使い魔の夢-6 - (2007/07/22 (日) 09:45:54) の1つ前との変更点
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昼休みのアルヴィーズの食堂は昼食を取る生徒達で一杯だった。
「何だこりゃ」
床に置かれていたのは隅っこにパンが二切れ置かれたスープの皿。
申し訳程度に肉の欠片が浮かんでいるのが切ない。
「見て分からない? あんたの食事」
ルイズはテーブルの椅子に腰掛けていた。ちなみに椅子は巧が引いた。
テーブルにはでかい鳥のローストや、鱒の形をしたパイなどの豪華な食事。
しかも、ワインつきと来ていた。
「おい」
何だ、この扱いの差は。
禿頭にもらった朝飯のほうがまだマシだったぞ。
「ここで食事が取れるだけ感謝しなさい。
ホントは使い魔は外で食事することになってるんだから」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「嫌なら食べなくてもいいのよ」
「……」
こんなモン食わされるのも今回だけだ、今に禿頭の奴がお前を……
その頃、その日の職務を全て片付けたコルベールは嬉々として
「ばいく」の保管してある馬小屋にステップを踏んで歩いていた。
使い魔の夢
「も、申し訳ございません! 」
謝罪の叫び声が聞こえたのは
フーフーして冷ましたスープを口につけようとした時だった。
「ルイズ」
「大方、ドジな給仕が貴族の誰かにそそうでもやらかしたんでしょ。
あんたが気にすることじゃないわ」
そう言ったルイズの手には、鳥の皮がつかまれていた。嫌いなんだろうか?
「そんなことより……って、ちょっと、何処行くのよ!? 」
無視する事はできなかった。
スープの皿を床に置いて、声がしたほうに足を向ける。
あの声は……
「シエスタの声だ」
学院に奉公している平民のメイド。
早朝の洗濯の時に道に迷っていた巧を洗濯場に案内してくれたり、
下着の洗い方も親身になって教えてくれた。
『イヌイタクミさん……タクミさんって呼んでいいですか? 』
この世界に来て初めて巧を名前で呼んでくれた。
知らない仲ではなかった。
既に人が群がっていた。
近くにいた太っちょに話を聞く。
マリコルヌとかいう授業の始めにルイズと揉めてた奴だ。
何でもシエスタが貴族の男の落とした香水を拾ったことで
男の二股がばれてしまい、その二人からまとめてビンタを喰らってそっぽを向かれたらしい。
そしてあろうことか男はその責任を香水の瓶を拾っただけのシエスタに
なすりつけようとしているというのが話の大元だ。
なんて野郎だ。
女に罪をなすりつけようとする根性もどうかと思うが
ガキの癖に二股か。
俺にすら彼女がいないのに!
人ごみを掻き分けて、男に言ってやった。
「そのへんにしとけ」
「君は」
男が巧の方に振り向いた。
顔を見て思い出した。あいつだ。
今日の朝、トカゲに追われていた時、巧を笑いものにしたカップルの片割れ。
ギーシュとか呼ばれていた金髪のいけ好かないガキ。
「ルイズの使い魔の平民で火トカゲの恋人君か。君には用はない、下がっていたまえ」
誰が恋人だ。と喉まで出掛かったが
今言うべき事はそれではなかった。
「話は聞いた。二股掛けたお前の自業自得じゃねぇか」
「そのとおりだ、ギーシュ! お前が悪い! 」
友人たちがドッと笑い、ギーシュの顔に赤味が差した。
シエスタの方に顔を向けた。あくまで責任をシエスタになすりつけるようだ。
「いいかい給仕君、香水の壜をテーブルに置いた時、僕は知らないフリをしていたんだ!
