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豆粒ほどの小さな使い魔-14 - (2007/11/08 (木) 01:08:19) のソース
#center{[[前ページ>豆粒ほどの小さな使い魔-13]] / [[豆粒ほどの小さな使い魔]] / [[次ページ>豆粒ほどの小さな使い魔-15]]} ---- ……マメイヌ隊に入隊が決まって、舞い上がっていた気持ちは、最初の一週間でぺしゃんこになった。 走ることに自信はあったけど、それだけじゃだめだって知ってたから、狩りや探索も自分なりに練習してた。 お父さんとか、元クマンバチ隊の人にもお話聞いて。 なのに、いざ現場に出たら、先輩たちに全然着いていけないの。 やらなきゃって思ってるのに、頭が働かなくて、手が間に合わなくて、それで、 「それで……叱られたの?」 叱られなかった。だから余計に怖かった。 ルイズはどう? 叱られたら、そりゃ泣きそうになるかもしれないけど、でも、どこか安心できなかった? 心配してくれるから、だから叱ってくれるんだって。 マメイヌ隊は、ね、結構入れ替わりが激しいの。先輩たちは皆優しかったけど、でも本当は、後ろにいる隊長たちがどんな目で私のことみてるのか、怖くて振り向けなかった。 おかしいでしょ。 小さいときからずっと憧れてて、頑張って、ようやくなれて、これから頑張ろうっていうのに、頭の中がぐちゃぐちゃになってるんだから。 隊服が締め付けるみたいで、ご飯も食べられなくて、 焦って、でもどうしたらいいのか分からなかったときに、たまたま偶然か、それともその時皆が本気じゃなかったのか、その日の訓練で、私が一番速く走れたの。 これだ! って。 一つでも皆に抜きん出てるものがあれば、隊員でいられる。 ばかみたいでしょ。 だから恥ずかしくてルイズに言えなかった。ごめんなさい。 それから、どうしたかって? 走ったわ。脇目も振らずに、少しでも速く、もっと速く、誰よりも速く、 それしか頭になかった。 ふふっ 何日目だったのかな、とにかくがむしゃらに走ってたときに、いきなり、頭ががーんってしたの。 気がついたら、仰向けに倒れてた。 木にぶつかってた。 頭から、思いっきり。コロボックルがそんなの、聞いたことないわよ。 ぶつけて、頭が空っぽになって。やっと気がついた。 私は、何の為に走るのか、全然考えてなかった。 マメイヌ隊員だった人たちに、たくさん話を聞きに行ったのに、全然分かってなかった。 あの人たちは、隊を辞めても少しも悔しそうでも恥ずかしそうでもなかった。 お父さんもそう。 私は、あの人たちを見てたからマメイヌ隊に憧れたのに。 この剣、ね、世話役が直接私に渡してくれたの。 だからすごく重く感じてた。何よりも大切にしなきゃって。 違うんだよね。 子供を助けるためだったら、剣なんか折っちゃってもいいんだ。 隊長に、そう言いに行ったの。気がついたこと、思ったこと全部、ぐちゃぐちゃだったときのことも。 返事は一言だけ。「そうか」って。 嬉しかったな。それで、やっと剣が剣の重さになってくれた。 副隊長なんて、お前は頭がいいんだか悪いんだかって。 はあ、すっきりした。 * * * 引き込まれてた私も、ようやく息がつけた。 ここで終わってもらって助かった。だって、この後はハヤテから見た私のはずだったもの。 しっかり分かったから、重ねて聞かされたら恥ずかしくて死んじゃう。 それにしても、 「半年前かぁ」 たった半年。それでこんなにしっかりしたお姉さんになっちゃうのか。 ずるいなぁ。