ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko4585 散歩した雪の夜に
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『散歩した雪の夜に』 12KB
いじめ 野良ゆ 赤ゆ 現代 ぬるいじめ
いじめ 野良ゆ 赤ゆ 現代 ぬるいじめ
過去作 anko4575 ゆっけん
「たちゅけて……たちゅけてくだちゃい……」
「お?」
「お?」
何をトチ狂ったか、雪の降った夜に私は散歩に繰り出していた。
まだ私にも童心は残っていたということだろうか。
既に雪も降りやみ、しかし溶けだした雪が夜の寒さに凍りつき、道路が滑る。
えっちらおっちら難儀しながら、見知らぬ公園を通りがかった時に、その声は聞こえた。
まだ私にも童心は残っていたということだろうか。
既に雪も降りやみ、しかし溶けだした雪が夜の寒さに凍りつき、道路が滑る。
えっちらおっちら難儀しながら、見知らぬ公園を通りがかった時に、その声は聞こえた。
「ゆびゅ…まりちゃを…たちゅ、たちゅけてくだちゃい」
植え込みの奥、雪をたっぷり載せグズグズになった段ボールの中に、そいつはいた。
ゆっくりまりさ。
大きさはピンポン玉ほど。赤ゆっくりだった。
小さな顔をくしゃくしゃに歪ませ、見ているこちらが寒気を覚えるほどに震えていた。
ゆっくりまりさ。
大きさはピンポン玉ほど。赤ゆっくりだった。
小さな顔をくしゃくしゃに歪ませ、見ているこちらが寒気を覚えるほどに震えていた。
「おー、寒そうだねぇ、大丈夫?」
「ゆびび……ゆぴ……しゃ、しゃぶい」
「ゆびび……ゆぴ……しゃ、しゃぶい」
暇だったので私はこのまりさの相手をしてやることにした。
しゃがみ込み、目線の高さを合わせ…る事はできないが、近づける。
より近くで確認してみると、妙に小奇麗な赤まりさだった。
おそらくは、親の愛情をたっぷりと受け、付着した汚れなどは舐め取ってもらっていたのだろう。
それなりに大事にされていたことがわかる。
もっとも、冬に赤ゆが居る時点でお察しなのだが。
しゃがみ込み、目線の高さを合わせ…る事はできないが、近づける。
より近くで確認してみると、妙に小奇麗な赤まりさだった。
おそらくは、親の愛情をたっぷりと受け、付着した汚れなどは舐め取ってもらっていたのだろう。
それなりに大事にされていたことがわかる。
もっとも、冬に赤ゆが居る時点でお察しなのだが。
「で、なんだっけ? 私に何かしてほしいの?」
「ま、まりぢゃを、たしゅけちぇ、ゆび、くだ、っぐちゅん! ゆびび、くだしゃい」
「ま、まりぢゃを、たしゅけちぇ、ゆび、くだ、っぐちゅん! ゆびび、くだしゃい」
ガタガタと震え、くしゃみまでしながら私に助けを求めるまりさ。
どうでもいいがゆっくりのくしゃみって珍しいな。初めて見た。
ゆっくりって鼻ないのにくしゃみするんだ咳はぱちゅりーとかでよく見るけどそういえばゆっくりに花粉症とかないんだろうかあれは辛いんだよなぁ―――
どうでもいいがゆっくりのくしゃみって珍しいな。初めて見た。
ゆっくりって鼻ないのにくしゃみするんだ咳はぱちゅりーとかでよく見るけどそういえばゆっくりに花粉症とかないんだろうかあれは辛いんだよなぁ―――
「おでーしゃっ、まりぢゃをっ、ゆびっ、たぢゅけで、くだ、くだぢゃい!」
「……あ、あーそっか、助けてほしいのね」
「……あ、あーそっか、助けてほしいのね」
明後日の方向に迷走しはじめた私の思考を、まりさの懇願が呼び戻した。
いけない。真面目にやらねば。
私はまりさに向き直る。
いけない。真面目にやらねば。
私はまりさに向き直る。
「えっと、まりさ?」
「ゆび?」
「ゆび?」
まずは軽くいくか。
「助けてあげたいのは山々なんだけど、君のおとーさんとおかーさんはどうしたの?」
「ゆびぃっ!」
「ゆびぃっ!」
私の質問に、まりさは元からくしゃくしゃだった顔をさらに歪めた。
いい表情だ。
いい表情だ。
「ゆ……ゆ゛……ゆび……ゆ゛びび……」
「ん?」
「ん?」
表情を引き攣らせたまま、プルプルと震えはじめるまりさ。
私にはわかる。
これは寒さによる震え方じゃない。
私にはわかる。
これは寒さによる震え方じゃない。
「……どうしたの、まりさ? 困っているならおとーさんとおかーさんに助けてもらった方がいいと思うん……」
「そっ、そごにおかーじゃんとおどーじゃんがいまじゅっ!