話を合わせる位の機転があってもいいだろう!? 」
叱責を受けたシエスタの目に涙が浮かぶ。
巧が横から言った。
「そんなものに頼んなきゃ二股の一つもできねぇのか、お前は」
ギーシュの目が光り、巧に再び向き合った。
「さっきから聞いていると、君は貴族に対する礼儀というものを知らないようだな」
「んなもん知るかよ」
これからも知りたくないね。
「よかろう、君に礼儀を教えてやろう。決闘だ! ヴェストリの広場で待っている」
ギーシュはクルリと体を翻し、去っていった。
シエスタがぶるぶる震えながら巧を見つめている。
「タクミさん、あなた……」
シエスタは涙を滲ませた顔で言った。
「あなた……殺されちゃう……、貴族の人を本気で怒らせたら……」
シエスタはだーっと走って逃げてしまった。
ああなるのも当然かもしれない。今朝出会った時に言っていた。
『私達、魔法の使えない平民にとってはメイジである貴族が何よりも怖いんです』
回想している内にルイズがやってきた。
「見てたわよ、何勝手に決闘なんか約束してんのよ! 」
「何でだろうな」
「とぼけてないで今すぐ謝ってきなさい! メイジに平民は絶対に勝てないんだから! 」
巧はもうルイズを見てなかった。ギーシュとのやりとりを見ていた一人に聞いた。
「ヴェストリの広場って何処だ? 」
「こっちだ、平民」
そいつの顎をしゃくった方に足を進めた。
「まったくあっちこっちフラフラして、勝手な事ばかりするんだから! 」
ルイズは巧の後を追いかけた。
「とりあえず逃げずに来た事は誉めてあげようじゃないか」
待ち構えていたギーシュが薔薇の造花を揚げ、うぉーっ!と歓声が巻き起こる。
『風』と『火』の塔の間の中庭にあるヴェストリの広場は噂を聞きつけた生徒達で溢れかえっていた。
「では、始めるか」
ギーシュは薔薇の花を振った。
花びらが一枚、宙に舞い……
「何だ!?」
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はないね?」
甲冑を着た女戦士の形をした人形になった!
形を成してすぐに、巧に向けて突進した。
クソッ、こっちだって生身でもオルフェノクと何度も渡り合ってきた身だ。
メイジだの人形モドキだのに舐められてたまるか!
女戦士の人形より先に、右でボディーブローを放った。
しかし、硬い金属製のボディは巧のパンチを物ともせず、
「がはぁっ! 」
逆に一撃を喰らい、巧は地面に倒れ込んだ。
「言い忘れていたよ、僕の二つ名は『青銅』、『青銅』のギーシュだ。
今の君が相手をしているのは青銅のゴーレム、美しき『ワルキューレ』! 」
青銅か、道理で拳じゃ歯が立たない訳だ……!
距離を稼いでいる巧に追い討ちを掛けるべく、ワルキューレが迫る。
巧は素早くポケットから携帯を取り出し、銃の形に変形させ、
コード103をプッシュする。
『Single Mode』
電子音声のアナウンスが聞こえた。
フォンブラスター。
携帯電話型マルチデバイス・ファイズフォンのもう一つの姿。
今の巧が所有する唯一の武器である。
ワルキューレに光弾が命中した。
大きく仰け反った隙を巧は見逃さなかった、続けてプッシュするコードは106。
『Burst Mode』
連発式で打ち出された光弾がワルキューレの四肢に撃ち込まれる。
間接の繋ぎ目を砕かれて、人形はバラバラになった。
際どい相手だった。息をつく暇もなかった。
少しの手順でも遅れていたら、バラバラになっていたのは自分だっただろう。
心なしかいつもより速く動けたのが幸いだった。
予想外の平民の勝利に周囲から歓声がとんだ。
傷に触ったので巧は周りを睨みつけ、静まらせた。
そして、静まりきった場に一つの拍手が響く。
拍手の主はギーシュだった。
「なかなかやるね、正直意外だったよ」
「何言ってやがる」
次はテメエだ。そのナヨナヨした顔に一発叩き込んでやる。
巧は駆け出した。
「焦ってはいけない、勝負はこれからだ」
笑みを崩さずにギーシュは始めの時と同じように薔薇を振った。
花びらが舞い、巧を囲む形で新たなワルキューレが六体現われた!
(……嘘だろ!)
あの化け物が同時に六体も……!