そのころのハヤテが来てたら、私だけが子供っぽくなくて済んだのに。 「ガンバルノト、焦ルノハ、チョット違ウ」 まだちょっと赤いわよ。でも、感謝してる。 話してくれてありがとう。 手を伸ばして、ノートをぱらぱらとめくる。20ページほど遡ったところに、その書き込みはあった。 目的を間違えちゃだめだって。何のためにメイジになるのかよく考えようって。 あの後、ミスタ・コルベールとのごちゃごちゃがあって、それで埋もれちゃってたんだ。 大事なことに気づけて、大人になれた気分だったのに。ほんと、ばっかみたい。 「るいず、私モ、子供ダヨ。イキナリ大人ニナル、違ウ。少シズツ、行ッタリ来タリシナガラ、ネ」 もしもハヤテがいてくれなかったら、私も目を瞑ったまま走って、木に頭をぶつけてたんだろうな。 「ハヤテは、私の悩んでることとか、分かりやすくて、子供っぽいって思う?」 ううん、の指笛。 「大人ダッテ、分カンナクナルンダヨ、キット。先生モソウダッタジャナイ」 ゼロと呼ばれてむきになってたころが懐かしいわ。それだけで頭一杯になってた。 自分のこともだけど、シエスタとか、コルベール先生のことなんて、全然考えなかった。 ただのメイドで、ただの先生。 それに、そうだタバサ。 あの子今日は授業に出てたわよね。あれ? 昨日からだっけ? ううん、やっぱり今日からよ。 こんな風に考えることが増えて、魔法だけに集中できなくなってからの方が、よっぽど進んでる。 「フシギ、ダヨネ」 ハヤテもその言い方実感が篭ってるわね。 「アノネ、ゴ飯トイッショジャナイカナッテ、思ウンダケド、ドウカナ?」 また、話が飛んだわね。でもいいわ。面白そうだから聞いてあげる。 「好キナモノ、トカ、精ガツクモノトカ。デモ、ソレダケヲ食ベテルト、病気ニナッチャウ。タクサン、色ンナモノヲ食ベル、元気ノ素」 「そうよね。ハヤテって実は食いしん坊だしね」 「チ、違ッ! ルルルルッ!」 「冗談よ。分かってるわ」 私が意地を張らないように、わざと優しく噛み砕いて言ってくれてるの。そういうところも、ちい姉さまに似てる。 「明日から、ちゃんと授業受けるわ」 それだって、無駄じゃない。きっと私の糧になる。 「なんか、寝るの勿体無いな」 もう時間も遅いんだけど、もう少しハヤテとお話したい気分。 ちい姉さまにするみたいに、ちょっと甘えてみたら、しょうがないなぁってもう一度座り直してくれた。 「学院の庭、よく散歩してるでしょう? 何か面白いこととか、変わったことってないの? あ、別に何でもいいの。ハヤテの目から見た学院の話、聞きたいな」 眠くなるまで、余韻に浸りたいだけだったんだけど。 「ええっ! 風竜の背中に乗せてもらったの?」 それっていつ? いつの間にそんなに仲良くなっちゃったの? 寝てなんていられない。 「落チ着イテ、るいず。違ウノ。飛ンデナイカラ」 よくよく聞いてみたら、本当に背中にぽんと乗せてもらっただけ。 やっぱりタバサって分からない。竜の背中に乗るのはすごく興味あるけど、でも地面に降りてる竜に乗って楽しいの? 上手く想像できない。 だけどハヤテが嬉しかったって言うのを聞いてたら、その顔を見てたら、私も羨ましくなって、 「決めた! 私も明日タバサに会いに行くわ。だから明日の朝、一緒に起こしてね」 「エ? アレ? ウ、ウン。ワカッタ」 ベッドに潜り込む。 早く寝なきゃ。あ、ハヤテ、 「ナニ?」 子守唄、お願いね ---- #center{[[前ページ>豆粒ほどの小さな使い魔-13]] / [[豆粒ほどの小さな使い魔]] / [[次ページ>豆粒ほどの小さな使い魔-15]]}