「そっ、そごにおかーじゃんとおどーじゃんがいまじゅっ!
まりさは吠えた。
「そごにころがってりゅのがっ、おがーじゃんどおどーじゃんでじゅっ!!」
私の目の前、段ボールの前に二つ並んでいる不自然な大きさの雪玉。
いや、正確にいえば、それは二匹のゆっくりが氷漬けになった代物だった。
仰向けに寝転がった二匹の表情は、歯を食いしばり、何かを耐えるような苦悶の表情でこと切れていた。
誰がどう考えても、ゆっくりの欠片もない死に様だとわかる。
いや、正確にいえば、それは二匹のゆっくりが氷漬けになった代物だった。
仰向けに寝転がった二匹の表情は、歯を食いしばり、何かを耐えるような苦悶の表情でこと切れていた。
誰がどう考えても、ゆっくりの欠片もない死に様だとわかる。
「おがーじゃんだぢはっ、おうちがしゃむいしゃむいだからっ、どあじゃんになっでくれでぇ!」
「ふんふん」
「ふんふん」
このまりさの両親は雪の脅威から我が子を守るべく身を挺しておうちの入り口を塞いだらしい。
考えてみれば、段ボールにドアなんて上等なものは付いていない。
しいて言うなれば蓋はあるが、それもゆっくり如きが利用できるものでもない。
四肢のないゆっくりが蓋を利用するならば、その身をもって外側から蓋を抑える重しとなる他にない。
少なくとも、このまりさの両親はそうしたようだ。
考えてみれば、段ボールにドアなんて上等なものは付いていない。
しいて言うなれば蓋はあるが、それもゆっくり如きが利用できるものでもない。
四肢のないゆっくりが蓋を利用するならば、その身をもって外側から蓋を抑える重しとなる他にない。
少なくとも、このまりさの両親はそうしたようだ。
「そじだらおがーじゃんだぢがなんもいわなぐなっでぇ、まりぢゃだぐしゃんたいあたりぢまぢだぁっ!」
「へぇ」
「ぞじだらっ……ぞじだらぁっ……」
「へぇ」
「ぞじだらっ……ぞじだらぁっ……」
幸運にも赤ゆっくりであるまりさの体当たり程度で二匹は除けられたようだった。
氷漬けになって摩擦が少なくなったおかげだろうか?
仮に二匹が退かなかったら、まりさはおうちの中で短い一生を過ごす羽目になっただろう。
死んだ後でも子思いの両親である。
本当に子を思ってるなら、こんな季節に赤ゆを作ったりはしないけどね。
氷漬けになって摩擦が少なくなったおかげだろうか?
