ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4496 しあわせ01
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『しあわせ01』 30KB
制裁 思いやり 差別・格差 群れ 野良ゆ 都会 現代 独自設定 都市モノ
制裁 思いやり 差別・格差 群れ 野良ゆ 都会 現代 独自設定 都市モノ
※三部作
※賢いゆっくりだよ
※多分誰かがもう同じようなの書いてるね
※賢いゆっくりだよ
※多分誰かがもう同じようなの書いてるね
そこには二匹分の死骸があった。
一つはまりさ種のもの。
もう一つはぱちゅりー種のものだ。
お互いに背を預けるようにして寄り添い、安らかな顔をして息絶えている二匹のゆっくりを
見て、俺は恐らく、同様の表情をしたのだろう。
その二匹の死骸を囲んでいる周囲のゆっくりたちは全員泣いているが、涙を流しながらも俺
に向けてきたのは、恐怖や困惑などではなく笑顔という表情だったからだ。
その内の一匹のれいむが、俺の足元に擦り寄ってくる。
一つはまりさ種のもの。
もう一つはぱちゅりー種のものだ。
お互いに背を預けるようにして寄り添い、安らかな顔をして息絶えている二匹のゆっくりを
見て、俺は恐らく、同様の表情をしたのだろう。
その二匹の死骸を囲んでいる周囲のゆっくりたちは全員泣いているが、涙を流しながらも俺
に向けてきたのは、恐怖や困惑などではなく笑顔という表情だったからだ。
その内の一匹のれいむが、俺の足元に擦り寄ってくる。
「にんげんさん」
今までありがとうね。
「おぅ」
簡潔に答えたのは、あまり長く喋ると悲しみの方が勝ってくるような気がしたからだ。
泣いてはいけない、こいつらの為にも。
泣いてはいけない、こいつらの為にも。
こいつらは最後まで、厳しい野良の世界の中で、ゆっくりを通してきたのだから。
▼『しあわせ』1▼
「「にんげんさん、ゆっくりみていってね!」」
公園のベンチに腰掛けてきた俺に話しかけてきたのは、もう既に馴染みになっている野良の
まりさとぱちゅりーの番だった。
馴染みになっている、というのは他の街では正直、考えられないことだ。
他の街でも公園に野良のゆっくりが住み着き、群を形成するのは大して珍しいことではない。
基本的にゆっくりは駆除されるものであり、そしてそれは人間の生活圏において行き交う人間
の密度が高い程、頻度は高くなる。また人通りが少ない場所でも、車や野良犬、野良猫という
危険因子があれば家を作るのには向かなくなる。結果的に人通りが少なく野良犬や野良猫など
外敵は存在するが比較的少なく、車も入ってこないという公園に家を作るのは当然と言える。
だが、他より安全という理由故に死亡率も少なくなり、増えるのだ。
ネズミ算という言葉すら生温く感じる速度で、ゆっくりは増えていく。
そして増えすぎると、駆除ざれる。
それが基本的な流れであるのは、全国で共通である。
まりさとぱちゅりーの番だった。
馴染みになっている、というのは他の街では正直、考えられないことだ。
他の街でも公園に野良のゆっくりが住み着き、群を形成するのは大して珍しいことではない。
基本的にゆっくりは駆除されるものであり、そしてそれは人間の生活圏において行き交う人間
の密度が高い程、頻度は高くなる。また人通りが少ない場所でも、車や野良犬、野良猫という
危険因子があれば家を作るのには向かなくなる。結果的に人通りが少なく野良犬や野良猫など
外敵は存在するが比較的少なく、車も入ってこないという公園に家を作るのは当然と言える。
だが、他より安全という理由故に死亡率も少なくなり、増えるのだ。
ネズミ算という言葉すら生温く感じる速度で、ゆっくりは増えていく。
そして増えすぎると、駆除ざれる。
それが基本的な流れであるのは、全国で共通である。
しかし、この街は例外であった。
別に愛で派が多いとか強い発言権を持っているとか、そういった理由ではない。人口の割合
などを見ると愛で派は少数、虐待派は数人、それ以外は『普通』の人間という構成である。
この『普通』という性格は、端的に言ってしまえばゆっくりに対してドライというものだ。
ウザい行動をされたら制裁を加えるが、相手側から関与されない限りは基本的に無視をするし、
気分が良かったり何かゆっくりが役に立ったりすれば報酬を与えたりもする。ゆっくりに対し
種族として見るのではなく、野良の犬猫と同列に見ているのだ。
その結果、一つの偶然が起きた。
『普通』に距離を取り、ときたま『普通』に駆除を重ね、ときたま『普通』に餌を与えて、
そうしている内に街のゆっくりに良い意味での偏りが発生したのは、あるいは偶然ではなくて
当然のことだったのかもしれない。
などを見ると愛で派は少数、虐待派は数人、それ以外は『普通』の人間という構成である。
この『普通』という性格は、端的に言ってしまえばゆっくりに対してドライというものだ。
ウザい行動をされたら制裁を加えるが、相手側から関与されない限りは基本的に無視をするし、
気分が良かったり何かゆっくりが役に立ったりすれば報酬を与えたりもする。ゆっくりに対し
種族として見るのではなく、野良の犬猫と同列に見ているのだ。
その結果、一つの偶然が起きた。
『普通』に距離を取り、ときたま『普通』に駆除を重ね、ときたま『普通』に餌を与えて、
そうしている内に街のゆっくりに良い意味での偏りが発生したのは、あるいは偶然ではなくて
当然のことだったのかもしれない。
この街に残っているゆっくりは全員、基本的に善良で大人しく、そして何より賢かった。
就職による上京でこの街に来て最初に驚いたのは、その賢さだった。
引越し初日のことである。俺自身は何の問題もなくアパートに着いたものの、業者が渋滞に
巻き込まれてしまい、到着が一時間程度遅れるとの電話を受けた。俺は新生活に対して出鼻を
挫かれたような気持ちになったが、業者は悪くない。とりあえず近所まで来たら携帯に電話を
してくれるように頼むと、近所の散策も兼ねて少し散歩することにした。コンビニや衣食住に
関する店の把握は先にしておいた方が何かと便利だというのは、親父が新生活にあたり、重要
事項の一つとして教えてくれたことである。準備を万端にしていたつもりでも、暮らし始めて
から日常の細々とした物品が足りないと気付くのだそうだ。
あれは大丈夫、これはどうだったか、と考えながら歩いて数分、コンビニが見えた。
巻き込まれてしまい、到着が一時間程度遅れるとの電話を受けた。俺は新生活に対して出鼻を
挫かれたような気持ちになったが、業者は悪くない。とりあえず近所まで来たら携帯に電話を
してくれるように頼むと、近所の散策も兼ねて少し散歩することにした。コンビニや衣食住に
関する店の把握は先にしておいた方が何かと便利だというのは、親父が新生活にあたり、重要
事項の一つとして教えてくれたことである。準備を万端にしていたつもりでも、暮らし始めて
から日常の細々とした物品が足りないと気付くのだそうだ。
あれは大丈夫、これはどうだったか、と考えながら歩いて数分、コンビニが見えた。
都会だ。
自分の田舎ではコンビニまで徒歩三十分は掛かっていたので、その近さに感動する。
自分の田舎ではコンビニまで徒歩三十分は掛かっていたので、その近さに感動する。
そしてコンビニに近付くと、同時にあるものが見えた。
野良ゆっくり、種族的にはれいむ種だ。
基本的にコンビニと野良ゆっくりはセットのようなもので、それは田舎も都会も同じである。
