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男達の使い魔 第十二話 - (2009/06/15 (月) 21:38:22) のソース
食材が並んでいる。卵、胡椒、塩、油などに混ざって、わざわざ遥か遠くから仕入れてきたという米まである。 料理人達が息を呑んでたたずんでいる中、雷電が声をかける。 「マルトー殿!準備ができましたぞ!」 「おう!」 一声吼えてからマルトーがゆっくりと動き出した。 さすがの雷電でさえ緊張を隠せない中、マルトーのみがいつも通りに調理場に立つ。 マルトーの前にあるのは、わずかばかりの食材と調味料のみ。 そして大きく気勢を上げる火炎と、これもまた大きな鍋。 たったこれだけの準備で一体何を作るつもりなのであろうか。 料理人たちの凄まじいばかりの気合が解せない。 雷電がサポートのため、マルトーの横に立った。 そう、いよいよハルケギニアにおいて料理大帝と詠われたマルトーの技が見られるのだ。 しかも今回は、雷電から聞いた料理をマルトーなりに解釈した新技だという。 一同固唾を呑んで見守る中、ついにマルトーが鍋を手に取った。 「油!」 「はっ!」 「卵!」 「はっ!」 「米!」 「はっ!」 矢継ぎ早にマルトーが注文を出す。雷電が見事にそれに応え、的確に注文の品を渡す。 片手で食材を受け取りながらも、マルトーはもう片手で鍋を振り続ける。焦げず、生焼けにならず、絶妙にミックスされる食材達。 見事としか良いようがないが、他の料理人達はまだ緊張を解かない。 これから一体何があるというのだろうか。 「下がれ!」 マルトーの掛け声で雷電が後ろに退く。 その瞬間、場の緊張が最高潮に達した。 「うおおおおおおおおお!」 マルトーの気合の声が上がる。 その時料理人たちは見た。黄金の柱が挙がるのを。 そう。鍋の具材が高く跳ね上がり、しかし米粒の一粒すら落とすことなく鍋に戻っているのだ。 さらに超高速で振られ続ける鍋は、無駄な油をそぎ落とし、熱気を完全に閉じ込め理想の火加減を作る。 皆が我を忘れて見つめる中、マルトーの目が光る。次の瞬間、マルトーの左手にはお玉に似た何かが握られていた。 まさしく流れるような手つきで鍋の中のものをすくい出すと、綺麗な半球形に皿に盛った。 黄金の塊!その場にいた者たちは全員そう思ったに違いない。 それほどまでに、その皿に盛られた物体は輝きを放っていたのだ。 「炒飯一丁お待ち!」 マルトーが試食人に目線を向ける。 その男は己の懐から箸を取り出すと、心底感服したような目でマルトーを見つめた。 「これぞまさしく熱気圏!見事なり。」 そういって、一号生達に事情を聞きに来た王大人はゆっくりと試食を開始した。 「料理って光るのね。」「……(驚いて声もでない)」 珍しく早起きをしたキュルケとタバサであった。 その日、ルイズは己が目を疑った。 他の生徒達がいつも通りのハルケギニア風朝食を取っている中、ルイズの目の前に置かれているものだけが違ったのだ。 正確には、ルイズにキュルケ、タバサやギーシュが囲んでいるテーブルだけが違っていた。 「シエスタがお世話になったお礼、とマルトー殿から承ってござる。 是非ともこれらを食していただきたいとのこと。 これらの料理の数々は、満漢全席といって……」 そうして雷電が目の前の料理の品々を解説しだすのを、ルイズは呆然としたまま聞いていた。 雷電の故郷の料理だというそれらを、恐る恐る口に運んでみる。 まずルイズが目をつけたのは、この金色に光る黄金炒飯なる品だ。 「~~~~~~~~~~~!」 口に入れた瞬間、ルイズの脳がスパークする。 幸福をつかさどるβエンドルフィンが大量に発生する! 