仮に二匹が退かなかったら、まりさはおうちの中で短い一生を過ごす羽目になっただろう。
死んだ後でも子思いの両親である。
本当に子を思ってるなら、こんな季節に赤ゆを作ったりはしないけどね。
「おがーじゃんどおどーじゃんがえいえんにゆっぐぢぢでまぢだっ! まりぢゃ、まりぢゃはぁ……」
「あーわかったわかった、ごめんね君の両親死んじゃってるの気付かなくてー」
「あーわかったわかった、ごめんね君の両親死んじゃってるの気付かなくてー」
もちろん嘘だった。すべて気付いた上で質問していた。
段ボールの手前で不自然に二匹のゆっくりが死んでいたなら、想像もできようものだ。
わかってはいたが、あえてまりさ自身に両親がどうなったか説明させた。
その甲斐あって、まりさは両親の死を改めて思い出したのだろう、ボロボロと涙をこぼれさせていた。
段ボールの手前で不自然に二匹のゆっくりが死んでいたなら、想像もできようものだ。
わかってはいたが、あえてまりさ自身に両親がどうなったか説明させた。
その甲斐あって、まりさは両親の死を改めて思い出したのだろう、ボロボロと涙をこぼれさせていた。
「ゆびぃっ、ゆっぐ……ゆっぐち」
「いや、ごめんごめん。おとーさんとおかーさんは死んじゃってるから助けてもらうのは無理ね、よくわかった」
「いや、ごめんごめん。おとーさんとおかーさんは死んじゃってるから助けてもらうのは無理ね、よくわかった」
ぐずるまりさを宥める為に、私は話を進めた。
「それじゃ、私が助けてあげよう」
「ゆっ!?」
「ゆっ!?」
途端、まりさは泣きやんだ。
私が助けるといった瞬間、まりさは驚くようにこちらを見た。
驚きの表情から、ぱあぁ、と笑みが広がっていく。
ウザい。
ここからの流れが想像できるようだった。
私が助けるといった瞬間、まりさは驚くようにこちらを見た。
驚きの表情から、ぱあぁ、と笑みが広がっていく。
ウザい。
ここからの流れが想像できるようだった。
「ほ、ほんとなのじぇ!? それじゃ、まりちゃをかいゆっくりに――」
当然のように『飼いゆっくりになりたい』と言いだすまりさ。
他の事は言えないんだろうか。
しかも『のじぇ』口調になってやがるコイツ。調子に乗り始めたな。
予想していた通りの展開に私の反応も早く、
他の事は言えないんだろうか。
しかも『のじぇ』口調になってやがるコイツ。調子に乗り始めたな。
予想していた通りの展開に私の反応も早く、
「あ、それは無理」
「――してほしいのじぇ、ってどぼちてしょんなこちょいうのおおおぉぉっ!!?」
「――してほしいのじぇ、ってどぼちてしょんなこちょいうのおおおぉぉっ!!?」
言い切る前にあっさり希望を叩き折られ、まりさは泣き叫んだ。
「どぼちてぇ!?おねーしゃんはかいゆっくちにしてくれるっていったのじぇぇ!!」
言ってねえよ。
ゆっくりは息をするように記憶の捏造をするな、と私は思った。
ゆっくりは息をするように記憶の捏造をするな、と私は思った。
「いや、私のおうちはゆっくり禁止だから。飼いゆっくりはダメだよ」
「ま゛っ、まりぢゃいいこにしゅるのじぇ! いいこにしゅるから――」
「ま゛っ、まりぢゃいいこにしゅるのじぇ! いいこにしゅるから――」
食いさがるまりさ。
いい子にしたってダメなもんはダメなんだよ、と言っても聞きそうにない。
じゃあ別の答えを用意してやらねば。
いい子にしたってダメなもんはダメなんだよ、と言っても聞きそうにない。
じゃあ別の答えを用意してやらねば。
「それに、私のおうちって加工所だし」
「――ゅ゛っ」
「――ゅ゛っ」
私が言った途端、まりさは黙った。
さすがに赤ゆっくりと言えどゆっくり、『加工所』の文字は伊達ではない。
先ほどの必死ながらもまだゆっくりらしさのあった表情は消え去り、恐怖にこわばった顔と視線を向けていた。
さすがに赤ゆっくりと言えどゆっくり、『加工所』の文字は伊達ではない。
先ほどの必死ながらもまだゆっくりらしさのあった表情は消え去り、恐怖にこわばった顔と視線を向けていた。
「もしおうちにまりさなんて連れて行ったら、その日のうちに加工されちゃうよ?