誰もが知っている通り、コンビニは毎日、弁当などの廃棄が発生する。高校時代にバイトを
していたときに学んだことだが、基本的にその店舗で売り切れる量よりも多く注文しなければ
ならないのだそうだ。もったいない話である。
そして廃棄は回収業者が来るまでは店の外にあるゴミ捨て場に積まれるが、ゆっくりはその
廃棄弁当を狙ってコンビニに来るのだ。
賞味期限を多少過ぎたところで痛んでいる訳でもないし、何より人間用に作られている食品、
そこらにある草や虫、生ゴミなどとは比較にならない程に美味い。それを知っているからか、
コンビニには野良ゆっくりが寄ってくるのだ。酷い目に合わされるのが分かっていてもなのか、
それとも自分だけは大丈夫だと思っているのか、そういった手合いは後を絶たない。
自分は愛で派に少し寄っているが、前述の『普通』の性格だ。
時間もあるし、無下に追い返されるよりはマシだろう、と説得でもするかと寄ったときだ。
野良ゆっくり、種族的にはれいむ種だ。
基本的にコンビニと野良ゆっくりはセットのようなもので、それは田舎も都会も同じである。
誰もが知っている通り、コンビニは毎日、弁当などの廃棄が発生する。高校時代にバイトを
していたときに学んだことだが、基本的にその店舗で売り切れる量よりも多く注文しなければ
ならないのだそうだ。もったいない話である。
そして廃棄は回収業者が来るまでは店の外にあるゴミ捨て場に積まれるが、ゆっくりはその
廃棄弁当を狙ってコンビニに来るのだ。
賞味期限を多少過ぎたところで痛んでいる訳でもないし、何より人間用に作られている食品、
そこらにある草や虫、生ゴミなどとは比較にならない程に美味い。それを知っているからか、
コンビニには野良ゆっくりが寄ってくるのだ。酷い目に合わされるのが分かっていてもなのか、
それとも自分だけは大丈夫だと思っているのか、そういった手合いは後を絶たない。
自分は愛で派に少し寄っているが、前述の『普通』の性格だ。
時間もあるし、無下に追い返されるよりはマシだろう、と説得でもするかと寄ったときだ。
「おにーさん、てんいんさんをよんでね!ゆっくりでいいよ!」
れいむがこちらの方を向いて声を掛けてきた。
野良にしては賢いのだろう、というのが第一印象である。ゆっくりは金バッジでもなければ、
人間のことを並列的に捕らえるのだ。人間が捉えているような職業や仕事という概念がなく、
性別などで大まかに分けて、おにーさん、おねーさんという風に呼び分けてくる。だから店員
のことを「てんいんさん」と呼んでいるのも、固体名という認識程度だろう、と思ったのだ。
野良にしては賢いのだろう、というのが第一印象である。ゆっくりは金バッジでもなければ、
人間のことを並列的に捕らえるのだ。人間が捉えているような職業や仕事という概念がなく、
性別などで大まかに分けて、おにーさん、おねーさんという風に呼び分けてくる。だから店員
のことを「てんいんさん」と呼んでいるのも、固体名という認識程度だろう、と思ったのだ。
だが、俺の考えは直後に覆された。
「おにーさん、はいきのごはんさんがあるならゆっくりちょうだいね!ひとつでいいよ!」
「おお、ちょっと待ってな」
「おお、ちょっと待ってな」
ゆっくりの謙虚さも、コンビニ店員の対応も驚いたが、問題はその後だ。
「きょうはあまあまなのみものさんはあるの?」
「あー、残念だけど無いんだな」
「ゆぅ、それじゃあこれでおねがいするよ!」
「あー、残念だけど無いんだな」
「ゆぅ、それじゃあこれでおねがいするよ!」
そういってれいむが隣にあった麻袋の中から出したのは、百円玉だった。
「いつもので良いか?」
「それでいいよ!」
「それでいいよ!」
れいむがそう言うと、店員は紙パックのオレンジジュースを持ってくる。
「あの!」
俺は思わず店員に声を掛けていた。
「このれいむは買い物が出来るんですか?」
「あ、この近所に越してきたばかりですか? やー、やっぱり最初は驚きますよね」
「あ、この近所に越してきたばかりですか? やー、やっぱり最初は驚きますよね」
話を聞くと、このれいむだけではなく、他のゆっくりも買い物が出来るという。
買い物とは言ってしまえば、貨幣や紙幣と、品物の交換である。
それを人間が行っているのを何度も目にしている内に、いつしかゆっくりたちも同じことが
出来るようになったというのだ。最初は何度か悶着があったらしいが、使える貨幣を百円玉に
限定し、更にお釣りの枚数が少ない商品を何点か教え、その商品なら売っても良いと教えると
買い物をするゆっくりの数が爆発的に増加していったのだという。更には買い物を繰り返して
いく内に、数百円以内の買い物が出来るようになっている固体も出てきているのだというから
実に驚きである。
買い物とは言ってしまえば、貨幣や紙幣と、品物の交換である。
それを人間が行っているのを何度も目にしている内に、いつしかゆっくりたちも同じことが
出来るようになったというのだ。最初は何度か悶着があったらしいが、使える貨幣を百円玉に
限定し、更にお釣りの枚数が少ない商品を何点か教え、その商品なら売っても良いと教えると
買い物をするゆっくりの数が爆発的に増加していったのだという。更には買い物を繰り返して
いく内に、数百円以内の買い物が出来るようになっている固体も出てきているのだというから
実に驚きである。
「ほら、お釣りだよ」
「ありがとうね、にんげんさん。これはこうかんできる?」
「ありがとうね、にんげんさん。これはこうかんできる?」
そういうと、れいむは麻袋の中身をぶちまける。まぁ、これは仕方の無いことだろう。
「うん、出来るね」
店員は慣れた手つきでお釣りを合わせた一円玉十枚と一枚の十円玉を交換、その後で十円玉
十枚と百円玉を交換する。この店員の行動の意図は、なんとなく予想が出来た。このれいむは
十までなら数えることが出来るのだろう。なので、一度に扱う硬貨の数が十を超えないように
しながら交換を見せていっているのだ。
十枚と百円玉を交換する。この店員の行動の意図は、なんとなく予想が出来た。このれいむは
十までなら数えることが出来るのだろう。なので、一度に扱う硬貨の数が十を超えないように
しながら交換を見せていっているのだ。
「ゆ!またおかいものができるよ!ありがとうね、てんいんさん!」
店員にお釣りを麻袋に入れて貰うと揉み上げを使って頭に乗せ、れいむは満面の笑みを浮か
べてお礼を言う。
べてお礼を言う。
「あいよ。あとこれ、忘れんなよ」
「ゆ!わすれるところだったよ!」
「ゆ!わすれるところだったよ!」
店員に袋から出した菓子パンを貰い、れいむは意気揚々と帰っていった。
それから数日、驚くべきことばかりだった。
庭の草むしりをしたり、ゴミを拾ったりして金を稼ぐゆっくり。
休日を利用して公園に行けば、ベビーシッターのようなものをしているゆっくりまでも存在
していたのは本当に驚いた。出来ることなど少ないが、見ているだけで楽しいのか、赤ん坊は
ゆっくりを見て笑っているし、野良犬など危険な生き物が近付けば井戸端会議中の親に大きな
声で知らせる、といったことなどで十分役に立っているらしい。
とにかく、全てのゆっくりが働いているのだ。
庭の草むしりをしたり、ゴミを拾ったりして金を稼ぐゆっくり。
休日を利用して公園に行けば、ベビーシッターのようなものをしているゆっくりまでも存在
していたのは本当に驚いた。出来ることなど少ないが、見ているだけで楽しいのか、赤ん坊は
ゆっくりを見て笑っているし、野良犬など危険な生き物が近付けば井戸端会議中の親に大きな