他の生徒達が息を呑んで見つめる中、ルイズがとうとう一声あげる。 「お、おいしーーーーーーー!」 その台詞に、同じく固唾を呑んで見守っていたキュルケ達も、それぞれ好きな皿に手を伸ばし始める。 そうして次々と歓声を上げ始めた。 「か、辛!でもなにこのおいしい緑色のは!え?ラー油?」 「……(無言でフォークとナイフを動かす音だけが響き渡る)」 「な、なんだこれは!まったりとしてこくがあり、それでいてしつこくない!」 彼女らはまさしく幸福であった。彼らの質問には雷電が一つ一つ答えていた。 押し寄せる他の生徒達から食卓をガードしながら。大往生流の神技を駆使したその技は見事の一言である。 しかし、いかな雷電とて、一人では物理的な限界が存在したようだ。 ついに防波堤が決壊する。しかし、ルイズ達は食事に夢中で気づかない。 このままでは、己の主達に迷惑がかかる! そう判断した雷電は素早かった。 「大往生流槃旒双體(ダイオウジョウリュウハンリュウソウタイ)!」 そう叫んだ瞬間雷電がもう一人誕生した! あとは語るまでもないだろう。 そうして雷電は、見事に己が主人の安息を守りきったのだ。 まさしく使い魔の鏡である。 そのころシエスタは、料理の残りを一号生達に振舞っていた。 もちろんマルトーの指示ではあるが、シエスタ自身も喜んでいた。 どこか祖父と似た匂いのする彼らのことが気に入っていたのだ。 そうして、相撲取り一人分位はありそうな料理を軽々と持ったシエスタは、ついに新男根寮までやってきた。 ルイズ達を除いて、相変わらず学院の生徒達は寄り付かないようだ。 (仕方ないとは思いますけど。) そう思ってシエスタは少し複雑な表情を浮かべる。 ルイズ様の使い魔達はすごく良い人たちだ。 そのことにはシエスタは確信を持っている。 ただ、 (皆さん個性的ですから……) そう、一部を除いて、彼らは第一印象が良くないのだ。 しかし、彼らと接触した者たちの評判は悪くないのは、ルイズやギーシュ達以外にも、キュルケやタバサが時々顔を出すことからも明らかだ。 その彼女らとて、最初は理由があって接触したのだ。 ルイズは、己が使い魔だからという理由で。 キュルケは、飛燕の見た目が良かったからちょっかいをかけようとして。 タバサは、フーケと戦った時に見た伊達の槍術に惹かれて。 ギーシュは決闘で敗れたシエスタに謝罪に来て、マリコルヌはそんなギーシュの姿を見て。 コルベールはゼロ戦に興味を持って。 みんなそれぞれ理由があるのだ。 純粋に最初からルイズの使い魔達と仲良くなろうと思って接触したのは、シエスタにマルトー位であろう。 そこまで考えたシエスタは、一つ溜息を吐くと気持ちを切り替えることにした。 今日は、祖父のことを話し合う日なのだ。こんな気持ちは似合わない。 気を取り直したシエスタは、大きな声で呼びかけた。 「みなさーん。マルトーさんから差し入れを持ってきましたよー。」 その声が響いた瞬間、窓という窓から一号生達が飛び出してくる。 彼らにとって、たまにあるマルトーからの差し入れは、数少ない娯楽の一つなのだ。 争いになるのも無理はない。 (余談ではあるが、彼らの最大の楽しみは、見目麗しいシエスタとの会話だ。 元の地球でも、女っ気の全くなかった彼らだ。その気持ちは押して知るべし。 もっとも、全員紳士的な態度を崩そうとはしない。それ位は男塾で厳しく仕込まれているのだ。 なおルイズとは、その機嫌を損ねることなく話せる人材は少数派であるし、キュルケでは、彼らが気後れしてしまう。 タバサとは会話を長続きさせるのが極めて困難である、ということも付け加えておく。) 今日も一号生達の一日が始まった。 そのころルイズは、自室でオスマンからもらった始祖の祈祷書をもてあましていた。 