多分とーっても痛いだろうなぁ、まずね、まりさはお帽子を取られてびりびりに破かれちゃうの。
そうした方が味に深みが増すんだって。そしたら後は体中をタワシでゴリゴリ削られて汚れと髪を落としてそれから――」
「ゆ゛びっ!! まりぢゃっ、ほかのおねがいごとにするのじぇ!!」
多分とーっても痛いだろうなぁ、まずね、まりさはお帽子を取られてびりびりに破かれちゃうの。
そうした方が味に深みが増すんだって。そしたら後は体中をタワシでゴリゴリ削られて汚れと髪を落としてそれから――」
「ゆ゛びっ!! まりぢゃっ、ほかのおねがいごとにするのじぇ!!」
完全に恐怖に引き攣った、それでもわずかに媚びの残る笑顔を向けてまりさは言った。
おそらくはもう聞きたくなかったのだろう。
根性無しめ。まだほとんど何も言ってないじゃないか。
ちなみに私の家が加工所なんてのは真っ赤なウソだ。
おそらくはもう聞きたくなかったのだろう。
根性無しめ。まだほとんど何も言ってないじゃないか。
ちなみに私の家が加工所なんてのは真っ赤なウソだ。
「ゆ、ゆんっ! まりちゃ、あまあまがほちいのじぇ! おねーしゃ、あまあまを――」
また分かりやすい欲求をまりさは口にした。
本当にこいつらはそれしか言う事がないんだろうか。
本当にこいつらはそれしか言う事がないんだろうか。
「持ってないよ、あまあま」
「――ちょう…だ……ゆびいいいいぃぃぃぃ」
「――ちょう…だ……ゆびいいいいぃぃぃぃ」
やはり言い切る前にあっさり断られたまりさ。
キラキラと輝いていたおめめは途中から曇りだし、最後には顔を伏せて泣き出してしまった。
キラキラと輝いていたおめめは途中から曇りだし、最後には顔を伏せて泣き出してしまった。
「まぁ持ってないもんはしょうがないね、ごめんね」
「ゆびっ、ゆびいいいぃぃぃ……ゆびゃああぁぁ……」
「ゆびっ、ゆびいいいぃぃぃ……ゆびゃああぁぁ……」
私は謝ったが、どうやらまりさは聞いておらずメソメソと泣き続けている。
順調に心が折れ始めているようだ。
順調に心が折れ始めているようだ。
「ゆび……まりちゃ、まりぢゃあぁ……」
「ん? 何?」
「ん? 何?」
伏せていた顔をあげ、まりさは涙でべしゃべしゃになった顔をこちらに向けた。
「まりぢゃ……あったかいおうちがほちいでしゅ……」
「ウチ、加工所だけどあったかいよ? 来る?」
「……ゆ゛……」
「ウチ、加工所だけどあったかいよ? 来る?」
「……ゆ゛……」
それ以上は何も言わず、まりさは再び顔を伏せた。
「ゆっぐち……ゆっぐち……ゆっぐちしちゃい……ゆっぐち……」
ブツブツと顔を伏せながら呟くまりさ。
最初からあまり元気でなかったまりさだが、今はよりゆっくりを欠き、衰弱しているようだった。
風が吹く。
最初からあまり元気でなかったまりさだが、今はよりゆっくりを欠き、衰弱しているようだった。
風が吹く。
「うお…寒みー」
「ゆっぐち……しゃむい……ゆっぐち…ゆっぐちがほちいよぉ……しゃぶい……」
「ゆっぐち……しゃむい……ゆっぐち…ゆっぐちがほちいよぉ……しゃぶい……」
私は充分に着こんでいるが、まりさは防寒になるようなものは段ボールのおうちしかなく、それも入り口は開け放たれている。
どちらがより寒さに弱いかは歴然としていた。
加えるに赤ゆっくりは寒さに耐えるだけの体力がほとんどない。
どちらがより寒さに弱いかは歴然としていた。
加えるに赤ゆっくりは寒さに耐えるだけの体力がほとんどない。
このままでは、まりさは私の見ている前で死ぬだろう。
何のゆっくりも見いだせずに。
それはかわいそうだ。
何のゆっくりも見いだせずに。
それはかわいそうだ。
「……寒いとゆっくりできないんだな?」
「……ゆ?」
「……ゆ?」
私の問いに、まりさはゆっくりと顔をあげた。
懐に手を入れる。目的のものはすぐに見つかった。