声で知らせる、といったことなどで十分役に立っているらしい。
とにかく、全てのゆっくりが働いているのだ。
かくいう俺も、その恩恵に預かった一人だ。
美味いと評判の飲食店を何個か教えて貰ったり、何点か雑貨屋を紹介して貰ったりもした。
知人が一人も居ない上、会社内の人付き合いだけでは得られる知識量が限られてくるのだが、
そういった人間向きの情報屋をしているパチュリーが居たのだ。よく知っていたなと感心して
話を聞いてたのだが、生きる為に必死なゆっくりは無差別に仕事の売込みをするので、幅広い
層の話が自然に集まってくるのだという。その話を聞いて他のゆっくりも同じようなサービス
をすることが可能ではないのかと疑問に思ったのだが、そこは持ちつ持たれつらしい。餡子脳
らしく長期的な記憶が難しいということもあるが、基本的に何か一つのことにスキルを全振り
しないと仕事も大変なので、情報屋はパチュリーに任せて、後はそれぞれの得意な仕事を斡旋
して貰う形でバランスを取っているということだった。
美味いと評判の飲食店を何個か教えて貰ったり、何点か雑貨屋を紹介して貰ったりもした。
知人が一人も居ない上、会社内の人付き合いだけでは得られる知識量が限られてくるのだが、
そういった人間向きの情報屋をしているパチュリーが居たのだ。よく知っていたなと感心して
話を聞いてたのだが、生きる為に必死なゆっくりは無差別に仕事の売込みをするので、幅広い
層の話が自然に集まってくるのだという。その話を聞いて他のゆっくりも同じようなサービス
をすることが可能ではないのかと疑問に思ったのだが、そこは持ちつ持たれつらしい。餡子脳
らしく長期的な記憶が難しいということもあるが、基本的に何か一つのことにスキルを全振り
しないと仕事も大変なので、情報屋はパチュリーに任せて、後はそれぞれの得意な仕事を斡旋
して貰う形でバランスを取っているということだった。
こうした群全体の連携や効率を重視した形態のコミュニティは野良ゆっくりの間では珍しい。
山の群ではたまに教育や狩りを担当しているグループに分かれて行動するものもあるらしい、
という話を聞いたことがあるが、街の場合は、こういったことは聞いたことが無い。群を作る
というのは同じだが、野良の場合は更に小さなコミュニティ、家族という単位での行動が基本
となったいるからだ。そうでもしなければ、例えば一斉駆除など重大なことがあった際には、
巻き添えを食らってしまうからだ。何より、野良には厳しい渡世である。他ゆんを蹴落として
でも行動しなければ、明日の食事もままならないのだ。
山の群ではたまに教育や狩りを担当しているグループに分かれて行動するものもあるらしい、
という話を聞いたことがあるが、街の場合は、こういったことは聞いたことが無い。群を作る
というのは同じだが、野良の場合は更に小さなコミュニティ、家族という単位での行動が基本
となったいるからだ。そうでもしなければ、例えば一斉駆除など重大なことがあった際には、
巻き添えを食らってしまうからだ。何より、野良には厳しい渡世である。他ゆんを蹴落として
でも行動しなければ、明日の食事もままならないのだ。
しかし連携をしている故に生活が豊かになっている、というのが、俺が賢いと評価している
一番の理由だった。
一番の理由だった。
そして話は冒頭に戻る。
俺の前に現れた番が馴染みになっている理由は、その片方であるぱちゅりーが情報屋をして
いるから、というのもあるのだが、それだけではない。「ゆっくりみていってね」という冒頭
の言葉で何となく分かるかもしれないが、この番はパフォーマーなのだ。ぱちゅりーなどは、
情報屋の方が儲かっているだろうに、あくまでもパフォーマンスが本業だと言っている。
ゆっくりが行うパフォーマンスと言えば「おうた」や「おどり」といったものが連想される
ものだが、この二匹が行うのは全く別のものである。
俺の前に現れた番が馴染みになっている理由は、その片方であるぱちゅりーが情報屋をして
いるから、というのもあるのだが、それだけではない。「ゆっくりみていってね」という冒頭
の言葉で何となく分かるかもしれないが、この番はパフォーマーなのだ。ぱちゅりーなどは、
情報屋の方が儲かっているだろうに、あくまでもパフォーマンスが本業だと言っている。
ゆっくりが行うパフォーマンスと言えば「おうた」や「おどり」といったものが連想される
ものだが、この二匹が行うのは全く別のものである。
まりさが帽子の中から、どうやって掘り起こしたのか草の生えた土くれを取り出し、自分と
ぱちゅりーの間に設置する。
今日はどんなネタだろうか。
ネタ……そう、コントである。
ぱちゅりーの間に設置する。
今日はどんなネタだろうか。
ネタ……そう、コントである。
『ぐへへ、まりさはげすまりさなんだぜ』
『むきゅ、ぱちゅりーは長ぱちゅりーよ』
『むきゅ、ぱちゅりーは長ぱちゅりーよ』
一言目で立場を言ってくれたのは分かりやすい。今日はこういう方向性か。
しかし役が似合っている、と感じた。
特にまりさだ。昔に虐待をされたのか他のゆっくりとの殺し合いでもしたのか、まりさの顔
には右目を貫くようにして縦に一本、大きな傷跡があるのだ。細かな傷が体の各所にあるが、
その大きな傷跡が何よりの特徴となっている。
逆にぱちゅりーは野良生活故に、体自体は若干の汚れがあるものの、傷一つ無いという意味
では非常に綺麗な状態になっている。更に他のゆっくりとは一線を画す程の知的なオーラが、
長と言う言葉を際立たせていた。
しかし役が似合っている、と感じた。
特にまりさだ。昔に虐待をされたのか他のゆっくりとの殺し合いでもしたのか、まりさの顔
には右目を貫くようにして縦に一本、大きな傷跡があるのだ。細かな傷が体の各所にあるが、
その大きな傷跡が何よりの特徴となっている。
逆にぱちゅりーは野良生活故に、体自体は若干の汚れがあるものの、傷一つ無いという意味
では非常に綺麗な状態になっている。更に他のゆっくりとは一線を画す程の知的なオーラが、
長と言う言葉を際立たせていた。
『ぐへへ、まりさをむれにいれるのぜ、そしておさにするのぜ』
『見るからにゲスっぽいまりさね……そうだわ! まりさ、この群の長になるには厳しい掟
があるの。長と勝負して勝たなければならないのよ』
『わかったのぜ。だったらさっさとしょうぶするのぜ。さいっきょうのまりささまはどんな
しょうぶでもらくしょうなのだぜ』
『見るからにゲスっぽいまりさね……そうだわ! まりさ、この群の長になるには厳しい掟
があるの。長と勝負して勝たなければならないのよ』
『わかったのぜ。だったらさっさとしょうぶするのぜ。さいっきょうのまりささまはどんな
しょうぶでもらくしょうなのだぜ』
そう言って、まりさは帽子から木の枝を取り出した。
それを見て、ぱちゅりーは分かりやすく焦りの表情を浮かべた。
それを見て、ぱちゅりーは分かりやすく焦りの表情を浮かべた。
『むきゅ、待ちなさい。伝統的な勝負があるの。それは……そう、草相撲よ!!』
ちらり、と二匹は土くれを見る。そうか、先に出したのは、これの為の小道具か。
『わかったのぜ、まりささまがさいっきょうのくささんをみつけるのぜ』
『そうはさせないわよ』
『そうはさせないわよ』
二匹は土くれに向かって移動し、それぞれが適当に草を食いちぎり、
『『むーしゃむーしゃ……しあわせー!!』』
滑った。
俺の沈黙に二匹は汗を浮かべて硬直する。
「つ……続きがあるのぜ」
続きがあるらしい。
『く、草相撲勝負では互角のようね』
『やっぱりけっとうっなんだぜ』