オスマンからの重大な依頼に、朝食で得た多幸感はすっかりと薄らいでしまった。 そうは言っても、親友のアンリエッタのために素晴らしい詔をあげたい、とは思うがなかなかうまくはいかない。 「ねえ、雷電にデルフ。あんた達人生経験豊富でしょ。なんかアドバイスない?」 その台詞に、何か話し込んでいた雷電とデルフリンガーがルイズの方を向きなおす。 「アドバイスねー。それより俺としては、なんかその本に見覚えがあるんだけどなー。どうも思い出せねー。」 デルフリンガーが何か言っているが、結局いつものオチにたどり着いてしまう。 少し残念な気持ちを抑えながらルイズは雷電の方をチラリと見る。 「うむ。それでは、」 そう言って雷電が朗々と漢詩を朗読し始める。なんでも抜山蓋世の歌という恋歌を聴いていてルイズは思う。 会話の相手としては多少の難があるが、この男は本当に多才だ、と。 そうやって、自分なりに気に入った話を基にして詔を考えようと、ルイズがメモを取り始める。 その時、デルフリンガーの声が響いた。 「そうだ!思い出した!」 空気を読まないヤツ。 そんな目線をルイズが向けるが、デルフリンガーは気にしない。 「水のルビーだよ水のルビー!あー、ちくしょう!なんで思い出せなかったかなぁ。 嬢ちゃん!水のルビーをして祈祷書を読んでみな!」 そう、デルフリンガーは久しぶりに六千年前のことを思い出していたのだ。 思わぬデルフリンガーの様子に、驚いたルイズは、水のルビーをはめて祈祷書を開いてみた。 すると、 「虚無の系統……。伝説の系統じゃないの。」 思わずルイズは叫び声をあげた。 手の中の始祖の祈祷書は、静かに光をあげていた。 シエスタは祖父の話を聞いていた。 アルビオンで別れた王大人という人物は、ルイズの使い魔達が知らない祖父のことまで、よく知っていたのだ。 もっとも王大人も驚いていたが。あの大豪院邪鬼の孫娘というシエスタに。 (まこと遺伝子とは不思議なものよ。) 王大人がそう思ったかどうかは定かではない。 あの祖父ですら手も足もでず敗れたという江田島なる人物に、シエスタは心底驚いた。 そして、その大人物を超えようと修練を重ねる祖父に、最後に桃に男塾総代を渡して天に帰ったという祖父に、シエスタは涙した。 今度はシエスタの番だ。 そうしてシエスタは語りだす。在りし日の祖父の姿を。 その話は、邪鬼が男塾にいた時よりも破天荒であった。しかしどこかもの悲しくもあった。 まさしく奇跡的に命を取り留めてハルケギニアにやってきた大豪院邪鬼は、己を磨くべく、強敵を求めて各地を放浪した。 その道中はまさしく破天荒であった。 ある時などは、正面から堂々と貴族の城に乗り込み、ついには悪政をひいていたトライアングルクラスのメイジを討ち取ったという。 まさしく痛快である。しかし、大豪院邪鬼が満たされることはなかった。 そんな彼が、どこか故郷に残した妻に似た女性と出会い、子を成したのは必然であろう。 「どうやって出会ったのかは話してくれませんでしたが、本当に仲の良い二人でした。 特に何か会話をするわけではないのですが、二人でいるのが自然と感じました。 子供心にも、将来はあんな二人になりたい、と強く憧れを感じたのを覚えています。」 シエスタは優しい顔で語り続ける。その内容に、みな一様に引き込まれていった。 「おばあちゃんが流行り病で亡くなったとき、おじいちゃんは何も言いませんでした。 不思議に思った私が、思わずおじいちゃんの顔を見上げようとしましたが、何か音がするので下を見ると、」 そこには、手を強く握り締めた邪鬼の血が滴っていたという。 そうして祖父と祖母の話を終えたシエスタは、祖父の最後を語りだした。 