巧はメイジの力に戦慄した。
昼休みのアルヴィーズの食堂は昼食を取る生徒達で一杯だった。
「何だこりゃ」
床に置かれていたのは隅っこにパンが二切れ置かれたスープの皿。
申し訳程度に肉の欠片が浮かんでいるのが切ない。
「見て分からない? あんたの食事」
ルイズはテーブルの椅子に腰掛けていた。ちなみに椅子は巧が引いた。
テーブルにはでかい鳥のローストや、鱒の形をしたパイなどの豪華な食事。
しかも、ワインつきと来ていた。
「おい」
何だ、この扱いの差は。
禿頭にもらった朝飯のほうがまだマシだったぞ。
「ここで食事が取れるだけ感謝しなさい。
ホントは使い魔は外で食事することになってるんだから」
「そういう問題じゃねぇだろ」
「嫌なら食べなくてもいいのよ」
「……」
こんなモン食わされるのも今回だけだ、今に禿頭の奴がお前を……
その頃、その日の職務を全て片付けたコルベールは嬉々として
「ばいく」の保管してある馬小屋にステップを踏んで歩いていた。
[[使い魔の夢]]
「も、申し訳ございません! 」
謝罪の叫び声が聞こえたのは
フーフーして冷ましたスープを口につけようとした時だった。
「ルイズ」
「大方、ドジな給仕が貴族の誰かにそそうでもやらかしたんでしょ。
あんたが気にすることじゃないわ」
そう言ったルイズの手には、鳥の皮がつかまれていた。嫌いなんだろうか?
「そんなことより……って、ちょっと、何処行くのよ!? 」
無視する事はできなかった。
スープの皿を床に置いて、声がしたほうに足を向ける。
あの声は……
「シエスタの声だ」
学院に奉公している平民のメイド。
早朝の洗濯の時に道に迷っていた巧を洗濯場に案内してくれたり、
下着の洗い方も親身になって教えてくれた。
『イヌイタクミさん……タクミさんって呼んでいいですか? 』
この世界に来て初めて巧を名前で呼んでくれた。
知らない仲ではなかった。
既に人が群がっていた。
近くにいた太っちょに話を聞く。
マリコルヌとかいう授業の始めにルイズと揉めてた奴だ。
何でもシエスタが貴族の男の落とした香水を拾ったことで
男の二股がばれてしまい、その二人からまとめてビンタを喰らってそっぽを向かれたらしい。
そしてあろうことか男はその責任を香水の瓶を拾っただけのシエスタに
なすりつけようとしているというのが話の大元だ。
なんて野郎だ。
女に罪をなすりつけようとする根性もどうかと思うが
ガキの癖に二股か。
俺にすら彼女がいないのに!
人ごみを掻き分けて、男に言ってやった。
「そのへんにしとけ」
「君は」
男が巧の方に振り向いた。
顔を見て思い出した。あいつだ。
今日の朝、トカゲに追われていた時、巧を笑いものにしたカップルの片割れ。
ギーシュとか呼ばれていた金髪のいけ好かないガキ。
「ルイズの使い魔の平民で火トカゲの恋人君か。君には用はない、下がっていたまえ」
誰が恋人だ。と喉まで出掛かったが
今言うべき事はそれではなかった。
「話は聞いた。二股掛けたお前の自業自得じゃねぇか」
「そのとおりだ、ギーシュ! お前が悪い! 」
友人たちがドッと笑い、ギーシュの顔に赤味が差した。
シエスタの方に顔を向けた。あくまで責任をシエスタになすりつけるようだ。
「いいかい給仕君、香水の壜をテーブルに置いた時、僕は知らないフリをしていたんだ!