『むきゅ! 乱暴な勝負では皆は納得しないわ! 公平にするべきよ……そうだわ! 枝さん
を真ん中で割るのよ! まりさだけ武器を持っているのは卑怯だわ!』
『わかったのぜ。まりささまはさいっきょうだから、それでもまけないのぜ』
『やっぱりけっとうっなんだぜ』
『むきゅ! 乱暴な勝負では皆は納得しないわ! 公平にするべきよ……そうだわ! 枝さん
を真ん中で割るのよ! まりさだけ武器を持っているのは卑怯だわ!』
『わかったのぜ。まりささまはさいっきょうだから、それでもまけないのぜ』
ゲスまりさの割りにさっきから物分かりが良すぎる気もするが、とりあえず最後まで見よう。
判断を下すのは、そこからでも遅くは無い。
判断を下すのは、そこからでも遅くは無い。
『でもどうするのぜ? はんぶんにするのはむずかしいのぜ』
『むきゅ、端っこから咥えてお互いに少しずつ進むのよ』
『わかったのぜ』
『むきゅ、端っこから咥えてお互いに少しずつ進むのよ』
『わかったのぜ』
その通りにお互いに進み、ちゅっちゅする距離まで近付いていく。
そして無事に枝は真ん中で折れ、
そして無事に枝は真ん中で折れ、
『『むーしゃむーしゃ……しあわせー!!』』
……またも滑った。
『……とりあえず、むれにいれるのぜ』
『むきゅ』
『むきゅ』
どうだったのぜ、とまりさが聞いてくる。
俺は黙って百円玉を渡し、まりさは何とも言えない表情でそれを帽子の中にしまった。
俺は黙って百円玉を渡し、まりさは何とも言えない表情でそれを帽子の中にしまった。
「今日のはイマイチかな」
「あらためていわないでほしいんだぜ」
「あらためていわないでほしいんだぜ」
ただ二度ネタが無いのは評価出来る。まだ数回しか見ていないからかもしれないが、今まで
見ていて一度もネタの使い回しが無いのだ。横着な上に記憶力が低いという一般的なゆっくり
の性格を考えれば、これは驚嘆する事実だ。
やる気があるのは分かるから、アドバイスもしたくなる。
見ていて一度もネタの使い回しが無いのだ。横着な上に記憶力が低いという一般的なゆっくり
の性格を考えれば、これは驚嘆する事実だ。
やる気があるのは分かるから、アドバイスもしたくなる。
「個人的には昨日の奴みたいなのが好きかな」
ピンポン玉を利用しての赤ゆっくりネタだったのだが、あれには腹を抱えて笑ってしまった。
しかも朝の出勤前に見てしまったせいで一日中思い出し笑いをしてしまい、最終的には上司
に怒られてしまった程である。俺が笑っている姿を見て、まりさもぱちゅりーもそれはそれは
嬉しそうにしていたのだ。頑張りが認められて嬉しいのは人間もゆっくりも同じだ。
しかしぱちゅりーは表情を暗くした。
しかも朝の出勤前に見てしまったせいで一日中思い出し笑いをしてしまい、最終的には上司
に怒られてしまった程である。俺が笑っている姿を見て、まりさもぱちゅりーもそれはそれは
嬉しそうにしていたのだ。頑張りが認められて嬉しいのは人間もゆっくりも同じだ。
しかしぱちゅりーは表情を暗くした。
「むきゅ。渾身の作だとぱちゅりーも思っているけど、群の皆に、おちびちゃんの教育に悪い
って言われたわ……」
って言われたわ……」
確かに少し下品だったし、そう言われるのも止むを得まい。
あの方向性はかなりの好みなだけに、少し残念だ。群の全員が全員、飼いゆっくりになれば
金バッジを取れそうな賢いゆっくり揃いだからこそ起きた悲劇である。
あの方向性はかなりの好みなだけに、少し残念だ。群の全員が全員、飼いゆっくりになれば
金バッジを取れそうな賢いゆっくり揃いだからこそ起きた悲劇である。
「……ところでさ」
俺は話題を変えようと切り出した。
「むきゅ、今日は何について聞きたいの?」
ぱちゅりーも切り替えが済んだらしい、いつもの表情で見上げてくる。
「まりさって普段、どんな仕事をしてるんだ?」
何回か会って、少し気になったのだ。
昨日のネタはぱちゅりーが考えたそうだが、普段の下品ではないタイプのネタは、基本的に
まりさが考えているのだということを初日に聞いた。それは良い、そこまでは良い。
だが、それだけではない筈だ、というのが俺の考えである。
他の野良ゆっくりは仕事を一本に絞っているのに対し、この二匹は少しばかり特殊だ。
まず番で「群の長」をしているのだ。
どういった経緯があったのかは知らないが、この群は長を番で行うことになっているらしい。
そういったことを公園に来たばかりの頃に、一匹のゆっくりに聞かされた。ぱちゅりーが普段、
情報屋をしているのは上記の理由もあるのだが、長が仕事を配分、斡旋する方が効率が良いと
いう理由もあるのだろう。
本業はコントだ、とぱちゅりーは言っているが、実働時間を考えれば長と兼ねた情報屋の方が圧倒的に多いだろう。
ならばまりさにも、そういった意味での仕事が存在する筈なのである。
確かにゆっくりには優しいを通り越して甘いとさえ思えるような街の現状だが、それは仕事
をゆっくりがこなしているからではる。一日に数回のコントを見せるだけで暮らしていける程、
甘くは無いのだ。人間たちの側も利益を得ることが出来る、という前提があるからこそ駆除が
行われていないのだから。
昨日のネタはぱちゅりーが考えたそうだが、普段の下品ではないタイプのネタは、基本的に
まりさが考えているのだということを初日に聞いた。それは良い、そこまでは良い。
だが、それだけではない筈だ、というのが俺の考えである。
他の野良ゆっくりは仕事を一本に絞っているのに対し、この二匹は少しばかり特殊だ。
まず番で「群の長」をしているのだ。
どういった経緯があったのかは知らないが、この群は長を番で行うことになっているらしい。
そういったことを公園に来たばかりの頃に、一匹のゆっくりに聞かされた。ぱちゅりーが普段、
情報屋をしているのは上記の理由もあるのだが、長が仕事を配分、斡旋する方が効率が良いと
いう理由もあるのだろう。
本業はコントだ、とぱちゅりーは言っているが、実働時間を考えれば長と兼ねた情報屋の方が圧倒的に多いだろう。
ならばまりさにも、そういった意味での仕事が存在する筈なのである。
確かにゆっくりには優しいを通り越して甘いとさえ思えるような街の現状だが、それは仕事
をゆっくりがこなしているからではる。一日に数回のコントを見せるだけで暮らしていける程、
甘くは無いのだ。人間たちの側も利益を得ることが出来る、という前提があるからこそ駆除が
行われていないのだから。
賢いからこそ生き残れている。
逆に言えば、賢くなければ、働かなければ生き残れない。
逆に言えば、賢くなければ、働かなければ生き残れない。
もしかしたらぱちゅりーのヒモのように暮らしている可能性も有り得るが、性格的にはまず
有り得ないだろう、というのもあるし、何よりもまりさの体には絶えず生傷があるのだ。野良
ゆっくりに生傷は付き物、他の野良にも傷はあるが、それらと比較してみても極端に多い。
人間と共存に近い形を取っているにも関わらず、それだけの傷があるのはおかしいのだ。
なまじぱちゅりーが綺麗すぎるだけに、余計にそう思える。
それにヒモのような生活をしているならば、ぱちゅりーよりも綺麗な体で、少なくとも生傷
などは生まれないような生活をしている筈だ。
有り得ないだろう、というのもあるし、何よりもまりさの体には絶えず生傷があるのだ。野良
ゆっくりに生傷は付き物、他の野良にも傷はあるが、それらと比較してみても極端に多い。
人間と共存に近い形を取っているにも関わらず、それだけの傷があるのはおかしいのだ。
なまじぱちゅりーが綺麗すぎるだけに、余計にそう思える。