懐に手を入れる。目的のものはすぐに見つかった。
「ほら、カイロだ。あったかいよ」
「……ゆ? あったかしゃん?」
「……ゆ? あったかしゃん?」
まりさの視線が私の手、カイロに集まる。
私はそっとまりさのおうちの中にカイロを置いた。
私はそっとまりさのおうちの中にカイロを置いた。
「助けてあげるって言ったでしょ? 温かければゆっくりできるだろ」
「……ゆっ」
「……ゆっ」
まりさはよちよちとカイロに近寄り、体をそっと寄せた。
そのまま僅かにすりすりをする。
強張っていたまりさの表情が、ほぐれ始める。
そのまま僅かにすりすりをする。
強張っていたまりさの表情が、ほぐれ始める。
「ゆっ、ゆっ……ゆ」
「どう? あったかい?」
「ゆっ、ゆっゆっ、ゆ」
「どう? あったかい?」
「ゆっ、ゆっゆっ、ゆ」
私の言葉を聞いているのかいないのか、まりさは全身をカイロに擦り始める。
左右のほっぺをギュッと押しつけ、カイロの上でころころと転がる。
カイロの上に乗り「ゆ~ん」と、平べったくなってあんよを解していた。
寒さに震えていた表情は消え去り、ゆっくりを取り戻していき……
左右のほっぺをギュッと押しつけ、カイロの上でころころと転がる。
カイロの上に乗り「ゆ~ん」と、平べったくなってあんよを解していた。
寒さに震えていた表情は消え去り、ゆっくりを取り戻していき……
「……ゆ、ゆっぐちできりゅよぉ……!」
「そうか、ゆっくりできるか」
「そうか、ゆっくりできるか」
ほぼ涙声になりながら、まりさはにっこりと笑ってそう宣言した。
私も微笑む。
私も微笑む。
「あったかしゃんはゆっくちできりゅよ……」
「そうか」
「しゅっごいあったかいよ…おかーしゃんのすりすりよりきもちーよ…」
「おかーさんのすりすりよりゆっくりできる?」
「ゆん……まりちゃこんなにゆっくちしちゃのはじめてだよ…」
「そうか」
「しゅっごいあったかいよ…おかーしゃんのすりすりよりきもちーよ…」
「おかーさんのすりすりよりゆっくりできる?」
「ゆん……まりちゃこんなにゆっくちしちゃのはじめてだよ…」
蕩けた表情で頷き返すまりさ。
母よりゆっくりしてる、とはひどい言い草だが仕方がないだろう。
何しろこの季節に産まれた赤ゆっくりだ。
おそらく産まれてから満足に暖かかった日などなかったのではないか。
母よりゆっくりしてる、とはひどい言い草だが仕方がないだろう。
何しろこの季節に産まれた赤ゆっくりだ。
おそらく産まれてから満足に暖かかった日などなかったのではないか。
「まりさ、ゆっくりできた?」
「ゆん……とーっちぇもゆっくりできたよ……」
「そうか、それは良かった」
「おねーしゃ、ありがちょーね」
「うん? いや、いいよお礼なんて。助けてあげるって言ったのはこっちだし」
「それでもありがちょーね……」
「どういたしまして」
「ゆん……とーっちぇもゆっくりできたよ……」
「そうか、それは良かった」
「おねーしゃ、ありがちょーね」
「うん? いや、いいよお礼なんて。助けてあげるって言ったのはこっちだし」
「それでもありがちょーね……」
「どういたしまして」
まりさは今、確かにゆっくりしていた。
誰が見ても確実にゆっくりしていた。
産まれて此の方殆どゆっくりしていなかっただろうゆん生に、確かに誇れるゆっくりが齎されたのだ。
誰が見ても確実にゆっくりしていた。
産まれて此の方殆どゆっくりしていなかっただろうゆん生に、確かに誇れるゆっくりが齎されたのだ。
たかがカイロ一つだが、それでもまりさには掛け替えのないゆっくりなのだ。
そのまりさにとってのゆっくりを私は提供することができた。
思わず顔がほころぶ。
まりさにカイロを与えて良かった。こんなに嬉しそうなのだから―――
そのまりさにとってのゆっくりを私は提供することができた。