話を合わせる位の機転があってもいいだろう!? 」
叱責を受けたシエスタの目に涙が浮かぶ。
巧が横から言った。
「そんなものに頼んなきゃ二股の一つもできねぇのか、お前は」
ギーシュの目が光り、巧に再び向き合った。
「さっきから聞いていると、君は貴族に対する礼儀というものを知らないようだな」
「んなもん知るかよ」
これからも知りたくないね。
「よかろう、君に礼儀を教えてやろう。決闘だ! ヴェストリの広場で待っている」
ギーシュはクルリと体を翻し、去っていった。
シエスタがぶるぶる震えながら巧を見つめている。
「タクミさん、あなた……」
シエスタは涙を滲ませた顔で言った。
「あなた……殺されちゃう……、貴族の人を本気で怒らせたら……」
シエスタはだーっと走って逃げてしまった。
ああなるのも当然かもしれない。今朝出会った時に言っていた。
『私達、魔法の使えない平民にとってはメイジである貴族が何よりも怖いんです』
回想している内にルイズがやってきた。
「見てたわよ、何勝手に決闘なんか約束してんのよ! 」
「何でだろうな」
「とぼけてないで今すぐ謝ってきなさい! メイジに平民は絶対に勝てないんだから! 」
巧はもうルイズを見てなかった。ギーシュとのやりとりを見ていた一人に聞いた。
「ヴェストリの広場って何処だ? 」
「こっちだ、平民」
そいつの顎をしゃくった方に足を進めた。
「まったくあっちこっちフラフラして、勝手な事ばかりするんだから! 」
ルイズは巧の後を追いかけた。
「とりあえず逃げずに来た事は誉めてあげようじゃないか」
待ち構えていたギーシュが薔薇の造花を揚げ、うぉーっ!と歓声が巻き起こる。
『風』と『火』の塔の間の中庭にあるヴェストリの広場は噂を聞きつけた生徒達で溢れかえっていた。
「では、始めるか」
ギーシュは薔薇の花を振った。
花びらが一枚、宙に舞い……
「何だ!?」
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はないね?」
甲冑を着た女戦士の形をした人形になった!
形を成してすぐに、巧に向けて突進した。
クソッ、こっちだって生身でもオルフェノクと何度も渡り合ってきた身だ。
メイジだの人形モドキだのに舐められてたまるか!
女戦士の人形より先に、右でボディーブローを放った。
しかし、硬い金属製のボディは巧のパンチを物ともせず、
「がはぁっ! 」
逆に一撃を喰らい、巧は地面に倒れ込んだ。
「言い忘れていたよ、僕の二つ名は『青銅』、『青銅』のギーシュだ。
今の君が相手をしているのは青銅のゴーレム、美しき『ワルキューレ』! 」
青銅か、道理で拳じゃ歯が立たない訳だ……!
距離を稼いでいる巧に追い討ちを掛けるべく、ワルキューレが迫る。
巧は素早くポケットから携帯を取り出し、銃の形に変形させ、
コード103をプッシュする。
『Single Mode』
電子音声のアナウンスが聞こえた。
フォンブラスター。
携帯電話型マルチデバイス・ファイズフォンのもう一つの姿。
今の巧が所有する唯一の武器である。
ワルキューレに光弾が命中した。
大きく仰け反った隙を巧は見逃さなかった、続けてプッシュするコードは106。
『Burst Mode』
連発式で打ち出された光弾がワルキューレの四肢に撃ち込まれる。
間接の繋ぎ目を砕かれて、人形はバラバラになった。
際どい相手だった。息をつく暇もなかった。
少しの手順でも遅れていたら、バラバラになっていたのは自分だっただろう。
心なしかいつもより速く動けたのが幸いだった。
予想外の平民の勝利に周囲から歓声がとんだ。
傷に触ったので巧は周りを睨みつけ、静まらせた。
そして、静まりきった場に一つの拍手が響く。
拍手の主はギーシュだった。
「なかなかやるね、正直意外だったよ」
「何言ってやがる」
次はテメエだ。そのナヨナヨした顔に一発叩き込んでやる。
巧は駆け出した。
「焦ってはいけない、勝負はこれからだ」
笑みを崩さずにギーシュは始めの時と同じように薔薇を振った。
花びらが舞い、巧を囲む形で新たなワルキューレが六体現われた!
(……嘘だろ!)
あの化け物が同時に六体も……!
巧はメイジの力に戦慄した。
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