それにヒモのような生活をしているならば、ぱちゅりーよりも綺麗な体で、少なくとも生傷
などは生まれないような生活をしている筈だ。
視線を向けると、まりさは苦笑を浮かべた。
「おそうじ、だぜ」
あまり言いたくないことだったのだろうか、悪いことを聞いてしまったのかもしれない。
おそうじ、と言うからには、ゴミを集めるといったところだろうか。そう悪い仕事でもない、
と思えるかもしれないが、それ以外の意味合いを持つ言葉でもある。
街において、いわゆる目立つゴミというのは大きく分けて二つ存在するのである。
一つ目は、普通のゴミだ。空き缶や弁当の空、最近は少なくなってきているが煙草の吸殻。
そうったマナーのなっていない人間が道端に捨てたり、野良や野生の生物がゴミ捨て場などを
あさって散らかして発生するものである。
問題は後者のゴミ、ゴミという言い方は悪いとは思うが、そう判断せざるを得ないもの。
おそうじ、と言うからには、ゴミを集めるといったところだろうか。そう悪い仕事でもない、
と思えるかもしれないが、それ以外の意味合いを持つ言葉でもある。
街において、いわゆる目立つゴミというのは大きく分けて二つ存在するのである。
一つ目は、普通のゴミだ。空き缶や弁当の空、最近は少なくなってきているが煙草の吸殻。
そうったマナーのなっていない人間が道端に捨てたり、野良や野生の生物がゴミ捨て場などを
あさって散らかして発生するものである。
問題は後者のゴミ、ゴミという言い方は悪いとは思うが、そう判断せざるを得ないもの。
死骸だ。
野生の犬や猫、そして比較にならない程のゆっくりの死骸。
これは現代において存在することは常識であるものの、皆が目を背けているものである。
人間も死骸というものは嫌うし、それはどのような生物においても共通だ。そしてゆっくり
などは他の生物に比べ、比較にならない程に嫌っている。「ゆっくりすること」に比重を置く
本能を持つからこそ、その対極に存在するものを嫌うのだ。
これは現代において存在することは常識であるものの、皆が目を背けているものである。
人間も死骸というものは嫌うし、それはどのような生物においても共通だ。そしてゆっくり
などは他の生物に比べ、比較にならない程に嫌っている。「ゆっくりすること」に比重を置く
本能を持つからこそ、その対極に存在するものを嫌うのだ。
それに関わる仕事などは、ある意味では存在さえタブーと思えるようなものだろう。
ゆっくりにおいては、世界で一番ゆっくり出来ない仕事なのかもしれない。
ゆっくりにおいては、世界で一番ゆっくり出来ない仕事なのかもしれない。
「ごめんな」
「かまわないんだぜ。ゆっくりがゆっくりできないおしごとさんでも、だれかがやらなければ
いけないことなんだぜ。それにじぶんしかやらないからどくせんはんばいじょうたいでりえき
がはんぱないんだぜ」
「かまわないんだぜ。ゆっくりがゆっくりできないおしごとさんでも、だれかがやらなければ
いけないことなんだぜ。それにじぶんしかやらないからどくせんはんばいじょうたいでりえき
がはんぱないんだぜ」
割に合わないだろうに、そう言ってのけるまりさに、俺は少し感動した。
「思い出すわ……おさになる前にまりさのお仕事さんを使ったネタも作ったのだけれど、むれ
からついっほうをされそうになったこともあったわね」
からついっほうをされそうになったこともあったわね」
何でぱちゅりーは危険な部分ばかり攻めようとするんだ。
と呆れかけたとき、一つの声が響いた。
悲鳴だ。
その声に俺と二匹が視線を向けると、ちぇんがゆっくりとは思えないような速度でこちらに
向かって跳ねてくる。
悲鳴だ。
その声に俺と二匹が視線を向けると、ちぇんがゆっくりとは思えないような速度でこちらに
向かって跳ねてくる。
「おさ、おさ! たいへんなんだよー!」
その顔は、恐怖に染まっていた。
「げ、げすが! げすが! わかってねー!!」
ちぇんの説明は言葉足らずというか、説明にもなっていなかったのだが、何を言おうとして
いるのかは分かった。
げすが群に入れとでも言ってきたのだろう。
そして恐らく他から来たものだ。
この街の善良なゆっくりのバックボーンを会社の同僚から聞かされていたので自然発生する
とは思えないし、発生したからには『普通』の人間によって即刻駆除される筈だ。
いるのかは分かった。
げすが群に入れとでも言ってきたのだろう。
そして恐らく他から来たものだ。
この街の善良なゆっくりのバックボーンを会社の同僚から聞かされていたので自然発生する
とは思えないし、発生したからには『普通』の人間によって即刻駆除される筈だ。
だが、それを知らないゲスの来訪は、ある意味で予想出来るものでもある。
この街はゆっくりに対して、とても優しい。だから他の街や山野からゆっくりが来るのも
当然だろう。更に言えば、来客の中にゲスが多く居るのも、ある意味では当然である。
ゆっくりは基本的に脆弱な生き物で、山に生きているものはともかく、街の中で暮らして
いるものならば嫌という程に実感している筈だ。だからこそ生きるのに精一杯で、どうにも
ならなくなったとき意外は、余程のことが無い限りは別の街に移動しようとは思わないのだ。
今の状況よりはマシになるかもしれない、だけれども悪くなるかもしれない。移動を含めて
死ぬ可能性もある、ということを考えれば、生きていけるだけマシだと現状を維持しようと
勤めるのだ。
だがゲスは、自分が不快になったら、どんなものでもすぐに見限り、見捨てる。
自分がゆっくり出来ないなら、それをあっさりを切り捨てて、更に良いものを求めようと
美味い話の方へと進んでいくのだ。
現在は基本的に一斉駆除もなく、人間が無意味に攻撃してくることもなく、飢えを心配する
どころか頻繁にあまあまを食べることが出来るというこの街は、ゲスどころか全てのゆっくり
にとっての「ゆっくりプレイス」に思えることだろう。
人間に対して恐怖している野良ゆっくりは与太話だと思うだろうが、自分本位なゲスならば、
一も二もなく飛びついてくるに決まっている。
当然だろう。更に言えば、来客の中にゲスが多く居るのも、ある意味では当然である。
ゆっくりは基本的に脆弱な生き物で、山に生きているものはともかく、街の中で暮らして
いるものならば嫌という程に実感している筈だ。だからこそ生きるのに精一杯で、どうにも
ならなくなったとき意外は、余程のことが無い限りは別の街に移動しようとは思わないのだ。
今の状況よりはマシになるかもしれない、だけれども悪くなるかもしれない。移動を含めて
死ぬ可能性もある、ということを考えれば、生きていけるだけマシだと現状を維持しようと
勤めるのだ。
だがゲスは、自分が不快になったら、どんなものでもすぐに見限り、見捨てる。
自分がゆっくり出来ないなら、それをあっさりを切り捨てて、更に良いものを求めようと
美味い話の方へと進んでいくのだ。
現在は基本的に一斉駆除もなく、人間が無意味に攻撃してくることもなく、飢えを心配する
どころか頻繁にあまあまを食べることが出来るというこの街は、ゲスどころか全てのゆっくり
にとっての「ゆっくりプレイス」に思えることだろう。
人間に対して恐怖している野良ゆっくりは与太話だと思うだろうが、自分本位なゲスならば、
一も二もなく飛びついてくるに決まっている。
にんげんさん、とまりさは言った。
「いずれしることになったとおもうし、かくすつもりもないんだぜ。こんばん、とけいさんの
はりがかさなるときにまりさのおしごと……おそうじがおこなわれるんだぜ。みたかったら、
そのすこしまえにくるんだぜ」