思わず顔がほころぶ。
まりさにカイロを与えて良かった。こんなに嬉しそうなのだから―――
「まりさ」
「ゆ?」
「ゆ?」
「それじゃそろそろ返してね、カイロ」
「ゆ、ゆゆ?」
「ゆ、ゆゆ?」
―――それが取られた時にはとても良い顔をするに違いない。
それからの私の行動は素早かった。
「よし、カイロ回収。うぃー寒かった」
「ゅ、ゆ?」
「ゅ、ゆ?」
まりさが乗ったカイロを取り上げる。まりさは転がり落ちた。
「じゃ、ついでにこのゴミも捨てておいてあげるね」
「ゆ!?」
「あー、このデカいの二つも捨てなきゃな」
「ゆびぃっ!! つめぢゃいいぃぃ!!」
「ゆ!?」
「あー、このデカいの二つも捨てなきゃな」
「ゆびぃっ!! つめぢゃいいぃぃ!!」
まりさを摘まみ出す。
今まで段ボールに守られていたまりさは雪に直に触れ、痛みに喚いた。
今まで段ボールに守られていたまりさは雪に直に触れ、痛みに喚いた。
「おっ、ダメだなこりゃ、皮がグズグズだわ」
「ちゅべっ!? お、おがーじゃ!? おどーじゃああぁぁ!!? ぢゃむ゛い゛っ!!」
「ちゅべっ!? お、おがーじゃ!? おどーじゃああぁぁ!!? ぢゃむ゛い゛っ!!」
凍りついた親ゆ二匹のもみあげとおさげを掴んだが、凍り付いた頭皮には体重を支えるだけの強度がなかったらしい。
二匹のもみあげはあっさりと抜け落ちた。
仕方がないので生前住んでいたおうちに案内し、それごとゴミ箱に捨てる事に決めた。
二匹のもみあげはあっさりと抜け落ちた。
仕方がないので生前住んでいたおうちに案内し、それごとゴミ箱に捨てる事に決めた。
「おでーじゃっ!? なんでぇっ!? どぼぢでぇっ!!?」
「ん? 今ゴミ捨て中だから後にしてね」
「おがーじゃっ!? おどーじゃっ!? おうぢっ!!? どぼちでっ!!?」
「ん? 今ゴミ捨て中だから後にしてね」
「おがーじゃっ!? おどーじゃっ!? おうぢっ!!? どぼちでっ!!?」
すぐ近くにゴミ箱があり、私はそこにゴミを叩き込んだ。
水気を吸った段ボールは、その中に入っているものごとぺしゃんこに潰れ、ゴミ箱の中に収まった。
うしろでまりさが何かを喚いているが、無視する。
水気を吸った段ボールは、その中に入っているものごとぺしゃんこに潰れ、ゴミ箱の中に収まった。
うしろでまりさが何かを喚いているが、無視する。
「おでーじゃ! いぢゃいっ! あんよ゛! ちゅべっ、じゃむいいいぃぃ!!」
「よし、片づけ完了。じゃ、まりさ、私そろそろ帰るから」
「ぢゃむい! いぢゃいっ! あん゛よ! たぢゅけっ! どぼぢでえぇぇっ!!?」
「よし、片づけ完了。じゃ、まりさ、私そろそろ帰るから」
「ぢゃむい! いぢゃいっ! あん゛よ! たぢゅけっ! どぼぢでえぇぇっ!!?」
ゴミ捨てを完了した私は、まりさに挨拶をする。
良い暇潰しになった。
特に先ほどから今のまりさの表情なんて、最高だね。
良い暇潰しになった。
特に先ほどから今のまりさの表情なんて、最高だね。
もし万が一、まりさが親を食べて冬を越されでもしないように、しっかりと親とおうちはゴミに出した。
これでまりさの生き残る確率はほぼゼロから、ゼロになったわけだ。
小さな赤ゆっくりであるまりさを片づけそびれても、おそらく迷惑を被る人はいないだろう。
これでまりさの生き残る確率はほぼゼロから、ゼロになったわけだ。
小さな赤ゆっくりであるまりさを片づけそびれても、おそらく迷惑を被る人はいないだろう。
「おでーじゃ! たぢゅけ! だぢゅけで! ゆっぐぢ! ゆっぐぢいいいぃぃぃ!!」
「ん?」
「ん?」
まだまりさが何か言っている。
私は今日最高の笑顔でまりさに向き直った。
私は今日最高の笑顔でまりさに向き直った。
「なに言ってんの? もう充分助けてあげたし、ゆっくりさせてあげたでしょ?
