃんっ!
きゃわいいまりちゃをたしゅけちぇええええ!」
きゃわいいまりちゃをたしゅけちぇええええ!」
(ウィーン)
「ゆがああああ!!おチビちゃんにさわるなあああああ!!」(ドンッ)
(ウィィィ…)
子まりさには一方的だったラジコンも、さすがに成体れいむの巨体には敵わなかった。
れいむに突き飛ばされたラジコンは横転し、虚しくタイヤが空回りするだけとなる。
れいむに突き飛ばされたラジコンは横転し、虚しくタイヤが空回りするだけとなる。
「た、たしゅかっちゃ…のじぇ…」
「おチビちゃん!もうだいじょうぶだからね!
ゆっくりできないすぃーさんはおかーさんがやっつけたよ!」
ゆっくりできないすぃーさんはおかーさんがやっつけたよ!」
「ゆぶぶ
こわかっちゃのじぇえ… いちゃかっちゃのじぇええ…」
こわかっちゃのじぇえ… いちゃかっちゃのじぇええ…」
「ぺーろぺーろ!
ああああああぁ、かわいそうなおチビちゃん!
まりさのくちぐるまにのってしまったばっかりに!」
ああああああぁ、かわいそうなおチビちゃん!
まりさのくちぐるまにのってしまったばっかりに!」
「いや…俺ももっと強く反対すべきだったよ
れいむもあまりまりさを責めないでやってくれ」
れいむもあまりまりさを責めないでやってくれ」
「ゆ… まぁにんげんさんがそういうのなら…」
こうして、一家はまたしても男の機転に救われた格好となった。
…
…
…
(後編に続きます)