はりがかさなるときにまりさのおしごと……おそうじがおこなわれるんだぜ。みたかったら、
そのすこしまえにくるんだぜ」
その表情は、硬いものだった。
▼ ▼ ▼
深夜の十二時になる少し前、俺は再び公園に来ていた。
公園には人間の姿はなく、変わりに野良ゆっくりで埋め尽くされている。正直、この街の中
にこれ程のゆっくりが居たのかと驚いた程である。
そしてゆっくりの密度が高い場所、公園の中央に会場はあった。
公園には人間の姿はなく、変わりに野良ゆっくりで埋め尽くされている。正直、この街の中
にこれ程のゆっくりが居たのかと驚いた程である。
そしてゆっくりの密度が高い場所、公園の中央に会場はあった。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
会場は、熱気に満ちていた。
会場と言っても、作りはシンプルなものだ。
小石が取り除かれた上で均された地面の上に、加工所製の天井の無い透明な壁が置いてある
だけというものだ。感覚としては格闘競技のリングのようなものだろう。
しかし人間の行う試合と違うのは、囲んでいるギャラリーの姿にあった。
リングを囲む全てのゆっくりが、口に木の枝を咥えているのだ。
会場と言っても、作りはシンプルなものだ。
小石が取り除かれた上で均された地面の上に、加工所製の天井の無い透明な壁が置いてある
だけというものだ。感覚としては格闘競技のリングのようなものだろう。
しかし人間の行う試合と違うのは、囲んでいるギャラリーの姿にあった。
リングを囲む全てのゆっくりが、口に木の枝を咥えているのだ。
エントロピーは増大する。
その言葉を示すようにギャラリーのゆっくりたちは熱気に当てられて舞い上がり、己の熱を
増加させ、それによって再び盛り上がる。跳ねたり木の枝で壁を叩いたり、今までは善良だと
思っていたゆっくりたちとは思えない程に、異様な感情を表していた。
増加させ、それによって再び盛り上がる。跳ねたり木の枝で壁を叩いたり、今までは善良だと
思っていたゆっくりたちとは思えない程に、異様な感情を表していた。
これが本性なのだろうか。
「勘違いして貰ったら困るわ」
ついてきたぱちゅりーが俺に説明をする。
これは狂っているのではなく、必死なのだと。
何度も駆除をされ、その果てに人間と共存する道を手に入れたからこそ、それを壊されまい
と必死になっているのだ。人間から見たら、ゲスなゆっくりも善良なゆっくりも、似たような
ものとして扱われる。現に、他の街ではそのように扱われているのだ。それは今は人間と共存
いているような善良なゆっくりでも、ゲスになる可能性があると、人間はそう認識していると
野良ゆっくりは理解している。元金バッジのゆっくりなどが居る、人間に対して思い上がった
末に駆除が行われた過去がある、それらの事実がある以上、脆弱なゆっくりの側からは人間の
認識を否定出来ないことなのだと皆は知っている。
赤ゆっくりも、大人のゆっくりも、人間の気分一つで永遠にゆっくりしてしまうのだ。
これは狂っているのではなく、必死なのだと。
何度も駆除をされ、その果てに人間と共存する道を手に入れたからこそ、それを壊されまい
と必死になっているのだ。人間から見たら、ゲスなゆっくりも善良なゆっくりも、似たような
ものとして扱われる。現に、他の街ではそのように扱われているのだ。それは今は人間と共存
いているような善良なゆっくりでも、ゲスになる可能性があると、人間はそう認識していると
野良ゆっくりは理解している。元金バッジのゆっくりなどが居る、人間に対して思い上がった
末に駆除が行われた過去がある、それらの事実がある以上、脆弱なゆっくりの側からは人間の
認識を否定出来ないことなのだと皆は知っている。
赤ゆっくりも、大人のゆっくりも、人間の気分一つで永遠にゆっくりしてしまうのだ。
あまあまをくれた?
それがどうした。
それがどうした。
たすけてくれた?
だからなんだ。
だからなんだ。
ゆっくりさせてくれる?
そんなものは忘れてしまえ!
そんなものは忘れてしまえ!
今はまだ、そういう扱いを受けているだけだ。
どこまでいっても人間はゆっくりの天敵で、その天敵が甘やかしてくれているだけなのだ。
どこまでいっても人間はゆっくりの天敵で、その天敵が甘やかしてくれているだけなのだ。
「ぱちゅりーたちは、壊れないおぼうしに乗っている水上まりさと同じ。何もしていなければ
ずっとゆっくりできるけれど、何かがあったらすぐにおみずさんの中に落ちて永遠にゆっくり
してしまうわ。……例えば、人間さんの怒りを買ったり、ね」
ずっとゆっくりできるけれど、何かがあったらすぐにおみずさんの中に落ちて永遠にゆっくり
してしまうわ。……例えば、人間さんの怒りを買ったり、ね」
ぱちゅりーの赤裸々な告白を聞いて、俺は言葉を失っていた。
「これが、この街のゆっくりの正直な気持ち。この街の人間さんも、ほとんどが気付いている
上で共存して『くれている』のよ」
上で共存して『くれている』のよ」
全員が金バッジ並に賢く見えていたが、そうではなかった。
全てのゆっくりが「なんでもします」状態になって、媚を売っていたのだ。
こんなに賢いのに何故、全員が野良のままでいたのか分かった気がした。自分が同じ立場に
なったと考えたら、飼われるのなんて絶対に嫌だと思うだろう。
野良でいるときよりも行動が遥かに制限されるし、近くに居るのは自分の天敵。その天敵の
機嫌を損ねたら殺されるかもしれない。野良のままなら喧嘩を売らない限りは駆除されること
もなく、毎日それなりの幸せが手に入る。風雨を避けることが出来るようになるということを
天秤に掛けても、明らかに不釣合いな話なのである。
全てのゆっくりが「なんでもします」状態になって、媚を売っていたのだ。
こんなに賢いのに何故、全員が野良のままでいたのか分かった気がした。自分が同じ立場に
なったと考えたら、飼われるのなんて絶対に嫌だと思うだろう。
野良でいるときよりも行動が遥かに制限されるし、近くに居るのは自分の天敵。その天敵の
機嫌を損ねたら殺されるかもしれない。野良のままなら喧嘩を売らない限りは駆除されること
もなく、毎日それなりの幸せが手に入る。風雨を避けることが出来るようになるということを
天秤に掛けても、明らかに不釣合いな話なのである。
あまあまも、快適な家も、恐怖の前ではゴミと同じなのだから。
「そして今から行われるのが、一番の大仕事……本当の「おそうじ」よ」
まりさが跳ねて、壁の中に入る。
ゲスまりさも跳ねて、壁の中に入る。
ゲスまりさも跳ねて、壁の中に入る。
「むきゅ。これからルールを説明するわ」
ぱちゅりーがギャラリーの前に出て、ゲスまりさを見た。
「先に『まいった』を言ったほうが負け、そして逃げたらむれのみんなにせいっさいされる、
それだけよ。あなたが勝ったらこのむれに入るなり、おさになるなり、好きにすれば良いわ」
「ゆっゆっ、わかったのぜ。ぜんいんこのまりささまがくそどれいにしてやるからこうえいに
おもうのぜ。さいっきょうっ!でごめんねー!」
それだけよ。あなたが勝ったらこのむれに入るなり、おさになるなり、好きにすれば良いわ」
「ゆっゆっ、わかったのぜ。ぜんいんこのまりささまがくそどれいにしてやるからこうえいに
おもうのぜ。さいっきょうっ!でごめんねー!」
その体格はまりさ……長まりさよりも二回りは大きい。だからだろうか、自分が負けるとは
思っていないのだろう。ゲラゲラと下品な声を出して笑っていた。
思っていないのだろう。ゲラゲラと下品な声を出して笑っていた。