「あれは、おばあちゃんが亡くなって一年後のことでした。今からですと4年前ですね。」 「オークの群れが現れたぞー!!」 そう言って、シエスタの家族の隣に住んでいる人が、叫びながら走っていた。 たかがオークの群れの一つや二つ、おじいちゃんの敵じゃないのはおじさんも知っているのに。 そう思ったのはシエスタだけではなかった。ある村人がその事を問いただす。 「あれはそんな数じゃなねぇ!軽く二百匹は超えているぞ!みんな荷物を持って逃げるんだー!」 事態を知った村人達は慌てて駆け出す。 そう、オークの二百匹ともなれば、軍隊でもなければ太刀打ち不可能な強敵なのだ。 みな悲しそうな顔をして村を見つめている。誰も逃げ出したくなどないのだ。 この地には多くの思い出が詰まっている上、もうすぐ葡萄の収穫の時期だ。 これを逃すということは、一年間は収入がなくなるのだ。間違いなくつらい一年になるだろう。 だが、命にはかえられない。そんな思いを代弁するかのように、村長が重い声で出発を告げる。 その時 「待てい!あのオークどもは俺が倒す。我が妻の眠るこの地を荒らしはさせん!」 そういって大豪院邪鬼が姿を現した。 しかし、村人達は知っていた。この一年間で大豪院邪鬼がずいぶんと弱っていることを。 そう、妻の看病を続けていた彼は、妻の病がうつっていたのだ。 いかな邪鬼とてもう七十も後半である。病にもなろう。 そのことを知っていた村人達は、邪鬼も一緒に逃げるように懸命に説得をする。 彼らは、この武骨な、村の安全を一人で守り抜いてきたこの男が大好きなのだ。 だが邪鬼の決意は揺るがない。 きびすを返すと、オークを迎え撃つべく、葡萄畑の郊外の草原に足を進めていった。 村人達の懇願を背に歩き出した邪鬼の顔には笑みが浮かんでいた。 「おじいちゃんは知っていたのかもしれません。自分の命がもう少ないことを。」 そうしてシエスタは話を続ける。 しばらく呆然とした村人達だが、各々武器を手に取ると勝ち目のない戦いに臨むべく、慌てて邪鬼のあと追いかけたという。 当然シエスタも追いかけた。そこで見たのは、 そこで一つ大きく息を吸い込んだシエスタは話を続けた。その目には涙が浮かんでいた。 「大豪院流撞球反射馘(だいごういんりゅうどうきゅうはんしゃかく)!」 そう叫んで邪鬼は、片手で持ち上げたオークを投げつける。 「はあ!」 邪鬼の気合と共に、オークに真空殲風衝がぶち当たり、まるでビリヤードのごとく他のオークを粉砕していく。 その風景に、シエスタは驚いていた。自分が一番良く知っているはずの祖父の技の切れに! (本気のおじいちゃんってこんなに強かったんだ!) しかし、運命は無事に終わることを許さなかった。 順調に敵を片付けていた邪鬼だが、突然膝をつくと大量に喀血をはじめた。 「くっ!不覚!」 押されていたオーク達だったが、その瞬間は見逃さなかった。全員が邪鬼に殺到する。 本能で分かっていたのだ。この瞬間を逃せば全滅するのが自分達であることを。 なんとか立ち上がった邪鬼ではあったが、その体には先ほどまでの切れはなかった。 それでも、正面から襲い掛かってきた二匹のオークを、即座に血祭りにあげたのはさすがと言えよう。 だが、一本の槍がついに邪鬼の心臓を貫いた。 「おじいちゃん!」 シエスタの絶叫が響いた。 とうとう怨敵を打ち倒したオーク達は、この小さい生き物をなぶり殺すことにした。 仲間を大量に殺され殺気立っていた彼らに、手加減などはない。 そんなオーク達の様子をシエスタは呆然と見ていた。 次は自分の番である。祖父の足元にも及ばない自分では、すぐに殺されてしまうだろう。 しかし、 (私は大豪院シエスタ!こんなやつらに屈してなんてやるもんか!) 