まりさはこれからもゆっくりできるよう頑張ってね! もちろん自分の力でね! お姉さん応援してるからね!
応援するだけだけどね! 頑張れば、いつかゆっくりする事ができると思うよ、多分!
それじゃ、ゆっくりしていってね、まりさ」
まりさはこれからもゆっくりできるよう頑張ってね! もちろん自分の力でね! お姉さん応援してるからね!
応援するだけだけどね! 頑張れば、いつかゆっくりする事ができると思うよ、多分!
それじゃ、ゆっくりしていってね、まりさ」
「ゆっぐぢじでいっぢぇね! ……ゆ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!! だぢゅげで! だぢゅげでぇ! ゆっぐち! ゆっぐぢぃ!」
半狂乱になって叫ぶまりさを尻目に、私は悠々と帰途へ就いた。
偶にはこんな遊びも面白い。
まりさは生半可にゆっくりを知ってしまった分、より苦しみを味わいぬいてゆん生を送るわけだ。
私に出会わなければ、いくらかはマシなゆん生――おそらくは、親を食って寒さだけしか知らずに生きていく事ができただろうに。
偶にはこんな遊びも面白い。
まりさは生半可にゆっくりを知ってしまった分、より苦しみを味わいぬいてゆん生を送るわけだ。
私に出会わなければ、いくらかはマシなゆん生――おそらくは、親を食って寒さだけしか知らずに生きていく事ができただろうに。
ふと考えてみれば、私にとって初体験だったかもしれない。
いわゆる『上げ落とし』という奴だ。
後の虐待の為にわざわざゆっくりを愛でる――私にとっては反吐の出る、苦行にも似た行為。
虐待とは地面に叩き付けてから地核まで踏み付け抜く、というのが私の考えだった。
いわゆる『上げ落とし』という奴だ。
後の虐待の為にわざわざゆっくりを愛でる――私にとっては反吐の出る、苦行にも似た行為。
虐待とは地面に叩き付けてから地核まで踏み付け抜く、というのが私の考えだった。
案外悪くないじゃないか。
この程度の『上げ』ならば、何とか私にだって出来たのだ。
まだゆっくり如きに餌を振舞うことは難しくとも――もう少し、楽な所からチャレンジしてみるのもアリかも知れない。
この程度の『上げ』ならば、何とか私にだって出来たのだ。
まだゆっくり如きに餌を振舞うことは難しくとも――もう少し、楽な所からチャレンジしてみるのもアリかも知れない。
公園を後にする私の耳には、まだまりさの叫び声が聞こえていた。
頑張ってね、まりさ。
お姉さんまりさに頑張ってゆっくりして欲しいって言ったのは本音だよ?
だってその方が、まりさの惨めさが引き立つし――そして私も楽しいから。
頑張ってね、まりさ。
お姉さんまりさに頑張ってゆっくりして欲しいって言ったのは本音だよ?
だってその方が、まりさの惨めさが引き立つし――そして私も楽しいから。
応援してるよ、まりさ。
おわり
個人的には愛でタグ付けてもいいくらいの愛でSSに仕上がったと思うよ!嘘だけどね!