「ゼロテリ9(後編)」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
ゼロテリ9(後編) - (2007/07/19 (木) 01:05:30) のソース
『悪夢よ!現世に感染せよ!』 その言葉と共に、さっきまで自分達がいた廃屋が崩壊する。 そしてその直後50メイル以上はある巨大な金色の神のまがい物-レガシー・オブ・ゴールド-が具現化した。 「な、なんなのよ、あれは・・・」 キュルケは顔を真っ青にしながら呟く。 「どうやら、鬼械神(デウス・マキナ)の形を取ったようだな」 「で、でうす・まきな?」 「機械の神。鋼を纏う神。神の模造品。 他にも様々な定義があるが、今のあやつの場合は、自身の存在をより強固なものにするための詩のようだな」 「か、神様なの?あれが!?」 ペルデュラボーの解説に、更なる悲鳴を上げるキュルケ。 「あんなにでかい上に神様だなんて・・・。は、早く逃げなきゃ!!」 「退却」 そう言い、その場から逃げ出そうとするが、あることに気づく。 「なにやってるのよ、[[ルイズ!]]早く逃げるわよ!」 が、ルイズはその場から動こうとしない。それどころから、とんでもないことを口に出す。 「イヤよ、わたしは逃げない」 「なに馬鹿な事言ってるの!早く逃げないと殺されちゃうのよ!!」 「どうせあいつは、わたしを捕まえるために追いかけてくる。それに、何にも出来てないのに逃げ出すなんて絶対にイヤ!!」 ルイズが自分の心を叫ぶ。 「このまま逃げたら、きっとわたしは一生『[[ゼロのルイズ]]』のまま。そんなの絶対にイヤなのよ!」 「そ、そんなもん言わせておけばいいじゃない!ここで死んじゃったら元も子もないのよ。」 「わたしは貴族よ。魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃない。敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!」 自身の杖を強く握り締め、自身の想いを叫ぶ。 しかし、邪悪な『音』がその想いを汚さんとする。 『別れの言葉は済んだようだな。ならば我が復活の贄となってもらおうか』 そして、醜悪な笑い声と共に破滅の光が彼女たちを飲み込まんと奔流する。 『ふはははは。おとなしく私に従っていれば、もう少しは生きながらえることができたものを・・・なに!?』 金色の巨体が放った光は、彼女たちを飲み込む前にペルデュラボーの結界に衝突・消滅していた。 「よくぞ吼えた。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。それでこそ、余をこの世界に召喚した者だ」 ペルデュラボーは愉快そうに続ける。 「その強い想い。使い魔である以上、実現させなくてはないかんな」 彼は呼ぶ、自身の魔道書(パートナー)の名を。 「来い。エセルドレーダ!!」 -イエス、マスター。 その呟きと同時に、彼の懐から紙ふぶきが舞う。舞う。舞う。 紙ふぶきが晴れると一人の少女が彼の傍らに立っていた。 そして彼らは謡う。彼らの聖句を。 「「機神召喚!鬼械神(デウス・マキナ)、リベル・レギス!!」」 この世界に、ルイズのための"ご都合主義"が召喚された。 『なんと!鬼械神だと!?』 「では始めるとしようか。闘争のワルツを」 「ダ、ダーリンもあのでっかいのを召喚した・・・」 唖然とする三人。そしてそこに、声が響く。 「なにをボーっとしているのですか」 「! あなたはさっきの」 声のしたほうを見ると、先ほど突然現れた少女-エセルドレーダ-が立っていた。 「マスターからの伝言です。『鬼械神は余が引き受ける。その間に貴公たちはヤツの本体を狙え』だそうです」 「本体?」 「あの鬼械神は、-酷い雑音-が喚び出した分身。あれの本体は、まだ指輪に封印されたままです」 「つまり、フーケの付けていた指輪を壊せばいいのね?」 「そうです」 「ちょ、ちょっとルイズ」 「言っておくけど、止めたって止まらないからね」 ルイズの頑固っぷりを、キュルケは改めて確認する。 「・・・はぁ。どうせ止めたって無駄なことくらい分かっていたわよ。いいわ、どうせ乗りかかった船だし。手伝ってあげる」 「え?」 「あなた一人じゃ危なっかしいのよ」 「心配」 ルイズの顔に朱が走る。 「・・・べ、別に嬉しいわけじゃないからね」 ボロを出しているのに気づいていないようだ。 「話が纏まったようですので、私はマスターの元へ行きます。それとあなた」 エセルがルイズを指差す。 「あなたには後で話があります。絶対に死なないように」 そう言うと、その場から姿を消した。 紅い模造神がハルケギニアの空を舞う。金色の模造神を狩るために。 金色の模造神が光を放つ。自身の邪魔をする紅い模造神を消すために。 『どうした。この私を倒すのではなかったのか?』 その『音』と共に光線がリベル・レギスを撫でる。 「まだウォーミングアップが終わっていないのでな。それに、今は貴公の場局(ターン)だ」 『ほざけ虫けらが。未来永劫、貴様には場局(ターン)は回らんわ!』 怒涛の光線がリベル・レギスを襲う。 が、かすりはするものの直撃は一切ない。 『ふはははは。動きが鈍いぞ!』 「ふむ、やはり魔道書無しではこのようなものか」 ペルデュラボーが呟くのと、ほぼ時を同じくしてエセルがコクピット内に現れる。 「遅くなりました。マスター」 「よい。では、今度はこちらの番だ」 ペルデュラボーの動きに合わせ、リベル・レギスが右腕をレガシー・オブ・ゴールドにかざし、魔法陣を形成する。 「ン・カイの闇よ」 暗黒の地下世界から喚び出された闇が、攻撃を防ぐ障壁ごと敵を打ち抜く。 『ば、馬鹿な!私に直撃を当てるだと!?』 邪神の焦りの『音』が響く。 「先に、貴公の敗因を伝えておこう」 鋼の拳が邪神を後方へ吹き飛ばす。 「まず一つ目は、鬼械神の形態を取った事だ」 続いて蹴り上げる。 「鬼械神は人神書が三位一体となってこそ、初めてその真の力を発揮できるのだ」 リベル・レギスの放つ光が邪神を貫く。 「そして二つ目だ。貴公は彼女たちを侮りすぎた」 そして、絶対零度の必殺技を構える。 「これで終演だ。アウグストゥスの亡霊よ」 リベル・レギスの右腕が白く輝く。 「「ハイパーボリア・ゼロドライブ!!」」 右腕から発せられる絶対零度の結界がレガシー・オブ・ゴールドを包み込み、それを消滅させた。 時を少し遡る。 (馬鹿な!なぜこうも計画が、私の復活が妨害されるのだ!!) 邪神は焦っていた。 曲がりなりにも神の一柱である自身が、人間に追い詰められていたから。 その焦りのせいだろう。自身を狙う三人の少女に気づかなかったのは。 「ファイアーボール!」「ウィンド・ブレイク」 キュルケの炎が、タバサの暴風が炸裂し、フーケの肉体がその場から吹き飛ばされる。 『な、なんだと!?』 目の前には自身の復活に必要な贄が-虚無の魔力を持つ少女-立っていた。 「これで、終わりよ!!」 本来ならば避けられたはずであった。 しかし、このフーケの身体の"本来の持ち主"のささやかな復讐がそれを阻む。 『ば、ばかなぁあぁぁぁあああああああああああああ!!』 爆発が絶叫を、指輪を、フーケの肉体を飲み込み、消滅させる。 これは奇しくもリベル・レギスが必殺の右腕を繰り出すのと同じタイミングであった。