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双月の女神 序章1 - (2007/12/19 (水) 01:52:58) のソース
朝霧が深い森の中、一人の女性が道を行く。 ここはかつて女神が存在した、その世界では唯一の大陸、『テリウス』の一国「デイン」国境付近に位置する森である。 (デインの地もこれで見納めね・・・。) 肩を覆う程のまっすぐで絹糸のような銀髪の女性は、別れを告げるであろう 故郷を思う。 女性の名はミカヤ。 50年前、この地を救った英雄の一人、『暁の巫女』。 先代のデイン王国女王であった。 [[ファイアーエムブレム外伝 ~双月の女神~]] 第一部 『ゼロの夜明け』 序章 『召喚(ミカヤの章)』 50年の月日を得ても衰えぬその美貌。 それは彼女の命の長さを示すもの。 神に近い姿で進化した知の民『ベオク』、獣の姿から進化した力の民『ラグズ』の間に生まれた子供は長寿であり、生来から強い「力」を持つ。 彼女の祖は古き時代に世界を救った英雄、ベオクの女剣士オルティナと鷺の民エルラン。 故に女神の声を聞き、その身に女神の半身を映した。 もう一つの女神の半身がヒトの争いに怒り、裁きを持って滅ぼさんとした時、『勇者』とその多くの仲間と共に立ち向かった。 激しくも悲しい、その戦いに打ち勝ち、女神が治める時代に終わりを告げた。 その後、荒廃した故国の復興を長い年月をかけ、成し遂げるも王夫サザが病に倒れ、息を引き取る。 (あの頃を共に生きた人達ももう、ほとんど残っていない。) そして現在、任せられる者に王位を譲り、デインの地を後にしようとしていた。 共に戦場を駆けた、数冊の魔道書と二本の杖。右手に持つ聖杖『マトローナ』と共に。 その時だった。 「え!?」 ミカヤの眼前に、銀色に磨きぬかれた鏡が現れたのは。 不可思議な魔力を放つそれは、まるで扉のようでもあった。 そこからは、「声」が聞こえる。 「使い魔・・・。」 その言葉に引っかかるものはあった。 しかし、『鏡』から聞こえてくるのであろう少女らしき声は、切々と訴えている。 「・・・。」 ミカヤは杖を『鏡』に向けると、此方側から魔力を送り、「声」を『鏡』の向こうへ届けるように語り掛ける。 「私に呼びかける者へ、問います。」 その「声」が届いたのか、『鏡』の向こうの「誰か」が戸惑うような反応が返ってくる。 「私を呼び、望むものは何ですか?」 その「誰か」は暫し、沈黙する。そして、意を決したように此方に答えを返す。 その答えにふと、慈愛のこもった微笑を浮かべた。 「そう。それが答えなのね。」 その答えは彼女の、満足できる答えだった。 「あなたの召致に応じましょう。」 そう宣言すると、ミカヤは鏡の前へと歩みを進め――― 瞬間、彼女は光に包まれた。 光が晴れ、目を開けると、眼前には草原が広がり、突き抜けるような青い空。 そして、桃色の艶を持つブロンドの少女が見えた。 自身に呼びかけたのは、彼女であると確信し、こう名乗った。 「私はミカヤ。貴女の呼びかけに応えた者。 貴女と共に在り、共に生きることを誓いましょう。」 それが、彼女達の出会いだった。