ゲスまりさが、帽子から武器となる木の枝を出して口に咥えた。
それは普通のゆっくりが武器として扱うものと比べると大幅に太く長い。そして中の水分が
殆ど抜けていない生木に近い状態なのだろう、折れたのではなく剪定されたものを何処かから
掠めてきたのか、平らな切断面は夜目でも分かるくらいに鮮やかな緑の色を覗かせていた。
重量もあるだろうし、何より水分やヤニの抜けていない木は硬いのだ。
並の枝ならば、打ち合わせたら、簡単に折れてしまうだろう。
それは普通のゆっくりが武器として扱うものと比べると大幅に太く長い。そして中の水分が
殆ど抜けていない生木に近い状態なのだろう、折れたのではなく剪定されたものを何処かから
掠めてきたのか、平らな切断面は夜目でも分かるくらいに鮮やかな緑の色を覗かせていた。
重量もあるだろうし、何より水分やヤニの抜けていない木は硬いのだ。
並の枝ならば、打ち合わせたら、簡単に折れてしまうだろう。
「このまりささまのえくすかりばーで、ずたずたにしてやるんだぜ。そのあとはこかんにある
えくすかりばーでおまえをにくべんきにしてやるのぜ、こうえいにおもうのぜ」
えくすかりばーでおまえをにくべんきにしてやるのぜ、こうえいにおもうのぜ」
素振りでもするように、また威嚇の意味合いもあるのか、ゲスまりさは壁を枝でガンガンと
打ち鳴らしていた。
打ち鳴らしていた。
「大丈夫なのか?」
傍らに居るぱちゅりーに尋ねると、以外にも心配したような気配は微塵も感じられなかった。
「もっと大きいまりさを相手にしたこともあるし、それに枝なんかではお話にもならないわ」
「さぁ、ぶきをぬくのぜ!」
ゲスまりさの言葉に、長まりさは天を一度見上げ、そして真正面を向いた。
「さいあくなつきさんなのぜ、おまえはうんがわるかったのぜ」
俺も天を見る。
そこには、綺麗な三日月が浮かんでいた。
そこには、綺麗な三日月が浮かんでいた。
長まりさが武器を抜く。
それは俺も良く知っているもの。
それは俺も良く知っているもの。
人間が庭弄りや砂遊びで使うような、金属製のスコップだった。
そうか、と俺は一つ頷いた。
昼間にネタの小道具として土を掘り出したのは、これを使ったのか、と。
それに加え、もう一つ気付いたことがあった。
まりさの顔の傷だ。
本ゆんに悪いと思っていたし、意識するべきではないと思い今までしっかり見ていなかった
のだが、きちんと見れば気付くことがある。それは直線ではなく、浅い角度ではあるが三日月
のような形状、内向きに反っているのだ。
三日月が最悪な月、というのはこのことか。
空を見上げれば自分の傷と同じようなものが浮かんでいるのは、確かにキツいだろう。
昼間にネタの小道具として土を掘り出したのは、これを使ったのか、と。
それに加え、もう一つ気付いたことがあった。
まりさの顔の傷だ。
本ゆんに悪いと思っていたし、意識するべきではないと思い今までしっかり見ていなかった
のだが、きちんと見れば気付くことがある。それは直線ではなく、浅い角度ではあるが三日月
のような形状、内向きに反っているのだ。
三日月が最悪な月、というのはこのことか。
空を見上げれば自分の傷と同じようなものが浮かんでいるのは、確かにキツいだろう。
その意味が分からないのか、ゲスまりさは笑っている。
全長は三十センチ程、刃渡りはその半分程度のものだ。ゲスまりさが使う枝に比べて短く、
武器として扱うのなら厚みの少ないそれを見て、弱い武器だと判断したのだろう。ぶんぶんと
枝を振り回し、ゲラゲラと哄笑が漏れていた。
全長は三十センチ程、刃渡りはその半分程度のものだ。ゲスまりさが使う枝に比べて短く、
武器として扱うのなら厚みの少ないそれを見て、弱い武器だと判断したのだろう。ぶんぶんと
枝を振り回し、ゲラゲラと哄笑が漏れていた。
「そんなぺらっぺらっ!でひんじゃくっ!なぶきでたたかおうというのかぜ? ばかなのぜ?
しぬのぜ? ころしてやるのぜ!」
「ごたくはまりさにかってからいうのぜ」
しぬのぜ? ころしてやるのぜ!」
「ごたくはまりさにかってからいうのぜ」
ゲスまりさは笑い声さえ止まったものの、長まりさをにやにやと見つめていた。
風が吹く。
あまり強い風ではない、しかし。
あまり強い風ではない、しかし。
急にゲスまりさが悶えだした。
「ゆぴいいいぃぃぃ! なんなのぜ! くさいのぜえええぇぇぇ!」
「これは『し』のにおいなのぜ」
「ぶざげるなぁぁ! ぜいぜいどうどうとじょうぶじろおお!」
「まりさはひきょうなてなどつかっていないのぜ、それにひとのしょうばいどうぐをそんなに
わるくいうもんじゃないのぜ」
「まりさはひきょうなてなどつかっていないのぜ、それにひとのしょうばいどうぐをそんなに
わるくいうもんじゃないのぜ」
死の臭い、と長まりさは言った。
商売道具、とも言った。
つまりは、普段からそのスコップを使って死体の片付けをしているのだろう。人間などには
分からないが、ゆっくりが死ぬと、その場所には死の臭いが染み付くと誰かから聞いたことが
あった。特に苦しんだ末の死は、その臭いが強烈らしい。それこそ雨が降っても掃除をしても
消えないという。だから加工所の人間は、駆除をする際、他のゆっくりが後から住み着かない
ように、なるべく苦しめてから殺すのだと言っていた。
ならば普段から「死骸」に触れているスコップは回数を重ねた結果、その死の臭いを随分と染み付かせていることだろう。一回でも耐えられない程の臭いを、更に何重にも重ねて、だ。
そして忌避する死の臭いを、その恐ろしさを知った今、ゲスまりさにはスコップが「ペラペラ
で貧弱な武器」から、「死の魔剣」のように見え方が変わったことだろう。
商売道具、とも言った。
つまりは、普段からそのスコップを使って死体の片付けをしているのだろう。人間などには
分からないが、ゆっくりが死ぬと、その場所には死の臭いが染み付くと誰かから聞いたことが
あった。特に苦しんだ末の死は、その臭いが強烈らしい。それこそ雨が降っても掃除をしても
消えないという。だから加工所の人間は、駆除をする際、他のゆっくりが後から住み着かない
ように、なるべく苦しめてから殺すのだと言っていた。
ならば普段から「死骸」に触れているスコップは回数を重ねた結果、その死の臭いを随分と染み付かせていることだろう。一回でも耐えられない程の臭いを、更に何重にも重ねて、だ。
そして忌避する死の臭いを、その恐ろしさを知った今、ゲスまりさにはスコップが「ペラペラ
で貧弱な武器」から、「死の魔剣」のように見え方が変わったことだろう。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
死の臭いに当てられ、生存本能が刺激されたのか、ギャラリーが沸く。
パチュリーが時計を見た、俺も釣られて時計を見る。
十二時まで、残り一分である。
十二時まで、残り一分である。
「こうふくかんこくはいちおう、さんかいまでしてやるのぜ。いまならまだ、まにあうのぜ。
おとなしくまりさたちのようにはたらくなら、なにもしないのぜ」
おとなしくまりさたちのようにはたらくなら、なにもしないのぜ」
「うるざいいいい! だまれだまれだまるのぜええ!」
パニックになっているのか、ゲスまりさは叫んだ。
十二時になる。
「むきゅ! はじめ!」
パチュリーの宣告により、決闘が始まった。
「ああああ”あ”あ”ぁぁぁっ!!」
最初の一撃を加えたのは……ゲスまりさだった。
不自由な右目の側からのフルスイングだったからだろうか、回避も出来ず、木の枝の直撃を