誇り高い祖父の血を引く自分が、心を折るわけにはいかない。 そうして顔をあげたシエスタの目に、信じられない光景が飛び込んで来た。 「貴様ら!俺を置いてどこに行く!」 大豪院邪鬼が立ち上がっていた。 オーク達はどよめいている。 骨が折れている。 筋が切れている所もある。 心臓さえもが貫かれている。 しかし、その程度のことは、大豪院邪鬼を止める理由にはなりえない。 「シエスタよ!これが大豪院流極超奥義冥王炸裂波だ!」 そう叫んだ邪鬼の体を極大の気が包み込むと邪鬼は天高く浮かび上がった。 オーク達の混乱は続いている。それを見逃す邪鬼ではない。 「はっ!」 極限の気合と共に、彗星のごとく邪鬼が突撃すると同時に爆発が沸き起こる。 凄まじいまでの砂埃が生じるが、シエスタは決して目を閉じない。 祖父の最後の姿を見逃すわけにはいかないのだ。その目には涙が浮かんでいた。 そうして砂埃が晴れたとき、オーク達は消滅していた。 爆発の中心には悠然と邪鬼が立っていた。 ようやく村人達が到着したが、あまりの惨状に声も出ない。 そんな中、邪鬼がゆっくりとシエスタに近寄る。 「大豪院流、しかと伝えたぞ!」 「はいっ!」 シエスタの涙は止まらないが、それでも邪鬼を見つめる。 そんなシエスタを邪鬼は優しく見つめていた。 そうして、最後にシエスタの頭を一撫ですると、天を見上げる。 そう、大豪院邪鬼が天に帰る時がやってきたのだ。 走り寄ってきた娘夫婦にシエスタを渡すと、最後に大きく邪鬼は叫んだ。 「見ろ!これがこの世で最後の真空殲風衝だ!」 その光景をシエスタは一生忘れないだろう。 邪鬼が天高く放った真空殲風衝は、空中で折り返すと、地上の邪鬼へと舞い降りた。 それを邪鬼は悠然と見つめていた。 ついに真空殲風衝が邪鬼を捕らえると、一辺の塵すらも残すことなく、その痕跡を消し去った。 「……以上でおじいちゃんの話は終わりです。」 そう言ってシエスタは周りを見渡す。みな懸命に涙をこらえていた。 異世界に行っても、邪鬼は邪鬼として生き、そして死んだのだ。 男泣きをしないわけがない。 「あやつらしい死に方だな。」 そう言って王大人は立ち上がった。 長話で疲れた皆に茶でもふるまおうと思ったのだ。 茶を飲んで落ち着いた皆、ゆっくりと雑談に興じ始めた。 その空気はとても暖かい。 そこへ扉をたたく音が響いた。 「あ、はい。どちら様ですか。」 シエスタが入り口のドアを開けると、そこにはタバサが立っていた。 タバサは、じっと王大人を見つめると、突然告げた。 「貴方が王大人?漢方という医術を使うと聞いた。」 そう言って、ドアの横に立っているシルフィードを見る。 どうやら、シルフィードから聞いた、と言いたいらしい。 「貴方に見て欲しい人がいる。」 言葉を続けたタバサの顔には、かつてないほどの緊張感が漂っていた。 [[男達の使い魔]] 第十二話 完 NGシーン 雷電「むう、あれは!」 虎丸「知っているのか雷電!?」 雷電「あれぞまさしく古代中国に伝わる貴筒書(きとうしょ)!」 古代中国に貴筒という仙人がいた。 あらゆる天候を操り、仙術を極めたと言う彼は、太上老君に頼まれて一冊の書を残した。 この本を巡って幾つもの争いが起きたため、太上老君は有効利用を諦めて、ついには異次元に飛ばしたという。 この故事がハルケギニアに伝わり、まじないなどに使用する書を貴筒の書、すなわち祈祷書と音を変えて呼ぶように なったのは有名な話である。 なお、この書を諸葛孔明が授かり、赤壁の戦いにおいて大活躍をしたことは有名な事実であり、 一説では雌威璽(めいじ)の始祖武利彌瑠(ぶりみる)がこの本で魔法を覚えたと言う話もある。 民明書房刊 「古代中国とハルケギニアに見る風習の違い」(平賀才人著) ----