受けた長まりさの体はくの時に折れて吹き飛んだ。
そのまま転がっていき、壁に当たってようやく止まる。
不自由な右目の側からのフルスイングだったからだろうか、回避も出来ず、木の枝の直撃を
受けた長まりさの体はくの時に折れて吹き飛んだ。
そのまま転がっていき、壁に当たってようやく止まる。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
「にかいめのかんこくなのぜ。あしたからはたらくならぶじですませるのぜ」
よろよろと身を起こしながら、長まりさは言う。
だが攻撃がクリーンヒットしたからか、ゲスまりさは若干の落ち着きを取り戻したようだ。
長まりさが恐ろしい武器を持っていようが、当たらなければ意味が無い。それに自分の方が
体も大きいし、何より長まりさは自分の一撃でボロボロではないか。そう考えているのが俺の
目でも簡単に見て取れた。
だが攻撃がクリーンヒットしたからか、ゲスまりさは若干の落ち着きを取り戻したようだ。
長まりさが恐ろしい武器を持っていようが、当たらなければ意味が無い。それに自分の方が
体も大きいし、何より長まりさは自分の一撃でボロボロではないか。そう考えているのが俺の
目でも簡単に見て取れた。
「ことわるのぜ!」
宣言し、ゲスまりさは再び枝を振るう。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
またも長まりさは吹き飛んだ。
今度はやぶれかぶれではなく、狙ったのだろう。
長まりさの右側から、体の中心を捉えるような一撃だった。
転がったまりさはリングの角まで転がり、壁に当たって止まる。
今度はやぶれかぶれではなく、狙ったのだろう。
長まりさの右側から、体の中心を捉えるような一撃だった。
転がったまりさはリングの角まで転がり、壁に当たって止まる。
「もうにげばはないのぜ。でもないてどげざしてくそどれいにしてくれとたのむんだったら、
かんっだい!なまりささまはいのちだけはたすけてやるのぜ。そしてしぬまでこきつかって
やるからかんしゃするのぜ!」
かんっだい!なまりささまはいのちだけはたすけてやるのぜ。そしてしぬまでこきつかって
やるからかんしゃするのぜ!」
「……さんかいめのかんこくなんだぜ。はたらくきはないのぜ?」
ふん、とゲスまりさはどこにあるか分からない鼻で笑う。
「ばかなまりさなんだぜ。このままたたきつぶしてころしてやるのぜ」
ゲスまりさは枝を振りかぶり、
「つぎはもっとかしこいゆっくりにうまれてくるのぜ!」
鈍音。
潰れた、と思った。
しかし聞こえてきたのは、ゆっくりが潰されるような、水っぽい音ではなかった。
しかし聞こえてきたのは、ゆっくりが潰されるような、水っぽい音ではなかった。
「ど、どぼじでつぶれてないのおおおぉぉぉ!?」
むきゅ、とぱちゅりーが鳴く。
「まりさが殴られてたのは、わざとよ。相手に酷いことをすることになるから、その前に、
まず自分がやられようなんてバカの考えだわ、むきゅん」
まず自分がやられようなんてバカの考えだわ、むきゅん」
長まりさは、ただ殴られていた訳ではないらしかった。
本当に相手の攻撃が強く、更に何の受身も取らずに殴られていたのならば、もう立ち上がる
どころか喋ることすら出来なくなっていただろう。それに大きく吹き飛び転がっていたのも、
よく考えればおかしいことではあったのだ。基本的に非力なゆっくりなのである。いくら体格
が大きくても、振るものが大きい木の枝ならば速度など出る筈もなく、その速度が遅ければ、
吹き飛ばす程のエネルギーも発生しない。
俺がすぐに気付けなかったのは、サイズ差と会場の雰囲気に飲み込まれていたからだろう。
本当に相手の攻撃が強く、更に何の受身も取らずに殴られていたのならば、もう立ち上がる
どころか喋ることすら出来なくなっていただろう。それに大きく吹き飛び転がっていたのも、
よく考えればおかしいことではあったのだ。基本的に非力なゆっくりなのである。いくら体格
が大きくても、振るものが大きい木の枝ならば速度など出る筈もなく、その速度が遅ければ、
吹き飛ばす程のエネルギーも発生しない。
俺がすぐに気付けなかったのは、サイズ差と会場の雰囲気に飲み込まれていたからだろう。
では何故まりさはあんなに転がっていたのか。
それは今の二匹の状態を見れば説明がつく。
それは今の二匹の状態を見れば説明がつく。
角に向かうのを相手に悟られないようにする為、そして同時に自分を弱く見せ、そのことで
調子に乗った相手を誘い出す為だ。
ゲスまりさは長まりさに対し、逃げ場はないと言った。
それは事実だろうが、対象となるのは長まりさだけではなかった。
角を背に置いた長まりさ、そして正面から対峙しているゲスまりさ自身も左右の移動が困難
な状態になっているのだから。
調子に乗った相手を誘い出す為だ。
ゲスまりさは長まりさに対し、逃げ場はないと言った。
それは事実だろうが、対象となるのは長まりさだけではなかった。
角を背に置いた長まりさ、そして正面から対峙しているゲスまりさ自身も左右の移動が困難
な状態になっているのだから。
一歩。
長まりさが前に出た。
長まりさが前に出た。
「とくべつに、もういっかいだけちゃんすをやるんだぜ。はたらくきはないのぜ?」
「ぶざげるなぁぁ! までぃざばどっでもどぐべづなゆっぐりなんだあぁぁ! おまべらも、
ぐぞにんべんも、どぼじでいじわるばがりずるんだぁぁぁぁぁ! までぃざば、ざいっぎょうぼゆっぐでぃで……ごんなび、おおぎぐっで、ずでぎで……」
ぐぞにんべんも、どぼじでいじわるばがりずるんだぁぁぁぁぁ! までぃざば、ざいっぎょうぼゆっぐでぃで……ごんなび、おおぎぐっで、ずでぎで……」
負けを悟ったのだろうか、半狂乱になってゲスまりさは叫ぶ。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
そう、誰の目にも、勝敗は明らかだった。
ゲスまりさの体に、スコップが刺さる。
「だびごれえええぇぇぇ! ぎぼぢばぶい! ぎぼぢばぶいぼおおおぉぉぉ!!!」
死の臭いが染み込んでいるのだろうか、俺には想像しか出来ない。
「ぼばべらぁぁぁ!! までぃざぼ、までぃざぼだずげぼおおおおぉぉぉぉ!!!!」
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
ギャラリーが沸く。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
壁をガンガンと打ち鳴らす。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
ゲスまりさは両目をグルグルと回転させ、餡子の塊を吐いた。
「「「「「ゆん! ゆ、ゆん!」」」」」
傷口から、目から、体の至る場所から、餡子がドロドロと流れ出していく。
「…………ざんねんだぜ」
呟き、長まりさは深くスコップを差し込んだ。
「ばでぃざば……ばでぃざば……」
「「「「「ゆん!!!!!!!」」」」」
一際大きいギャラリーの声と共に、ゲスまりさは物言わぬ饅頭となった。
▼ ▼ ▼
その後、ゲスまりさの死骸をぱちゅりーが持ってきた麻袋にスコップで詰めながら、まりさ
は悲しそうな顔をして言った。
は悲しそうな顔をして言った。
どうして仲良く出来ないのか、と。
人間さんもゲスも、みんな生きているのに、と。
「出来るさ、いつかきっと」
気休めにしかならないのかもしれないが、俺は言う。
「少なくとも俺は、お前らのことが好きなんだ」